長かった夏もようやく終わりが近づき、秋がやってくる。
こうして真山さんの部屋でクーラーの風にあたるのも残り少ないだろう。
実りの秋。おいしいもの。
あの人を思い出す。
もうずっと会ってないけれど、どうしているのだろう。
真山さんの部屋でその疑問をぶつけてみた。
「ローマイヤ先輩は今どうしているのですか?」
「ちょっと待ってろ」
真山さんはレターケースから2枚のはがきを出した。
「これが1年前の写真だ」
それは大人になるとよく送られてくる「私たち結婚しました」のはがきだった。
和服姿のローマイヤ先輩はお嫁さんをお姫様だっこしている。
ニャンざぶろうのように。
真山さんによると相手は去年ローマイヤ先輩の実家に実習にきた農学部の学生だったらしい。
「お互い一瞬で恋に落ち、今年の春彼女の卒業と同時に入籍したんだ。これも見ろ」
もう1枚のはがきは焼酎見舞いだ。ひまわりをバックにローマイヤ夫妻が笑っている。
農作業中に撮ったものだろう。
お嫁さんはかわいらしい顔立ちだが農作業にふさわしい引き締まった体つきだ。
「奥さん、妊娠してるんですね」
「今年の10月が予定日らしいぞ」
ローマイヤ先輩、今年は大豊作なんですね。
ん??
「ま、真山さん、ちょっと待って下さいよ。今年の春に入籍して10月に出産って…」
奥さんがまだ学生のときに種をまいたんだろうか。
「まあそういうことだろうけど。でも結婚はその前から決まってたらしいよ?」
ローマイヤ先輩はこの女性を毎晩あの大きな体で抱きしめているのだろう。
この人に不幸なんか似合わないけれど、幸せそうでよかった。
おわり。