「シモン、やっぱりここにいた」  
星空をバックに、ニアが顔をひょこっと出した。グレンラガンの操縦席にいたシモンは慌てて  
起き上がった。執務室には未決済の書類が山積みで、こんなふうに星空を眺めている時間  
なんて、ほんとうはないのだ。  
「ニア、その、すぐ戻るから。だからもう少しだけ……」  
「だいじょうぶ。シモンががんばってること、みんな知ってるもの。ロシウも、たまーに、すこーしだ  
けならいいって、そう言ってたわ」  
ロシウのくだりでニアは眉間にしわを寄せ、そのあとすぐにぱぁっと笑う。シモンは苦笑しつつも、  
その笑顔に気持ちが軽くなっていくのを感じた。  
実際シモン以上にロシウはよく働いていて、新政府が政府としてこれまでなんとか機能してきて  
いるのは彼あってこそだとシモンは考えている。だからこそ、いまみたいにこっそりと息抜きをし  
ている自分を少し後ろめたく思うのだ。デスクワークが性に合わないというのではない。ただ、ひ  
たすら書類にサインをしつづけるだけの日々は、時折シモンに漠然とした不安を抱かせた。  
これがオレがほんとうになすべきことなのか、と。  
 
「わたしもそっちにいっていい?」  
いいよという代わりに、シモンは手を差し伸べた。ニアはその手を頼りに、以前何度かそうしたよ  
うに、シモンのひざの上にすとんと座る。二人が成長した分だけコックピット内は狭くなっている。  
シモンはそっと肩を抱き寄せると、ニアに口付けた。  
「さすがに狭いね」  
「うん。でも、ちょうどいい」  
シモンの手にそっと自分の手を重ねて、ニアは目を閉じた。  
「なにか用だった?」  
「え?」  
「探してたんだろ、オレのこと」  
「うん……なんだか急にシモンの顔が見たくなったの。迷惑だった?」  
シモンはニアをぎゅうっと抱きしめて、強く強くキスをした。何度も、何度も。  
「…あ、はぁ……ん、シモン………」  
舌で口内をかき回しながら、耳たぶをいじると、ニアは子猫のようにきゅぅと鳴く。幾度もキスを重  
ねて、シモンはそう知った。  
 
「ここがシモンのおしべで」  
細い柔らかな腕が、シモンの胸から腰へ、そしてその下へ伸びていった。  
「この奥にわたしのめしべ」  
ニアは、もう片方の手でシモンの腕をとり、自分の下腹部へ導いた。ニアも緊張しているのか、笑  
顔が少しぎこちない。あまりに急な展開に、シモンは口をパクパクさせた。  
恥ずかしそうに瞳を伏せながら、ニアは言った。  
「シモンのここ、すごく熱い」  
「いっ、いや、それは……だって、仕方ないだろ!?」  
「……女は男を悦ばせる。それが、女が存在する理由」  
「ニア?」  
「だからわたしはお父様に言ったの。ならばなぜわたしは生まれてきたのですか、と」  
言うやいなやニアは両手で顔を覆った。シモンは自分の軽率さを恥じた。  
早世したとはいえ両親がいて、アニキがいて、ヨーコもグレン団のみんなもいた自分。一方  
谷に捨てられた多くの姫たち、愛妾を選出するための女だけの村、王の周りにいた人形のような  
女たち―――そんな環境で育ったニア。"浮世離れしたお嬢さん"なんて、あまりに軽率で、浅慮  
だ。  
「ごめん、ニア。ごめん」  
 
シモンは強くニアを抱き寄せた。かすかに肩を震わせていたニアは、ゆっくりと深呼吸して、そし  
て顔を上げた。  
「シモン。シモンは、悪くない」  
そう言ってニアは首を傾げてにっこり微笑んだ。  
そうじゃないんだ、と否定の声を上げかけたシモンの口を、ニアは人差し指で優しく制した。その  
ままニアはなにか言いかけて、迷うように視線をさまよわせた。やがてニアが決心したかのように  
顔を上げたとき、シモンはある予感を手にしていた。  
「シモン、わたし……シモンがよろこんでくれるなら、してもいいと思うの」  
「それって、つまり」  
「ヒトは、子孫を残すためでなくても、するのでしょう?」  
「それはそうだけど…ッ、そうじゃなくて」  
がしっと両手でニアの肩を掴む。そういえばはっきり言ったことなんてなかったかもしれない。  
「オレは、ニアが好きだからッ!」  
 
「うん。わたしも、シモンがだぁーいすき」  
ニアが顔を近づけて、ちゅっとシモンにキスをした。脳天直撃。いまにもぶっ飛びそうな理性で、  
荒れ狂う本能を押さえつけながらシモンは考えた。  
このままここで…?いぃや狭いしッ!外?外はいくらなんでも。じゃあオレの部屋は?ちゃんと  
掃除してあったっけ?アレとアレは昨日仕舞った、アレはだいじょうぶ、見つからないさ、アイツ  
とアレは速攻で押し込んじゃえばいい。よっしゃぁッ!!  
内心ガッツポーズを決めていたシモンは気づかなかった。ニアの手が再び自分の下腹部へ伸  
びていることを。  
「いままで気づかなくてごめんなさい、シモン。あなた、ずぅっと我慢していたのね」  
 
 
 

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