「舞、なんであんな所に倒れてたのさ」  
 
 とある日の放課後。  
 自然休戦期が近くなったせいか、幻獣達の動きも静かになり、  
ここ数日の間、5121小隊は平和そのものだった。  
 そんなわけで、パイロットの仕事もそこそこに――というか、ほとんどの仕事は  
舞が朝の内にやってしまうので、厚志にはする事が無い――先日の陳情で手に入れた  
映画チケットを手に、厚志は舞を探していた。  
 そして、思わぬ所で彼女を発見する事になる。  
 プレハブ校舎屋上で、顔を真っ赤にして倒れている所を、だ。  
 そして今、厚志は背中に舞をおぶって、整備員詰所へと向かっていた。  
 
「……」  
「心配したんだからね。顔真っ赤だし、熱でも出て倒れてたのかと……」  
「……せ」  
「ん? なんだい」  
「降ろせと言っている!」  
「駄目だよ。熱は無いみたいだけど、念の為石津さんに見てもらわないと」  
「石津の診察を受けるのと、私がお前におぶわれる事の相関関係を説明せよ!」  
「舞が身体を悪くしてるかもしれないから、無理をさせずに石津さんの所まで連れて行く為。  
 なんでもないかどうかは素人の僕らじゃわからないからね」  
「自分の身体のことは自分が一番よくわかる。なんでもないのだから降ろせ、厚志よ」  
「嫌だ。いつもそうやって無茶するからね、舞は」  
「無茶をしなくてはならない時があれば、無茶をする。それが芝村だと、以前も言ったぞ」  
「今はその時じゃないだろう? 戦ってるわけでもないし、何より……僕がいる」  
「……」  
「それに……たまには僕にだって君を背負わせてよ」  
「……厚志」  
「君は……いつも何かを背負ってる。最近は漸く僕にもそのいくらかを背負わせて  
 くれるようになったけど……相変わらず僕自身は君に背負われてばっかりだからね」  
「そのようなことは……無いぞ」  
「……そうかな?」  
「ああ……お前がいるから、私は私でいられる。お前がいなければ……私は……」  
「……舞」  
「……はっ!? い、い、い、い、今のはなしだ! 聞かなかった事にせよ厚志!」  
「僕もそうだよ」  
「……ぬ?」  
「舞がいるから……舞の為にって思えるから、僕は僕でいられる」  
「………………」  
「舞のカダヤとして、恥ずかしくないようにって……だから、頑張っていられる。  
 どんな最悪の戦場でも。どんなフェイタルな状況でも」  
「………………」  
「……どうかした、舞?」  
「お、お前は……お前という奴、は……」  
「……?」  
「……な、なんでもないっ! 気にするなっ!」  
「???」  
「そ、それよりも、付いたぞ、降ろせ、すぐ降ろせ!」  
 
 二人は、いつの間にか整備員詰所の前までやってきていた。  
 
 
「大丈夫? 立てる?」  
「無論だ!」  
「石津さん、いるかな。この時間はだいたいいると思うけど……」  
「見……た、わ……」  
「わぁっ!?」  
「ぬっ!?」  
 
 物陰から、陰鬱な雰囲気を湛えた少女が姿を現した。  
 5121小隊の衛生兵、石津萌である。  
 
「あつあつ……ラブ、らぶ……」  
「ななななななな、そんなんじゃ……!」  
「そそそそそそそそ、そうだぞ! そのようなものでは……!」  
「……で……何の、よう……?」  
「はっ! そ、そうだよ! ……あのね、舞が屋上で倒れてたから、どこか身体悪くして  
 るんじゃないかな、と思って。一応、知識のある石津さんに見てもらえたら安心だから。  
 ほら、今も顔が真っ赤になってるだろう?」  
「こ、これは……だ、だから心配ないと言うのに……」  
「……ふぅ、ん……わかったわ……入っ、て……」  
 
 何やら頷きながら招く石津に応じ、二人は整備員詰所へ入ろうとした。  
 だが、厚志は石津に押し止められる。  
 
「……速水君は、駄目……これから、診察……」  
「診察って…………………………ああっ! ご、ごめんっ!」  
「……?? 何を慌てておるのだ、厚志よ」  
「ななな、なんでもないっ! ぼ、僕はここで待ってるから!」  
「……おかしな奴だ」  
 
 首を捻りながら舞は詰所へと姿を消した。  
 
「……初心」  
 
 珍しく笑みを浮かべながら、石津もそれに続く。  
 
「……うぅ」  
 
 後には、舞と同じくらい顔を真っ赤にした厚志が残された。  
 
 
         ★                   ★            
 
 
「……そこ、座って……」  
「うむ……しかし、石津よ。私は本当になんでもないのだが、それでも看るのか?」  
「頼まれた、から……それに、最近ちょっと……気になる」  
「……むぅ……私が、か?」  
「そう、ね……」  
「そんな事はないと思うが……まあよい。お墨付きをもらえれば問題はなかろう」  
 
 舞を詰所の奥にある仮眠用のベッドに座らせると、石津は聴診器を取り出し、首から下げた。  
 
「じゃあ……看る、から……」  
「うむ」  
「脱い、で」  
「うむ………………何!?」  
「上……はだけ、て」  
「……う、うむ……確かに、そうしないと、看れぬ、か……」  
 
 石津の視線を感じながら、舞は制服のボタンを一つずつ外していく。  
 程なくして露になる、下着に包まれた慎ましやかな胸。  
 
「下着、も……」  
「こ、これも取るのか!?」  
 
 舞は躊躇った。  
 柔肌を、以下に同性とは言え、他人の目に晒すなど……その想いが、手の動きを止める。  
 
「恥ずかしがられる、と……私も……照れる……」  
「……む、むぅ……わ、わかった!」  
 
 意を決し、舞はセンターのホックを外し、肩紐を外し、手の中に下着を落とし――乳房を露にした。  
零れ出ると表現出来ないのが、芝村舞の胸が芝村舞の胸である所以である。  
 
「手……どけて」  
「……う、うむ……」  
 
 請われるがまま、だがおずおずと、胸の先端を押さえていた手を外す。  
 現れたのは、まさにサクランボと見紛わんばかりの桜色の乳首。  
 敏感な先端が空気に触れ、舞の身体がピクリと震える。  
 
「……じゃあ……看る……」  
「……んっ」  
 
 聴診器が、石津の手によって、舞の左の乳房に当てられる。  
 冷たい感触に、吐息を漏らす舞。  
 羞恥故か、らしくも無く息は乱れ、当然それを石津も敏感に察知する。  
 
「脈拍、早い、わ……緊張?」  
「……こ、このように、医者にかかるなど……お、幼子の頃以来、だから、な」  
 
 心なしか上ずった声で、舞は答える。  
 
「……リラックス、して……大きく……深呼吸」  
「う、うむ……すぅ……はぁ……」  
 
 瞳を閉じ、深く息を吸い、吐く舞の上気した顔を見て、石津は珍しく悪戯めいた笑みを浮かべ、言った。  
 
「速水、君……?」  
「すぅがはっ!? ゲホッ! ぐ……ゴホッ! な、何だ、と、突然っ!」  
「脈拍、一気に上がった……わ」  
「………………」  
「芝村さんは……病気……よ」  
「びょ、病気、だと……私が、か?」  
 
 笑みはそのままに、石津は舞の乳房の先端に、聴診器を当てた。  
 
「あっ……!」  
 
 敏感な部分に金属の冷たさを感じ、舞は大きく身体を仰け反らせる。  
 
「……桜、色」  
 
 仰け反った拍子に聴診器の下から現れた屹立した乳首を、石津は己の指で優しく摘んだ。  
 
「……ここ、速水君の事考えると……こんなになるん、でしょ?」  
 
 その瞬間、舞の脳裏に先刻見た幼い厚志の裸が浮かんだ。  
 あの小さい身体が、今はどうなっているのか。  
 あの……小さいモノ……が、今はどうなっているのか。  
 ――先程自らを抱えていた腕のぬくもりと、力強さ――きっと――  
 胸からの快感と、脳を走った想像とが、舞の身体を震わせる。  
 
「っ! な、何を……やめ、いし……」  
「ほら……速水君の名前……言ったら……もっと大きく……固く、なって……」  
「やめろ……いしづ……ぁっ! 」  
「……自分でした、こと……ない、の?」  
「んっ……した事……何を、だ!?」  
「ここ……こう、したり」  
「いっ……や、やめろと言って……んっ」  
「あとは……こっち、も……」  
 
 乳房を弄ぶ左手はそのままに、石津の右手は舞の胸を辿り、下へと向かって腹を這い――  
 
「……なっ、そ、そこ……はっ!?」  
 
 ――下着の中へと差し入れられた。  
 
「……自分で触った事……ない?」  
「そ、そんな所、あるわけ……」  
「じゃあ、知らない……のね」  
「何を!?」  
「……か、い、か、ん」  
 
 下着の中の指が、舞のスリットを撫でる。  
 
「ひっ!?」  
 
 それだけで、舞は目を見開き、おとがいを仰け反らせる。  
 
「敏感……なのね」  
「や、そんな……やめ、ろ……石津ぅ……」  
「本当に……やめて欲しい、の?」  
「あ、当たり前……ああっん!」  
 
 スリットを器用に割り開き、その中へと指を侵入させる石津。  
 舞は、今まで触った事すらない場所へ、指という異物が混入してくるその感覚に、混乱した。  
 
「スムーズに……入った、わ……けど、狭い」  
「やめ……やめて……やめてく……れ……あんっ……!」  
「ぬるぬるしたのが……出てきてる。やめて欲しくない、証拠……よ」  
「んっ……あっ、くっ……な、何だ……こ……れっ……ああっ!」  
 
 未知の感覚。  
 故に、舞はその感覚――快感に抗うすべを知らない。  
 
「あんまり大きな声……出すと……外、聞こえる、かも」  
「!?」  
「速水君……入ってきたら、どう、する……?」  
「……んっ……ううんっ……んっ!」  
 
 もしも厚志に見られたら。  
 考えもしなかった可能性を告げられ、慌てて舞は口をつぐんだ。  
 だが、口唇の端から、快感に咽ぶ喘ぎが漏れるのは、防ぎようが無い。  
 そして何より、その想像――もしも厚志がこの場面を見たら――が、未知の感覚を加速度的に増加させていく。  
 
「んん……んっ……ん……んぁっ……!」  
「わかる……? これが……快、感……」  
 
 石津の言葉に、舞はイヤイヤをするようにかぶりを振る。  
 
「わからないなら……いい、わ。身を、任せて……しまえば、いい」  
 
 身体の一番奥から湧き出てくる、正体不明の感覚。  
 その感覚が強くなればなる程、舞の一番大事な部分から出てくる正体不明の液体は、その量を増していく。  
 
(……これが……快感……?)  
 
 石津の手が一番大事な部分で蠢く度に、舞の脳裏には白い閃光が迸る。  
 秘所から身体の最奥から湧き出る感覚に、溢れる液体の量に比例し、その閃光もまた、強く、大きくなっていく。  
 
(……いやだ……怖い……怖いっ……!)  
 
 未知は恐怖――それは、芝村の名を持ち、天才と呼ばれる少女にとってもまた同じだった。  
 舞は身体を固くし、身じろぎして、何とかその恐怖から逃れんとする。  
 
「……怖く、ないわ。だから、身を……任せてしまい、なさい……」  
「んぁっ!?」  
 
 その時、舞は耳元で石津のささやきを聞いた。  
 気付けば、その身は石津の腕の中にあり、服ごしに、石津の肌の温もりを感じる。  
 石津は、右手を蠢かせながら、舞の身体を抱きしめていた。  
 
「この、指は……速水君の、指……よ」  
(厚志の……指……)  
「貴方は……今……速水君に、弄ってもらって……るの」  
 
 ささやきが、舞の中の恐怖心を溶かしていく。  
 同時に、得体の知れない感覚への拒否感も、消えていく。  
   
「……んっ……んんっ! んっ……んぁっ……んん……!」  
「イキそう、なの? ……じゃあ、一番……感じる所、いじって、あげる……」  
(イク……? これが……イクという、事なのか……? 私は……私は……)  
「……ここ、よ」  
 
 スリットの中に抽送されていた指が抜かれ、その直上にある包皮をめくり上げた。  
 すぐに、舞のもっとも感じる場所へと指は至り――啄んだ。  
 
「ひぃぁあぁああ!!」  
 
 つぐんでいた口が、刺激によって強引に開かされる。  
 
「ああっ! だ、だめっ! そこ、だめぇ! あ、つ……し……あつしぃ……!」  
 
 その刺激が、トドメとなった。   
 舞の身体が、石津の腕の中で小刻みに震える。  
 その痙攣が、一度収まった次の瞬間――  
 
「んっ……あ……つ……し…………んぁあああああああああああああっっっっっ!!!!」  
 
 ――絶叫と共に、舞の身体は石津の腕の中から飛び出さんばかりに反り上がった。  
   
「……イッた、のね」  
「はぁ……ん……はぁ……ぁ……っ」  
 
 絶頂の余韻が、舞の身体を震わせる。  
 
「……な……なんだ、これ……は……」  
 
 頭の中が真っ白で、思考がまとまらない。  
 だが、それでいて、心の中にあったしこりのようなものが綺麗に消え去り、靄が晴れたような気分で――  
 
「それが……イクという、事……絶頂、よ」  
「これが……絶頂……」  
「すっきり、した?」  
「………………」  
 
 舞は、コクリと頷いた。  
 
 
 
「診断、結果よ……」  
 
 着衣を整えた舞は、石津と再び向き合った。  
 心なしか頬が赤い以外は、瞳の鋭さもその表情も、普段の彼女と変わりないように見える。  
 
「芝村さんは……欲求不満、よ」  
「……欲求不満?」  
「だから……時々、こういう事、して、発散しない……と……駄目、よ」  
「………………こういう事、というのは、その、つまり……」  
「……自分で、ね」  
「じじ、自分でぇ!?」  
「やり方は……今、教えてあげた……通り、だから」  
「………………」  
 
 平静を取り戻しつつあった舞の表情が歪み、頬に再び朱が差した。  
 
「それとも……速水君、に……やってもらう?」  
 
 その一言で、頬の朱が爆発し、真紅へと変じる。  
 
「な、なななななななな、何を言って……!」  
「イク時……叫ん、だわ……よね?」  
「……そ、それは……」  
 
 舞は、視線を逸らし、俯いた。  
 確かに――彼女は想像していた。石津の指を、速水厚志のそれであると。  
 自分が、彼の腕の中にいる、と。  
 
「……そう、だ」  
 
 視線を逸らしたまま、舞は自分の中にある気持ちを認めた。  
 自分自身すら気付いていなかった、淫らな想いを。  
 
「欲求、不満は……恋の、病。その、特効薬、は……大好きな、人……だから」  
「……私にとっては……厚志が?」  
「そう、ね」  
 
 しばしの沈黙が、場に満ちた。  
 
(………………私は……厚志、と……)  
 
 無意識に、そう思っていたのだろう。  
 その無意識が、今日石津の手によって表層へと現れ出でた――つまりは、そういう事。  
 
「……じゃあ、とりあえず……速水、君には……問題無い、って……言っておくから」  
「あ、ああ」  
「あんまり……溜めこんじゃ……駄目、よ」  
 
 石津の悪戯めいた笑みに苦笑を返し、そうして診察″は終わった。  
 

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