・艦長の日記
11月17日 天気:そんなもの知るか
最悪だ。最悪の一日だった。俺はただ手を握って微笑んでみただけなのに。そして微笑み返して欲しかっただけなのに。
あんな怪訝な眼差しで見つめることないだろう。これじゃあまるで、俺が白装束の変質者みたいじゃないか。
なんだか身の置き場を無くしたのでそのまま退室しようとしたら、今度は彼女は可哀相な物を見る目で俺を見ていた、
と思う。少なくとも俺にはそう思われてならなかった。すごく惨めな気分だった。
嫌われただろうか。かっこわるいと思われただろうか。ショックだ。
そもそも、夢の中の自分の言葉なんかを信じた俺が馬鹿だった。安っぽそうな顔してたしな。
ちくしょう。あいつの方こそ白装束の変質者だ。
余りにむしゃくしゃしたので、例の王子様マントは粉々に切り刻み明日の夕食用のカレー鍋に放り込んで
じっくりコトコト煮込んでやった。クルーの健康?宇宙の平和?ハッ、ちゃんちゃらおかしいぜ。
みんな不幸になっちまえばいいんだ。今の俺みたいに。
俺用のカレーは俺特製スペシャルブレンドのために別鍋で煮込んであるから心配ない。
それにしても、ニアの手、柔らかくて小さくて気持ち良かったな…。
ニアの身体で触ったことがない場所なんかないが、そういう問題じゃないんだ。
お互い服を着た状態で、どきどきしながら手を握るというのに意味がある。たとえ緊張したのが俺だけだとしても。
…ニアの方も、少しはどきっとしてくれただろうか?
ほんの少しでいい。もしそうだったら、嬉しい。
なにはともあれ、この手は当分洗わない。
・副官ブータの航海日誌
11月18日 天気:だから宇宙に天気はないと何度書けば
今日も順調に航海は進んでいる。敵艦隊殲滅も至極快調に進んでいる。
というのも、昨日やたらと落ち込んでいたシモンが今日になってヤケを起こし、艦の螺旋力が以下省略。
恐らくまたニア姫関連だろうから深くは追究しない。
こちらとしては、あの珍妙な白マントをやめてもらえて嬉しい限りだ。
あれだとまるで白装束の変質者みたいだということに、本人も漸く気付いたのだろう。
それはそうと、今日の朝厨房に顔を出すと、夕食用の鍋の中で白い不審物が煮だっていた。
…ゴミだろうか?お玉ですくって捨てようとしたが、三角コーナーが見つからない。
見ると、夕食用の鍋の隣で、とても食べ物とは思えない色をしたものが
悪臭(少しだけカレーの匂いもする)と共に煮込まれていた。闇鍋にしては邪悪すぎる。
きっと三角コーナーの代わりなのだろう。ゴミはそこに捨てておいた。
・シモン燃えスレ残党クルー達の艦長観察日記
11月19日 天気:今日は燃えるのはお休み
強く凛々しくかっこいい我らが艦長が体調を崩した。
変なものを食べて下痢だとか、手洗いを怠って風邪だとか、様々な憶説が飛びかっているけどいずれにせよ艦長の容態が心配だ。
今日の朝食のカレー(昨日の晩御飯の残り。なかなかおいしかった)も殆ど喉を通らなかった。
身体が深刻に艦長不足を訴えている。ああ艦長。早く帰って来てください。