「せっくすってなんですか?」
テッペリン攻略から数年経って、人間が地上で暮らせるようになって、変わったものが沢山あった。
テッペリンはその名をカミナシティと改め、
大グレン団は今や新政府として機能しているし、
村長はステーキハウスの店長に。
ガンメンも、グレンラガン以外は破棄されてしまった。
一番変わったのはダヤッカとキヨウの関係だろうけど。
変わらなかったものもある。
ブータは未だに肩に乗れるほどの大きさのままだし、
リーロンはずっと発明を続けているし、
アーテンボローは相変わらず慌てん坊だ。
キヤルの胸m・・・とにかく、変わらないものだってある。
そんな中で、俺も総司令っていう肩書きと書類整理に少しだけ慣れてきたある日、
先程から一緒に昼食をとっていた少女が不意に爆弾を落とした。
村長のステーキハウスは従業員が殆どジーハ村の村民で、
知り合いも多いから気兼ねなく来れて便利だし、
大グレン団の皆にも俺やアニキの故郷の味を知ってほしくてつい連れてきてしまったが、
今回ばかりは墓穴を掘った。
天を突き抜けてアニキの所へ逝ける位の。
目の前で俺に(精神的な)ギガドリルブレイクをかました少女は、
自分が発した単語の意味を本当に知らないんだろう。
思い切り咽てブタモグラのステーキを撒き散らしてる俺を不思議そうに見つめている。
なんで急にそんなことを・・・とも思ったが、目の前の彼女だって変わってきているのだろう。
まだ獣人と戦っていたときは自分と同じく子供だったのが、成長して大人へとなりつつある。
ただ知識が追いついてない。それだけだ。
俺だってソッチの事を考えないわけじゃない。
ただ、時と場所が悪かっただけ。
それでも多少なりとも彼女の性知識の無さを恨まずにはいられなかったのは、
彼女にそのテの事を少しなりとも教えられた筈の人物が居たわけで。
(話題に出しづらいのも分かるけどせめて人並みには・・・)
(ホント頼むよ・・・・・・ギミー・・・・・・・・・)
目の前で食後のデザートを頬張って
「せっくすって知ってます?シモンさん」
なんて訊いてくるダリーにどうやってその単語の意味を教えるべきか、
そもそも俺が教えなきゃダメなのか!? 教えてよアニキ!!
と自問自答しながら
いつ双子の兄をニア特製のお食事会に招待するかも考えてて
聞き耳を立てていた村長達への口止めを怠った事に気付いたのは、
翌日ロシウから
「シモンさん、ちょっと天上人になってみませんか?」
と 回りくどいようで割りとストレートに死刑宣告を申し渡された後だった。