夜半過ぎ、もっとも警戒の低い時間帯をついて青森108警護師団所属、通称”ヒロイン天国小隊”は敵の襲撃を受けた。  
静かで狡猾な襲撃は迅速かつ的確に小隊宿舎を占拠する。  
無事だった人物は、宿舎外に自宅を持つ教員と家族が居る山口だけだろう。  
当直だった竹内と野口は最初に倒され、谷口、岩崎、佐藤も地に沈んでいる。  
別動で感知し動いた村田以下数名も、消息が知れない。  
残った隊員は食堂に集められ、数十の銃口を向けられていた。  
銃を向けられながら、残った唯一の男性隊員である小島航は射殺しかねない目つきで首謀者らしき幻獣共生派を睨んだ。  
工藤百華も優麗な顔で歯ぎしりをする。  
第五世代である自分の力ならこんな下衆共…。  
けれど、出来ないわけがあった。  
隊長が、石田咲良隊長がやつらに拘束されているのだ。今、レーザーを打ち込んだらウォードレスを着ていない隊長ごと焼けこげになってしまう。  
他の面々も、それぞれ微妙に違うとはいえ、同じような表情をしていた。  
鈴木だけが佐藤を見ている。  
両腕を後ろで拘束され、背中に銃を突きつけられた形で、それでも立つ石田咲良は努めて冷静な口調で首謀者を問いつめた。  
「要求は、何?」  
小隊殲滅が目的なら、ここで自分達を生かしておく理由が無いはずだ。  
首謀者は赤く濁った目で咲良を見た。  
ぞくりとする。咲良は鳥肌を立てた。  
なんだこいつ?  
 
首謀者はにやりと口を歪めると、顎をくいと動かして部下に指示する。  
屈強な部下二名が咲良の腕をつかみ逃げられなくすると、彼女の首筋に注射器が刺され、中身の分からぬ薬品が注入された。  
横山亜美が耐えきれずきつい声を上げる。  
「隊長に何をしたのですか!?」  
首謀者は涼風に吹かれたごとしだ。冷淡に答えた。  
「少し楽しませてもらおうと思ってね。どんな処女でも男が欲しくてしかたがなくなる淫乱雌豚になるやつを使わせていただいた。良く効くやつだ」  
「なっ」  
首謀者の説明で意味を理解出来なかったのは、媚薬を使われた咲良だけだ。  
亜美の顔が青ざめる。隊長に何て事を!  
「この慮外者!」  
「おっと。動いても良いのかな?」  
咲良の後頭部にごりと銃があてられた。  
「くっ、…隊長…」  
そうしているうちに、咲良の身体に変化が現れだした。  
白かった頬が紅潮し、何かに耐えるような目をする。  
一生懸命、歯を食いしばっているのが遠目にも理解出来た。  
首謀者が嘲る。  
「つらそうだな。発情するのは初めてか? 折角だから、隊長殿のまんこが今どんな状態か、部隊の皆に検分してもらおう」  
拘束されたまま立つ咲良のスカートが、幻獣共生派の手で無遠慮にめくられた。  
「!!!!」  
悲鳴も上げられない咲良に代わって亜美が叫ぶ。  
「やめろぉっ!!」  
 
「どうして?」  
首謀者は亜美を見てにやついている。  
横山亜美はここまで人を憎いと思ったことがない。亜美は屈辱的な言葉を吐いた。  
「私が…代わりに…」  
「代わりに? 何だ?」  
「私を代わりに好きにしていい! だから、…だから隊長には手を出すな!」  
首謀者は「愛されているな」と嗤った。  
「だが、つまらん…」  
そう言い捨てて、隊員の面々を眺める。  
思いついたように、小島航に目を留めた。  
「そうだ。お前だ」  
「僕が何か?」  
平静に答えてはいるが、小島航はキレる寸前だった。  
不穏な目つきである。  
危険人物レベルでは横山を遙かに凌駕するそれを首謀者は満足した目で見た。  
部下に指示して、薬瓶を渡させる。ラベルは無い。  
「呑め」  
それだけ、命令した。  
「毒かもしれなくてよ」  
工藤百華が警告する。  
小島航は瓶を開けると、中の液体を一息に飲み干した。  
飲み終わったらやつらすべて殺してやる。  
 
どくん、…  
小島航の変化は劇的だった。一瞬だった。  
最初に変化に気付いた亜美が口をぱくぱくさせる。  
「こ、こっ、こ、こっ」  
百華も「あらぁ…」という顔をして、綺麗な手の指先で口を押さえた。  
その頃には、航も自分の変化に青ざめた。  
胸を触る、胸を触る、股間を確かめる。  
ある。ある。無い!  
ズボンの臀部が張って、ウエストが一気に細くなる。そういえば、肩もなんかなで肩になった気がする。  
元々、女みたいな顔が自分自身ムカついてたのに、完全に女になってどうする。  
「なっ、なっ、なっ、なっ!」  
混乱する航。  
心なしか、声も高い。  
急に、幻獣共生派の首謀者が猛々しく高笑いを上げた。  
「ふははははははははは! 流石、秘密結社『亜留腐阿奔擦礼』製造の性転換薬! すばらしい! スバラシイー!!」  
今までの冷酷な悪人ぶりは何だったのか。  
テンション高く首謀者はくねくねと関節的にあり得ないポーズを決めた。  
「こうなっては男のフリしているわけにもいくまいでしょう! まずはこの女子服を着て、品を作り、これからは監督子と名乗って生きるが良い!」  
 
女子服は女子服でも、遙か南の父島守護隊、夏のセーラー服である。他に道はない。  
ちなみにここは青森、季節は冬。  
すると、それまで黙っていた部下の人たちも奇声を上げ始めた。  
「いやまずはこのフリフリ裸エプロンで台所に!」  
「これぞ真の監督が姿を現したぞ!」  
「ダメだ! 監督子は俺の嫁だ。エロおねだりしろ」  
「おまいら百華たんに興味がないようなので俺がもらっていきますね」  
「監督がお漏らししたら俺が舐めてきれいにしてやろう」  
「監督みてちんちんおっき」  
「横山は俺がもらう」  
「遙は俺の嫁」  
よく見ればこいつら、目が赤いんじゃなくて単に血走っているだけとも言える。  
 
OVERSシステムは全ての可能性をOKするかどうかは分かりませんが。  
アリアンさんは大抵の可能性をOKしてくれます。  
 
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!」  
 
阿鼻叫喚。  
狂宴は始まったばかりだ。  
グッドラック。  
 
 
 
おまけ。  
咲良:小島。私よりチチが大きい。なんかずるい。  
航:………。(やめてほしいなあ)  
 

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