「おうっ!おはよう!ちょ、ちょちょちょ!オマエ!ネクタイはこうやってしっかり締めるんだYO!」  
校門の前で大の字に立って叫んでいる男、風紀委員のカミナ。  
門の前は賑やか、というかカミナだけがうるさいとでもいうのだろうか。  
それがこの学園での毎朝の光景だ。  
 
「相変わらず朝っぱらからうるさいわねぇ」  
ボソっと吐き捨てるようにカミナの前を通り過ぎて行くポニーテールの女。  
「んあ?ヨーコじゃねえか。今日も何つーか、いい乳してるっつーか」  
何を考えているのだろうか、その男は女の胸を後ろから揉んだ。  
「ちょっ!!イヤっ…カミナ!こんな所で…駄目って…」  
「気にする事はねえって。お前も感じてるじゃねぇか。シャツの上から立ってるぜ?」  
「バカっ…!ンっ…、し…知らないんだから…」  
通り過ぎ行く生徒からは乾いた笑いがするだけで、こんな光景は日常の事だったのだ。  
「馬鹿野郎!!朝っぱらから平和ボケにも程があるだろ!!」  
乳くりあいをぶった切ったのは、この学園の生徒会長・シモンだった。  
 
「何だぁ?シモン。これっくらいの事見逃せよなぁ」  
「(ヤバイヤバイ、今のうちに逃げよ)じゃ、じゃーね。先教室行ってるから!」  
ヨーコは逃げるようにカミナの手を振り払って、下駄箱へと足を急がせた。  
「アニキぃ…。一応風紀委員長なんだからさ。一応モラルってものを守ってよ」  
「ハイハイハイ、分かりましたよ。でもなぁ、たまには大目に見ようぜ?弟よ!」  
「ったく、手出すのはヨーコだけにしとくんだよ?アニキ」  
この二人が生徒会長・風紀委員なだけで世も末。だというのだろうか。  
それでも毎日、平和な時間が流れるのだからこれでいいのだろう。  
 
 
「ホラホラ!さっさと起立するんだよ!!」  
威勢良く教室のドアから入ってきたのは、このクラスの担任・アディーネ。  
「貴様ら立ちやがれ!アディーネ先生がお越しになっただろーが!起立!礼!着席!」  
続いて威勢良く号令をしたのはヴィラル。このクラスの学級委員だ。  
この光景もいつもの事なので、生徒は皆平然と挨拶をするのだった。  
「今日はねぇ、アンタらに良い知らせがあるよ!」  
「おっ、何でぇ何でぇ!もったいぶらず、さっさと教えろよ!!」  
「(馬鹿カミナっ!先生に対して失礼でしょーがっ)」  
ヨーコの注意にカミナが聞く筈など無かった。  
「転校生のお知らせだよ!ホラっ、とっとと入りな!!」  
 
教室が一瞬静まった後、開いたドアからは長くきれいな髪がなびいた。  
「皆さんと一緒に学ぶ事になりました、ニア・テッペリンです。よろしくお願いしますね」  
わぁっ、と生徒達から歓喜の声が沸いた。  
「はい!!」  
「何だい?シモン。転校生に質問かい?」  
「ニア、結婚しよう!!」  
一瞬にして教室が静まり返ったのは言うまでも無い。  
 
 
 
『ニア、結婚しよう!!』  
『やだっ!』  
放課後。教室の隅には、朝とは打って変わったようなシモンがため息をついていた。  
「おい、シモン。大丈夫か?」  
シモンの様子に心配したのはクラスメイトのダヤッカだった。  
「んぁ…?ダヤッカ…。あぁ、大丈夫。……アニキは?」  
「あぁ、カミナならヨーコを引っ張って先に帰ったぞ」  
シモンからは覇気が無くなっていた。  
彼の欠点は、生徒会長という意欲からか、何事にも少々熱血な所があることだ。  
なので先程ニアに振られたショックがまだ引きずっている。  
「大丈夫だからさ…、ダヤッカも先帰っていいよ」  
「そうか?ま、まぁ…あんまり気落ちするなよ?」  
 
 
ダヤッカも先に帰り、夕日も落ち始めた。  
「はぁ…」  
一目惚れ・初恋・求婚・失恋。  
シモンにとって恋愛事はまだまだ未知の世界だったのかも知れない。  
 
ガラッ  
ドアが勢い良く開いたそこを振り返ると、担任のアディーネが腕を組んで立っていた。  
「ア…アディーネ!!…先生……」  
「ずいぶん情けない姿だねぇ?シモン。さっきのがそんなにショックかい?」  
ハイヒールの音をコツコツと立て、シモンの方へ歩み寄る。  
「ショック…?まぁ、俺もいきなりだったから…」  
うつむいていたシモンの顔を、アディーネは指でくいっと上げta。  
「なっ、何をするっ!」  
シモンは手を払った。だがアディーネは話を続けた。  
「アンタはねぇ、まだまだ甘チャンなんだよ。女っていうのをもっと分からないとねぇ」  
「どういう意味だ?分かる言葉で言ってくれ」  
「ったく、先生に向かって生意気に…まぁ良い。シモン、アンタはニアが好きなんだろう?」  
「ああ…そうだ!」  
「ならさ、ワタシで知ると良い。女ってモノをさぁ」  
シモンは一歩引き腰になった。  
「知るって…何を?」  
「何って、ナニだよ!」  
 
顔を掴まれ、顔全体がやわらかいものの波に押し寄せられた。  
「うぐっ…!?ぅっ…」  
「どうだい?シモン、これがおっぱいっていうモンだよ?」  
何が起きたか分からず、そして息が出来ない。  
しかし分かる事は一つ、気持ち良いという事だ。  
「ふはっ!ハァ…、はぁ…」  
解放され、快感を味わう事よりもまずは呼吸する事を第一にした。  
「アディーネ…先生……」  
「女はね、ここ、ここを舐められると興奮するんだよ?」  
シャツを脱ぎ捨て胸を丸出しにしたアディーネは、そこいらの男よりも男気が良かった。  
「こ、ここ?ここって…」  
「ここって言ってんだろう!?」  
 
またもやシモンの顔を掴み、半ば強引に自分の胸を舌で舐めさせた。  
「んぐっ…!ふっ、ぁは…っ!」  
「いいかい?絶対歯は立てるんじゃないよ。そう、先っちょで、もっと焦らす様に舐めるんだよ」  
いやらしい音が立つばかりで、とてもじゃないがシモンはアディーネを気持ちよくさせる余裕など無かった。  
「ンフっ…、まぁいい。要領は悪いが舌づかいはいいんじゃないかい?」  
「はぁっ…はぁ……」  
「ニアを振り向かせたいんなら、もっと上手くならなきゃねぇ?」  
シモンは息を切らせ、呼吸を整えていた。  
「アディーネ…先生、もう少し…教えてくれ……」  
「……教えて下さい、だろう?」  
 
「ハァ…ハァ…」  
「ハァ…シモン……アンタ、相当のモノじゃないかい?」  
教卓の下、淫らな格好でへばっている担任と生徒会長。、  
「そんな事…ない。これでホントにニアが…俺のものになるんだな…?」  
「…だから敬語を使えと言ってるだろう?ホラ!もう一回イクよ!!」  
「ア、アディーネ先生!!俺…俺もうっ…ぁあっ!!」  
仰向けのシモンの上から容赦なく腰を落とすアディーネは、そのもう一回でもまだ物足りないのであった。  
 
 
「アディーネ先生!頼まれた書類整理しておきました!!」  
職員室の自分の机に戻ると、ファイルの山がきれいに整頓されていた。  
仕事をヴィラルに押し付けていた事をすっかり忘れていたのだ。  
「ぁあ…。ヴィラル、悪いねぇ。こんな遅くまで」  
「いいえっ!これくらい何のその!!」  
「あぁ、まだ教室にシモンがいたようだから、気をつけて二人で帰るといい」  
「…はいっ!ありがとうございます!!では、さようなら!!」  
勿論先程の事がヴィラルに感づかれる日など来る筈も無い。  
 
 
 
ニアです  
今日は転入して二日目の朝になります  
「おはよ〜ニア!」  
「はいっ、キヤルさんキヨウさんキ…キ…?おはようございます」  
お友達も早速出来てとってもとっても嬉しいです  
 
「おうっ、お前スカート丈がちょっと長いぞ!もうちょい短く、ガツンと短くいけぇ!」  
あの門の前にいるのは…確か同じクラスで風紀委員の……  
「おっ、キミぃ!ニアちゃんじゃねえか!」  
「はいっ!?…あ、おはようございます」  
びっくりしました…陽気な方なのですね  
「ん、んん〜?」  
じっと見られてます?な…なんですか?私何かしましたか?  
「おうっ、乳はヨーコに負けるがそそる体じゃねえか!」  
「あの?……きゃっ!?」  
何ですかこの人!いきなり抱き付いて…へ…変なところ触って……!  
 
「大丈夫大丈夫、俺がこう揉めば、乳もでっかく育つからよ」  
「んふっ…や…やめて下さっ……」  
この変な気分は何ですか…?やめて下さい…誰か助けて下さい…  
「この張りってモノが良いじゃねえか…なあ?流石お姫さんの持ってるモノは違うなぁ?」  
私はお姫様じゃ……  
「あっ…ん…、いや…やめ…そこはっ……イヤですっ…!」  
助けて、誰か…誰か助けて…!  
 
「アニキぃぃ!!歯ァ食いしばれぇぇ!!」  
「お、シモンじゃねえか。今日も晴れていい天k……」  
ボコッ!!「フガッ!?」  
…!?彼は……  
「ニアっ!助けに来たよ!」  
彼は、昨日私に結婚しようと 言って下さった……  
「おいで!」  
シモン…!  
「ふぇっ…」  
 
シモン、あなたが助けてくれたのですね  
「シモンっ…!私、私、昨日のお受けします!」  
「…ニア?ああ!ニアは俺が守る!」  
シモン、あなたが助けに来てくれてとっても嬉しかったのよ  
誰よりも一番に、私を助けに来てくれて…  
 
 
「…よう、兄弟。随分男を上げたじゃねえか」  
「アニキ……。ああ!」  
アニキ…この方はシモンのアニキさんなのですね  
「アニキさん、私はシモンと明日へ向かいます」  
そうです、私はシモンを信じます誰よりも一番に私を守ってくれる人なのですから…  
「おうよ、シモンを宜しく頼むぜ。シモン、ちゃんと守れよ!」  
 
「何してんのよバカ…」  
「んあ?ヨーコ。遅かったじゃねえか!」  
「サイッテー!こんな公衆の面前で転校生に手を出すなんて最低よ!」  
「…馬鹿ヤロウ、お前を待ってたんじゃねーか……」  
「ちょ…カミナっ…!ンッ…あんっ…」  
あの方は確かヨーコさん…カミナさんと仲良しなのですね、良かった  
「シモン、私はもっとあなた達の事…色んな事が知りたいです」  
「ん?」  
「だから色々教えて下さいね、シモンっ」  
「ああ、分かったよ!ニア!」  
 
 
「シモン、お話があるのだけれど」  
昼休みになりテキストをしまおうとしたシモンの机の前に、彼女は立っていた。  
「ニア?うん、何?」  
彼女は笑みをこぼす事も無く、その顔からは陰りが見える。  
「おうおうおう、早速ケンカかぁ?」  
「アニキさんはお静かにして下さい!シモン、真剣なお話なのですが…」  
何か怒られる事でもしたのだろうか?まだ付き合いだして二日目。  
特にこれといって悪い事もしてない手も出していない、何も心辺りはないのだが…。  
 
「シモンはこの学園の生徒会長だって聞きました」  
「うん…、一応…そだけど…」  
何を言われるか分からないというのは少々怖いものだった。  
「なのにその格好は何ですか!」  
「へっ?」  
「あぁん?」  
シモンとカミナはお互いに顔を見合わせた。  
「ハダカの上にその黒いコート!それはこの学園の指定服じゃないと、ヨーコさんに聞きました!」  
「あ、こ…これの事…?」  
そうなのだ、シモンはカミナに言われるがまま、制服ではない黒のロングコートを羽織っているのだ。  
裸で。  
 
「待て待て!これはなぁ、大グレン団の証であっt  
「アニキさんは黙ってて下さい!シモン、あなたは仮にも生徒会長でしょう?」  
「う…うん」  
ニアは体を乗り出して、シモンに問い詰める。  
「ならば学園の規則に従って、ちゃんとした制服を着て下さい!」  
「…でも俺は」  
シモンにはそのコートを着続けている理由があったのだ。  
その理由を呟くように口にした。  
 
「俺、普通の格好だとパッとしないっていうか…生徒会長として、学園の中心として目立たなくて…」  
コートには何かの力があるのか、不思議と自信を与えてくれる。そんな感じがしていた。  
「シモン…、あなたはあなたです。そんなのが無くてもあなたは皆の頼れる人です」  
「ニア…」  
「シモン、自信を持って?シモンは何の力を借りなくとも、この学園の生徒会長なのでしょう?」  
ニアの論するような言葉に気持ちが動いたのか、何かが吹っ切れたような気がした。  
「ニアっ…!」  
「ちゃんとした制服を着ないというのなら、シモンと…わ、別れますっ!」  
「分かったよニア!俺ちゃんと制服を着るよ!」  
カミナも予想外の即答。  
「オイオイ!ちょっとm  
「アニキさんは黙りなさい!シモン、じゃあお弁当にしましょう、ね?」  
 
 
らしくない様子でトボトボと廊下を歩くカミナ。  
何を言われたのか、何が起こったのだか納得がいかないようだ。  
「…バッカみたい。なーにニアにボロクソに言われてんだか」  
「ヨーコ。…でもなぁ!兄弟があんなすんなり大グレン団の証を脱ぎ捨てるっつーのは!!」  
言葉が続くのも無視して、ガツンと歯をぶつけるようにヨーコ自身から口付けをした。  
「痛っ…て!な、何すっ…」  
「あんたはまだそのコート着てなさいよ。その格好ならいっ…色々する時便利でしょう!?」  
「ヨーコ…、ああ!」  
 
昼休みが終わっても、二人が次の授業に戻って来る事は無かった。  
 
 

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