合意の上で部屋に入る。  
たいした会話もせず、合図代わりの儀礼的なキスをすると、互いの制服を脱がしてベッドに入った。  
乳房を弄びながら男が囁く。  
「…こういうことは、上田君にしてもらったほうが良いんじゃないの?」  
そう言いながら、女の秘裂を指でつつく。  
ちゅくっと濡れた音がした。  
「んっ」  
感じながら女は男をキッと睨んだ。  
「トラをあんた! 巻き込んだりしたら許さないんだから!」  
睨んで体位を入れ替える。  
男を下にして、そそり立つ逸物を秘唇に添わし、一気に腰を鎮めた。  
華奢な体型に不釣り合いな、ハリのある乳房が動きに合わせて揺れる。  
怒っているせいか動きが激しい。  
激しい動きに嬌声が重なる。  
やがて男の表情に余裕が無くなってきたのを見下して、女は婉然と嗤った。  
「どうせ、こんなこと。石田咲良はやってくれないんだから、しっかり出したらどう?」  
男の返事はない。  
結局、この夜はお互いが気を失うまで身体を重ね、そのまま同じベッドで寝た。  
 
朝、男の起きる気配で女は目を覚ます。  
「ん…」  
だるい裸姿で顔を上げると、男はもう身支度を終えていた。  
カレンダーで今日が日曜日だと確認する。  
時計は朝の八時。  
ずいぶん早い。  
「ああ。…デートだったんだ」  
こんなところにいつまで居ても意味無いので、「シャワー借りるね」と女は言葉を続けた。  
浴室の中でシャワーをひねると、熱くなるまで時間がかかる。  
玄関のドアが開いて閉まる音。  
冷たい水を排水溝に流しながら、女は「日曜日か…」トラはどうしているのだろうと考えていた。  
 
店が一つも開いていない朝の市街地を男は急いで歩く。  
人通りが少ない街は空気が冷たい。  
待ち合わせには余裕を持って歩いているが、何故だか気分が焦っていた。  
待ち合わせ場所に到着する、時計を見る、8時45分。  
それから、カチリカチリと秒針が音を立てて動くのを見ていた。  
頭の中には彼女のことだけ。  
だから、通行人の向こうから蒼い髪で紅い瞳の彼女が小走りに駆けてくるのを見て、掛け値なしに嬉しくてたまらない。  
「おぅ、おはよう」  
息を切らせた彼女に優しく微笑む。  
「おはようございます」  
どこへ行くのと訊ねる彼女に、「水族館へ行こうか」と答えると、彼女は目を輝かせた。  
無邪気に手を繋ぐ。  
それから、水族館までの道を手を繋いだまま一緒に歩いていった。  
 

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