目を覚ませばよく見る天井が広がっていた。
寝ぼけ眼でベットサイドの時計を見れば、日が昇ったばかりの時間をさしていた。
休日だから、ともう少し寝ようと布団を寄せたところで、自分が何も身に着けていないということに気づいた。
隣にいるはずのシモンの姿はない。しかし、彼の上着があることから帰ったわけではなさそうだ。
寝起きの頭で考え、昨夜の行為のまま眠ってしまったのだということに気づいた。
昨夜の行為を思い出し、ニアは顔を微かに赤らめ、布団をかぶる。
ニアの中にはもう一つの人格が眠っている。
冷静でクールだというその人格を、ニアの恋人であるシモンは黒ニアと呼んでいる。
黒ニアの人格のときの記憶は情報として残っており、昨夜の行為も黒ニアの人格ではあったが覚えている。
(でも、私のときのえっちと、なにか違う気がする…)
シモンはどちらも大切にしてくれている。
しかし、黒ニアの時にはちょっとだけ意地悪のような気もするのだ。
昨夜も、風呂から上がり手帳でスケジュールを見ていたら突然ベットに押し倒された。
それだけではなく、言葉で攻めたり焦らしたり…とニアの時にはなかなかしないようなことをしてくるのだ。
(ちょっと強引なシモンも好きだけど…)
ニアの時には気遣ったり優しくキスをするシモンが、黒ニアの時にはちょっと強引なキスをするのだ。
以前にも黒ニアが「ニアの時には意地悪しないくせに」と言ったことがあった。
曰く、「黒ニアは好きな子にちょっと意地悪したくなるみたいな気持ちで、ニアは癒されているって感じかな」
分からなくもないが、人格は違えども同じ身体で激しく求められていると、なんとなく物足りない気がするのだ。
「ん…」
昨夜の行為を思い出したせいか、ニアの身体が疼きはじめる。
ニアの身体に熱がともるのにはそう時間はかからなかった。
* * * * *
普段より少し早く目が覚めたシモンは、外に出て缶コーヒーを買いに行った。
朝の空気は昼間よりも少し冷たく、頭を覚ますにはもってこいの時間帯だった。
人の姿はなく町全体が眠っている中、
朝日を受けながら飲むコーヒーの味は、徹夜のお供のコーヒーよりも断然美味しく感じた。
缶を捨て、部屋に帰り寝室へと向かう。
もしかしたらまだ眠っているかもしれないニアを起こさないようにそっと扉を開け、中を覗き込む。
部屋の―正確にはベット上の光景を見たシモンは先ほどまでの爽やかな気分を吹っ飛ばされることとなる。
「んっ…、ふ…」
濡れた音が広めの寝室に響く。
ベットの上で一人寝そべるニアの指がニア自身を刺激すると短く切ない声があがり、ピクッと身体が反応する。
短い息を吐きながらも、ニアの手は動きを止めようとはしない。
ベットの上で自分自身を犯かしているニアを見て、まず冷静になろうと扉を閉めようとする。
しかし、痛いほど主張している彼の下半身がそうはさせなかった。
「んん、ふ…っ、ん…、…っ」
コーヒーを買いにいったこの間に何が起きたかは分からないが、うっすらと涙を浮べながらも、
音をたて秘所に指を出し入れする乱れた姿は、背徳心の感じさせ、扇情的だった。
見てはいけない、と分かってはいても目を離すことなんて出来るはずがなかった。
「んん…ふぁ…っ、あ、ん…はぁ、あ」
ニアの息がだんだんと荒くなっていく。
ニアの指の動きが激しくなっていくごとに、シモンのソレも硬さを増していき、
普段のニアからは想像出来ない姿にシモンは知らず知らずのうちに息をのんだ。
「あ、んぁ、ひゃぁ…、もっと…もっとぉ…っ!」
ピクン、とニアの身体が小さくはね、喘ぎ声が大きくなる。
何度も身体を重ねたからこそ、ニアの様子から絶頂が近付いていることを判断するのは容易いことだった。
しかし、何度も身体を重ねたとはいえ、今のニアの姿は新鮮だった。
「あ、ああ、ひゃ…んっ、…シモン…っ、シモン…!」
ビクリとニアの身体が大きく跳ねる。
乱れた息を整えようと身体が上下に揺れる。その身体にはシモンがつけた性行の跡がつけられていた。
指がゆっくりと引き抜かれ、テラテラと妖しく輝いているのが見える。
我慢なんて出来るはずがなかった。
シモンは静かに寝室に入り、ベットにゆっくりとあがる。
半分朦朧としているニアの額にキスをすると、
シモンに気付いたニアがとろんとした目でシモンを見つめた。
「シモン…?」
「ゴメン。もう我慢出来ない」
シモンは言いながら、ゆっくりとニアの身体にキスをする。
二人を乗せたベットがシモンが動くたびにギシ…と音を立てた。
「も、しかして…見て…?あっ」
寝そべるニアに跨ると、胸の勃起した小さな突起を軽くつまむ。
そしてそこに舌を這わせ、片手をついさっきまでニア自身で犯されていたところに手をのばす。
軽く擦るように触れると、濡れたそこは敏感に反応し、小さく声を上げた。
ニアの頬は羞恥で赤く染まっている。
その反応だけでシモンが満足するわけもなく、ズボン越しからも十分に分かるほど主張したものをそこにあてる。
「こんなにして…責任、とってもらうよ?」
頬どころか顔全体が赤く染まり、それを隠そうとするニアの姿に理性を突き破ったシモンが、
求めるがままにニアを味わおうとしたのはいいが、逆に激しく求めるニアにリードされたというのはまた後の話である。