カシャン  
「あっ」  
ライフルが足元に落ちた。  
(やっぱりまだ心に穴が空いたままだよ…)  
 
カミナが死んでから、まだ精神面で立ち直れていない。  
「皆の前では平気なんだけどな」  
呟きまた、ライフルを磨く作業に戻る。  
(あいつが写った写真とか…カタチに残るものなんてないわよね…)  
もういない人の事を思い出しては、寂しさだけが募るばかり。  
「シモン…は持ってたりしてないわよね」  
 
 
思いついたらすぐ行動。  
「シモン、シーモーン」  
そこはシモンの自室前。ノックしても気配もなく、誰もいないようだ。  
ノブを回してみると、鍵を閉め忘れたせいか開いてしまった。  
「…まいっか。ちょっとお邪魔するわよー…」  
 
不法侵入っぽい事をやってる後ろめたさがあるのか、暗闇の中ひたすらヨーコはカミナの生きた証を探す。  
それが例えつまらない小道具でも身につけていたものでも、何でも良かった。  
「んー、無い、何もないじゃないの。…ん?」  
部屋の奥、何かを隠すかのようにカーテンが遮っていた。  
 
そっと開けた途端、目の前に飛び込んできたのは何者かの影だった。  
「ひっ!!?」  
よく見ると、それは人型の彫り物。  
「……?カ…カミナ!??」  
薄暗い部屋の中には沢山のカミナの彫り物が並べられている。  
「…これ全部シモンが?…まさか!こないだまで部屋に篭ってた時コレをずっと…」  
悪いと思いつつも想像すると何だか不気味で、ヨーコは思わずぷっと吹き出してしまう。  
「本当、バカなんだから。あの子も私も……」  
カチャっ  
ドアを開ける音。どうやらシモンが帰ってきたようだった。  
(まずっ…!!)  
カーテンの裏に身を潜めたまま、物を探していた手を止めた。  
(…べ、別に隠れる必要無…いや、ある!いくらシモンでも勝手に部屋入って失礼じゃないの!!)  
時刻は夕方。もうすぐすれば夕飯の時間。  
その時が来ればシモンもまた部屋を空け、その隙に逃げ出せるだろう。  
(隠れよ…)  
 
 
「…っ」  
気付いたらヨーコはそのまま、身を丸くして寝てしまったようだ。  
(ひっ!!?)  
うっすら目を開けた途端に飛び込んできたものは、カミナの彫り物だった。  
(あ…そっか。ここ…シモンの部屋…)  
状況が徐々につかめ、シモンがまだいるかどうかそっとカーテンの先を覗いて見る。  
「……、…」  
(…?)  
荒い息遣いがする暗闇の中、その姿がヨーコの目に飛び込んだ。  
「ア…、っニアぁ…」  
壁に寄りかかり、足はビクンビクンと痙攣させ、右手は何かを掴み激しく上下に動かしているシモンの姿だった。  
(っ…!!シ…シモン…!!?)  
「ハァ……ンッ…、ニア…ニアっ…」  
青少年らしい行為とでもいうのだろうか。すぐに自慰行為だと分かった。  
(ちょっ……!何やってんのよっ…!!)  
いけないいけないと思いつつ、はシモンのそこ、ナニに視線がいってしまった。  
(っ…!!)  
ヨーコの想像とは違う、雄々しいモノの先端からは精液がジュポジュポと溢れ出していた。  
(な、何、結構大きいの…!?…だって、シモン何才…って、そうじゃなくって!!)  
「……イクっ…ニア…、ふぁ…っ…」  
押し殺すような声がまた、いやらしさを倍増させていた。  
(あれじゃあ私のトコだって…)  
「う…アッ…」  
(シモ…ン…)  
無意識なのかは分からない。だが手は下着をまさぐり、中指を暗闇の奥に潜ませ動かせた。  
 
 
 
トントン  
(…誰か来た)  
ベッドの上、ヨーコは自室のベッドの上で天井を仰ぎ、ただ寝そべるだけだった。  
トントン  
「ヨーコ?…俺、シモンだけど」  
「!!!」  
慌てふためき、ドアの鍵を開けた。  
目の前にはさっきまでとは全然違う、いつものシモンが立っていた。  
「シモ…ン…?」  
「寝てた?ごめん。体調悪いのかなって思って」  
シモンの手にはお粥を乗せたトレーがあった。  
「…?」  
「あ、ヨーコの分。ご飯の時間に来ないからさ。きっと調子が悪いと思って」  
「これ…シモンが…?」  
「あは、違うよ。作ったのは俺じゃないけどさ」  
まさか心配されているとは思わなかった。  
そしていつものシモンの笑顔に安心したのか、たまらなく嬉しくなった。  
「ありがと。でも大丈夫。ちょっと横になったらもう元気!」  
「本当?良かった!俺も皆心配してたからさ」  
「…ありがとね。いただくわ」  
ニアの作ったお粥を受け取り、ヨーコもシモンにそっと笑顔を返した。  
 

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