ソックスハンター変 緑の章  
 
 
食事の後の休息の時間。  
源と英吏は森の中をぶらぶら散策していた。二人、他愛も無い話しをしながら奥へと進む。  
歩く早さが二人は違う。深い森の中でも悠々と歩いていける源に比べ英吏は少々手間取る。  
 
明らかに息の上がっている英吏を見て休憩をとることにした。  
水でも飲むか?と水筒を英吏に差し出した。  
 
「ハハハ源、水は必要ない。」  
 
英吏はそう言うと脂の乗った口を開け 、ジャケットの裏ポケットから金城の靴下を取り出す。  
それを、開いていた口に入れ、顔をうずめるように臭いを嗅ぐ。  
 
「フフフッ……フハハハァァァ……」  
 
英吏の体が小刻みに震える。源はその様に初めて恐怖を感じた。  
 
 
─とその時、茂みから金城が現れる。  
「アンタだったのね!私の靴下を盗んだのは!」  
生活の重要事項を握っている女子には逆らえるはずも無く、ましてやその頂点に立つ金城の言葉だ。  
普段の英吏なら、心が凍りつき身を震わすところだ。  
現に、横にいる源はその後の展開を予想し顔が青ざめている。しかし、  
 
「今の俺は無敵だ。恐れるものなど無い。俺を止めることは誰にも出来ん。」  
 
英吏はその言葉を残し金城に飛び掛る。  
金城の回避行動が間に合わず、英吏の一撃が鳩尾に入る。浅い。  
 
「うっ…」  
 
息を吸う間も無く、強烈な蹴りが踝に加えられる。  
足が内側に折れるように捻られた。体が後ろへと崩れていく。  
 
「…!っあぁ…」  
 
余りの痛みに悲鳴を上げたくなるが、余りの速さにそれさえも追いつかなかった。  
 
源は目の前で起こる事を止められなかった。その猶予さえ与えられなかった。  
金城に襲い掛かる英吏を見て、こんなに早く仲間に銃を向けることになるとは思っていなかった。  
以外にリアリストである源は、補給が途絶えた時など緊急時に止むを得ず  
仲間に銃を向けなくてはいけなくなった時、躊躇うことなく引き金を引ける男だ。  
だが、今は緊急時ではなかった。そのため、銃を構えるのが少し遅れた。  
 
英吏はそれさえも計算に入れていた。  
身を翻し源の鳩尾に深く拳を突き入れる。  
 
「止められないと言った。」  
 
目の前が暗転する。晴れたかと思うと再び。それを数度繰り返す。  
この間は、時間にして三秒とかからない。拳はまだ入ったままだ。  
防御すら源は出来なかった。  
源の思考に源の体はついて行かなかったが、英吏はそれよりも早く動いたのだ。  
源の耳元で囁く。  
 
「お前は使える。俺について来い。お前もその方が楽しいはずだ。」  
 
源の意識は、その言葉を最後に聞き途切れる。  
 
 
英吏は金城に向き直る。  
その光景を見ていた金城は怯えていた。  
数秒であったが隙はあった。体勢を立て直せば逃げられたのかもしれない。  
だが、踝に入れられた蹴りがそれを阻んだ。  
英吏の一撃目が浅かったのは意識を奪わないため。追撃は動けなくするためのものだった。  
 
それまでの機敏な動きとは変わり、いつもの緩慢な動きに戻っていた。  
しかし、ただならぬ眼つきは変わっていない。それが、金城の恐怖心をかきたてた。  
じりじりと金城に近づいてくる。  
 
「…っく、寄るなぁ…!」  
 
まだ、息が苦しく大声を上げることもできない。  
必死に抵抗するが、到底敵わない。英吏が覆いかぶさる。  
同時に靴下が口にねじ込まれた。  
 
「ぅっ…んん…」  
 
金城のショーツに手がかけられ一気に下げられる。  
上着は、普段の英吏からは想像できないほどの力で乱暴に脱がされた。  
馬乗りの状態で英吏は再度、金城の靴下の臭いを嗅いだ。  
 
「フハハァァ!この臭いは、この体か!」  
 
金城は覚悟が出来なかった。今まで嫌な奴だが頼りになる仲間としてみていた。  
それが裏切られた。だが、それ以上にこれから起こるであろう惨劇を直視できなかった。  
 
控えめだが形の良い、金城の双丘に英吏がしゃぶりついた。  
その気持ちの悪さに鳥肌が立つ。涙があふれる。  
 
「うぅん…」  
 
覚悟が出来ていなかったから、混乱する。どうすればいいのかわからない。  
否定の意思表示も叫びを上げることさえも判断できなかった。  
早くも英吏は足を抱えて、まだ濡れてもいない秘所に挿入した。  
痛みで意識が覚醒する。  
 
「う゛う゛っがぁぁ…」  
 
ただ痛い。としか感じない。それ以外は考えれなかった。  
乱暴に英吏は腰を振る。そして、膣で果てた。  
痛みの度、意識は覚醒するが三度目を過ぎて、痛みにもなれて意識は落ちていった。  
 
「うっ…うっ…うっ…うっ…」  
 
腰の動きにあわせて、発する言葉ももう無い。ただ、洩れる吐息だけだった。  
 
英吏は満足すると、金城の服を調えた。  
彼の欲望は満たされていた。今までに感じたことの無いほどの充足感だ。  
それは英吏の野望である。初めてそれが達成された。  
それまで想像しか出来なかった臭いと味。  
靴下と一緒に女を征服することに、彼はこれから突き進む。  
 
「フフフ…。俺の野望は止められん。始まってしまったようだ。」  
 
眼鏡をかけ直しにやけた笑みを浮かべている。  
 
 
 
先内剣は目が見えない。そのため、一般人より様々な感覚が優れている。  
その能力は、時々回りの人を驚かすほどだ。  
今日も、日中に出来なかった仕事をしている。  
 
戦車の中で一息つく。シートの下から秘蔵の靴下を片方取り出した。荒木雪子のものである。  
先内は静かに、深くその香を嗅いだ。  
人より嗅覚が優れる彼は他のどのハンターよりこの瞬間を楽しめ、些細な味までもを感じ取れる。  
それゆえに、彼は誰よりもこの依存性から逃れられない。  
 
「ふっ…」  
 
その匂いにより先内は覚醒する。  
視覚以外の感覚は研ぎ澄まされ、見えないはずの目を開き何かを見る。  
この時、先内にはきらきらと輝く光が見える。その光は先内に全てを教えてくれる。  
それが、英吏の周辺で起こったことを先内に知らせた。  
誰よりも早く、先内はこの事態を把握したのだ。  
 
そのことをまず一番に、竜造寺紫苑に伝えた。  
彼もまた、ハンターである。彼の場合はあまりおおっぴらにはしていない。  
もともと敵の多いハンターである。おおぴらに出来ないのは当たり前だが、  
彼の場合は少し違いごく普通の秘密の趣味として収集しているに過ぎない。  
収集の対象が靴下だっただけでである。だから、あまり知られたくないのだ。  
だが、趣味の友としてこの三人はそこそこ仲がよかった。  
 
「何てことだ…」  
 
紫苑は絶句した。英吏がそんな男とは思っていなかった。  
 
「部隊は終わりだ。分かれて隊員同士が衝突すれば、悲劇が起こる。  
 英吏は強い。おそらく、今部隊で一番。」  
 
先内の言葉にも、戸惑いが感じられた。  
それは、解かっていた。ハンターとしての能力を持っていたから。  
靴下一つで、人を超える力を発揮できるのだから。  
 
同じ頃、英吏と源の二人を探しに行った金城の帰りが遅いことが女子の間で問題になっていた。  
英吏と源は放っておいても大丈夫だが、金城は女だ。  
それにここは見捨てられた山村だから何があるか分からない。暴漢が潜んでいることだって有り得る。  
 
「金城さんは女性なんですよ!探しに行きましょう!」  
 
と、神海が行う。それに従うように皆が同意した。  
一応、善行さんに報告しておきますね、と荒木が報告しに行った。  
女性だけで出歩くのは危険だ。  
だが、そのために火焔をメンバーに入れ神海を先頭に斉藤、火焔の三人で出掛けることにした。  
それなりの装備だけはした三人だったが、人の足ではそうそう遠くまでは行かないだろうと、雷電は連れて行かなかった。  
 
 

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