「ユキコが戻らないって?」
水着女王キャサリンに会いに行ってホバーベースに戻ってきたカルメンは、
不安そうなプリシラとウェンディに迎えられた。
「買い物の途中ではぐれてしまったんです」
「ブラウニーに荷物を積んだ後、気になることがあるって残ったの。
すぐ戻るって言ってた筈なんだけど…」
遅いので、一度荷物を船に置いてまたユキコを迎えに行くつもりだったと2人は言った。
「じゃあアタシがちょっと行ってくるわ」
カルメンは仕方なく、荷物を運ぶのには向かないが、
小回りのきくタンダーでユキコを迎えに行くことにした。
「ボクも行きます!今は男子禁制ではないのでしょう?
でしたらボクもボディーガードとして連れて行って下さい!」
ジョシュアが誰かに気を遣うなど珍しいこともあるものだが、
「女性は守る者ですから!」というのを制してまで置いていくほどではないだろうし、
何かあった時にユキコを守ることくらいならできるだろう。
2人はミズーギィの街に戻って行った。
一方その頃ユキコは、例の「超拘束水着」が気になって、倉庫に来ていた。
少し見てみたら帰るつもりだった。誰もいないし、少しだけなら…。
しかし、見るだけでは終わらなかったのである。
罰ゲームは必要なくなったので超拘束水着は処分してしまおうかと思っていた水着女王と、
譲ってもらうことにしたファサリナが倉庫に入って来たのだった。
「あなた、それが欲しいの?でもこちらの人に譲ることにしていたのよ。
悪いけど他をあたって頂戴」
「申し訳ありません…。
でもあなたのような清純な方が着るのが一番似合うのかもしれませんね…」
こんなものに興味を持って見てしまうところを見られてしまった。
ユキコは顔を真っ赤にして逃げ出そうとした。
「す…すみません…、お邪魔しました…っ!」
「あら、別に見るくらいいいんですよ。
そうですね、一度着てみてもよろしいのではないでしょうか?」
逃げ出したユキコをあっさり捕らえ、
ファサリナはユキコの着ていた水着を器用に脱がしていった。
「や、やめて!そんなつもりじゃ…!」
「恥ずかしがらなくてもいいのよ。水着を愛する気持ちは素晴らしいわ」
水着女王の伸びる金属繊維水着とファサリナの柔らかい棍で、
ユキコの水着は簡単に脱がされてしまった。
「嫌ぁ!」
「そこまでよ!なんだか嫌な予感がしたと思ったら、またあんたなの?ファサリナ!」
その時、バン!と倉庫の扉が開いてカルメンとジョシュアが入ってきた。
「まあ…本当に肝心な時に邪魔な方…。
ゆっくり愛を語る暇もきっと与えてくれないんですね、あなたは」
「きゃああああ!!」
カルメンはともかく、ジョシュアの姿にユキコは慌てた。
何故ここに男性が!?そうか、水着女王の夫婦が仲直りしたから男女一緒になれたのだった。
きっと遅くなった自分を心配して来てくれたのだろう。しかしこんなところに…!
「大丈夫ですか?ユキコさん。
あ、女王、ユキコさんに服を返してあげて下さい。
この辺りは暖かいとはいえ、さすがに全裸では寒いと思うんですよ」
「はあ?」
寒い?寒いですって?ユキコは唖然とした。
この状況でこの格好で心配することは「寒い」?
「すみません、女王。
私のストーカーがいらしてしまいましたので、私は一時撤退致します。
また参りますのでそれは取っておいて下さい。それではまた…」
呆然と座り込むユキコを置いて、ファサリナは姿を消した。
カルメンは後を追おうとしたのだが、今はユキコを保護する方が先だ。
軽く舌打ちして振り返る。
「ジョシュア!あんたは部屋の外で待ってて!ナカタ博士!これはどういうことなの?」
「どういうことって、彼女ユキコさんっていうの?
その方がこれに興味を持ったみたいだから着せてあげようとしただけよ。
何か文句あるの?」
「本当なの?ユキコ」
そんな、こんなに人のいるところで恥ずかしいことを言わせないで、
と目を逸らすが、視線の先にジョシュアがまだいることに気付き、
なんでまだいるのかと睨んだ。
しかしジョシュアの方はさっぱり気に留めず、
まだ寒いんでしたら上着を貸しましょうか、等と言ってくる。
「ジョシュア!あんたは出て行ってって言ったでしょ!
ナカタ博士もユキコをからかうのはこのくらしにしておいてくれないかしら。
この子はあまり冗談が通じないんだから」
「あら、冗談じゃなかったんだけど、まあいいわ。じゃあ気をつけてね」
キャサリンは平然として言い、3人を見送った。
「ユキコさんは水着でお買い物に行っていたんですね。
寒そうなので上着をお貸ししますよ!あ、ボクのことは気にしないで下さい。
女性は守るものですから!」
ジョシュアは普段から兄が言い聞かせていた「女性は守るもの」という言いつけを守り、
ユキコに風邪をひかせることもなく連れ戻せたことに満足していた。
しかしユキコは。
何よこの子!私の裸を見ておいて前屈みになるどころか顔を赤くもしないで!
なんでこんな平然としてるのよ!私はそんなに女性として魅力がないのかしら?
でもそれは仕方ないわよね。
カルメンさんはとてもグラマーだし、あのファサリナとかいう女性もセクシーだったわ。
そうね、こんな私なんて…。
でも女性は守るものとか言っておきながら、
女性に対する気遣いはこれっぽっちもなってないわ!
上着を貸してくれたのはいいけれど、何よこの服!
工具が裏にいっぱいで重いし痛いし、せめて抜き取ってから貸すとかできないのかしら。
この子のお兄さんが結構イケメンだってカルメンさんに聞いたから少し期待してたけど、
弟の方は全然ダメね。早くお兄さんに会ってみたいものだわ。
でもこの子のお兄さんじゃ期待しても無理かしら…。
次の日、ユキコは見事に風邪を引いたのであった。
「やっぱり寒かったんですね…」
終わり