「コウ、見て見て浴衣、似合う?似合う?」  
「ああ…うん、似合ってるよ」  
出るべきところがお世辞にもそれほど出ているとは言えない咲良の体型に浴衣はよく似合っていた。  
ドスッと衝撃、一瞬遅れて鳩尾に鈍い痛みを感じた。  
「誰が貧乳かぁ!」  
見ると咲良の肘が打ち込まれていた。  
非力な女の子とはいえ肘での一撃、以前の俺なら這いつくばる羽目になっていただろう。  
しかし…どこの誰だ貧乳なんて言葉を教えたのは?  
「痛いよ咲良、小さいのがいけないなんて思ってないし、大きさよりも重要なものが…  
 ああ、いや、それよりもテレパスセルは反則、次ぎやったらお仕置だよ?」  
「アーアー聞こえなーい」  
耳を両手で塞ぎ首を振るその姿がかわいくて、急所への肘撃ちもテレパス使用も許せてしまう。  
末期症状だな、自覚してるだけまだマシか。  
 
「コウも…似合ってるぞ、浴衣」  
「…アリガト」  
ついそっけなくなってしまった。コレには訳がある。  
咲良は本心から思って言ってくれたのかもしれない。  
しかし俺自身似合っているとは思えなかったのだ。  
竜馬ほどとは言わなくても、もう少し体格があったならあるいは様にもなっただろうが…。  
昔、浴衣姿になると忌々しい事に(他人からは整っているといわれる)この顔もあって…。  
忘れたくても消えてくれそうに無い、嫌な思い出だ。我が人生の汚点だ。  
「ど、どしたの?コウ…」  
こわごわと咲良が声をかけてくる。あの日の血の惨劇を思い出し、我知らず怖い顔になっていたのかもしれない。  
「別に、なんでもないよ。」  
無理やり微笑んでみせた。咲良は納得しかねたようだが、それでもそれ以上は聞いてこなかった。  
「短冊は書いてきた?」  
俺は唐突且つ無理やりに話題を変える。  
「書いてきた…けど…」  
「けど?」  
「ねぇ、コウ?」  
「ん?」  
「七夕って結局どういう日なの?」  
…知らなかったのか?…いくらなんでもそんな基本的な事…そんな馬鹿な…  
 
あー、色々端折って説明すると、彦星と織姫って恋人たちが仕事をサボってイチャついてばかりいたんだ。  
 で、あんまり仕事をサボっていたせいで罰として引き離されてしまった。  
 けど一年に一度だけ特別に会う事を許されて、その日が今日七月七日の七夕なんだよ、確か。」  
「ふーん、けどそれってえーとジゴウジトク?ってやつだよね。」  
自分で聞いといてあんまり興味ナッシンって態度だな。  
…少し意地悪がしたくなった。  
「咲良は…咲良だったらどうする?俺と会えなくなったら。」  
さて咲良は、どう答えてくれるだろうか。  
 
「え……」  
咲良が黙り込む。その目に見る間に涙が満ちていく。  
しまった、余計な事を…  
「どうする?どうするじゃないわよバカァ!」  
涙の表面張力が限界に達しあふれ出す。  
「あんたが広島に行って帰ってくるまで実際に会えなかったんだぞ!  
 広島は最悪の戦況だって聞いて、アタシがどんな気持ちだったと思ってんのよバカァ!」  
俺のより一回り小さな咲良の拳がドカドカと俺の胸を叩く。  
ああ…痛い。ミノに殴られるよりも、スキュラのレーザーが直撃するよりも、ずっと痛い。  
「もういや、もうあんなの思いしたくない、いやだよぅ…」  
「ごめん咲良、もう言わないから、どこにも行かないから…ごめん」  
俺はそれ以上何も言えなくなって、胸の痛みをごまかすように咲良を抱きしめた。  
空気が鉛になったみたいだ。重い。  
俺はどうも本来はいじめっ子体質らしい、いつも咲良に痛い思いをさせてしまう…  
俺なんかと一緒にいて咲良は…  
咲良が重苦しい沈黙と暗い方向に向かい始めた俺の思考を断ち切る。  
「ねぇコウ、キ…命令だ!キスしてさっきの言葉を誓え!」  
………あー、何がスイッチになったんだ、咲良?  
 
最初はおでこに、次は左、右と順々まぶたにキスを落とす。  
頬をすべり口角にたどり着き唇のふちをなぞり…またおでこに戻ってやる。  
既に三度それを繰り返していた。むぅっと咲良がふくれる。  
さすがに業を煮やしたか、咲良のほうから俺の唇に向かってくる。  
二度三度と咲良の攻撃ををかわす、四度目は…突き飛ばされた。  
かわすのは簡単だったが、あえてそれを喰らい、仰向けに倒れる。  
「なんでっ?」  
「今では俺のほうが階級が上だよ、広島戦線で幻獣軍を押し返した英雄だしね。  
 本来なら命令ではなくお願いをすべき相手じゃないかな、石田千翼長?」  
「う…ん、…お願い、キス…して?」  
「はい、よくできました。」  
前置きはもういいだろう。咲良を引き寄せ、いきなり唇を舌で割り開き、歯列をなぞる。  
「ん…ふぅ…」  
咲良の舌を吸出し、捉える。  
必死に応えようとする咲良だが、やはり拙い。  
ま、シラフだとこんなもんだな。いや、俺はこの拙さがいいんだが。  
 
キスだけではどうにも我慢ができなくなってきた。  
浴衣越しにまだ硬さの残る胸に優しく可能な限り優しく、少しだけほんの少しだけ(言い訳がましいな)触れてみた。  
手のひらにツンと硬い感触……  
やおら前合わせから左手を入れてこじ開け、その感触の元を摘み上げてやる。  
「もう乳首がコリコリしてる。キスだけでこんなにしちゃって、どうしたのかな?」  
「そ、そんなこ…おぁっ」  
言いながらも右手は浴衣の裾を捲り上げ太腿をなで上げている  
頬にかかる咲良の吐息が熱さを増していく。  
さらに指を上へと進め、下着に指を掛け…無い  
そこにあるだろうと思っていた下着は無かった、つまり咲良はノーパンだった  
ブラを付けてなかった事から考えれば別に不思議な事ではない。おそらくは…  
「ふうん…、何で下着を着けてこなかったんだい、咲良?すぐシてもらえるように?」  
「ち、ちが…浴衣の下にはぁっ…何も、着ないんだって先生が…くぅっ…」  
やっぱりそうだったか、俺も昔言われた。  
「そう、じゃ今日はここまで。」  
「え?」  
「だって下着をとる時間さえ惜しむほどしたいの?って聞いたら違うって言ったじゃない咲良は。  
 咲良が求めないなら今日はあんまりしたくないんだよ俺、疲れてるから。」  
言ってる事が無茶苦茶な上に嘘ばっかりです。  
許可も求めずこっちからシようとしました。(その結果下着を着けてないことを知った)  
咲良も気付いてるはずだろう?ホントは我慢できそうに無いです。  
にもかかわらずこんな事を言う俺は…  
「い、いじめっこぉ…」  
そんなこと改めて言われなくても自覚してるよ。  
「人聞きの悪い事を言わないでくれるかな石田千翼長。」  
「でも…」  
「同じ事、二度も言わせないで、わかってるだろ?」  
「…して、ください…」  
「何を?」  
ああ、我ながら酷い事をしてるな俺…  
咲良は顔を真っ赤にし、また涙を浮かべている。  
泣いても駄目だよ?言ってごらん、咲良。  
「せっくす…してください…」  
 
人差し指と中指、二本で咲良の中の浅い、ごく浅いところをかき混ぜてやる。  
「コ…ウ、もう「足りなかった?」  
咲良が返事をするより早くもう二本指を入れ、人差し指から小指まで計四本の指で咲良の中を嬲る。  
「いや、いやぁ…ちが…う、違うの、コウ」  
ホントは何を言いたかったのか、多分解ってやってるんだよ俺は、ごめんな咲良。  
けど、解っていてもソレはかなえてあげない。  
「嫌なの?じゃ指抜いちゃうよ。」  
四本の指を引き抜くと、咲良が寂しげにひくつく様子が観察できた。  
かなえて欲しいのなら…  
咲良がオズオズと手を伸ばし俺のモノを握る。  
「コレ…入れて…」  
そうそう、ちゃんとお願いしてくれないとね。  
咲良が自らの手で入り口を開き、くちゅりと粘着質な音とともに溢れ出てくる様子を見せつける。  
「すごいな、溢れてるよ?」  
わざわざ咲良に聞こえるように言っているあたり度し難いな、俺も。  
「ココに…コウのコレ…入れて、入れて欲しいの…」  
……『何を?』とか『何処に?』とか、こっちが聞く前に先回りされたようでなんだか少し悔しい。  
 
「そうだね…じゃ、見ててあげるから自分で入れてごらん。できるよね、咲良?」  
仰向けになって促すと、咲良は一瞬躊躇ったものの、結局俺をまたぐ格好になった。  
右手を俺のモノに添え、その先端を自身の左手で押し広げた入り口にあてがう。  
熱い、入り口にあてがうだけでこの熱だ。  
中はどれほどの熱をはらんでいるか…  
「んっ…く、くうぅっ…」  
咲良が唇を噛み締めゆっくりと腰を落としていく。  
俺が半ばほどまで飲み込まれたところで、腰を大きく一つ突き上げてやる。  
「ひぁっ!」  
可愛らしい悲鳴だか嬌声だかを上げて、咲良が崩れ落ちてくる。  
熱い、熔けてしまいそうな錯覚を覚える。  
「辛そうにしてたもんだから、手伝ってあげようかと思ったんだけど…余計だったかな?」  
「コ…ウ、この体勢やっぱりつらい、無理だよ…いつもみたいに前から…」  
試しにやらせてはみたけれど、もとより咲良にはまだ無理だと思ってはいたんだ。  
「ああ、いいよ」  
体を起こし体勢を入れ替えてやると、すぐに咲良が正面からしがみつき、両足を絡めてくる。  
咲良に言わせると、こうしてしがみついていると安心できるのだという。  
 
俺の腰の辺りに絡みついた咲良の足が、強く強く、引き寄せるように締め付ける。  
もっと深く、もっと強くと、ねだるように締め付ける。  
ソレを解っていて俺はわざと、より浅く、よりゆっくりと動く。  
何故?と問うような咲良の視線。  
その目で見られると辛いな…。  
「ゴメン、咲良があんまりにも可愛いからつい虐めたくなったんだ。もうしない(つもりだ)から。」  
コクンと一つ咲良がうなずく。  
「奥…いくよ?いいね?」  
俺はゆっくりと突き込んで、最奥の肉壁に突き当たり動きを止めた。  
「なんで…動き止めちゃうのよ」  
自ら腰を動かしかけた咲良を抱きしめ、咲良の方から動く事をも封じる  
「少しだけ、もう少しだけこうしてたいんだよ。駄目かな?」  
咲良は少し考えた後、俺の胸に顔を擦り付けるようにしてうなずく。  
咲良を抱きしめたまま咲良の形を、匂いを、体温を確かめる。  
なんとなくだが、咲良が安心するといっていた気持ちが解るな。  
 
不意に頭の中を冷たいものが掠め過ぎる。  
どれだけ幻獣を殺せようと、どれだけ強くなれたとしても俺は所詮人間だ、この肉体は不滅ではありえない。  
咲良とずっと一緒にいる、誓いは俺の肉体が失せるとともに色を無くし朽ちる。  
そして戦いの中に身を置いている限り、その時はそう遠くないうちに訪れる、そんな気がする。  
せめて俺の魂に咲良の形を匂いを体温を刻み込んでおきたい。  
俺の存在を、カケラでもいい、咲良に持っていて欲しい。  
…縁起でもないな。何でこんな暗くて、しかも身勝手な事考えてるんだ俺は?  
こんなに幸せなのに……そうか、今俺は幸せで…だから…  
「も…いいでしょ?動いて…欲しい」  
「あ、ごめんね、じゃあ動くよ?」  
 
ゆっくりと俺自身を引き出すと、わずかばかりの別れすら惜しむように咲良の中は絡み付いてくる。  
心配しなくてもまたすぐに会えるのに。  
咲良を割り開きながら再侵攻を開始、今度は再会を喜ぶかのように締め付けてきた。  
肉が擦れ合い、ぶつかりあう音が、二人の息遣いが、くちゅくちゅと分泌液のかき混ぜられる音が、聴覚を支配していく。  
俺の意思を離れてスピードが増していく。  
こうなるともう最後まで止まらない。ちがうな、俺が止めたくないんだ。  
咲良が唇をかみ締め、目を潤ませて俺を見上げる。もう言葉にするのもきついようだ。  
「もうクる?俺もそろそろだ。どうしよう、中がいい?外に出す?」  
喋るのが辛そうだと解っていながら咲良に振る、もう意地悪しないって言ったそばからこれだ。  
三つ子の魂百まで、か…俺は死ぬまでいじめっ子なんだろうな…  
「なか…に…しい…」  
「中?」  
咲良が壊れんばかりに激しくうなずき、俺はアゴに頭突きを三発ばかりもらった。  
…落ち着け俺、咲良はわざとやったわけじゃないんだから。  
痛みが鎮まるのを待ってるわけにもいかず、痛みに耐えながら腰を叩き付け続ける。  
先端にコリコリとしたものが当たるのを感じた。  
咲良の絶頂が近づき、降りてきたのだろうか。  
俺も……限界だ。  
咲良の最奥に位置するソレに押し付けるようにして……  
「イクよ」  
「ふぁ?あっ、ん…んうぅ―――――――――!!」  
 
 
 
「…ねぇコウ?今思ったんだけど、彦星と織姫は会う時浴衣着て行くのかな?」  
「いきなり何?……何でそう思ったの?」  
「一年に一日しか会えないんじゃ服脱ぐ時間も勿体無いじゃない?浴衣なら捲っ「ストップ、もう解ったから。」  
最後の最後になんて事言うんだ、いったい誰に似たんだか…   
 
 
 つづかない  
 

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