「随分長い間、連絡をくれませんでしたね」  
照明を落とした薄暗い部屋、久方ぶりの口付けを交わした後にニアは言った。  
拗ねたように見上げる視線を受けて、救国の英雄は申し訳なさに表情を曇らせた。  
「ごめん」  
「……いいです。来てくれるって信じてましたから」  
「からかったな」  
「それくらいは許されると思います」  
いたずらっぽく笑うその表情は、シモンが最後に見たときと些かも変わらない少女のものだった。  
(でも面立ちは、少し大人っぽくなったかな)  
いや、顔だけではない。身長も伸びたし、ふわふわと美しい巻き毛も更に豊かになった。  
率直にいえば、綺麗になった。  
剣士――シモンは、数年前、毎日共に過ごしたころのニア姫の姿を思い返す。  
 
 
シモンの父は代々森番の任を仰せつかる寡黙な男であり、母は城に勤める女中だった。  
城と森を行き来して遊んでいた少年時代、貴人には最も縁遠い場所――厨房でシモンとニア姫は出会った。  
ニアは子供の頃から少し変わった姫君だった。  
シモンが敬語を使うのを嫌がり、せめて二人で遊ぶときは姫と呼ぶのをやめろと言う。  
料理に興味を示して召使たちを困惑させ、シモンが森の話を聞かせてやれば好奇心に目を輝かせる。  
必死の願いに王が根負けし、シモンを案内役につけることを条件に森遊びを許したのが、シモン10歳、ニア6歳のときだ。  
毎日毎日、実の兄妹のように日が暮れるまで遊んだ。移ろう季節の恵みを享受し、花を摘み、魚を採り、木に登って。  
 
(そう、そして、あの森で)  
 
 
「シモン?」  
ニアの声でシモンは回想から呼び戻される。  
ニアはしばし不思議そうに目を瞬かせたが、次に何かを理解したように笑みを浮かべた。  
心の内を見透かしたような微笑に、シモンの胸はどきりと高鳴る。  
「シモン、昔のことを思い出してたんでしょう」  
「な、なんのことかな」  
「もう、しらばっくれるつもりですね?」  
じとりと睨んだのも一瞬、ニアはすぐに笑顔に戻る。ほのかに頬を赤く染めて。  
「なら、思い出させてあげます」  
言うが早いかニアの指は自身のマントに掛かり、するりとそれを絨毯に落とした。  
地に落ちたそれを見、シモンはニアが何をするつもりなのかを悟る。  
視線をニアに戻したときには、すでにドレスの胸元に細い指が掛かり、ゆっくりとはだけられていた。  
しどけない胸元からちらちらと覗く白い肌は、これから始まる甘い時間への期待からかほんのりと汗ばみ上気している。  
まろやかな二つの膨らみの間には、ささやかながら谷間が見えた。  
昔、毎日のように求め合っていた頃にはまだそんなものはなかった。  
あの頃はようやく先端が膨らみ始めたばかりといった乳房で、しかし数年前のシモンはその童女のような幼い胸に  
夢中で吸い付いていたのであるが。  
 
シモンの見つめる視線の先、ニアは羞恥に頬を染めながら、それでもためらうことなくドレスを脱ぎ捨てていく。  
頭を飾るティアラも、宝飾具も、靴も。  
夜の闇の中、ニアの白い肌が浮かび上がるように晒されていく様を、シモンは片時も目を離さずに見つめた。  
この国で一番高貴な女性が自ら肌を晒し、世継の姫君からただの女となってシモンに身体を蹂躙されたがっている。  
そう考えるだけでシモンの呼吸は小さく乱れ、下腹部に熱い滾りが押し寄せた。  
 
程なくして、シモンの目の前に一糸纏わぬ少女の裸体が晒された。  
柔らかく膨らんだニアの白い乳房は、乱れた呼吸に合わせて小さく上下し震えた。先端の小さな可愛らしい突起は  
昔と変わらない綺麗な薄桃色だった。何度も強く舐られたことがあるというのに、まるでまだ男を知らない生娘のような乳房だ。  
魅惑的な二つの膨らみから、美しい曲線を描く腹、腰……そしてシモンだけが触れることを許された秘密の場所。  
ゆっくりと舐めるように視線が下るのを感じたのか、ニアの肌の赤みが更に増す。恥ずかしくてたまらないのだろうに、  
ニアは決して身体を覆い隠そうとしなかった。従順な愛玩犬のように、あるいは子猫のように、ただシモンの愛撫を待っている。  
 
すでにぴりぴりと尖り始めている乳首を戯れに親指で押しつぶすように擦ってやると、  
ニアは身体をぴくんと震わせ恥ずかしげに顔を伏せた。  
「ん……っ」  
指をこね回すようにぐりぐりと桃色の先端をいじめ、そのまま乳房を掴み荒々しく揉むと、むずがるような  
甘い声があがる。薄く開かれた唇が艶かしい。  
しばしたわわな感触を愉しんだ後、空いた手で裸の腰を抱き寄せすべらかな尻を撫でると背に回された手にきゅう、と力が篭った。  
しっとりと瑞々しい肌は吸い付くようで、ニアの身体のどこもかしこもシモンの愛撫を待ち望んでいたのではないかとすら思えた。  
いや、実際待ち望んでいたのだ。すべての愛撫は乱暴とすらいえる性急な動きだったが、ニアは文句も言わずに  
シモンの腕の中でただ小さく震えている。  
甘い吐息を漏らす唇からちろちろと見える、ピンク色の口内の感触を思い出し、たまらずシモンは再度ニアの唇に食らいついた。  
先ほどの甘い口付けとは違う、貪るようなキス。強引に唇を割り舌を侵入させると、すぐにニアも応える。  
紅潮した丸い頬を優しく擽ると「もっとして」とでも言いたげに白い喉が鳴った。  
その様が可愛くて、腕の中の肢体を更に強く抱きしめ、角度を変えて何度も柔らかな唇を貪る。裸の乳房がシモンの胸に当たり、  
身体の動きに合わせてむにゅむにゅと形を変える。自分もさっさと服を脱げばよかった、とシモンはひどく後悔した。  
肌に直に感じるニアの乳房はどんなに心地よかったことだろう。  
 
 
キスの合間に無言で見つめあい、またすぐに口付けを交わす。柔らかな尻を撫で回して感触を愉しんだ手は  
そのまま双丘の割れ目を伝い、細く引き締まった腿の付け根の陰へとそろそろと指を伸ばした。  
内股の柔肉を押し開くように指先が蠢き、掻き分けた更にその奥へと無遠慮に侵入する。  
ニアの口から細い悲鳴があがったが、シモンはそれを無視した。  
すでに熱く潤んだそこは、侵入者を待ちかねていたかのように容易く受け入れた。くちゅくちゅと浅く女の口への  
指の出し入れを繰り返し、溢れる蜜を秘肉に塗すようにして愛撫する。  
 
「ここも全然変わってないな。すごく柔らかい」  
「やっ……、シモンのいじわる……」  
小さく笑いながらシモンが撫でたのはニアの恥丘だった。ふにふにとした柔らかい感触は、やはり数年前のそれと  
全く変わっていない。  
年頃の女性であれば普通はあるのであろう、割れ目を覆い隠す茂みの感触が殆ど無かった。  
蜜に塗れた指先でしばしぷにぷにと撫で擦り感触を愉しんだ後、シモンの指先は割れ目の先端を押し開く。  
そして、小さなピンクの肉の粒を指の腹で優しく撫でた。  
「ひゃっ!」  
唇を解放され額や瞼にシモンからのキスの雨を受けていたニアは、シモンの背にしがみ付いて濡れた悲鳴をあげた。  
既に先ほどからの秘所への愛撫で腰からは力が抜け、シモンが身体を抱いていてやらないとそのまま崩れ落ちてしまいそうだった。  
ニア自身もそれを理解しているのか、瞳を潤ませ顔を真っ赤にしながら、それでも必死にシモンの背にしがみ付いている。  
「ニア、すごいよここ。もうこんなだ」  
「あぁっ……だめ、ぇ、んあぁ……」  
耳まで赤く染まり、ニアはシモンの手の動きを阻もうとするかのようにむずむずと内股を擦り合わせる。  
が、汗ばんだ柔らかな太ももに指先を挟まれたくらいでは動きは止まりようもなかった。  
愛液を塗すように愛らしい突起をくにゅくにゅといじめ、膣内をかきまわして新たな蜜を溢れさせる。  
熱く潤んだ襞は二本に増やされた指も難なく受けいれ、「もっと」といわんばかりにすぼまって更に侵入者を深く呑みこもうとさえした。  
 
(ニア、綺麗だな)  
声には出さずに、シモンは心の中でこっそり呟いた。  
シモンにだけにしか見せない性の快楽に濡れた瞳、紅潮した頬、とめどなく嬌声をあげる唇。美しい髪はシモンの腕の中で  
悶えるたびに乱れ、汗ばんだ白い肌に張り付く。小さく引き締まった尻から脚のラインは彫像のように清らかで美しくあるのに、  
その内股は雌の悦びの涎によってだらしなく汚れている。  
目の前の姫をそうさせているのが紛れもない自分ただ一人だけなのだという事実は、普段表には出さない  
シモンの男としての支配欲、征服欲を大いに刺激した。  
「あっ、ああっ! シモ、ンっ……だめ、ぇっ……!」  
抱きすくめた腕の中、耐え切れず身悶えるニアを更に高めるようにシモンはか細い首筋に舌を這わせ、そのままそれは  
顎から頬のラインを伝って耳朶を熱く濡らした。一瞬逃げるように引こうとしたニアが、それに耐えて  
うっとりしたような表情を見せて受け入れると、シモンはご褒美だとでもいうようにニアの唇を吸った。  
 
唇に熱い舌を受け入れ、乳房をこね回され、秘所に硬い男の指二本の愛撫を与えられてニアの脚にはほとんど力が残っていなかった。  
膝がかくんと崩れそうになるたびに、シモンの腕が腰を支えてそれを阻止する。  
シモンの腕の中でほとんど無力となっていたニアの手が不意に胸板を這い、シモンは目を瞬かせた。  
愛撫に震える華奢な指先で、それでも少女は確かな手つきでシモンのシャツのボタンを一つ、また一つとはずしていく。  
そして胸元をはだけると、シャツの隙間から白魚のような手がそろそろと入り込んだ。  
シモンの鼓動と温もりを確かめるように暫しゆっくりと肌を撫でた指先は、やがてシモンと同じように先端の突起を探り当てて  
そこを優しく撫で擦った。  
自分ばかりしてもらって、悪いとでも思ったのだろうか。少女の健気な想いに触れたようで、シモンの口に笑みが浮かんだ。  
どうやらそれを苦笑ととったのか、ニアは赤い顔を更に赤くして恥らった。  
「ご、ごめんなさい。気持ちよくしたかったんだけど、よくわからなくて」  
「いや、気持ちいいよ。でも」  
シモンはニアの耳元で熱っぽく囁いた。  
「ニアは、俺のことをもっと気持ちよくできる方法を知ってるよな」  
「あ……」  
ニアの視線は宙をさまよい、シモンの顔を窺うように一瞬見て、そして既に硬くそそり立っているそこへとたどり着いた。  
暫しの逡巡の後、ニアの手はズボン越しにそれを恐る恐る撫で擦る。指先がベルトに掛かりぎこちない手つきでそれを  
取り外し始めると、シモンは愛撫の手を止めてゆっくりと豪奢なベッドに腰掛けた。  
 
シモンの前に跪いたニアの指がズボンの合わせを外すと、そこから赤黒くそそり立った肉棒が現れる。  
思えば奇妙な光景だ、とシモンは思った。  
本来であればニアしか使うことの許されないベッドに腰掛けて、この部屋の主であるニアを見下ろしている。  
シモンの前にかしずいたニアは、姫としての彼女を証明するもの一切を脱ぎ捨ててシモンを見上げる。  
「ニア、早く」  
「は、はい」  
急かすように腰を浮かしてみせると、ニアは慌てて――しかし注意深い手つきでシモンの幹に指を這わせた。  
 
ニアにこの行為をさせるのは初めてではない。子を成すための最低限の性知識しか持たなかった彼女に、ただ愛し合うためだけの  
性行為を教えたのはシモンだった。それは互いに手探りな中での行為ではあったが、シモンにとっては未だ輝きを失わない甘美な記憶だ。  
妹のように近くにありながら、一生手の届かない存在だったはずの少女を、秘密裏に自分だけのものにできたのだから。  
 
肉幹を下から上へゆっくりと擦り、先走りの汁を塗すように亀頭を指の腹で撫でる。  
懸命な奉仕の様が可愛くて、跪いた少女の頭を優しく撫でてやるとそれを合図にしたかのように小さな赤い舌が  
遠慮がちに幹の根元へと触れた。  
「ん……」  
シモンの脚の付け根へ沈んだ頭が小さな動きを繰り返し、懸命な奉仕を続けた。柔らかなニアの前髪が  
シモンの下腹部を擽ったが、それすらも性感へと変わる。  
小さく温かい手は睾丸を包み込んで優しく揉む。しばし根元をちるちると舐めていた舌は、  
そのまま上を目指すのかと思いきや逆に下へ――ニアの手に包まれた睾丸へと向かった。  
「んっ……ふぁ、んぅ……」  
唾液を塗すように皮膚を這った後、小さな口一杯にニアはそれを口に含んだ。歯を立てないように注意しているのか  
酷く慎重な奉仕だったが、それがかえって興奮をそそる。  
口の中で玉を転がすように舌で包み込み、時折小さくキスするように啄ばんだ。口での奉仕の合間にシモンのズボンを  
更に脱がせ、脚の付け根を優しく撫でる。  
唾液と先走りの汁で濡れたピンク色の唇は、今度こそ上を目指して這った。根元から肉幹の中ほどへ、  
一気に亀頭までを攻めずに丹念にシモンを攻め立てる。アイスキャンディーを舐めるように、あるいはミルクを舐める猫のように。  
少女に焦らされているようで、彼女の頭に添えた手に力が篭る。が、それもまた愉しいものだった。  
愛撫の合間に時折、ニアは潤んだ瞳でシモンを見上げた。  
シモンの様子が気になるのだろうが、陰茎に柔らかな唇を寄せた可憐な少女の上目遣いが、どれだけ男の被虐心をそそるのかを  
彼女は理解していないに違いなかった。先走りの汁が新たに溢れ、ニアの唇から顎、幹と陰茎に添えられた指を汚していく。  
ニアはそれすらも愛しげに、拭うように何度も何度も舐め上げた。  
 
濡れた舌はついに亀頭へとたどり着き、愛撫を待ちわびて充血したそれをまずぺろぺろと可愛がるように舐めた。  
「んっ、ん……」  
唾液と舐めるたびに溢れる汁ですっかりそこが濡れると、ニアは一度シモンの楔から唇を離して、  
暫し口の中で唾液を溜めた。  
そして再度唇を寄せ、今度は大きく口を開いて亀頭を呑みこむ。  
「……っ!」  
思わずシモンの腰が浮くほどの気持ちよさだった。  
口の中に溜めた温かい唾液を絡めて包み込むように、ニアの舌はシモンの先端を何度も愛撫する。  
そして唾液を潤滑油にして、先ほどまでの慎重な動きが嘘のように強く肉棒を啜りしごき始めた。  
「んっ、んっ、ふぅ……ん、んぅ……」  
股間に埋められた頭が奉仕の動きに合わせて揺れ、汗ばんだニアの頬に青白く輝く金の髪が張り付いて乱れる。  
じゅぶじゅぶと音をたて、夢中で肉棒を吸い上げるニアの動きには、もう少しのためらいも感じられなかった。  
姫君の美しい唇が怒張の根元までを飲み込み、美しい鼻筋がシモンの黒い茂みに埋もれるのを見、  
ついに限界は訪れた。  
「―――っ!」  
声にならない声はシモンのものだったのか、はたまたニアのものだったのか。  
睾丸がぐ、とせり上がり、熱く滾った身体の奥からシモンは全てを迸らせた。青臭い精液が  
ニアの喉の奥に叩き付けれられ、口内に溢れる。  
シモンが最後の一滴までをニアの口に放ち終わると、ニアの唇は白い糸を引いて離れる。  
精液と先走りと唾液でべとべとに汚れた少女は、跪いたままシモンを見上げた。  
見下ろすシモンの視線が何を期待しているのか、ニアにはわかっているはずだった。苦しげに眉根を寄せ、  
それでも少女は健気に応えるように口内の液を飲み下した。  
白い喉が震え、ニアが小さく咳き込む姿を熱の篭った視線でシモンはただ見つめた。  
 
なんて、いやらしいんだろう。  
 
行為自体は確かにシモンが教えたものだ。しかし行為によるものだけではなく、ニアには  
シモンの雄の本能をかきたてる何かがある。  
日常に見せる清楚な佇まいをそのままに淫婦になれるのがこの少女だった。  
シモンの愛を求めて奉仕をするが、そこに媚はない。行為とは裏腹にただひたすらに純粋な少女のままであるがゆえに、  
シモンの愛情、保護欲、征服欲、被虐心、すべてを刺激して捕らえるのだ。  
 
「ニア、おいで」  
急く心をついに抑えきれず、シモンは囁いた。絨毯に半ば崩れ落ちていたニアは、シモンの言葉に顔を上げると  
ゆっくりと身体を起こした。もはや恥ずかしさに震えることもなく、美しい裸身をシモンの眼前に晒して佇む。  
シモンも腰をあげると、中途半端に身体に残っていた衣服を脱ぎ捨てた。  
豪奢な天蓋の中、剣士と姫は一糸纏わぬ姿で温もりを確かめ合うように抱き合う。  
ニアの小さな顎を掴み、指で唇を軽く拭うとシモンは軽く口付けを落とした。先ほどまでの口淫を思い出したのか  
ニアが恥じらって顔を背けると、シモンは顎を引き寄せて再度口付ける。  
暗い部屋にしばらくの間くちゅくちゅとただ舌の絡みあう音が響き、やがて求め合う身体はそのままベッドの上へと倒れこんだ。  
 
 
「あ……やだ、シモン」  
「なに?」  
「だって……」  
恥ずかしい、と続けようとした言葉は濡れた悲鳴に変わった。シモンが前触れなく内腿を撫で、  
そのまま秘肉の割れ目をくいと押し広げたからだ。  
 
身体が沈むような柔らかいベッドの上で、ニアは獣のように四つんばいの体勢をとらされていた。  
突き出された小さく引き締まった尻をさわさわと撫でて、シモンは姫君の痴態を愉しんだ。  
重力に従って垂れる乳房は、もがれるのを待っている瑞々しい果実のようだった。  
白くすべらかな背には汗がじんわりと滲み、折れそうな細い腰は女性的なラインを描いて尻へと続く。  
惜しいのは、恥ずかしがるニアの表情がこちらからだとよく見えないところだろうか。  
 
シモンへの奉仕でニア自身も興奮していたのだろう、女の園は乾くことなく――むしろ一層の潤みを湛えて  
シモンを待っている。少し指先で押し広げてやっただけで、愛液がとろりと溢れて細い脚を伝って落ちた。  
「本当に感じやすいんだな。なんだかお漏らしみたいだ」  
「なっ……ひゃっ!」  
意地悪な言葉への抗議は、再度細い悲鳴へと変わった。すっかり硬度を取り戻したシモンの怒張が、  
赤い割れ目をぬるりと擦り上げたのだ。  
「シモンの意地悪……あっ」  
硬い男の手が細い腰をがっちりと支えると、今度こそ濡れたほの暗い入り口へと楔があてがわれた。  
そして一瞬の間のあと、体重をかけてゆっくりとシモンはニアの膣内を侵していった。  
「あああああっ!」  
久方ぶりの感覚に、ニアは背を仰け反らせて叫んだ。乱れる髪は明かりの乏しい寝室の中でも煌めき、  
ニアの美しさを際立たせる。  
根元まで難なくシモンを飲み込んだニアの膣内は、熱く襞が蠢いて肉棒に絡みつく。  
初めての頃と変わりない締め付けに腰が抜けそうな快感を与えられながらも、シモンはゆっくりと腰を引き、  
そして再度ニアの中へ沈めた。それをゆっくりと何度も繰り返す。  
「ああっ、あ、ああぁん……シモ、ン……っ!」  
じっくりと快感を高められるのに耐え切れなくなったのか、四つんばいになっていたニアの腕からは力が抜け、  
上半身はすっかりベッドに沈んでしまっていた。  
結果可愛らしい尻が一層シモンに向けて突き出される形となったが、もはやそんなことにまで気が回らないのだろう。  
張りのある小尻を掴むと、シモンは段々と動きを激しいものへと変えていく。ニアの尻、腿にシモンの肌が  
動くたびにぶつかり、いやらしくも小気味よい音がベッドに響いた。  
動くたびにシモンの汗がニアの身体に落ち、ニアの愛液は脚を伝ってシーツを汚す。  
ぐちゅぐちゅに蕩けた膣は、早く子種を吐き出させようと陰茎に絡み付いて絞り上げた。  
それに「まだだ」と抵抗するかのように、シモンは不意にニアの上半身を起こして、自分の胸の中へと抱き寄せた。  
「ひゃああっ……!」  
前触れなく体位を替えられて、ニアはシモンの腕の中で身悶えた。仰け反る首筋には早くも熱っぽくシモンの舌が這い、  
突き上げられるたびに上下に揺れる乳房の先端は武骨な指先で捻りあげられた。もう一方の手は、  
出し入れを繰り返される淫口の上部、快感にすっかり膨らんだ赤い肉の粒をくりくりと弄ぶ。  
身体中に快感を与えられ、膣がきゅうきゅうと窄まり収縮をくりかえす。ニアの限界が近い、とシモンは思った。  
が、ニアは必死に頭を廻らせて、攻め立てるシモンに囁いた。  
「シモ、ン……、私っ、このままイクのはやだ……」  
「ん……?」  
「普通のが、いいのっ……普通に、抱きしめて……ね?」  
 
正常位のことか。  
理解したシモンはニアの身体を軽々と持ち上げると自身を引き抜いた。  
少女の身体を優しくベッドに横たえキスを一つ落とすと、両脚を開かせて再び熱く潤んだ膣内へと身体を沈めた。  
ニアの耳元に顔を寄せて、乱れた呼吸で問う。  
「これでいいか?」  
「うん……うんっ、これが、いいの……好き、シモン」  
シモンの背に手を回し、ほとんどうわ言のようにニアは答えた。その様はかえってシモンの心を燃え上がらせ、  
汗に塗れた二つの身体は互いを求めて一層深く絡み合った。  
 
言葉もなく、シモンはただニアを求めて身体を動かす。幼い頃から愛する、宝物のような娘。  
本来であれば指先一本も触れられるはずもない、遥か高嶺に咲くはずの可憐な花。  
 
違う。  
俺のものだ。子供のころからずっと。  
ニアは、俺だけの女だ。  
 
ニアの手を引いて、二人で逃げる覚悟なんてとうの昔にできている。  
ニアさえ望んでくれれば。ニアさえ、「私を連れて逃げて」と言ってくれれば。  
世界の果てまでだって、ニアを守りきって逃げるのに。  
 
 
「ニア……ニアっ!」  
ありったけの想いをこめて、細い身体を抱きしめる。限界を迎えた楔がニアの身体の最奥を突き、  
そして二人は同時に絶頂を迎えた。  
「――っ!」  
「あああっ!  
白濁の液がニアの胎内を余さず満たした。孕めばいい、とすらシモンは思った。  
ニアを連れて逃げる、いいきっかけになるだろう。  
 
 
 
情事後の気だるく、しかし満たされた時間。  
シモンの腕を枕に、柔らかく寄り添うニアが愛しかった。あまり長居はできないのがつくづく名残惜しい。  
明け方を迎える前には去らないと、他の召使達が起きてしまう。  
「シモン」  
「……ん?」  
不意にかけられた言葉に、ニアを見つめる。こちらを覗きこむニアの瞳は、心なしか濡れているように見えた。  
「また旅に出るんでしょう?」  
「……さあ、王次第だけどな」  
シモンが各地を旅していたのは、元々王の密名を受けてのことだった。今回の事件の混乱が収まった後、  
新たな任が下されるかどうかはわからない。  
 
「私、半年でも、一年でも。五年だろうと十年だろうと。寂しくても、我慢しますから。  
あなたの帰りをいい子で待ってますから。だから」  
「……」  
「だから、絶対に私のところに帰ってきてくださいね」  
 
濡れた瞳からついに涙をこぼして、ニアはシモンの胸に顔を埋めた。  
シモンは苦笑して、ニアの頭を撫でた。シモンが言って欲しい台詞とは少し違ったが、今はこれでいいと思った。  
「どこにいたって、毎日ニアを想うよ。絶対に帰ってくる」  
安心させるように告げた言葉にニアは頬を赤く染め、しばしためらった後に小さく呟いた。  
「……私が側にいないからって、浮気したらダメですよ?」  
「へ?」  
予想外の言葉に目を丸くして、シモンはニアを見つめ返した。自分で恥ずかしくなったのか、ニアは情事のときのように  
頬を赤く染めてシモンをもじもじと見つめている。  
「そんなこと心配してたのか?」  
呆れたような返答に、ニアは更に顔を赤くして言った。  
「だ、だって、シモンがすごく素敵になってたから」  
 
心配になったんです、と殆ど聞き取れない声でニアは呟いた。  
ひょっとして今夜やたらと積極的だったのは、せめてこの行為でシモンの関心を繋ぎとめておこうとしたのだろうか。  
シモンの口元に笑みが浮かんだ。にやける口元と緩む頬がどうにも抑えきれなかった。  
可愛い。嬉しい。抱きしめたい。  
「俺がそんなに器用に見えるか?」  
「……そうですね」  
安心したように笑うニアを見て、シモンも笑った。シモンの不器用さは誰よりも彼女が一番よく知っている。  
笑いあった後、どちらともなく自然と唇が重なった。  
 
熱を取り戻した身体が再び絡み合い始めるのに、さほど時間はかからなかった。  
 
 
 
 
 
余談ではあるが。  
 
二回戦、三回戦を済ませて大いに満足した救国の英雄は、すっかり気が抜けていたのか  
朝までニア姫と共寝をしていた現場を侍女ツーマに発見された。  
ツーマはことを荒立てるつもりはなかったが結局この事実は露見することとなり、  
シモンは救国の英雄となったことと――そして程なくニア姫の懐妊が判明したことにより、  
めでたく任を解かれて姫君の夫君として迎えられることとなった。  
 
ちなみにこの件に絡んで騎士ヴィラルの胃痛が再発、体重は五キロ減したという。  
 
 
 
 
……めでたしめでたし?  

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