(こ、ここは……?)
気がつくと、周囲に暗闇が広がっていた。
なぜ、こんな所にいるのか分からない。
「あっ」
ニアは驚愕の声を上げた。
無理もない。一糸まとわぬ全裸姿のまま、四肢を大の字に固定され、宙に浮いているのだから。
『聞け。螺旋の女よ』
白い光が部屋の中央に灯り、低い男の声が部屋に響いた。
「……あなたは誰ですか?」
『貴様ら螺旋の一族に仇なす者』
螺旋……仇なす……。
断片的な記憶がよみがえる。
落ちてくる月。ムガン。
私の名を叫ぶ、あの人の顔。
――シモン!
ニアはすべてを思い出した。
アンチスパイラルの使者として、自分が操られていた事を。
「私を帰してください」
全裸で拘束されていながら、ニアは毅然とした態度で宙を見つめた。
『それは出来ぬ。おまえは興味深い』
「……どういうことですか?」
『それをこれから調べるのだ』
「何を――」
ニアは言い終える前に、弓なりに裸体を反らせた。
爪先から妖しい感触が忍び寄ってきたのだ。
『隅々まで解析させてもらう』
「お、おやめなさいっ」
雪のような柔肌が、モザイク状の黒い物体に侵食されていく。
『性的な興奮を覚えているな?』
「そんな事ありませんっ!」
ニアは思わず言い返した。
未だ乙女の純潔は守られている。
そう、あのシモンにすら体を許していないのだ。
『すぐに分かる事だ』
「――――っっっ!!!」
次の瞬間、ニアは声にならない悲鳴をあげた。
聖域である性器の唇が、縦にパクリと割られたのだ。
『色素の沈着も形崩れも見られない。処女膜も健在のようだ』
複雑に入り組んだ膣路が外気に触れた。
ニアは恥辱のあまり体をわななかせる。
『だが、生殖は可能なはずだ』
「ひゃうっっ!」
ニアは四肢を突っ張らせ、小ぶりな乳房を弾ませた。
針金のような細い物が性器に挿入されたからだった。
「や、やめ……うっ!」
得体の知れないナニかが体内で蠢く。
それは処女膜を傷つけることなく子宮口へと達し、さらに奥へと侵入を果たした。
『卵巣も卵管も異常は見られない。子宮壁も着床に耐えられる』
「う、うぐぐっ……」
冷静に分析するその声が、ニアの恥辱感をさらに増大させた。
『……ほう。こちらも反応を示すのか』
「あっ!」
黒い物がニアの乳房を押し包んだ。
白い柔肉がグニグニと変形し、先端の突起が尖り始める。
『授乳器官が勃起するのだったな、貴様らは』
女の象徴をいいように弄ばれ、ニアはただ、深い絶望のなか身を震わせた。
「ニアッッ!!!!」
その時だ、名を呼ばれたのは。
目を開けた先にあったのは、紛れもなく、シモンと仲間達の姿だった。
「……来てくれたのね」
「ああ、約束したろ?」
「ええ、……信じてたわ」
「今、助けてやるからな」
「気をつけて、シモン。アンチスパイラルは、あなたが思っているよりも強大よ」
「心配するな。おれは勝つ。勝ってお前と一緒に地球に帰るんだ」
……変わらないな、シモンは。
ニアはうれしくなって微笑を浮かべた。
「あっ!」
乳房の先端に強い刺激が走り、ニアはビクンと体を反らせた。
『性的な欲求が増したな?あの螺旋の男によって』
「そ、そんなっ、あっ、くうぅ……」
『隠しても分かる。お前はあの男を欲している』
「い、いやらしいこと、言わないで」
『だが事実だ。浅ましいものだな』
いつの間にかシモンの姿は掻き消えて、深い暗闇が戻っていた。
「あっ、やめてっ、いやっ、あああっ、そんな所、だめえっっっ」
何かが身体中を這い回り、ニアの五感を刺激する。
この嗜虐的な愛撫が続けられると、信じがたい衝動がニアの身を貶めていた。
『血圧増大。発熱と発汗も確認。陰核の肥大化も見受けられる』
(こんな、うそよ……)
事もあろうにニアの体は、深い快楽に包まれていたのだ。
「うっ……」
裸体に巻きつく黒い物体が波のように引いた。
ようやく開放されたニアは、ガクリと力なくうなだれた。
『ここまでは解析済みだ』
ニアは肩で息をしながら、その声に耳を傾ける。
『我々が知りたいのは、この先だ』
黒い物体が寄り集まり、一つの塊に変化した。
「何を……」
顔をあげたニアは弱々しくつぶやく。
それは徐々に人の形を成していった。
ただ、顔はない。両目の位置に微かなくぼみがあるだけだった。
『これから我々の遺伝子を貴様の卵子に組み込む』
「ま、まさか……」
『そうだ。これより我らの子を成してもらう』
「ひっ」
ニアは食いしばった歯の隙間から悲鳴を漏らした。
黒い塊の股間がみるみると隆起し、男性器を形どったからだ。
『すぐに済む』
黒い顔の下部に裂け目が出来た。
赤い舌が隙間から覗き、それが口であると知れた。
「や、やめて、お願い、やめて……」
黒い塊の手が忍び寄る。
ニアは顔を引きつらせ、首を左右に振った。
「うぐぅ」
アゴを掴まれて顔を固定されたニアは、黒い塊に唇を奪われた。
(な、何これ……)
どろりとした液体が咽喉に流し込まれ、ニアは目を白黒させた。
『排卵を促す唾液だ。痛みを和らげ、快楽をもたらす効果もある』
(い、いや……)
しかし、口を塞がれてはなす術がない。
逃げ場を失った唾液は、飲み干すしかほかなかった。
「んっ……」
唇を開放されたニアは短く呻く。
頬を紅く上気させ、その瞳は妖艶に潤んでいた。
『始めるぞ』
ニアの美脚がMの字に広げられた。
中心部にある性器は、すでに熱く蕩けている。
「あっ……」
黒いペニスが秘裂にあてがわれ、くちゅりと音を立てた。
それが、徐々に沈められていく。
(あっ、あっ、あっ、シモン、シモンッ!)
穢れを知らぬ聖域に、ズブズブと埋没するペニス。
「こ、これ以上は……ひぃっっ!!」
ニアはビクンとアゴを突き出し、大きな瞳を見開いた。
純潔の証がぶつりと破られ、ペニスが膣底を叩いたからだった。
「あっ、やっ、痛い、抜いて、抜いてえ……」
息も絶え絶えに訴えるニア。
股間からは破瓜の血が滴り、初めての貫通作業が終了した事を示していた。
『すぐに慣れる』
黒い塊が抽送を開始する。
ずっぷずっぷと抜き差しされるペニス。
広がったカリ首が処女地を責め立てて、先端が容赦なく子宮口に突き刺さる。
だがどうだろう。
初めての性交であるにもかかわらず、激しい痛みは痺れに変わり、
やがて甘い快楽へと変貌を遂げていた。
『気持ちよかろう?』
「い、いやっ、そんな事、あっ!ああっ……」
ニアの膣路はペニスに形を合わせ、細かな蠕動を繰り返す。
『強情な女だ。果たして最後まで持つかな?』
ずくり!と根元までペニスが挿入された。
「あうんっっ!」
骨盤が軋み、ニアは乳房を突き出して口をパクパクとさせた。
『これより射精体勢に入る。貴様が絶頂を迎えたときが、最後だ』
黒い塊がニアの体に覆いかぶさる。
隙間にある乳房が潰れ、むにゅりと横にはみ出した。
「そ、そん……あ――っっっ!」
瞬間、猛烈な抽送が開始された。
ペニスが高速に動き出し、掘削機のごとくグサグサと性器に突き刺さる。
「あうっ!あっ!あひぃっ!」
四肢の拘束が解かれ、自由になった両腕でニアは黒い塊にしがみ付いた。
『早く楽になってしまえ』
声の主がせせら笑う。
実際、ニアは昂ぶりの真っ只中にあった。
気を許せば、すぐにでも絶頂に達するだろう。
だが、その瞬間に膣内射精が待っている。
それは、アンチスパイラルの子を孕むことを意味した。
(それだけは、それだけは……)
ニアは眉間にシワを寄せ、懸命に抗う。
「あっ、ひっ、うっ、ううっ」
ニアは正常位で犯されていた。
投げ出された両脚が、突き入れられるたびに宙を前後する。
上気した美貌にあぶら汗がにじみ、一撃ごとに理性を削り取っていった。
「う、うそ……」
その時、信じがたい映像がニアの視界に入った。
シモンたちが乗艦してるダイグレンが、
宇宙の海に呑み込まれようとしているではないか。
『こちらの策に嵌ってくれたようだ。さて、こちらも終わらそう』
長い舌がニアの口中に差し込まれ、件の唾液が再び流し込まれる。
「うっ、ぐぅ……」
ニアのしなやかな裸体がせり上がり、子宮に妖しい火が灯る。
『イってしまえ』
黒い塊がニアの裸体を容赦なく貪った。
ガツガツと肉砲が打ち込まれ、骨が軋み、身が砕ける。
ニアは呼気を荒げ、宙に浮かんだ映像に手を伸ばす。
(シ、シモンっ、もう、もうっっ!)
次の瞬間、ニアの肢体が弾けた。
「あっ!やあっ!イク、いくうううっっ!!!」
爪先が内側に丸め込まれ、膣道がヒクヒクと収縮する。
体がバラバラになり、空間に飛散するかのような快感が駆け巡った。
『終わりだ』
ニアの媚肉の中で、ペニスが一回り大きく膨張した。
「あ、ああっ、くる、きちゃうっっ」
肉棒が膣内で跳ね上がり、性の脈動を開始した。
ほとばしる熱い飛沫が、子宮内部へと大量に注ぎ込まれる。
「あっ、ひっ、う、うう……」
ニアは剥きだしの下半身をビクビクと震わせながら、余すことなく精を受け止めた。
全身は朱の色に染まり、乱れた髪が頬に貼りつく。
その肉悦に溺れたニアの肢体は、あまりにも艶やかで、官能的でもあった。
『受精完了』
無機質な声が空間に響いた。
役目を終えたペニスがずるりと引き抜かれる。
「あ、ああ……」
ごぼりとあふれ出す精液。
その残滓の滴が内股を伝い、下へと滴る。
「シ、シモン……ごめんなさい……」
かすれた声でニアがつぶやいた。
船首を垂直にして、ダイグレンが海に呑み込まれていく。
その映像とともに、ニアの意識は深い闇に包まれていった。
おわり