「迂闊…」  
一面に桃色の煙が立ちこめる縦穴に、ヨーコは居た。  
獲物を追って踏み越えた地面の下、過去に使われていた村の名残だろうか、空洞が広がっていたのだ。  
咄嗟に伸ばした手が壁面から張り出した岩にかかったのが幸いして比較的柔らかく着地したものの、足首がずきずきする。捻ったのかもしれない。  
辺り一面は冒頭で延べたとおり、桃色をした異様な煙で溢れかえっていた。一寸先すら霞んで見えず、ほのかに甘い香が頭を痺れさせる。  
「助けを呼ぼうにも…結構遠くまで来ちゃったのよね」  
運悪くライフルは地上に落としたらしい。護身用の小銃もあるにはあるが、合図としては心許ないだろう。  
とりあえず頭上に向けて何発か空砲を撃っておく。鳥の慌てた鳴き声が彼方から響いた。  
「望み薄…」  
ずるずると足を引きずって手探りに壁ぎわへもたれる。足が動かせるようになったら、よじ登って脱出するしかない。  
 
「ふぅ…」  
一息付いたのも束の間、自分の吐息の熱さにヨーコは眉をしかめた。  
吐息だけではない。痛みに気をとられていた間は気付かなかったが、身体中がじわりじわりと奧から、熱い。  
「やだ…何…」  
知らず鼓動が早まった。頭の芯がどうもぼうっとして、状況が掴めない。煙が濃くなっているように見えるのは錯覚だろうか。  
少しの恐怖を打ち消すように、ヨーコは首をうち振った。  
「ぁ…」  
拍子にさらりと長い髪が胸の間を撫でる。普段なら何も感じないはずの小さな刺激だったというのに、思わず小さな声が出てしまった。  
途端、ぴくん、と、ビキニの布越しに乳首が主張する。  
意識してしまうと余計にそこは痛いくらいにぴんぴんと張り詰めて、布地にこすれるたび小さく泡のような火種が生まれていく。  
(触りたい…きゅっ、て…)  
身体が要求していた。ぼんやりした頭は、本能のまま片手を誘い出す。  
「ぁん…!」  
布の上から撫でただけで、腰が疼いた。脇から手を入れて、まずは手のひらで強めに揉みしだく。  
柔らかな胸の感触。ゆっくりと指先で乳首を摘むと、甘い電気のような痺れが背中を駆け巡る。  
「ふあぁ…」  
反対の手も同じように胸へ侵入させ、乳首をきゅっと摘む。いつの間にかヨーコは両足をすり合わせ、もじもじと刺激を与えていた。小さな快楽に震えた指先を、今度は自らのショートパンツへ忍ばせる。  
既にぬるぬると濡れて滑りの良い其処は、ヨーコの細い指を簡単に受け入れた。  
 
「あっ…ん、はぅ」  
片手では飽きずに乳房ごと胸を揉みしだき、もう一方ではくちゅくちゅと音を立てながら、膣口を淡く掻き混ぜる。  
「ん…ぁぅ!」  
硬くなったクリトリスを指先で押し潰せば、自然腰がびくびくと跳ねた。  
そして、絶頂の見えたその時…  
煙が、ひいていく。  
古い縦穴だとばかり思っていた空洞は、上手くカモフラージュされてはいるものの、そこかしこに手入れの跡を感じるつくりだった。無造作に転がる手枷や鞭、頭上を何時の間に覆う鉄格子。いわゆる牢獄や、拷問部屋を用意に想像させる。  
「良い見せ物だなぁ?人間?」  
響いた声には聞き覚えがあった。確か、アディーネと言ったか。四天王を名乗る獣人の一人であり、ヨーコにとっては憎んでも憎みきれない程の相手だ。  
慌てて手を自らの身体から離し、小銃を構える。だが、姿がどこにも見えない。  
「出てきなさいっ!」  
「調子にお乗りでないよ、この淫乱小娘が…立場を弁えな!」  
思わず顔を赤くしながらも、ヨーコは警戒を解かなかった。どうやら声は遠隔地からスピーカーで届いているようだ。先程までは見えなかったが、あちこちに映像機器が見受けられる。  
「まさかお前が捕まるとは思わなかったよ…今までの借りはたっぷり…身体で返してもらうからねェ」  
くつくつとアディーネの笑い声が響く。  
「アタシの奴隷に相応しく調教してやるから感謝おし…?」  
「誰があんたなんかっ!」  
「強がりがいつまで持つだろうねぇ…イキな、お前たち!」  
呼応するように、カチリ、と、何かが噛み合う音がした。  
どこからともなく桃色の煙がまた、部屋を満たしていく。  
「その催淫煙は訓練なしじゃあ一流の武人でも理性を飛ばす…女の身一つじゃあ一溜まりもない」  
呼吸を止めることもままならず、ヨーコは先程と同じ、頭の芯がぼんやりとしてくる感覚がぶり返すのを感じていた。  
そのせいで神経が鈍っていたのかもしれない。後ろから小銃を奪われ、はがいじめにされるその瞬間まで、ヨーコは敵の気配に気付くことが出来なかった。  
「可愛がっておやり?色好い報告を…待っているよ」  
「はっ、アディーネ様」  
「我らにて、小娘を従順な奴隷へと必ずや!」  
ぷつん、という音とともに、アディーネの声が途絶える。  
「離しなさいよっ…!あっ…痛っ!」  
「家畜めが…いまに抵抗すら奪われるというのに、頭の悪い!」  
「誰が家畜ですって…!」  
痛む足を無理矢理に開かされながら、ヨーコは、前後から聞こえる獣人の息遣いに、背筋を凍らせるばかりだった。  
 
「ひぁああ…っ!」  
ごつごつとした武骨な獣の手が、容赦なくヨーコの乳房をまさぐる。後ろから拘束を兼ねて抱き抱えられた体は、既に服もはぎ取られていた。開かされた足の間ではピチャピチャと激しい舌使いの音がする。  
二人がかりで与えられる快楽は、媚薬効果のある煙を吸い続けるヨーコにとって、過ぎる程の刺激だった。  
愛液はとめどなくとろとろと溢れ、いやらしい声が止むことはない。  
「やぁっ…!もぉ…だめぇ…!」  
捏ね回され続けて熟れた乳首をぴんと引っ張られ、ヨーコはゆるゆると身をよじる。  
だが、その抵抗が見た目だけのものだということに、二人の獣人が気付かない筈もない。  
「駄目…?先程から腰を随分と擦りつけられているのだがな?」  
「こっちも…舌ごと食い付かれそうだぜ、ド淫乱が」  
下から獣人の腰が押しつけられる。熱く硬く、大きな性器の感触。思わず胸に湧いた期待のような感情を、ヨーコは唇を噛み締めることで打ち消そうとする。  
理性的行動は長く持たなかった。今まで舐めあげる行為を繰り返していただけの獣人が、浮き上がった腰を思い切り引き寄せ、勢い良く吸い上げたのだ。  
「やっ…ぁあああああっ!」  
不意打ちに、ヨーコの絶叫が響き渡る。  
一度きつく吸い上げた其処へ断続的に何度か吸いつきながら、痙攣する膣口に指を差し入れる。  
「あァっ!!いやぁ…!」  
浅い部分を前からぐぷぐぷと攻め、連携したように後ろからはアナルへと手を伸ばす。愛液がたっぷりと伝った蕾は、あっけなく獣人の指を受け入れた。  
虚ろな目から涙を流しながら、ヨーコは自ら腰を振りはじめる。  
「くくっ…淫らな雌だ、家畜に相応しい身体になってきたではないか…」  
「だめぇ…!あぅ、きもち…いぃ…っ」  
理性の失われた唇は、ついに陥落を口にしはじめる。  
獣の指はアナルだけとは言わず、時折わざとらしく膣内をつついてはヨーコを苛んだ。  
「そろそろここに…欲しいものがあるんじゃないか…?」  
 
示したのはくぷくぷとものほしそうに指に吸い付くスリットの奥だ。  
皆まで言われなくてもわからない筈がない。先程感じた、熱く、硬く、大きなモノ。あれで中を突かれたら…そう考えるだけでも、極限まで高められた性感の所為か、愛液がとろけた。  
「無論、くれてやろうぞ?我らにとて精はなくとも欲求はある…ただし」  
二人の獣人は目配せをし、嗜虐的に口元を歪めた。気のついたように胸をまさぐれば、ヨーコの膣はきゅうきゅうと指を食い絞める。  
荒く息をつきながら、ヨーコは知らず獣人に期待を含んだ眼差しを送っていた。  
一度意識してしまえば止まらないのだ。ほしい。硬くたぎった性器で、ぐちゃぐちゃに濡れた秘部を犯してほしい。  
「まずは生意気な口からだ」  
言うが早いか、足の間の獣人が立ち上がる。取り出したのは、人間よりも随分と大きく、そして赤黒い性器だった。有無を言わさずヨーコの顔に先端を突き付け、興奮からか、早くもだらだらと溢れる腺液をその美しい頬に、鼻に、唇に、ぬるぬると擦り付けた。  
「やだ…嫌…いやぁ…」  
首を力なく振るも、肝心の身体は相変わらず後ろからしっかりと固定されていて逃げようもない。  
力の入らないこの身体では、たとえ拘束がなくとも逃げられはしないだろうが。  
 
「舐めろ。それから…胸に挟んで擦れ。そうしたらぶちこんでやる」  
ヨーコは一瞬だけ思案するように目線を泳がせた。  
だが、下からまるで性器にでも犯されているかのごとく指をねじ込まれ、中を弄り回され…  
「いゃあぁぁっ!」  
あっけなく、陥落する。  
膝立ちになるとたわむ乳房を自ら持ち上げ、眼前の肉棒を挟み込んだ。  
やわらかな谷の間から、似付かわしくもない象徴が顔を出す。可憐な舌がちろちろとそれを舐めた。  
「くわえろ」  
意を決したように、ヨーコは息を呑んだ。そして、めいっぱいに唇を開き、グロテスクな性器を口に含む。  
乳房をゆさゆさと上下させながら、必死に舌を絡ませ、喉奥まで銜え込む。  
獣人たちは満足気に笑った。そして、後ろから一気に指を引きぬく。  
「んむっ…!ふうぅ!」  
代わりに入り込んできたのは、硬く、熱く…そう、ヨーコの欲していた、長大なモノ。  
膝立ちの足を開かされ、ガクガクと震える身体を支えるのは、貫いた性器だけだった。  
限界まで広がってぬちぬちと規格外の性器を受け入れる膣からは、とめどなく愛液が滲む。  
「飲み干せよ、雌猿…くっ」  
前後不覚に陥ったヨーコの咥内を、大量の体液が襲った。  
 
えづく暇もない。  
人の何倍もの精液…正確には、無精である液体が溢れだす。  
口に入り切らないと見るや、獣人は肉棒を引き抜き、ヨーコの顔へと固定した。  
びゅくびゅくと吹き出す体液が、視界ごと白に染め上げていく。  
「ひあんっ!あぅ!あァっ!すご…おっきいのぉっ…!」  
口を塞ぐものの消えたヨーコの声を阻むものは何もない。  
挟むものの消えた乳房を後ろからたっぷりと揉みしだかれ、自らの指先では乳首をきゅうきゅうとつねりあげる。  
「良かったなぁ?人間…?アディーネ様はお前のような家畜を、これからたっぷりと可愛がってくださるらしいぞ!」  
「んぅう!ひっ…あ!あァん!」  
「腰を振るしか脳のない貴様には勿体ない身分だ…くくっ」  
その言葉がヨーコに届いていたか、否か。  
桃色の煙に包まれながら、淫らに堕ちたその声はしばらく、止むことはなかった。  
 

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