シモンが開業医を勤める小さな医院ードリル医院(仮)には二人のナースがいる。  
どちらも雲のように豊かな、少し変わった色の髪の持ち主で、目には花びらのような模様がある。  
違っていることは、一人はふわふわとした雰囲気と笑顔が魅了的な女性で、  
もう一人は細く氷のような目付きでクールな雰囲気の持ち主の女性である。  
二人とも同じ名前であるため、シモンはふわふわとした雰囲気のナースをニア、クールな雰囲気のナースを黒ニアと呼んでいた。  
二人は交互に勤務しており、その日は黒ニアが勤務の日だった。  
 
 
「ようやく休憩かぁ〜」  
シモンは椅子に座ったまま背伸びをする。  
隣にいた黒ニアは事務的に「お疲れさまです」と声をかけ、受け取ったカルテを確認し始める。  
その姿をじっ、と見ていたシモンの視線に気付いた黒ニアは「…なんですか」とぶっきらぼうに答えた。  
それにシモンは「別に」と笑う。  
 
「ただ、ニアだと休憩に入るとお茶出してくれるなぁって」  
 
その言葉に黒ニアはムッとする。  
自分に愛想がないのは知っていたが、ニアと比べられているということが気に食わなかった。  
診察室ではなく、受付でやろうと思い、診察室の出入り口へ向かう。  
しかし、それはシモンによって阻止される。  
スカートの端を摘むシモンにますますムッとしながら、ニアは「離して下さい」と抗議するが、「やだ」とシモンはそれを許可しない。  
それどころか、素早く黒ニアの腰に手をまわし、自分のところへ引き戻す。  
突然の行動に驚いた黒ニアがカルテを何枚か落とす音が部屋に響く。  
 
「何するん…ひゃっ」  
文句を言おうとした瞬間、シモンの手が太ももへ伸びる。  
その行為に黒ニアの身体がピクリと小さく跳ねる。  
その反応が楽しいのか、シモンはゆっくりと太ももを撫でていく。  
シモンの趣味なのか、この医院のナース服はスカートの丈がやや短いため、太ももは無防備に出されており、黒ニアはされるがままだ。  
 
「これだけでこんなに反応しちゃて、可愛いなぁ」  
 
そう言ってシモンは目の前に差し出されていた首筋にキスをする。  
黒ニアは突然の刺激に小さく声をあげる。  
それが嫌ではないということを知っていたシモンは再び首筋にキスをする。  
軽く触れるだけのキスは小鳥のような啄むものから赤子のように吸い付くものまで。  
只でさえも首が弱点であった黒ニアは、耳まで真っ赤にしながら小さく震えている。  
太ももを撫で続ける右手を押さえるため、手はふさがっており、カルテはとっくに床の上だ。  
首筋へのキスが終わると震えながらも黒ニアは「いい加減に…しなさい!」とシモンを責める。  
しかしそれはシモンにとって効果はないようだった。  
 
「そんな顔して言われても、ねぇ?」  
「ひゃあ…っ」  
耳元で囁かれ、吐息まで耳にかかる。  
すっかり力が抜けたことを確認したシモンは黒ニアを自分の膝に座らせる。  
そしてボタンを外していき、手を服の中へとゆっくり侵入させていく。  
ブラの中まで侵入した手はゆっくりと優しく胸を揉みくだいていく。  
この間にも、後ろからの首筋や耳を舐めたり、キスしたり、甘噛みしたりと行為を止めようとはしない。  
 
「んん…ふ、あっ…ぁあ、ひゃぁ…っ!」  
突然、黒ニアの声が高くなる。  
黒ニアの身体を支えていた片方の手がいつの間にか足まで伸びていた。  
ツー…と太ももを撫でていた手がスカートの中にまで侵入する。  
 
「や…ぁ、だ、だめぇ…」  
「ダメ、じゃないだろ?」  
無意識でも反抗する気力はまだ残っているらしい。  
それが男の被虐心をそそるということを知らないらしいが。  
シモンは下着越しだったのを中まで弄っていく。  
 
「やっ、あ、あぁ…っ、ん、ふぅ…っ」  
「気持ちいい?」  
「あ、ん…、き、もち…いぃ…あ、はぁ…」  
「よく言えました」  
そう言うと、ご褒美といわんばかりに激しく中をかき乱していく。  
普段は素直ではない彼女が素直に言うのだから、そろそろ限界が近いのかもしれない。  
「あ…はぁ、ん…あぁん、あ…んっ」  
首筋、耳、胸まで同時に攻められていた黒ニアは予想通り限界が近いようだった。  
中の指をきゅうきゅうに締め付け、黒ニアが声にならない叫びを上げた。  
 
シモンは少しの間考え、弄っていた手を止める。  
激しい愛撫が突然止まったことで、とろんとした目で不思議そうにシモンを見つめる黒ニアに  
意地悪そうに小さく笑いかけると、下着だけを脱がせ、黒ニアを自分と向かい合うように座らせる。  
そして自分のモノを取り出し、黒ニアのソコにあてがう。  
生暖かい蜜が太ももを伝っていく。  
「ん、ふ…」  
黒ニアは来るであろう衝撃に耐えるため、ギュッと目を瞑り、シモンの首に手をまわし、身体を支える。  
しかし、太ももに熱を感じるのに、いつまでたってもソレはやってこない。  
再び不思議に思った黒ニアが目を開けると、シモンはニコリと微笑んだ  
 
「ほら、動いて」  
「…へ?」  
「自分でいれて、動いて」  
 
ニアは羞恥で顔を真っ赤にさせる。  
そして「なんで私だけにこんなに意地悪するんですか」「どうせニアにはこんなことしないんでしょ」  
と、もう一人の自分のことをあげる。  
シモンは「そうだね」と笑う。  
 
「こんなこと、お前にしかしないよ」  
 
そう言って口づけをする。  
それが長く、吐息交じりのものになるまでそう時間はかからなかった。  
 
「あ、はぁん…、やっ…ぁあん、あ…はぁ…っ」  
黒ニアは懸命に腰を振っていた。  
結局、自分で挿れるしかなかったため、羞恥から少しでも逃れようと目を合わせないように目をつぶっている。  
ポニーテールが動きに合わせて揺れるのがまるで尻尾のようだ。  
 
「ほら、さっきみたいに素直になって。気持ちいいかどうか教えて?」  
「ん、ふぅ…、きも…ちいい…、あっ」  
「ならもっと激しく動いてくれなくちゃ」  
シモンに下から突き上げられ、黒ニアの身体は大きく跳ねる。  
そしてその反動に合わせるかのように激しく腰を動かしていく。  
「ん、あぁっ、あっ、んぅ、あっ、あぁ…!」  
「く…っ」  
その激しい動きにシモンも腰を浮かせ、眉間に皺を寄せている。  
表情から絶頂が近いことを知らせていた。  
 
「も、もぅ、あぁ、あん、ひぁあ、あっ、あっ、あぁぁあ…っ!」  
「――っ!」  
黒ニアが身体を大きく退け反らし、ビクッと身体を震わした。  
シモンが黒ニアの中に熱を放ったのはほぼ同時だった。  
 
 
「…あなた、バカですか!?」  
ぼぅっとしていた黒ニアがようやく事態を把握したあとの第一声はこれだった。  
きょとんとしているシモンに、黒ニアは一気に責め立てる。  
 
「勤務中に職員を襲うだなんて非常識すぎます!  
 休憩中だったからよかったものの、途中で患者がやってきたらどうするつもりですか!」  
「別に付き合っているんだし、誰も来なかったし、いいだろ」  
「よくありません!」  
「じゃあ、その非常識な男にあんなに激しく求めていたのは誰だっけ?」  
ぐっとニアは言葉を飲み込む。  
その反応が楽しくて、ついつい苛めてしまいたくなるのだ。  
もう一人の彼女では起こりえない感情だ。  
 
真面目な彼女が怒っている姿と、情事の時の素直な彼女の姿のギャップに、今度は診察用のベットに彼女を押し倒すのはこのあとのことである。  
 
 

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