12月の第三日曜。  
その喜ぶべき休日を、運の悪かった小島弟はふてくされた気分で過ごしていた。  
エロ本片手に自室でくつろぐ。  
朝、思い立って隊長を誘いに行った自宅には兄しかいなかったのだ。二日酔いの向かい酒を決めていた兄の言によると、彼女はとっくの昔に家を出たらしい。  
追いかけてみようかとも思ったが、彼女、石田咲良とは別に恋人でもなんでもない。あえて定義するなら親友。  
逆にそこががっくりきて、今日は一日自宅で何もせず過ごすことに決めたのだ。  
目で無心にエロ下着におっぱいとか尻やふとももを眺める。  
何枚かページをめくり、学生服のパンチラ写真をじっと見つめた。  
小振りな胸と、蒼い髪がちょっと似ていたのだ。  
もちろん、石田さんのほうがずっと可愛いと言い訳に似た主張をしておく。罪悪感を感じないこともない。  
が、健全な青少年であることを自覚している航はティッシュボックスを用意した。  
ぴんぽん♪と絶妙のタイミングでチャイムが鳴った。  
石田来襲。  
 
「おぅ、おはよう!」  
急いで来たのか頬を紅潮させて無邪気に挨拶する咲良。  
今はもう昼だよ、という言葉もままならず、航は全能力全神経をフル活用して『いつもどおり微笑む』演技をした。  
「おはようございます。…どうしたの?」  
とっさにソファの下にエロ本隠した反射神経に感謝する。  
咲良はじまんげーに笑って、後ろ手に隠していた茶色い紙袋を航の鼻先につきつけた。  
「葉月と訓練したら、クッキーの作り方を教えてくれたんだ!」  
紙袋からはほんわりバニラエッセンスの甘い匂い。  
「小島! 命令だ、いっしょに食べよう!」  
一瞬、固まる。  
実のところ、航は甘いものが好きではない。砂糖の味がする物は全般的に無理だ。  
それを察したのか、咲良は不安げに航を見上げた。  
「小島はクッキー嫌いか?」  
この雨の中に捨てられた子猫のような上目遣い。  
航は咲良を自宅に招き入れていた。  
 
「とりあえず…、お茶いれてくるよ」  
先程まで自分が座っていた場所に咲良を座らせると、不意にそのソファの下に隠したモノが気になって航は目を逸らした。  
「? うん」  
航の様子に疑問符が浮かぶが、そそくさと台所に行った彼を見送った咲良は、いきなりくつろいだ様子でソファからずりずりと床に滑り落ちた。  
咲良は床にぺたりとお尻をつけて正座をすると、ものめずらしげに部屋を眺める。  
学校の寮はどこも同じ間取りのハズだが、自分用の部屋とはずいぶん風情が違う。そこには男女の性差という面も多分に含まれていたのだが、経験値の低い咲良はただめずらしいとだけ感じた。  
「これが小島の部屋かぁ」  
でもちょっとドキドキする。  
しみじみ観察して、ふとお尻の後ろを見る。  
ここで幻視能力が発動したのか、強化された観察力がものを言ったのか、それともこれが女の勘なのか。  
咲良はあっさり航のエロ本を発見した。  
無駄に最高性能な新型である。  
「ん?」  
咲良はエロ雑誌を床に置いたまま、ぱらぱらとめくった。  
 
航は機嫌良く紅茶を淹れていた。  
クッキーならば紅茶だろう。彼の無駄な優等生ぶりはこういうところでもいかんなく発揮される。  
ポットに茶葉をさらさら入れる、本物のお茶というやつだ。  
ヤカンが警笛を立て、湯が沸騰したところで、航はリビングが気になった。  
「石田さん?」  
ひょいと覗くと、咲良が床に座り込んで何かを熱心に読んでいる後ろ姿が見えた。  
返事が無い。  
嫌な予感がした。  
咲良は振り返ると、躊躇の欠片も見あたらない表情で例のエロ本を、こともあろうにあのパンチラのあるページを開いて見せた。  
「小島、これはなんだ?」  
「うわぁっ!」  
 
小島が真っ赤になった。  
「?」  
口をぱくぱくさせる彼の反応を見て、小首をかしげる咲良。  
小島はどうしたんだろう?  
神速の動きで取り上げられたエロ本を見上げ、咲良は咲良なりに考えてみた。最新最高性能なので、エロ本の内容は記憶してある。  
大事な本だったのだろうか?  
それにしては、本棚じゃなくてソファの下に落ちていた。大事なら、そんなあつかいはしないであろう。  
裸の女や下着姿のくねくねした女が載っている写真集みたいな本だ。  
冷静に思考した結果、仮定にたどりつく。  
エロ本抱えてまだぜーぜー言ってる航の袖をちょいちょいと引っ張り、咲良はスカートの裾をお腹の上までぺらっとめくった。  
丁度、例の女子高生パンチラ写真と同じエロポーズ。  
もちろん、一番最後に見たやつなので、意図して参考にしたのだ。  
完全に固まった航に咲良は訊ねる。  
「小島はこーいうのが好きなのか?」  
そして、固まってる航から返事が無いのでムッとする。  
「答えろ! パンツが好きなのかと聞いている!」  
逆ギレた。  
 
 
「答えろ! パンツが好きなのかと聞いている!」  
不覚にも航の目線はパンツに釘付けである。  
咲良のすんなりした太股、可愛いおへそ。何より股間の危険な部位が。  
目の前に。  
抱き寄せれば手に入る距離に。  
抱き寄せておへそにキスして舐めてパンツを脱がせてぐちゃぐちゃにして。  
「…ああ」  
吐息を漏らして、その音に航はハッとした。  
(今、僕は何を考えていた?)  
日頃の習性というモノは怖ろしい。  
「けれど、石田さん。いくらなんでも、君がそんなことしたらいけないよ」  
咲良の手を取り、スカートを下ろさせる。  
「僕も男なんだから…」  
航は『常識的な行動を取れた自分GJ!!!』と、心の中で喝采を上げた。すべては演技力のたまものである。  
咲良は航に手を取られ、おとなしくスカートを下ろす。  
無垢な瞳でまっすぐ航を見つめ、首をかしげた。ダメという事は分かったが、後半の『男なんだから…』というニュアンスが理解出来なかったのだ。  
「小島?」  
演技力と自制心が超絶的な努力を持って維持されれば、だ。  
ここで航は咲良を落ち着かせるために優しく微笑み、手を離して彼女を床に座らせただろう。  
だが。  
彼女の唇はあまりにも近かった。  
ここにとっておきのナレーションがある。  
 
−彼女のあなたを信じる表情に、あなたはひどい罪悪感に襲われる。−  
−でもなかなか、手は止まらない。−  
 
離れるはずの腕が、咲良の身体を抱き寄せる。  
自分に驚く間もなく、航は咲良に口づけた。  
 
時が止まったとヒトは言う。  
「んっ」  
驚きの声を口で塞ぐと、航は口づける角度を変えて舌を差し込んだ。  
咲良が暴れ出す前に、床に押し倒す。  
体重をかけ動きを封じ、手と指をからませて強く彼女の舌を吸う。  
「んっ、んーっ!」  
抗議の声を上げていることくらい分かるが、だからといってどうしようもないだろうと航は考えた。  
むしろ航自身が驚いているところだ。  
とても落ち着いている。  
ちゅっ、ちゅぱっ、  
わざと音を立てながら、薄目を開けて咲良を観察すると、彼女は瞼をぎゅぅっとつむっていた。  
(可愛いな。)  
心の中でくすっと笑うと、航は口を離し、そっと表面が触れるくらいのキスをする。  
強張っていた咲良の身体から力が抜け、かぁっと彼女の頬が紅潮した。  
ぎゅっと閉じられていた瞼が開き、それでも紅い瞳がまっすぐに航を見る。  
「なにをしたんだ?」  
それは、根本的な質問だった。  
咲良はキスという行為を知らない。  
自分が航に抱いている好意の正体も知らない。  
ただ、この心拍数の上昇が異常で、航と触れている身体が指の先が唇が熱い。  
「キスだよ」  
「キス? これが?」  
咲良は目をぱちくりさせる。知識としてなら、あった。  
 
「けど、空先生の見せてくれた本に出ていたキスはこんなかんじじゃなかった」  
咲良の言う本とは、少女漫画の原作、である。  
そこでは実に可愛らしい恋人が、ロマンティックな公園で唇を重ね合わせていた。  
「どんなかんじだったの?」  
航が訊ねると、咲良は「うーん…」と考え、「まず、起きあがらなきゃいけない」と答えた。  
第一に、ポーズが違うのだ。  
起きあがると、咲良は航に「ソファにすわれ」と命令した。ベンチが無いのでソファで代用することにしたのだろう。  
航が座ると咲良が横にちょこんと座った。  
「それから?」  
促されると、手を伸ばし航の首の後ろで腕を組む。  
この後、航の頭を引き寄せて唇を重ねれば良いわけだが、咲良は何故だか急に恥ずかしくて泣きそうになった。  
小島が悪いんだ! と、短絡的な結論に至る。  
じぃと静かに見られているのが良くない。  
航はにこっと微笑んだ。悪魔である。  
咲良はカァッとなった。  
「その目を閉じろ! 命令だ!」  
 
目を閉じろと言われて航は目を閉じる。  
彼はもう、半分以上八割以下でこの事態を楽しんでいた。けれど、それをおくびにも出さないのがこの男だ。  
目を閉じても、咲良が何かと格闘しながらじりじりと唇を突き出しているのが気配で分かる。ほんの数センチの距離で奮闘しているのだ彼女は。  
数センチ、数センチ、数ミリ。  
チュッと可愛く唇が触れた。  
咲良がばっと口を離す。  
航が目を開けると、彼女ははぁはぁと胸を押さえていた。  
「大丈夫?」  
「ダメだよ、小島。胸がどきどきする。これはよくない。心臓がおかしくなる。危険だ」  
必死で主張する咲良に、航は聞く。  
「じゃあ、石田さんは先にしたやり方のほうがよかったのかな?」  
ぼんっと真っ赤になって答えられない咲良。  
「…そう」  
答えられないのを良いことに、航はしれっと彼女にのしかかった。  
「それじゃ、リクエストに応えて続きをしようか」  
「ひゃあっ」  
問答無用でキスをする。  
細い腰を抱き寄せ、空いた手で器用に咲良の上着を脱がし始めた。  
 
「こ、小島っ! 何をするっ!」  
頬にキスをもらいながら、咲良は航の肩を掴んだ。いつもきっちり締めているスカーフもジャケットもブラウスも脱がされ、色のない清潔な木綿のタンクトップごしに航の手が胸を揉んでいる。  
「んっ」  
時折、航の指先が胸の先端を引っ掻くように刺激した。  
この娘はチチバンドをつけていない。  
もどかしい感覚に咲良の瞼がぴくんと震えると、それをしっかり観察していた航はあえてソコを避けて優しく触れる。  
「ふ…ぁ…」  
代わりに唇を咲良の耳に近づけ、ふっと息を吹きかけた。  
「ひぁんっ」  
航の肩がぎゅっと掴まれた。  
「石田さん…」  
囁くと何故か体温が上がる。  
航はたまらず、また咲良の唇に己のを重ね合わせた。激しく舌を吸う。  
「んっ、んんっ」  
咲良の全てが愛おしい。  
キスが終わるとお互いの視線が絡んだ。咲良が潤んだ瞳で口を動かす。  
「こ、じまぁ…」  
おねだりするような甘い響きに、しびれるような目眩を覚え、航は少し力を抜いた。  
促されるように、離れた唇を追って咲良は自らキスをする。  
柔らかい。  
 
キスの後、急に少し考える表情を見せて、咲良は航に訊ねてみた。  
「ねえ。こういう気持ちを『好き』っていうのかな?」  
咲良は真面目に聞いている。  
その目はあまりにも真剣で真っ直ぐなので、今更ながらに航は頬を赤らめた。  
「そうかもしれないね…」  
あいまいに答えられると咲良はいつもムッとする。  
「真面目に答えろ」  
「好き、だよ」  
航は観念した。  
息を吐く。  
「俺は石田咲良のことが好きです」  
そうだ。好きだからこんなことをしている。  
「苦しいんだ。ずっと、考えていないといけないから。  
寝る時も、授業中も、石田さんの事を…。  
一方的なワガママかもしれない、でも、でも…、側にいて欲しい。  
側にいてこの気持ちを落ち着かせてくれないかな…」  
咲良は航の告白にきょとんとしていたが、やがて嬉しげに頷いた。  
「私も小島が好きだ!」  
咲良が覚えたばかりのキスをした。  
どうやら、彼女の中で『好き』と『キス』はイコールで結ばれたらしい。と、そのキスを受けながら航は考察する。  
素直に嬉しくてしかたがない。  
さんざんエロ行為を働いておきながら、今日はここらへんで止めておくべきだろうなといけずうずうしくも航は考えた。  
エロ行為…。  
つい目線が下を向く。  
 
はだけた咲良の制服。  
さんざん弄んだせいで、白いタンクトップ越しに小振りな胸の先端がつんと立っている。  
しかも先程、少し乱暴にキスした時にでも脚をじたばたさせたのだろう。タイトスカートがめくり上がり、パンツギリギリのきわどい線まで見えている。  
いやさっき、パンツ所かおへそまでしっかり見たというか見せられたのだが。  
これはこれでそそられる。  
脇腹にそってついと指を動かすと  
「ひゃっ」  
咲良の身体がびくんと反応した。  
「感じるの?」  
わざといじわるな質問をすると、予想通り何も知らない咲良は言葉に反応する。  
「感じるって…、ぁっ、何が…」  
スカートの中にきっちり収まっていたタンクトップの裾を指先で持ち上げて、小振りな胸に直接触る。汗ばんだ肌がしっとりと手のひらに馴染む。ぷにぷにしてて…。  
「気持ちいい?」  
言い方を変えてみた。  
咲良は刺激に眉を寄せながらも、真剣な目で自分の胸を揉む航の手を見ている。  
気持ちいいかどうか考えているのだろうか。  
そう考えながら、航は彼女の頬にキスをした。今度はキスをゆっくりと落として首筋を舐める。  
「んっ」  
制服の襟で隠れるあたりを狙って強く吸う。吸われて声を上げた咲良は、「小島ぁ、…なんかへんだよぅ」と訴えた。  
「どんな感じでへんなの?」  
キスは止まるが、胸を揉む動きを止めることがない。  
むしろ、航の吐息が首筋にあたって咲良はぞくぞくと震えた。  
感じているのは表情で分かる。  
「…ドキドキする。へんだ。いつもと違う…」  
「気持ちいい?」  
もう一度、聞く。  
耳元で囁かれて、咲良は急に泣きたくなった。凄く恥ずかしい。  
よく分からないけれど、凄く恥ずかしい。  
「い、いじめっこぉ…」  
やっとそこに気付いたらしい。  
 
泣き出しそうな咲良の訴えに、くすぐられて航は渋面を作った。  
「非道いな…」  
いかにも自分は苛めてなんかいないよという顔つきだ。そんな顔つきでタンクトップがずり上げられ完全に露出した、咲良の敏感な胸の先を優しくついばむ。  
「やぁっ」  
言葉は拒否だが、咲良は無意識に航の頭をぎゅうと抱き寄せていた。不安な時にペンギンのぬいぐるみを抱きしめるあのポーズである。すりすりしてくる。  
ぎゅうとしていないと不安なのだろうか。  
腰を撫でた手でスカートをめくり上げ、パンツをずらすと濡れていた。  
「んぅ…、あっ」  
咲良が離れないので指先でしか確認出来ないが、陰毛が無い。秘裂にそって指を動かすと手前の方にこりこりとした粒があった。  
咲良の腰がぴくんと動く。  
「小島ぁ、そ、そこっ、いじっちゃあ、…ダメぇ!」  
ここをいじれと言うことだ。  
「そんなこと言われても、こんなに強く抱きしめられたら無理だよ。…離れる?」  
「やだぁっ」  
「じゃあ、がまんするんだね」  
粒をクリクリと刺激すると咲良の息が熱くなる。腰は刺激から逃げようとしているらしいが、押し倒されている上にしがみついているこの体勢。  
逃れようのないくちゅくちゅという音と快楽に、咲良はやがて限界に達し、しなやかな身体を痙攣させた。  
 
「…イったのかな?」  
声に出して確認することでもないが、ちゅっと音を立てて咲良の胸元にキスマークをつけ、航は訊ねてみた。  
「…ん……、ん…」  
咲良は放心している。返事が無いが、キスマークの刺激には反応した。  
しがみついていた力がゆるんだので身体が離れる。  
太股にまとわりついていた白いパンツを脱がすと、無防備な秘所が晒された。脱げたパンツが床に落ちる。  
ぴっちりと閉じられた秘唇を割りひらくと、愛液に濡れて充血したサーモンピンクの花弁がひくんと動く。  
航はまじまじと見た。実物を見るのは初めてだが…。  
思っていたより小作りな気がする。  
慎重に探ると穴があった。人差し指を差し込む。濡れているせいかつるりと入った。  
「ふぁああっ」  
咲良が鳴いて指がきゅっと締め付けられる。…きつい。  
「…力を、抜いて」  
ゆるゆると指を前後に動かす。咲良の腰が快楽をねだるように揺れた。  
「こ、…じ、まぁ…」  
名字じゃなくて名前で呼んでくれないかなと思う。そんなことを考えた航の耳に、息を整えた咲良が質問した。  
「これ、…なにやってるのよぉ? ぜったい、キスじゃない」  
「…うーん」  
 
どう説明すれば良いのだろう。航は自分にもう落ち着いて説明出来るほど余裕がないことも自覚していた。  
咲良は考えた。  
「そこ、…膣だよね」  
性的な知識は無いが、人体構造についてのデータならあった。  
小島がさっきからいじって、へ…、へんな気持ちになるそこは女性が持つ生殖器の一部だ。  
生殖行為をおこなうためにある。  
やりかたについての知識は無い。  
それでは、小島は自分と生殖行為をおこなっているのだろうか?  
咲良は航をじっと見つめた。  
航は照れている。  
「これは生殖行為をしているのか?」  
質問すると、「それはこれからするんだよ…」という困ったような答え。  
なるほど、私はこれから小島と生殖行為をするのか。  
航の目の前で、咲良がほっとしたように無邪気に微笑んだ。  
「わかった! 私は小島と生殖行為をするんだな!」  
航は脳の芯がくらりとするような感覚を味わう。底の方に残っていた余裕がふっとぶ衝撃だ。  
咲良の白い腕が航を抱き寄せ、頬の辺りにキスをする。  
「んぅっ」  
航が指を二本に増やした。  
 
指を増やしてぐっちゅぐっちゅとかき混ぜる。  
耳元には甘い咲良の喘ぎ声。  
やがて彼女が何度目かになる絶頂を迎える頃、やっと二本の指でも余裕が出てきた。  
上擦った声で「挿れるよ」と囁く。  
咲良はとろんとした淫猥な目つきで「生殖行為するのか?」と聞いた。航がズボンと下着を脱ぐのを見て目を丸くする。  
「それ、…なに?」  
ソレとはもちろん堅くて大きくなったアレである。  
「ひゃあっ」  
答えることなく、航は咲良の脚を抱えると堅くなったソレの先端を彼女の狭隘な入口に押し当てた。  
「あ、当たって…」  
当たって…の先が言葉にならなかった。小さな膣が拡張される。航のが入ってくる。  
「くっ」  
航も締め付けに声を漏らした。  
けれど腰は止まらない。奥まで貫くと、その圧迫感に咲良が悲鳴を上げた。  
「小島、苦しい」  
「すぐ終わるから」  
そんな短い言葉を交わしながら、二人の結合部は卑猥な音を立てた。  
時折、お互いに唇をついばみながら動きを速めていく。  
限界までくると、航はペニスを抜き咲良の腹に射精した。  
 
咲良はその行為をぼぅっと見ていた。  
お腹の上のあったかいべたべたしたものは、データにある精子だろうか。  
たぶん精子だ。  
丁寧にティッシュで拭き取られていくそれを、咲良はなんでだろうと思っていた。  
首をかしげている。  
「どうかしたの?」  
航に訊ねられると、彼女は真顔で聞いた。  
「小島、外に出したら生殖行為は成り立たないと思うが。この生殖行為は失敗したのか?」  
「…、え?」  
航は固まった。  
咲良は真剣である。  
「どうして失敗したんだ? 私は最新最高性能だ。失敗したなら挽回しなければならない」咲良は起きあがると、航の上着を脱がしにかかった。  
「ちょっ、ちょっと! 石田さん?」  
「特訓の必要性を感じる。小島はつき合わなければいけない」  
「だからっ」  
「最初からだ。まずはキスをしろ。命令だ」  
 
 
 
<終了>  
 

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