よいこのえロほん 蠍と毒と獣人チミルフ  
 
蠍というものは尾に針を持ち、時折毒を含むものもいて、身体は外殻に覆われ、  
迂闊に手を出せば傷を付けてやるどころか返り討ちにされてしまう程に恐ろしい生き物です。  
つまるところ、そのような生き物に対峙した場合は甘く見てはいけません。  
そのような生き物が今も生息しているかは今では知ることが出来ないのですが、  
獣人チミルフにとっては目の前の女性が蠍であり、その毒によって返り討ちにあってしまったと言えるのです。―――  
 
 
月の明るい夜だった。  
巨大な戦艦型ガンメン、ダイガンザンは今、人っ子一人、否、二人だけしかいない。人払いの結果だ。  
一人はこの戦艦の主であるチミルフ。  
もう一人は自分の下で乱れ、拗ねたような顔をしているアディーネ。  
人間の言葉を借りるならば『性交』、獣の言葉を借りるならば『交尾』。獣人にとっては何の為にしているかは分からないが、何をしているかは分かる行為だった。  
きっかけは些細なものだった。  
螺旋王四天王が四天王でなかったある時。男だらけでむさ苦しいと思っていた矢先に、やたらと細い女がくれば興味を引かれるだろう。  
四天王に加わったのはチミルフも知る、あのアディーネだった。  
その身長故にグアームには到底叶わぬ、覗こうと思えばその先まで見えてしまう程開けられた胸元。  
肩のなだらかな曲線。大きく入った着物のスリット。それだけでチミルフの思考を鈍らせるには充分なものだった。  
アディーネ自身も、獣の本能が残っていたのか強い男は好きであり、それを分かった上か挑発的な態度を取る。  
ここで引いては男が廃る。だからチミルフは原始的な方法で本能のまま襲いかかった。  
体格差もあり抵抗も虚しくアディーネは組み敷かれ、両腕尻尾を頭上で押さえられてしまう。  
尾が上げられたことで、着物の裾は捲れ、太股が露わになった。  
人間に近い姿をしたアディーネは細く、白く、チミルフがその手に力を込めるだけで壊れてしまいそうなほどだ。  
「…ふ、ふざけ…」  
頬を朱に染めて、射殺さんばかりに睨みつける。  
「ふざけてなどおらぬ」  
足の刺青をねっとりと舐めると、アディーネは唇を戦慄かせた。  
 
「ア、アンタがそうでも、アタシは、違う」  
「フフフ…違うのか?誘っていたのは誰だったか…」  
乱れた裾から覗く腿。はだけた胸元。隠れていないのであればこんな布は無いのと同じ。  
生まれたままの姿に剥いでしまうと、チミルフは舌でたわわな胸の先端や、乳房を下から舐めあげて執拗に舐った。  
その度に反応するのがまた面白い。  
「くっ…アンタは赤ん坊か!」  
「どうかな?男とは乳離れできない生き物でな」  
「っあ!」  
固くなりつつある先端を舌で押しつぶすようにすると、吐息混じりの高い声が上がった。  
満足げに口端を上げると、あれから口を閉ざして声一つ上げようとしない。  
時折堪えきれなかったであろう喘ぎが漏れてくるのみ。それが更に悩ましい。  
「く…んっ!んうぅ…」  
既にねっとりと熱を持つ下肢の間に指を滑らせれば、アディーネの目が驚きと羞恥に見開かれた。  
「ん…ふ、んんっ!」  
中に指を入れたまま陰核を親指で擦り、中と外とで刺激を与えれば、堪えることが出来ずに声を上げる。  
「くああっ!」  
「…可愛い声で鳴きおって」  
指に纏わりつく愛液を溢れさせ、ぐったりとしたアディーネの腕を解放し、空いた手で腰を抱えた。  
「え?な…なにを」  
チミルフの股間の赤黒くそそり立ったものを視認して、アディーネは肩を押し返そうとしたが、  
構わずチミルフはアディーネの中に腰を突き入れた。  
「あ、ああああっ!」  
愛液でぬめる粘膜を突き上げ、ゆっくりと引き出し、再び突き上げる。  
貫く度に中で体積を増し、脈打つ異物に眉根を寄せ、アディーネが身を捩る。  
「あっ…ひ、ああっ!っ、ぅん…!」  
怒涛に違わぬ激しさを受け、押し返すための腕はチミルフの首に回され、しがみつく形になっている。  
肌を打つ音と淫らな声が静かに響いている。胸元を走る刺青を舐め、首筋に上り、唇から伝う唾液を絡めとる。  
アディーネは最早快感に身を任せたように目を細めて鳴く。仄かに笑んで、チミルフを受け止めていた。  
 
「くうっ、ああっ、な、中にっ」  
「ああ、出すぞ」  
答える前に深く押し込み先端で肉壁を擦った。びくびくとその快感を逃さぬように締め付け、弓なりに体を仰け反らせた。  
「ひっ、あ、あ――――!」  
アディーネの白い体は何度か痙攣し、チミルフは中に実ることのない子種を叩きつけていた。  
結合部からは、胎内に収まらなかった精と愛液とが混ざり合った液体がぐちぐちと泡立ちながら溢れ出していき、腿を伝った。  
 
「動けないのを良いことに、そうやって連れ回すのが介抱とは知らなかったよ。アタシを寝不足で殺す気か?」  
あのまま眠りたかったんだと力無く垂れ下がった尾でチミルフの腹を打つと、アディーネを抱えたチミルフは豪快に笑った。  
「分かっておる」  
夜更けに騒がしくして誰かに見つかろうが、四天王クラスならばあちらから見て見ぬ振りをするだろう。  
どこで眠ろうと邪魔は入らないのだ。  
テッペリンの麓では、謁見の間ほどではないが満天の星々に月がよく見える。  
草の生えた野にぽつんと突き刺さる巨岩の元にアディーネをそっと降ろすと、自らもアディーネの隣に腰を下ろした。  
アディーネはそれを見て鼻で笑うと、チミルフにゆっくりと体を寄せた。  
「妙なことしたらただじゃおかないよ…」  
岩を背に、チミルフに頭を凭れ、ゆっくりと寝息を立て始める。  
月明かりに照らされた安らかな寝顔を少しばかり眺めて、チミルフも深い眠りに落ちた。  
 
 
―――蠍とは小さな生き物です。しかしその毒は強力で、長く体を蝕むでしょう。  
ですが、獣人チミルフにとっては目の前の女性が蠍であろうと、毒を薬にしてしまいます。  
蠍は、獣人チミルフに勝つことが出来なくなったのです。  
 

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