【彼と彼女のソネット】  
 
しんと静まった暗く狭い映画館内で、すっかり飽きてしまったかのように咲良が大きな欠伸を漏らした。  
学生には嬉しい日曜日、せっかくの休みなのだからと工藤にダブルデートなるものを突然提案された。  
デートと言う言葉自体よく分かっていない咲良だったが、それを快く了承する。  
工藤は恋人の岩崎を連れて、咲良は仲のいい航を連れて。  
小島くんと付き合ってるんでしょ、と工藤に冷やかされたが、咲良は恋人と言うよりも仲がいい友達なのだと斬り捨てた。  
恋人という響きにおかしな感覚を覚えながら、3列目の結構前の席で右から岩崎、工藤、咲良、航の順で座った。  
映画が始まった頃はまだ咲良と工藤で軽く雑談を交わしていたが、内容が盛り上がるにつれて工藤はうっとりと内容に見惚れている。  
それがつまらないらしく、咲良はずっと飽きずにポップコーンを頬張っていた。  
映画の内容はラブストーリーで、好き嫌いが別れる作品に出来上がっている。  
岩崎と工藤のカップルが仲睦まじげに映画に見惚れていた。  
咲良はポップコーンを頬張りながら、スクリーンを見上げる。  
好きだとかなんだとか、恋人役の男が言っているが咲良には感情移入が出来なかった。  
キュンともこない。  
「小島はこういうの好き?」  
ポップコーンを食べながら視線を向けると、黙って映画を観賞していた航は苦笑して咲良を見た。  
石田さんはこういうの苦手そうだよね、と小さな声で言う。  
そうしてまたスクリーンへと視線を戻してしまった。それが咲良にはつまらない。  
つんつんと航の肩を指でつついて、また自分に向いてもらおうと試みる。  
拗ねた様子の咲良を見て、航は少し首を傾げたがポップコーンを見て思い出したように「あ」と言った。  
「ポップコーンだけじゃ足らない?俺が買ってこようか…待ってて」  
「あ、ちが…」  
咲良が止める間もなく、航はズボンのポケットから小銭を取り出して席を立ってしまう。  
別に菓子が欲しいわけではない。  
菓子は美味しいが、買いに行かせるつもりではなかった。  
咲良はポップコーンの入ったカップがへこむくらい握り締めると航の後を追うように席を立つ。  
暗い館内では、航がどこに行ったのか分からないが躓きながら出口を探した。  
ようやく重い扉を開けて館内の外に出ると、菓子売り場に航がいた。  
咲良はすぐさま航へと駆け寄る。  
「小島、私は…」  
菓子なんかいらないと言いかけるが、航は満面の笑みでダブルコーンを差し出す。  
「石田さん、こういうの好きだよね、食べるだろ?」  
「食べる」  
目の前のアイスの誘惑に負けて、咲良は航からダブルコーンを手に入れた。  
うなだれている咲良を尻目に、航は自動販売機でコーヒーを購入して喉を潤している。  
そうして、どこか機嫌の悪そうな咲良を見て航が笑った。  
「ちょっとその辺歩く?映画見ててもつまらないみたいだし」  
「…いいの?」  
「うん、行こうか」  
航がコーヒー缶を持ったまま歩き出すと、咲良も一歩遅れて歩みを進めた。  
アイスを無心に食べている咲良がいつ転ばないか気を配りながら航は唐突に口を開く。  
「石田さんって恋愛とかどうおもう?」  
館内の外は雪景色だった。  
ちらちらと舞う白銀の雪と、白い息を見ながらコーヒーを一口飲んで航が言う。  
 
「さっき映画で言ってたよな、この恋は永遠とか、100年傍にいるとか。  
永遠ってとても長い時間のような気がするけど実際はそうじゃなくて、本当は…」  
「あー、美味しかったあ」  
航の言葉にかぶって、咲良が満足そうに笑った。  
まだ唇にアイスのカラフルな色をつけていたが、すぐに手の甲で拭っている。  
航は苦笑して、コーヒー缶を足元に捨てた。  
カラカラと転がっていく缶を見ながら咲良が言う。  
「永遠って何年たてば永遠なの?」  
「…さあね」  
「100年も傍にいたら大抵の確率で人間は死んでるよね?」  
「…さあね」  
「上官の質問には真面目に答えろっ」  
突然曖昧な答えを返すようになった航を見て、咲良が唇をへの字に変えた。  
コロコロとよく表情が変わるなぁと思いながら航は口の端を上げて笑う。  
「答えなんか簡単さ。石田さんにはわからないかもしれないけど」  
明らかに挑発するような航の言葉には特に悪意はなかった。  
私が無知だって言いたいのかという台詞を飲み込んで、大人しくしている咲良に航が続ける。  
「100年って、昔の人の言葉で"永遠"って意味なんだって。だから、"永遠"は恋人が死んだとしてもずっと続くよ。仮に俺が君に永遠を誓って明日死んでも…俺は君の傍にいる」  
不意に航の目が細くなる。  
咲良が航の異変に気付いたときには、既に強く抱きしめられていた。  
何が起こったのかわからなくて動けないまま、目を瞬いていると、頭の上から長いため息が聞こえる。  
「…こんな告白、卑怯だったかなぁ?」  
「…どういうこと?」  
咲良は体内で沸騰する熱を感じながら微動だにせず聞き返した。  
友達が妙に大人っぽく見えるのは何故だと自身に問いただしながらも、答えは出ない。  
先生なら教えてくれるのだろうか。  
「好きなんだ、石田さんのこと」  
航は咲良の耳朶に唇を当てて呟いた。  
耳朶に伝わる声の音がくすぐったくて、咲良は思わず笑ってしまった。  
何も分かっていない様子の咲良に、航が再度ため息をつく。  
「人が真剣に告白してるって言うのに…」  
「わ…悪かった、ごめん!…告白ってなに?」  
「後で兄さんに聞きなよ」  
航は拗ねたように咲良の体を抱きしめると、シャンプーの匂いをかぐように青い髪へ顔をうずめた。  
咲良はと言えば、思考回路がパニックを起こしているのか視線をあちこちに向けながら抱きしめ返す事もできずあたふたしている。  
あんまりにも近くに嗅いだ事のない他人の匂いがする。  
それがどうにも脳の一部を可笑しくしているような錯覚に陥った。  
「頭の中が熱くて苦しいよぉ…うう…冷却しなきゃ」  
咲良は強く目を瞑って頬に手を当てた。  
異常なほどに熱い自分の頬に混乱しながら、じたじたと足を踏み鳴らしている。  
そんな咲良の行動を見て、航が笑った。  
 
「俺が冷却しようか?」  
航が真っ赤に染まった咲良の頬に手を添えてやると、あっと言う間に彼女の首まで朱が差す。  
咲良は思わず航の体を突き飛ばした。  
「こっ、小島が傍にいるから故障するんだ!小島の馬鹿!」  
突き飛ばした事による罪悪感と、羞恥に咲良はすぐさま身を翻して走り出した。  
最悪だ。  
何も突き飛ばす事はなかっただろうと走りながら反省する。  
同時に、航は自分を好いていてくれるのだと朧ながらに理解した。  
戦闘の時も学校生活の時も、彼は自分に世話を焼いてくれていたように記憶する。  
でもそれは部下なのだから上官の世話をするのは当然の事で、咲良もそれを当たり前のように受け止めていた。  
咲良は路地裏に逃げ込むと、そのままへたりこんで誰にともなく泣きべそをかいてしゃくりあげる。  
「…こんなの先生は教えてくれなかったよぉ…ひっく、うう…苦しいよ…」  
体が熱いやら、苦しいやらで咲良の感情はパンパンになっていた。  
ボロボロと涙をこぼしながらそれを手の甲で拭って、体内の異常を回復するすべがないことに絶望する。  
苦しい感情は留まらず、ずっと内側から溢れてくるようだった。  
「いやだぁ…出てこないでよぉ…もうどっかいってよお…」  
咲良は地面に積もった雪を掴むと、遠くへほおり投げた。  
いっそ全機能を停止してしまえばいい。  
それか、戦闘モードにはいってしまえば何も考えなくてすむ。  
咲良はしゃくりあげながら戦闘モードへの切り替えを始めようとした。  
「咲良!」  
「…う、ひっく…」  
丁度いいタイミングで、背後から声がする。  
おずおずと振り返ると、そこには息を切らせた航がいた。  
航は、顔中真っ赤にして涙を零している咲良を見て慌てたように座り込む。  
「ど、どうしたの!?腹が痛いのか?石田さん!」  
咲良の肩を掴んでガクガクと揺さぶる航に、咲良は全部お前のせいじゃないかと言おうとしたが、実際にしたのは全く別の事だった。  
咲良は自ら強く航の体に抱きついて「航」と彼の名を呼ぶ。  
不意に抱きついてこられた航は仰向けに倒れたが、咲良が自分を抱きしめているのだと分かると咲良の髪を撫でて、何も言わずに抱き寄せた。  
今だしゃくりあげたまま、咲良が航の胸に顔を埋める。  
「ひっく…苦しいよ…」  
「俺のせい?」  
「よくわからない…」  
咲良はかぶりを振ると、視線を上げて航を見た。  
濡れた紅綯の目が交わるから、航は少なからずドキッとしてしまう。  
体の上で大人しくしている咲良は続けて言った。  
「でも、小島が来てくれたら苦しいのが消えたの。でも、やっぱり苦しい…」  
「結局苦しいのか…。どうすれば治る?傍にいたほうがいい?離れたほうが治る?」  
航の目がまっすぐに向けられると、咲良が口の中でぼそぼそと呟いた。  
離れるな、とだけ言って航の頬に頬ずりをする。  
その行為はじゃれる動物のようで、航は笑みを抑えられず笑った。  
 
「それじゃあ動物だよ。人間には人間にしかできない、他人へ好意を表す方法があるんだ」  
航はそのまま咲良の頬を手で撫でながら言う。  
意味深な言葉を聞き逃さず、咲良が不思議そうに首を傾げた。  
それはなに?と子供のように可愛らしい目で言うから、航はそっと顔を寄せてやる。  
「知りたいなら教えてあげるよ」  
航の言葉の後、柔らかなものが咲良の唇を塞いだ。  
咲良は、それが何か感知するまでに時間がかかったが、すぐに口付けをしているのだと気づく。  
初めての経験だったが、優しく重ねられた唇はみずみずしく、甘ったるいものだった。  
僅かにコーヒーの匂いがする。  
食むように口付けを交わしながら、航が咲良の背に腕を回した。  
「んく…小島、なんかふわふわする。寒いかんじ…」  
「怖い?」  
「…ううん」  
短い返答の後、航は自分のコートを脱いで雪の上に広げた。  
そこに咲良を寝かせて、もう一度口付けを交わす。  
咲良は、見慣れない顔をした航を不思議そうに見つめたが、特に恐怖や不安は感じなかった。  
口付けが好意を表す証なら、この優しい口付けは航の気持ちを表したものだろうと思えたからだ。  
「ん…むう…んはぁ…」  
いつの間にか咥内へ伸ばされた舌が咲良の中を痺れさせた。  
体温が上昇していく。  
口付けのたびに聞こえる乾いた水音も、それを煽る原因になった。  
航は自分のネクタイを緩めると咲良の表情を伺うようにして笑った。  
視線を感じて咲良も笑う。  
「…脱がしてもいいかい?君の事を感じたい」  
航の言葉に、咲良は目を瞬いた。  
人間の男女は、セックスなる愛の儀式をするのだと言う。  
それは何となく知っていた。  
けど咲良は人ではない。  
それでも良いのだろうかと眉を寄せると、航は声を潜めた。  
「痛くしないから…ね?」  
唇に指を当てて優しくなだめるように言う航に、咲良はおずおずと頷く。  
合図とともに咲良の制服がゆっくりと脱がされていった。  
ブラウスの前をはだいた状態にされると、スポーツブラが露になる。  
航はそっとスポーツブラを上に押し上げた。  
大きいとは言えないふたつの膨らみが寒い気温のせいで上を向いている。  
乳房のみを手で撫でると、まだ硬さが残る新鮮な感触が伝わった。  
それでも、女はマシュマロのような胸だとか言われるのはあながち嘘ではないらしく、しっとりとしたきめ細やかで柔らかい乳房である。  
珍しそうにそれを見つめる航を不思議そうに見て咲良が口を開く。  
「胸、見たことないの?」  
「あ…あるわけないだろ。…石田さんが初めてだよ」  
航は拗ねたように唇をへの字にすると、そっと咲良の乳房に舌を這わせた。  
柔らかな弾力が舌に心地いい。  
牛乳の匂いがした気がして、それがちょっぴり航の自身を刺激した。  
尖ってしまっている胸の突起を唇だけで吸ってやりながら、片手はもう一方の乳房を優しく撫でていく。  
どこか遠慮したようにも見えるが咲良にとっては優しい愛撫だった。  
咲良は僅かに顔を逸らして、胸を上下させる。  
「…なんか、変だ。ズキズキする…っん」  
甘ったるい声を漏らしながら、咲良が航の髪を指ですくった。  
ちゅ、と音を立てて吸い上げられるたび、僅かに切羽詰った吐息が漏れる。  
咲良は自然と両膝を立てて、足を擦り合わせるように身を捩った。  
「…感じてるの?」  
「かんじてるって何…?…ふぁ、ふ…」  
航の問いに、咲良はもどかしそうに息を吐く。  
乳房を愛撫していた手を下ろして、航は咲良の脚をゆっくり撫でた。  
抵抗の色は見られない。  
脚を撫でながら、ゆっくりとスカートの中へ手を伸ばすと柔らかい毛糸に触れた。  
そっと捲り上げると、赤い毛糸の下着が顔を覗かせる。  
航は木綿の下着を想像していたせいか、目を瞬いてから言った。  
 
「…毛糸のぱんつ…なの?」  
「今日は寒いから2枚履きなさいって先生が言ったの」  
「そ、そっか、兄さんが…ねぇ。脱がすよ?」  
毛糸の下着をゆっくり下ろしていくと、もう1枚の下着が現れた。  
今度は木綿の下着だ。  
水色で横縞の入った下着の中央が目に見て分かるほど濡れそぼっている。  
航は一旦咳払いをすると、下着に指を引っ掛けた。  
「えっと…汚したら大変だから、脱がすよ」  
「何で汚れるの?」  
「……とにかく汚れるの」  
ムキになったような航の言葉に、咲良はきょとんとした顔をしている。  
航がゆっくりと下着を下ろしていくと、まだ何も生えてはいない少女の部分が露になった。  
そっと手を伸ばしてそこに触れた途端、咲良がびくりと肩を震わせる。  
「いっ、痛い…」  
「ご、ごめ…」  
思わず手を引く航の指に、何か透明な液体が光っていた。  
初めは何だか理解が出来なかったが、それが咲良の愛液であることを理解するとホッとしたように肩を落としている。  
「…すごいね、濡れてるよ。感じてくれて嬉しい」  
航の笑顔に、咲良はしばし不思議そうな顔をしていたが、こくんと頷いて笑った。  
それにしてもと航が咲良の下腹部へ再度手を寄せる。  
「…成体クローンなんていうから濡れないものだと思ってた。こんなに熱くなってるのに」  
濡れそぼった部分に指を忍ばせると、咲良の顔が僅かに苦痛に歪む。  
とろりと溢れてきた愛液を指に絡めながら、航がそれをクリトリスへと擦り付ける。  
咲良の口から短い悲鳴が聞こえた。  
「あっ、あふぅ…わ、私は最新最高性能の新型なんだっ…"濡れて"当たり前なんだぞ…」  
濡れることの意味をよく分かっていないらしい咲良はハッキリと言ってのけた。  
航は、言ってる自分が恥ずかしくなってしまって、その話題には触れないようにする。  
そうしてクリトリスを指で摘むと、咲良がかかとで地面を蹴って身を捩った。  
そこが弱いらしい。  
僅かな力の加減を間違うと痛いと言われるので、航はゆっくりと肉芽を擦っていく。  
「んっ、んぅ…あふ…うぁ…小島ぁ…何だかすごく恥ずかしいよぉ…」  
咲良は、体の下に敷いてあるコートに顔を寄せて甘ったるく鳴いた。  
服をはだけて、大事なところまで触っているのに今更恥ずかしいなんて言われても…と思わずツッコミそうになるが、咲良の表情がとても艶かしいので航は言葉を呑んだ。  
咲良をもっと気持ちよくしてやりたい、と思いながらほころんできた花びらに指を這わせて割れ目の中へと滑り込ませる。  
僅かに咲良の体が突っぱねた。  
だがそれは一瞬の事で、咲良は素直に息を吐き出しながら体の力を抜こうとしている。  
「く…あう…熱い…あそこが変な感じ、で…ひあっ…あぁっ!」  
いきなり艶っぽい声を出し始めた咲良の変化に、航は無意識に喉を鳴らした。  
そろそろいいだろうかと指を引き抜くと、物足りなそうに咲良がそこへ手を伸ばす。  
「うう…小島ぁ、途中でやめたらやだぁ…さっきの、もっと欲しいよぉ…うわ!?」  
大胆な事を言っている咲良を航がなだめようとするが、不意に咲良が声を上げた。  
もどかしそうに触れた秘部から手を離して、ぐっしょり濡れた自分の指を見つめている。  
咲良は、自分の愛液をまじまじと見つめてから、航が止める間もなくそれを口に入れた。  
「んん…何も味しないんだ…小島、これなに?」  
「石田さんが俺の事好きっていう証拠だよ。でも舐めるのよそうね、恥ずかしいし…」  
 
「なんで?体に毒なの?」  
「いや、そうじゃなくて俺が恥ずかしいっていうか…」  
「小島の指から出てきたの?」  
「どうみても違うから!」  
航は大きくため息をつくと、今だ指をしゃぶっている咲良をなだめるように頭を撫でて、自分のベルトのバックルを外しにかかった。  
既にきつく張り詰めたそこを解放すると、気付かれたのか咲良が眼を丸くして航のものを見つめている。  
「うわあ、おおきい…いつもこんなに大きくないよね…?」  
「男特有の病気なの」  
「病気なの!?」  
「そ。石田さんしか治せないんだよ」  
航はにっこり笑うと、咲良の足首を掴んで自分の肩へとかけた。  
突然足を高く掲げられて、咲良が不思議そうに目を瞬いている。  
「すーすーする…何か、こわい…」  
咲良は、僅かに身を捩って航を見つめた。  
初めてなのだろうと察すると、痛い目に合わせてしまいそうな気がする。  
自分のものは、決して小さくはない。きっと咲良を傷つけてしまう。  
気持ちよくはなりたいが、咲良を痛い目に合わせたくはなかった。  
航は僅かに躊躇った後、咲良の体を抱き起こした。  
突然視界が変わったことに驚いて咲良が身を縮こませる。  
航は起き上がると同時に咲良が寝ていた場所に仰向けに寝転んだ。  
「…石田さん、お願いがあるんだけど」  
「…なあに?」  
「俺の上に乗ってくれる?」  
航が咲良の腕を引くと、咲良は言われたとおり航の腰に座り込んだ。  
あえて挿入は諦めて、素股でやってもらおうと航は考える。  
咲良を誘導して竿を股で挟むように座ってもらうと、咲良はくすぐったそうに笑った。  
「あはは、小島のが当たってる…」  
無邪気な笑みだったが、それでも秘部に触れるように航のものをずらすと声が変わる。  
航は緩く腰を使いながら自身のもので花びらを擦り上げた。  
愛液の音が徐々に耳に入ってくる。  
咲良は、もどかしそうに眉を寄せて目を瞑った。  
「…っあ、あふ…熱いのがあそこに擦れてるよぉ…っあ…」  
身を捩るたびに咲良の肉芽に航のものが擦れる。  
航は体の上に座っている咲良を見つめながら次第に腰の動きを早めていった。  
快感に喘ぐ咲良を見ながら、航はうっすらと笑みを見せる。  
「きもちいい?」  
「んっ、んぅ…」  
言葉にならない返事をして、咲良が航のものを掴む。  
思いのほか強く握られてしまい、口から声が出た。  
咲良は無意識に航のものを握ってぎこちなく擦り上げている。  
自分ばかりよくなっていては不公平だと言いたいのだろうか。  
航はお返しにと手を伸ばして咲良のクリトリスを指で押した。  
「やっ、うあっ…あ、いや!こ、小島…やめ…っあ…」  
やめろと言いながら、咲良の手はしっかりと竿を握っている。  
絶妙な力加減で擦られて、航は眉を寄せた。  
できるなら咲良の中で出したいと思うが、自分達は学生なのでそこまでは出来ない。  
航はゆっくりと行為を続けながら切羽詰った声を上げた。  
「はあっ…石田さん、手離して。その…このままじゃ出しちゃう、からっ…ね?」  
航の呟きに、咲良は不思議で仕方がないという顔をしている。  
声を押さえるように時々唇を噛んで肩を上下させる航は可愛いと素直に思った。  
咲良は急に勝気な顔をしてにっこり笑ってみせる。  
「隊長命令だ。大人しく出せ」  
「いや、出せとか言われても」  
「出せったら出せ。言う事が聞けないなら、いじめてやるっ」  
「あっ、ちょ…そんなに強くしないで、石田さんってば!」  
 
無遠慮に強く扱き上げてくる咲良の手に、航は眉を寄せながら腰を使った。  
制服が汚れる危険が大いにある。  
明日は学校なのに…と口の中で呟くが、それは無視された。  
いつの間にか立場を逆転させられた航は、肩で喘ぎながら強く目をつぶる。  
「も、もう…後で文句言われても…知らないからっ…あ!」  
航の短い悲鳴と同時に、欲望の塊が放出される。  
上を向いたそれは咲良の顔に直撃した。  
顔を逸らそうとしても口に入ってくるから、それを半場飲み込みながら大きくむせこむ。  
「ふぁっ…ごほっ、ごほ…うええ…私のより苦い…不味いよぉ…チーズみたいな匂いがする…」  
ボタボタとこぼれた精液はぐっしょりと咲良のブラウスを汚している。  
航は、ポーッとした顔をしながら反省するように目を伏せた。  
それでも目を開けて、濡れた咲良の頬を撫でる。  
「…ごめんね。今度は俺の部屋でゆっくりやろうよ、こんな寒いところじゃなくて」  
ゆっくりと捲くりあがったままのスカートを下ろしてやりながら言うと、咲良は無邪気に頷いた。  
そんな笑顔が恥ずかしくて、航は妙にもやもやしてしまう。  
自分の好意は伝わったんだろうか?なんて思いながら航は咲良を家へと送った。  
 
おわり  
 
 
補完:その日の夕方。  
 
咲良「先生ただいまー」  
空「おお、おっかえりー咲良。弟と二人でお楽しみだったのか?」  
咲良「おたのしみって何?」  
航「ぶっ!なっ、何にもやってないよ!」  
空「俺はまだ何をやったとも聞いてないんだがな〜。素直だな〜弟は」  
航「…な、何を言ってるのか分からないな!言いがかりはよしてくれよ兄さん」  
空「あらあら、兄に隠し事することないだろー?素直に咲良の事食ったんだと言ってみろ」  
航「兄さん何で知ってるの!?」  
咲良「私は食べ物じゃないぞー」  
空「…まァ…中で出さなかったのはエライぞ」  
航「だッ、だから何で知ってるんだよ!?」  
空「先生だから知ってるんだ。決まっとるだろー」  
咲良「先生すごーい」  
航「理由になってない!」  
 
完。  
 
 

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