「ねぇお父様、お母様ってどんな方だったのだすか?」  
7年前のあの日、身体を失い頭だけとなったロージェノム・ヘッドに  
アンチスパイラルの呪縛から解き放たれたニアが問うた。  
「うむ、なかなかに美しい女であった。 姿を見たいか?」  
娘の問いに、ときおり金魚鉢の中で泡を吹き上げながら  
すっかり性格の丸くなった父が答えた。  
「ああ、ぜひニアに見せてやってくれ。 俺も見てみたいし」  
美しく成長した娘の隣には、その婚約者であるシモンの姿。  
今この部屋にいるのは彼女らだけではなく、ロシウやキノン  
ヨーコにヴィラル、リーロンたち生き残った大グレン団のメンツがいる。  
「ではスクリーンに映そう」  
言うが早いか、正面にあるこの部屋で一番大きな画面に  
ニアによく似た女性の顔と、それとは別に全身像も隣に映し出される。  
『おお・・・・!』  
大グレン団の面々から、感嘆の声が上がる。  
「まあ、キレイなひと」  
「たしかに、ニアに似てるな」  
リーロン、シモンが率直な感想を漏らし。  
「・・・・・・・これが、お母様」  
初めてみる母の姿に、いつになく感慨深げな声で  
ニアはただ見つめていた。  
「ねえロージェノム、この女性・・ニアのお母さんとは  
 何か思い出とかないの?」  
なんらかのロマンスでも期待しているのだろうか、ヨーコが若干身を乗り出しながら  
頭だけのロージェノムに聞いた。  
「うむ・・・・これといってないのだが、強いて上げるのならば、これぐらいか」  
しばらく考えたのち、何か思い当たることがあったのだろう  
顔と全身が映っていた画面が、別のものに切り替わった。  
 
『あああっ!! あ・・・ン! 螺旋王様、どうかお許し・・ひぃん!』  
『はっはっは、まだまだ行くぞ。 そ〜ら、螺旋チンポ全開だ!!』  
映り変わった画面には、2人の男女の姿があった。  
片方はニアの母、そしてもう片方は身体を失う前のロージェノム。  
天涯付きの豪華なベッドの上での、組んずほぐれつの大乱闘。  
もちろん2人とも全裸だ。  
「・・・・・・・・わ〜〜〜っ!!!」  
「キャアアァ――――ッ!!」  
悲鳴や叫び声の上がる中、ロージェノムだけが冷静な声で。  
「これは、ニアを作っている最中の映像だ」  
「見ればわかるわ!」  
担いでいた銃の柄で、ヨーコはロージェノムの頭の入った水槽をぶっ叩く。  
「まあ、そうなんですか」  
瞳の中にキラキラ星。  
ニアだけが、いつもながらのボケた反応を返した。  
 

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