「シモン…まさか、そんな……!」
黒いマントが絶望そのもののようにニアの目の前ではためいた。
目の前で笑う、愛しい男のものであるはずの顔に、ニアは戦慄する。
常のシモンが自分を見つめるときにその視線に含む柔らかさ優しさ、そんなものを欠片も感じない、
死んだ星のような冷徹の眼差し。
ただ口元が笑みの形に歪んでいるに過ぎないその微笑を崩さないままに、男は…シモンは嘲笑った。
「ようやっとお気づきかよ姫君。楽しかったんだがなぁ、あんたがふわふわにこにこ馬鹿みてえに
俺への愛だの信頼だのを朗々と語ってる様はよ」
「……っ、違います!私が好きなのはシモンです!あなたでは、あなたなどではありえません!」
細くたおやかな首が振られるたびに、ニアの白金色の髪がふわりと揺れた。涙はその瞳そのものを
零さんばかりに目の縁に湛えられてはいたが、零れ落ちる事はなくそれがニアの姫として、何より
戦士としての誇りと矜持を表わしているかのようだ。
「同じだよ。あいつは俺だ」
「違います!シモンはそんな冷たい言葉を話しません!もっと不器用で、でもやさしくて、あったかいのです!」
ニアの形のいい唇がきりりと噛み締められる。口惜しさか、あるいは悲哀か。だがそれすら、狼狽しながらも
受け止めて癒そうとする男は今はどこにみないのだ。
「さらに言うなら私の手も自主的に握れないシモンがあなたみたいに手っ取り早いぜレイプレイプな暴行を
私に加えられるはずがないのです!」
「俺はどこのクラウザーさんだ!!」
「あとシモンのときと長さは変わりませんけど太さが変わりますよね」
微妙に流れが変わった事に首を傾げながらも男は律儀に「何がだ?」と問い返す。
だがそれがいけなかった。ニアは真顔で、そして赤面の一つもせず言い放ったのだ。
「おちんこが。何かフォルム的にあなたのは湯のみっぽいです」
「う、うわぁぁぁん!しょうがないだろ膨張率変わったって長さは変わんないんだからあああああん!!」
「あ、逃げました」
敵を退けた刹那の平穏に浸るニア。だが愛する男が最大の敵であるという事実を彼女はいかに受け止めるのか。
愛し合う二人の運命は?次回「二人の愛のパイパニック!響けメスブタモグラ交響曲」