アンネが産まれて、月が落ちてきそうになって、色々あって、キヤルはダヤッカ夫妻の元を離れて一人暮らし。
キヨウをアシストする家事手伝い、悪く言えばニート生活から脱し、少しだけ社会的にランクアップした生活を満喫していた。
月夜の晩。訪問客の鳴らすチャイムに応えて扉を開く。
「まずドアスコープで相手を確認しろと何度言ったら…!」
「見なくてもギンブレーだって分かるってば。チャイムをきっちり一秒間隔で二回!十五秒後にもう一回鳴らすもんな」
政府のきっちりした服ではない、それよりもほんの少しだけゆったりした私服に身を包んだギンブレーが予想通り立っていた。
いつものように小言をくれ、キヤルが中に迎え入れると客人らしからぬ態度でリビングの食卓につく。
ご察しの通り、ギンブレーはキヤルの恋人である。
生真面目なギンブレーが自由奔放なキヤルを放っておけなかったのか、
元家事手伝いのキヤルがエリートなギンブレーを捕まえたのかは定かでないが、
ともあれ二人は不思議なことに彼氏と彼女の関係なのだ。
「お前さー、夕飯くらい食べてこいよ」
そう言いながらもキヤルは慣れた手つきで具材をテーブルのガスコンロに置かれた鍋に次々と放り込んでいく。
「安かったから、今日はキノコ鍋だぜ!」
お玉を振りかざすキヤルをギンブレーは神妙な面持ちで見つめ、眼鏡のフレームを押し上げた。
「ん、どした?キノコ嫌いだったのか?」
「キノコは嫌いではありません。それよりいい加減その言葉遣いを直したらどうです」
うう、とキヤルが眉を寄せ「自分だって真面目すぎじゃん」と愚痴り、鍋をぐるぐるとかき回した。
「せめて俺、ではなく私、と。貴方のご姉妹を見習って下さい。口が悪いのは…」
ぴくんと反応を示したかと思うと、つかつかとギンブレーの隣に歩み寄り、じっと睨みつけ、
「口が悪いのはなに?これは生まれつきだってば」
と言うなり、ギンブレーのズボンの中に手を突っ込んだのである。
ひゃ、と素っ頓狂な声を上げて慌てふためくギンブレーを尻目に、キヤルは引っ掴んだものを一寸の迷いも狂いもなく口にくわえ込んだ。
思わず腰が跳ねて、慌ててその快感を振り払うと足の間に顔を埋めるキヤルを離そうと頭を押す。
しかしキヤルはギンブレーのものを甘噛みして応えるのみ。
「駄目だ…こんな…」
「どこが駄目なんだ?俺の口、悪い割には巧いだろ?」
温かな咥内にもう一度それをくわえ直した。キヤルの熱い舌が舐り、躊躇無くそれを強く吸い上げると中で膨らみを増す。
先走りと唾液とでぬめる先端を咥内でつつかれて、ギンブレーは葛藤し困惑から逃れようと腰を浮かした。
「んぅ…」
その拍子に喉頭まで押し入ったものにキヤルが眉間を寄せる。しかし、肉棒は口から離さない。
どうしてもキヤルはこの行為をやめるつもりは無いらしい。その瞬間には諦めるしかなかった。
「…どうしても、ですか」
根元から先端までを執拗に攻めるキヤルがもたらすのはまさに快感だった。
抵抗していた手は甘受してキヤルの頭を撫でることにし、今だけは身を任せることにした。
キヤルは猫のように目を細めて、より強く愛撫する。
そして射精の前兆に、キヤルは微笑むと肉棒全体を強く吸い上げる事で応えた。決壊したそれを全て受け止める。
ねっとりと纏わりつく精液が口腔を満たして、尿道に残ったものまで余さず吸い上げて、キスを落とす。
「イヤイヤ言ってる割には全部出したりするんだな、これ」
「ば、馬鹿じゃないのか!一体どこで覚えてきたんだ!」
喉を鳴らして飲み干す様に目を白黒させ、ズボンを引き上げながら非難するが説得力は全く無い。
「前見たえっちな本で覚えたんだろなー。じゃ、次はお前の番だぜ!なんか悔しいからさ!」
何がと聞き返そうとするが、キヤルはキノコ鍋をかき回していた。中を覗けば勿論キノコが入っている。丸ごと。
いやそれはおかしいとギンブレーは非常識な事態に気付く。
鍋に浮くそのままの姿のエリンギマイタケブナシメジ。
キヤルはその中からエリンギを一つ箸で拾うとニヤニヤしながらギンブレーの眼前に持っていく。
鍋は煮立っており、湯気が眼鏡を曇らせる。
「はい、あーん」
そう言われたら食わざるを得ない。そして口は災いの元を身を以て実感したのだ。