「はあー、今日の体育も疲れたぁ」
まだ昨日からの雪が降り続いている午前中の教室内、下着姿の女子達がのんびりと着替えをしながら雑談を交わしていた。
皆可愛らしい下着姿を晒して呑気に話し込んでいる。
その中で咲良は体育着を脱いだままじーっと後ろの席の横山を睨んでいる。
「どっ、どうかしましたが?」
咲良の視線に気付いた横山はきょとんとした顔で咲良の視線を追うと、自分の下着を見て不思議そうに首を傾げた。
紅綯の目を細めて、咲良はどこかつまらなそうな声を上げる。
「その"ちちばんど"可愛いな…」
「…ブラジャーの事?」
あんまり咲良に見つめられている横山は、恥ずかしそうにブラジャーを隠すと咲良のスポーツブラを見て苦笑した。
咲良もそれなりに胸はあると思うのだが、着用しているのはいつもスポーツブラである。
年頃の女の子なら可愛いブラジャーを何着か所持しているはずだが…と考えて、横山はにっこり笑う。
「隊長も買ったらどうですか?スポーツブラなんて着けてる子いませんよ、少なくともうちのクラスには」
そう言って教室の中で着替えている女子を見渡すと、確かに色とりどりの下着を着用した少女たちが目に入る。
咲良は顎に手を当てて小さく唸ると、小さな声でぽつぽつと語り出した。
「空先生が買ってくれないからわかんない…」
「そっ、そういうのは自分で買わなきゃだめですよ!」
「どうして?」
「どうしてもです!」
横山は即答すると、机の中からメジャーを取り出して咲良へと突き出した。
それを疑いもなく受け取って、ピーッと伸ばす咲良を見ながら横山が言う。
「あとでトップバストとアンダーバストを測っておいてください。トップとアンダーの差が隊長のブラジャーのサイズですから」
「……とっぷ?あんだー?なにそれ…おいしいの?」
「たべられませんよっ!ああもう…」
メジャーを引き伸ばしたまま、眉間に皺を寄せている咲良に横山は大きくため息をついて咲良のブラジャーを引き上げた。
ぽろりと膨らみかけの乳房がこぼれてくる。
さほど大きくはないせいか、型崩れはしていなかった。
そうしてメジャーを咲良の胸へ回すとてきぱきと手馴れた様子で測っていく。
その様子を咲良が不思議そうに見つめていた。
「…なんか、亜美ってお姉さんみたい」
「そうですか?」
咲良のトップバストを測っている横山はふと顔を上げて咲良を見た。
小さな隊長はあどけない表情で笑うと「うん」と付け足して頷く。
なんだかこそばゆい気分になってしまって横山がつられたように笑うと同時に、ガラリと教室の扉が開いた。
「あーっ、暑い暑い…うーん、やはり教室の中は涼しいな」
ぱたぱたと掌でうちわを作りながら教室の中に入ってきた谷口に、女子達の冷たい視線がぶつかる。
谷口は凍ったまま、目に飛び込んできた咲良と横山のあられもない姿を目にした。
幸い乳首はメジャーで隠れているが、小さな乳房を露出した咲良と、今だ下着姿の横山。
咲良はぽかんとした顔をして、もう一方の横山は谷口と同じように固まっていたが、やがてひきつり笑いを浮かべながら自分の机の横に立てかけてあるカーボン竹刀を手にした。
はたと我に返って谷口がその場から逃げようとするが、それよりも早く横山の竹刀が空を切る。
「いや、ちょ、待て!これは誤解…むしろ俺は何も見なかった!」
「嘘をつけぇーー!今じっくり5秒見てたじゃないですか!!」
「数えてたのか!?…じゃなくてこれは事故だ事故!!見たくて見たわけじゃ…」
「黙れぇ!昨日の作戦会議で"体育の後は混乱を招かないように女子は教室で着替え、男子は廊下で着替える"って決めたじゃない!故意に決まってるっ…ぶっとばします!!むしろ生きて返しません!!」
ズパーンズパーン
脳天に思い切り一撃を決められた谷口はそのまま卒倒した。
動かなくなった谷口を教室から追い出してしっかりと鍵までかけた横山は、ぜぇぜぇと荒い息をついてから「もういやだケダモノだ最低だお嫁にいけない」とぶつぶつ呟いている。
そんな横山に、咲良は既にメジャーを巻き戻して笑った。
「トップのサイズ測ったよー」
それはもう無邪気な笑みで言うものだから、横山は泣いて良いのか笑っていいのか分からずガクリと項垂れた。
その日の午後のこと。
今日は午後から会議があるからもう帰っていいよと空先生が生徒たちに言った。
なのでカラオケに行くものもいれば訓練に励むものもいて隊員たちの行動は様々だ。
咲良はともに帰ることが当たり前になってきた親友の小島航と隣に並んで校門前を歩いている。
数時間前に起きた話を聞きながら、航が苦笑いをした。
「…はあ、だから竜馬早退したのか…そりゃ殴られるよ」
「それでねー、亜美が言うにはね、私ね、ちちばんど買ったほうがいいんだって」
「ぶっ」
突然の発言に航はずっこけた。
乳バンドってどこのオヤジだよとツッコミかけるが、とりあえず顔を上げる。
咲良はいたって真面目だった。
ノートの切れ端のようなものを航に突き出して真剣な顔をしてみせる。
「これ、私のトップバストとアンダーバスト。亜美に書いてもらったの」
「ぶふっ!!」
航の目に入ったのは、男にとって未知の数字だった。
再度吹き出した航に、咲良が「真面目に聞け」と叱責する。
この状態で真面目になれるかいと突っ込みそうになった小島だが、あえて押し黙った。
「でね、亜美はこれからバイトがあるから一緒にちちばんど買いにいけないんだ。だから小島…」
「だめ」
「まだ何も言ってない!」
咲良はノートの切れ端を握り締めると、航の胸をがっしりとわしづかんだ。
「小島もつけたほうがいいよ、ちちばんどつけないと垂れるって亜美が言ってたもん」
「…天地がひっくり返っても垂れるほど膨らまないから大丈夫です」
航は大きくため息をつくと通学用鞄を肩にかけて、それから何となしに咲良の胸を見た。
―――石田さんて…つけてないんだ、ブラジャー。
そこまで考えて思わず赤面する。
一瞬にして湯気が出るほど赤面した航を咲良が訝しげに見つめると、拗ねたように顔を寄せた。
甘えるような上目遣いで見つめられるから思わず目を逸らしてしまう。
「…ねえ、何でだめなの?一緒に買って欲しい。買わないと死んじゃうって亜美が言ってた」
「死なない死なない」
「だから一緒に来て?」
咲良はちっとも聞いてない。
航は何かを言いかけて、それから参ったように長い髪をかくと長くため息をついて口の中だけで「うん」と呟いた。
すぐさま咲良の表情が花のように輝く。
この表情に弱い航はつられて照れくさそうに笑った。
無邪気に腕を絡めてきた咲良と並ぶようにして通学路とは違う市街地へと足をむける。
カラオケボックスの隣の店が下着屋をやっているのだと咲良は言った。
そうして流されるように下着屋の前までたどり着くと、咲良がはしゃぐように店の扉を開ける。
どこか女性的な香水の香りがした。
「…変じゃないかな、男がこういう所にいると…」
「どうして?小島も買うでしょ?」
「だからいらないって」
苦笑しながら言う航を尻目に、咲良は興味津々で下着を眺めていく。
店は小さな下着屋だった。狭い室内にこれでもかというほど下着がぶら下がっている。
航は下着で酔いそうになりながら咲良の後に続いた。
既に咲良は下着選びをしている。
「うーん、うーん、Gカップってどういういみ?」
咲良はかなり大きなブラジャーを両手に持って航に差し出した。
思わず顔を背けかけるが、航はおずおずとブラジャーを手に取ってから遠慮がちに咲良の胸を見る。
「いや、これはちょっと大きすぎるんじゃないかな…なんて」
「お客様、何をお探しですか?」
ふと咲良の背後から可愛らしい容貌の店員が顔を覗かせた。
栗色の髪にパーマをかけているのかゆるくウエーブした髪が肩に垂れていて、ピンクのエプロンをつけていた。
女性的な香水の香りはこの店員によるものらしい。
店員は航の手の中にあるブラジャーを見るとぶら下がった商品のひとつを取ってにっこりと微笑んだ。
青い色をしたブラジャーだ。
「お客様にはこちらがお似合いですよ?」
「いや、僕には必要ないですから!」
ためらいもなくブラジャーを航の胸に当てる店員に航が力強く突っ込む。
店員は「男の方でも買っていきますよ?」と不満げだったが、そのブラジャーを咲良に向けてから首をかしげて笑った。
「お客様には…この色違いがお似合いかしら」
そう言ってオレンジ色の花が縁取られたブラジャーを咲良に見せるが、咲良はかぶりを振った。
「さっきの青い色のがいい」
手を伸ばして青い花が縁取られたブラジャーを取ると、咲良は自分の胸に当てて首を傾げた。
試着室はあちらですよ、と店員が指し示す方向へ咲良が走っていく。
途中で歩みを止めると助けを求めるように航へと振り返った。
「小島ー、こっちきて手伝ってー」
そう言いながら試着室のカーテンを閉める咲良に航は大きくため息をついて、それでも躊躇いながら試着室へと入っていく。
今日はとんだ厄日だなと思いながら顔を背けていると、咲良は早速制服を脱いでスポーツブラを取り払ったところだった。
しかもわざわざスカートまで下ろしている。
何も全部脱がなくても、と航は思わず茹でダコになりそうになった。
思い切り間近で咲良の素肌が晒される。
「ねえねえ、これ…どうやってつければいいの?」
「俺に聞かれても困る…」
咲良はブラジャーの留め金に苦戦している。
見かねた航がそれをゆっくりと外した。
胸を覆うようにブラジャーをつけていく咲良だったが背中の留め金に手を伸ばして、それから大きくため息をついた。
どうやって留めればいいのかわからないらしい。
咲良の視線が航に向けられた。
つけてくれと言うことなんだろうが、航はしどろもどろになっている。
それでも留め金をつけてやると咲良は苦しそうに胸を押さえて首を傾げた。
「…変な感じ。胸の下が押されてるみたいで苦しい…」
「別のサイズ頼んでみようか?」
「んーん、サイズは合ってるの。でも何か変だ…」
初めてブラジャーをつけたことによる違和感なのか、咲良はブラジャーを見て眉を寄せている。
航は、すぐに慣れるんじゃない?と笑ってから、咲良の足元に落ちているブラウスを拾った。
「それにする?ならブラジャー脱いで。精算しに行こうか」
「うん、外して?」
「…まったくもう」
無防備に背中を向けた咲良はちらりと航を見た。
異性と狭い空間にいることを自覚しているんだろうかと思いながら航が留め金を外してやる。
綺麗な背中が航の目に入った。
「ねえ小島…なんで男は胸が大きくならないの?」
「さ、さぁ?」
不思議そうに咲良が振り返ると小さな乳房がお互いの目に晒される。
これ以上俺を酸欠にしないでくれとばかりに航が目を逸らすが咲良は全く気にしていない。
それどころか、体を寄せるようにして航の平たい胸に触れた。
「揉めば大きくなるって亜美が言ってたから…小島もこうすれば大きくなるかな?」
制服の上から咲良の指がくにくにと航の突起を弄る。
反応しそうになった航は大きくため息をつくと、かぶりを振って咲良の手を掴んだ。
「…っちょ…大きくなるわけないだろう?女と男は別なんだよ」
「なら、小島が私の胸触って?」
「はあっ!?…いたっ!」
咲良の爆弾発言に顔を上げた小島が壁に頭をぶつける。
狭い試着室であることを忘れていたためか、その痛みは強烈だった。
航は後頭部を押さえながら咲良をたしなめる様に苦笑する。
「あー…あのね、石田さん…こういうのは好きな人にやってもらったほうが効果があるみたいだよ?」
「私、小島のこと好きだ」
「いたっ!」
「…なんでさっきから壁に頭ぶつけてるの?」
咲良は不思議そうに航を見ると、自分の胸を見て眉を寄せた。
私はみんなより胸が小さかったと今日の着替えを思い出す。
みんなは普段素肌を晒さないからわからないが、あんな大きなものを服の下に隠してたんだなと思うと少し悔しくなる。
咲良は唇を噛んだ。
「私…私は最新最高性能の指揮官型新型だ。旧式に胸のサイズで負けるなんて恥ずかしい」
「いや、張り合わなくても…」
「それに」
咲良はふと恥ずかしそうに頬を染めると、自分の胸を隠すように航の胸へ擦り寄った。
制服越しにふたつの膨らみを感じて航が思わず目を瞑る。
唇を噛んだままの咲良は航へ視線を上げると拗ねたように言った。
「男は胸の大きい女が好きなんだって聞いた」
その言葉に年頃の少女らしく可愛いものが含まれていることを感じ取り、航は照れくさくなる。
おずおずとすべらかな背に腕を回すと、ふたりにしか聞こえない程度の声色で言った。
「…石田さんは、そのままのほうが可愛いんじゃないかな…」
「私はそれじゃ…いやなの」
すぐ近くに少女の息遣いを感じて、航は顔を背けたまま返事を飲み込む。
どうやって返事をすればいい?
どうすれば彼女は喜ぶ?
悶々と心の中で葛藤しながら、航はそっと咲良の肩口に顔を寄せた。
「どうして…欲しいの?」
「…触って?」
咲良は直球でものを言うと、真顔で航を見つめた。
静かな衣擦れの音か聞こえる。
青い髪の少女は恥ずかしそうにも怒っているようにも見える表情を向けて航の手を取る。
そのままふっくらした乳房に当てるから、航は困ったような顔をして、それから手の中にそれを収めた。
マシュマロのような感触が伝わる。
しっとりとしたきめ細かな肌を撫でながら、ヨコシマな気分になってくる航を尻目に咲良は真面目な視線を向けた。
「もっとして。きっと搾り出すようにでも揉まないと大きくならないとおもう」
「で、出来るわけないじゃないか!」
「…なんで怒るの?そうだ、ついでに小島の胸も揉んでやる。これでおあいこだ」
「…何がおあいこなんだか…」
咲良は無邪気に航のブラウスを捲り上げると、平たい胸をむにむにと揉んでいる。
柔らかいとは言えない男の胸を揉んでいて楽しいのだろうかとツッコミたくなる航だったが、あえて仕返しのつもりで咲良の乳首を軽く爪で擦り上げてやる。
「ふぁ…く…痛いよ。ねぇ、何で先っぽだけ触るの?揉んでくれなきゃ嫌だ」
狭い試着室では互いの吐息が妙に大きく聞こえた。
咲良の艶めいた吐息が耳につく。
「…痛いなら離さなきゃ。離したらちゃんと揉んであげるよ?」
航は壁に背を預けながら少しだけ上がってきた息を整えて笑った。
そうして人差し指と親指で突起をきゅっと摘んでやると咲良の口から甲高い声が漏れる。
さすがに店員に聞かれてはまずい。
航は自分の唇に人差し指を当てて、咲良へ静かにするようにとジェスチャーを送った。
自分の口を片手で塞いだ咲良は、まだ飽きもせずに航の胸を揉んでいる。
航は内心、少しだけ意地悪をしてやろうと考えた。
「石田さん、そんなに触ってほしい?離さなきゃずっとこのままだよ」
乾いた指の腹が咲良の突起を擦りながら押し付けるように愛撫していく。
既に尖ってしまった突起に痺れを感じながら、咲良が小さくうなる。
「…っあ、う…痺れちゃう。んっ、けど…小島のもかたくなってるよ?」
「ん、それはね…石田さんが乱暴に触るからだよ」
「私は乱暴じゃな…ひっ…」
不意に咲良の体が弓なりに反り返る。
空いたほうの航の手が咲良の下着の上から柔らかい部分を擦っていた。
散々ブラジャーだの揉んでくれだの石田に押され続けたせいか、航もそれなりに溜まっていたらしい。
どこか危ない目をした航は少しだけ目を細めて下着の上から肉芽を探り当てた。
「男の前で素肌を晒したらいけないんだよ?こうやって触られちゃうんだから」
言いながら下腹部を愛撫する航を見て、咲良がすがるように航へと顔を寄せる。
声を出すなと言われているせいか苦しそうに声を抑えていた。
「こっ、小島…そこはだめ…なんか変だ…くぅ…ひや…やだぁ…」
「ブラジャー買うならこっちも買ったほうが良いんじゃないかな?…ずいぶん濡れてきちゃったし…」
航の指が咲良の下着を躊躇いなくずり下げていく。
そうしてまだ未発達な部分に指を差し入れて軽く慣らすように擦りあげた。
びくんと大きく咲良の体が震える。
「あっ、や…そんなとこ…うあ…ぐっ、ひ…変なの、熱いのっ…こ、声がっ…我慢できな…」
咲良は航の制服に噛み付くようにして声を押し殺している。
熱くなった部分はとろりと愛液を流しながら航の指を濡らしていった。
既に指が2本も入ってしまうくらいに咲良の体は柔らかくなっている。
航は咲良の胸から手を下ろすと、自分のベルトのバックルをやにわに外した。
相手の行動に反応できないほど切羽詰っている咲良にはただ声を殺すことしかできない。
「石田さん、いれてもいい?」
「…え…?う、あ…」
航の言葉に顔を上げた咲良に唇が重なる。
同時に濡れそぼった場所へゆっくりと硬いものが挿入されていった。
ぴちゃ、と水っぽい音が結合部から聞こえてくる。
咲良は航の唇で声をふさがれたまま、苦しそうに唸った。
「んっ、んんーっ…んふ…ふあ、うぁ…だ、だめぇ…胸触られたときより、いっぱい痺れちゃうよぉ…」
キスの合間から咲良が艶めいたような、苦しそうにも聞こえる吐息を漏らす。
やや強引に腰を進めながらようやく我に返った航が、あっと声を上げる。
勢いで咲良を抱いてしまうなんて親友失格じゃないのかと後悔のあまりやや涙ぐむが、咲良は余裕のない表情で航の服を掴んだ。
「ひぐぅ…小島、ねえ…どうすればいいの…?私、わたしっ…中のが動いて、変な気分…」
咲良の紅綯の瞳が揺らぐが、それは涙からではないらしいことに航が気付く。
涙というよりもどこか淫猥な光りだった。
こんな狭い空間で触れ合っている事に対して、咲良も無意識のうちに興奮していたのだろうか。
航は、躊躇いがちに咲良の腰を強く抱いた。
試着室の鏡がふたりの姿を妖しく映す。
それを見て咲良が涙ぐみながら喘いだ。
「う、あ…ぐ…あんな大きいのが入ってるの…?ふあっ、ああ…ひ、ああァっ…」
繋がった部分から誤魔化しのきかない卑猥な音が漏れる。
ここまで狭い店だ。店員に聞こえていても可笑しくはない。
航はやや強引に腰を使いながら咲良の唇を奪った。
肌の擦れあう音が互いの耳に入ってくる。
揺さぶられながら、だんだんと未知の絶頂に近付いてきた咲良はすすり泣くような声で航にしがみついた。
「あっ、ぎ…うああっ、何かがくるよぉ…やだ、やだぁ…あ、はぁああっ!」
びくりと咲良の体が震えた途端、繋がった部分がきつく収縮した。
ただでさえ狭い器官がさらに航のものを締め上げる。
航は咲良の体を強く抱きしめた。
「っ、あう…石田さ…!」
航のものから溢れる白濁した液体が咲良の子宮に叩き付けられていく。
体内で敏感に感じ取ったのか、石田はそれを受け止めてがくんと上体を航へと預けた。
「…んあ…はぁ…石田さん、ごめん…ごめん!」
しばらくぽやーっとしていた航だったが、すぐにことの重大さに気付くと真っ青になって頭を下げた。
そんな航を、忙しい奴だなぁと思いながら咲良が首を傾げる。
「…なんで謝るの?」
「いや、だって…中で…」
「私の体は卵子が作られないからいくら種が来ようが平気だ」
「そ、そうなんだ…ってそんなことより無理やり…」
「んー…」
航がしどろもどろになっているのを見るのが面白いのか、咲良は頬を指でかいて少しだけはにかむ。
「…なんか、気持ちよかった」
そう言って笑う咲良の笑顔にすっかり脱力してしまった航は、ゆっくりと少女の肩にもたれて苦笑した。
次の日、ブラジャーを横山に見せびらかす咲良の姿が教室で見られた。
航は暇潰しに読んでいる参考書をぺらぺらとめくりながら昨日のことを思い浮かべる。
あの後、何とか事後処理をして試着室を出たとき、妙に店員がにこにこしているのが怖かったこと。
「よかったらお使いください」と、何故か色違いのブラジャーを店員に渡された事。
どうやって使えばいいんだとのツッコミは爽やかに無視された。
それから帰り道、二人で並んで歩くときが妙に照れくさかった事。
これは航だけがそう思っているのかもしれないが。
「…はぁ」
参考書片手にため息をつく美少年に後ろから声がかかる。
航が振り返ると、魔性のクラスメイト工藤百華の姿があった。
「隊長嬉しそうじゃない?見たわよ、昨日二人で帰ってるとこ」
「…うっ、そ…そう?」
ついひきつり笑いを浮かべる航に、工藤がくすくすと意味深な笑顔を見せている。
そうしてけだるそうに背伸びをすると隣の席にいる岩崎の肩に手を置いた。
「私たちもあれくらい激しくなれたらねぇ?」
「あははは、小島くんと石田さんには及ばないよ。せいぜいカラオケボックスで大人の真似事するくらいさ」
「ぶっ!き、君たちは一体何をやってるんだ!?」
けらけらと笑っている岩崎と工藤のカップルに航が吹き出す。
工藤は岩崎の机の上に腰掛けて足を組むと、にっこりと妖艶に微笑んだ。
「えー?監視カメラがついてる所でするのって燃えない?」
「燃えない燃えない!」
「あなたたちだって試着室でやってたくせにそういうこと言うんだぁ…」
「うっ…なんでそれを知って…」
教室の隅でブラジャー話に花を咲かせている咲良を尻目に、航は冷汗を流しながら岩崎と工藤を見やった。
工藤は手に口を当てて上品に笑うと、岩崎の首筋に腕を絡めてみせる。
「うちの優秀な恋人のお・か・げ」
「あはは、首絞まってるよ工藤さん」
「絞めてねーだろ!」
工藤が岩崎の頬を引っ張りながら仲睦まじくやりとりしているのを見ながら、航は倒れるように机へと突っ伏した。
終わり。