「ねぇシモン」
「なに?」
「私達が今、こうして生活してるこの世界は夢だったって話。シモンは知ってる?」
「さあ、初耳だな」
「キノンに聞いたの。不思議なお話」
「それが本当だったら嫌だよな。
目が覚めたら何もなくて、ニアもいない、全部夢なんて」
「いいえ、きっと夢の中でも夢のシモンと一緒にいるわ。
夢の世界のシモンは、物探しが得意だから魔法使いね。
何かを無くしてしまっても、魔法で見つけだしてくれる」
「ははは、どんな本を読んだんだ?だったらニアはお姫様だ――
「なぁニア」
「なあに?」
「俺達が今、こうして生活してるこの世界は夢だったって話。ニアは知ってる?」
「聞いたことはあります」
「よかった。ロシウに聞いたんだけど、不思議な話だった」
「目が覚めたら何もなくて、シモンもいない、全部夢なんて嫌です」
「そんなわけないだろ。あっちでもニアと一緒にいるさ。
夢の世界のニアは…」
「シモン?」
「前に一度、こんな話しなかったかな?」
「……私がお姫様、シモンが魔法使い」
「ニア、知ってるのか!?」
「ううん、夢でも見たのかしら?でもねシモン、魔法は使っちゃだめ。夢の中の私たちにしかできない魔法なのです」
「夢の中の私たちが、私たちを夢見ているのなら、夢の中の私たちより幸せになろう?」
「夢の中の私たちが、私たちより幸せになったら、夢の中の私たちより幸せになろう?」
そして夕焼けの中で長く延びた二つの影が重なりあった。
奇しくも同時刻。
夕焼けの中で長く延びた二つの影が重なりあう、もう一つの世界があった。