シモンは黒ニア捕獲に成功し、ある部屋で半ば幽閉状態としていた。
ニアを閉じ込めておくのは気が引けるが、またニアが自分の元から消え、
手の届かない所へ消えてしまう事を考えるといてもたってもいられない気持ちになってしまう。
しかし黒ニアの様子を見るために頻繁に部屋に訪れ密室に二人きりでいるうちに
辛抱堪らなくなったシモンはある日強引に黒ニアの操を奪ってしまう。
始めは姿だけニアのもので、中身は何者かによって操られているのかと思っていたが、
──そうではない、確かにニアがその中に存在するんだ──と感じ取ったシモンは、
久しぶりに触れた愛する者の気配に自分を抑え切れなくなってしまったのだ。
最初はシモンから逃れようとした黒ニアだが、少しずつシモンに身を委ねるようになって行く。
黒ニアの元にいつものようにシモンがひょっこり訪れると
「また来たのですか…」とに黒ニアは感情を見せずに言い、
「素直じゃないな、俺の事待ってたくせに」とシモンは不適に笑う。
「…あなたを待ってなどいません」と眉根を寄せ言う黒ニア。僅かに頬が赤らみ、焦りが見え隠れする。
シモンはそんな黒ニアの様子が堪らない。
「…ヤバいな。…その表情──癖になりそうだ」そう呟くと黒ニアに唇を重ね合わせる。
既に毎度の事となっていた行為だが、不意を突かれた黒ニアは一瞬驚き、身を退こうとする。
が、シモンに力強く捕らえられ離れられない。
何度と角度を変えながら深まっていく口付けの合間に、
「…やめ…なさい…。私と…あなたは…相容れる事はできな…」と息も絶え絶えに訴える黒ニア。
心なしか目尻に涙が浮かび、その表情からは切なさが見え隠れしている。
そんな黒ニアから顔を少しだけ離し、真っすぐ見据えるシモン。
「本当に嫌なら俺の事をちゃんと突き放せ」と、熱の籠もった真摯な声で言うと、暫くして
「……私…からは…できません…」と視線を真っ直ぐ合わせたまま、苦しげな面持ちで黒ニアが答えた。
それを合図にシモンは黒ニアをその場に押し倒した。
「ニア、どんなお前も、お前はお前だ。ニアに変わりはない。…俺はお前が好きだ」
黒ニアの耳元に囁くと、驚いたように目を見開き…。
きつく釣り上がった目が一瞬にして柔らかくなったかと思うとよく見知った顔が現われる。
だがそれは、すぐに悲しげに歪んだ。
「…私の事……嫌いではないの…ですか…?…」
「俺がニアを嫌うはずないだろ…俺はお前の事は絶対に嫌えない…──じゃなくて、」
シモンは1番肝心な事を伝えてない自分に気づいた。
「──愛している、ニア」
「…………嬉し…い…、…シモン…」
ニアの大きな瞳から大粒の涙を零しながらも満面の笑みを作って見せた。
押し寄せてくる想いのままに、シモンは黙ってニアをきつく抱きしめた。そして…
ロージェノムとすしおは梅昆布茶を啜っている。