懇願するロシウを振り切り新政府閣僚ポストを蹴って、自由人となったヨーコ。  
だが明確に自分が成すべき事がこの時点で見えていたわけではなかった。永遠の思い人となった彼の言葉は今も忘れない。これから地上で過ごす子供達の事を考える。  
そういえばギミーとダリーを暫く面倒みた事もあったが結構楽しかった。だが、仮にそういう親の無い子供達を引き取って一緒に暮らす。  
それは何故だか判らないが違う様な気がする。  
母親でもないのに、自分が行うのはおこがましいし本当に母親になるなら、あの人の……。  
そんな事を考えていたらビシュン!  
頬を銃弾がかすめた。  
エアバイクを急旋回して岩場に身を隠し銃を構えて射撃態勢を取った。  
 
いったい敵は何処に潜んでいるのか?  
ロージェノムの残党なのか?  
岩場の動く影をヨーコの瞳が捉えた!  
乾いた銃声が辺りに響き渡って影が倒れた。  
駆け寄ったヨーコは絶句した。  
まだ子供じゃない……。肩を撃ち抜かれた状態で倒れ込んだ体勢を抱きかかえ顔を覗き込んだ。  
大きな耳と口元の牙が目立つが何よりヨーコを驚かせたのは、その顔。  
嘗て今や伝説の英雄と化した彼。  
最初は邪険な態度を取り続けていたが道中次第に喋り出し語り出していた。  
『ガキの頃に俺は地上に親父と出たが、俺はビビって一歩も前に進めなかった。  
親父はそんな情けねぇ俺の頭を大きな掌で包み込む様撫でて、お前が行ける時になったらお前は来いと言い残してそのまま夕日に向かって歩き出していったんだ……』  
そうあの人が子供だった頃の面影。  
 

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