「……あァ?」  
 ヴィラルが目を覚ましたとき、まずは太陽光が目を刺した。真昼間である。  
 とりあえずは日が暮れていないことに安堵した。早く帰らねば、と思う。  
 続いて不自然な感覚を感じる。――体の痺れだ。  
「!? これは、ッそうだ、俺は何故こんな……」  
「おっ、起きたかー?」  
 起き上がろうとしたそのとき(といっても無理なことだったが)、  
 頭上から明るい少女の声が響いてきた。  
 日光を遮るように視界に覆いかぶさってきた顔はむやみに楽しそうである。笑った口から八重歯が覗いていた。  
「貴様……そうか、思い出したぞ、人間め」  
「そりゃよかったなー」  
「いいわけがないだろう! 言ってみろ、私に何をした」  
 ヴィラルの抜けていた記憶が曖昧に戻ってきていた。  
 早朝から狩りにでかけ、その途中で怪しい黒服の四人組と遭遇した。  
 さては報告のあった獣人ハンター共だろうと、生身ではあったが部隊長の誇りも賭けて追い始めたまでは  
 よかったのだが、大した相手でないと油断しまったのが失敗だった。  
 認めたくはないが不意打ちをくらった。  
 認めたくはないが捕まっている。  
 認めたくはないが、  
「ちょっと縄で縛ってクスリ打ってあるだけだって。心配すんなよーとりあえず『まだ』殺したりしないからさ」  
「チッ、今殺せ!」  
「だめだって。久しぶりにお前みたいなカッコイーの捕まえたんだぜ」  
 少女は意気揚々とヴィラルの横を歩き、足元の方へと回り込む。  
「なに?」  
 そうしてしゃがんだ。  
「へへっ、いっただきぃ」  
 触られる。体が麻痺して動かないはずなのに感覚は間違いなくある。  
 何に触られたかわかっている。  
 待て、待て待て待て。  
「お前兄ちゃんよりおっきーなあ」  
「だぁあぁぁぁあっぁぁぁあ!!」  
 認めたくはないが、全裸だった。  
 
「薄汚い手で触るな馬鹿が!」  
「そう言うなよなー。ちょっとおっきくなってきてるぞ、お前のちんちん」  
「黙れッ……!」  
 キヤルの両手はヴィラルの肉棒を包んでしごきあげている。いつ覚えたやり方だか知らないが、  
 片手だけグローブを外し、少し湿った手のひらで亀頭を弄んでいた。薄汚いと言ったのも事実で  
 手にしろグローブにしろ砂がついていたが、逆にそれが奇妙な刺激を与えてきている。  
「そんでさ、けっこうきれいだよな? あんま使ってないんだろ」  
「……黙れッ……! 触るな……黙れッ!」  
 台詞の合間合間にヴィラルの体はびくりと震える。強く握られた瞬間に動かないはずの体が  
 大きくのけぞった。顔を戻すとにやにやと笑っているキヤルと目が合った。腹が立つ。  
 自分と相手との間に見えたモノがすでに大きく主張しているのは見なかったことにした。  
「触っちゃだめなら、さ、へへ」  
 キヤルが唇を舐めた。唾液でぬめったそれがヴィラルの制止よりも早く肉棒に触れる。  
「ひっ」  
 ぬるりと一気に口内へ吸い込まれたものに小さな舌が這っていく。  
「ん、う……んぐ」  
 やっぱ兄ちゃんのよりおっきいだろな、これ。ヴィラルの肉棒を口に咥えたまま、キヤルは独り言を言った。  
 それはもちろんヴィラルの耳には届かないが、強く押し付けられる不規則な舌の動きは  
 神経を直接逆なでしていく。キヤルの頭の動きと、ヴィラルの獣じみた呻きが重なりあって高まってくる。  
 舌の動きに融けかけていた理性というかプライドをかろうじて機能させ、ヴィラルは小さく声を発した。  
 自分でも驚くほどかすれていた。  
「いい加減に……っは、しろ、この……」  
 発情猿、と続ける前に、あまりにもあっさりとキヤルの口はヴィラルから離れた。  
 唾液が糸を引いた亀頭に、別れ際にちゅっと軽いキスをしていく。  
 何事かと呆然とするヴィラルに、キヤルは上に覆いかぶさるようにしながら顔を近づけてきた。  
 さっきまで肉棒を咥えていた唇はてらてらと光っている。その奥に八重歯が見えた。  
 
「触るなとか舐めるなとかいちいちうるさいなー、お前。気持ちヨクないのか?」  
「当たり前だ、ふざけるなッ」  
「へーっ」  
 キヤルが足の内側でヴィラルのモノを撫でた。油断していたところに襲ってきた刺激でまた体がのけぞる。  
 そのまま挟み込んで、おかしな姿勢で素股のように片足を動かした。  
「こんなにしててよっく言うぜ。ちんこは正直ってやつだよなあ」  
「意味のわからんことを……ぅあっ、いう、な!」  
「ホントは口に出してもらいたかったんだけど、俺もほしくなっちゃったから最初はいいや」  
 言葉どおり、足の動きもどこか切なげになっていた。何より色で目立たないが、  
 キヤルのはいているスパッツはすでに染み出したもので濡れている。  
 そのスパッツでこすられるヴィラルの肉棒もはっきりとそれを感じていた。  
「あんまりな、最近、肉喰ってなかったんだよ。そんでタンパク質ってやつがほしかったんだよな」  
「人を栄養補助食品扱いするなッ!」  
「だからー、今はいいってば。わかんないやつだな、お前も」  
「はっ、きっ、きいてるのかっ、貴様!」  
 あははは、と笑っていた。たとえ聞いていても無視する方針で決まっているらしい。  
 返事をする代わりにヴィラルの鼻先にさっきと(亀頭と)同じようにキスをして、起き上がる。  
 素股をしていた足を離し、膝立ちのままためらいもなくスパッツを引きおろした。  
 下着も同時に引きおろして、白いスリットがあらわになった。ヴィラルはとっさに目を逸らしたが、  
 最後の抵抗とばかりに悪態は忘れない。  
「そこにも毛が生えてないのか。人間の中でもガキだな、貴様」  
「あっ、気にしてんだから言うなよ! そういうこと」  
 キヤルはそのスリットに指を当てた。綺麗に閉じたそこを自分で押し広げると、内側から溢れた愛液が  
 指を伝って垂れていく。  
「ん……じゃ、いくぞ。――んっ」  
 反り返った肉棒を入口にあてがい、そのまま一気に――半分ほどまで腰を沈めた。  
 
「あっ、う、や、やっぱちょっと……キツイな」  
 キツイのはこっちの方だとヴィラルはとっさに言いそうになったが、抑え込んで唇を噛んだ。  
 すでに収められた上半分を、柔らかい肉がぎちぎちと締め付けてくる。結合部から体液が  
 伝っていくのさえ敏感に感じ取っていた。  
 残り半分を慎重に飲み込みながら、キヤルは自分の体を抱きしめて震えていた。  
 実のところ、舌は使っても下はあまり経験がなかったのだ。大きいものならなおさらである。  
 自分の中に硬いものが侵入してきている感覚が、それでもほぼ快楽となって背骨を駆け上がっていく。  
「もう、ちょっと……だから、な……っあ、はあ」  
 ずぶりとまた愛液を押し出して、やがて二人の体はいびつな直角に繋がった。  
 達成感からキヤルは大きく息をついた。やせた体は力を抜くとそのまま中に入っているものを感じる。  
 それがびくりと波打ったことにキヤルの口から声が漏れた。  
「えっ……い、今中でおっきくなったぞ。あっ、やだっ、またなったっ」  
「……実況は……よせ……」  
「だってホントに、うわっすげえビクビクしてる、ふああっ」  
 ひきつったように蠢くのはキヤルも同じだった。どちらが先かなぞもうわからないが、  
 規則的に締め付けを、それも次第にきつくしてこられるたびに、ヴィラルは荒い息を呻きに変える。  
 押し殺していたその呻きも、キヤルが慣れて腰を動かし始めれば喉の奥から湧く喘ぎに変わっていった。  
「んっ、くっ……っは、あ」  
「ふぁ、あはっ! やっぱ悪くない、な、んんっ!」  
 水平に円を描くように腰を回すと、ぐちゅぐちゅと本人たちにしか聞こえない音が胎内で響く。  
 それに飽きると足に少し力を込めて腰を浮かし、また落とす動きを繰り返していく。  
 幼く見える無毛のスリットがヴィラルのモノを飲み込みいっぱいに広がっている。結合した間から  
 体液が泡だって溢れてきていた。  
 ヴィラル自身はどうしようもないが、キヤルの狭い胎内は肉棒に吸い付いて余すところなく刺激されている。  
 キヤルが腰を振りだすとまたぞくりとした快感が全身に広がり、それが一点に集中し始めた。  
「……まだだ、まだ……」  
 腰を動かすために前に手をついた姿勢になり、キヤルの息はヴィラルの胸にかかっている。熱い。  
「俺は、こんな……っ」  
「はっあ、あっ、中で、イッちゃって、いいぜ。俺も、もう、ダメだもん、んううっ」  
 動きがいっそう激しくなっていく。  
「なあ、あんっ、ほら……このっ」  
「なっ……!? っひあっ」  
 キヤルがヴィラルの胸に舌を這わせて、その突端に噛みついた。八重歯がきりりと食い込む。  
「ひっ、がっ、ああ、くそッ――!」  
「やああああっ!」  
 一瞬にしてせり上がった熱いものが、繋がった中に吐き出された。  
 
「くそっ……この私がっ……覚えておくがいい、お前らなど……うっ」  
 荒い息の合間に、ようやく落ち着いてきたプライドが悪態を吐かせていた。  
 だが、鼻にかかったかすれた声で言われても同情か別の何かを誘うだけである。  
 キヤルは前者だった。手を伸ばして頭を撫でてやると触るなと叫ばれる。  
「本当うるさいけど面白いなー、お前」  
「うるさい……うるさい、さっさと離れろ」  
「はいはい、わかったわかった」  
 腰を引きあげると、まだ残っていた余韻が体を伝った。  
 慎重に事をし終えると、ずるりと引き出されたモノの上に、収まりきらず逆流してきた白濁が  
 ぼたぼたとかかる。キヤルの目が見開かれた。  
「あっ」  
「……?」  
「タンパク質……」  
「舐めるなあああああ!!!!」  
 ヴィラルは絶叫した。  
 
 
終り  
 

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