「はい、召し上がれ」  
そう言って床にドッグフード缶を置く葉月  
慌ててそれに飛びつく虎雄  
「・・・いただきます、でしょう?」  
ドッグフードを拾おうとした虎雄の顔面を蹴り飛ばす葉月  
「い、いただきます・・・」  
怯えた声で呟く虎雄、恐る恐るドッグフード缶に手を伸ばす  
その手を踏みつける葉月の足  
「なに手を使おうとしているの?、あなたは犬なんだから地べたに這いつくばって食べなさい」  
「ううう・・・すみません、ごめんなさい!!」  
葉月の言葉通り直接口を付けて食べ始める虎雄、満足気に葉月が足を離す  
「残さず綺麗に食べるのよ、あなたみたいな犬には贅沢すぎるくらいなんだから、うふふ・・・」  
うっとりとした表情で見下ろす葉月、虎雄は黙々と食べ続ける  
「・・・っ痛!!」  
虎雄の舌に痛みが走る、どうやら缶の端で切ってしまったようだ  
反射的に顔を上げる虎雄の顔を葉月が勢いよく踏みつける  
その表情は先程の恍惚としたものから一変、鬼のような形相だ  
「・・・残すなって言ったでしょう、なんでわからないのこの犬は!?」  
「い、痛い、ごめんなさいごめんなさいぃ・・・」  
缶の端が今度は唇や鼻を傷つける、それでも葉月は踏みつける足の力を緩めない  
「残しちゃダメ・・・全部食べるのよ・・・」  
血と涙にまみれながら何とか舐め尽した虎雄、缶は血と涙に汚れていた  
虎雄に目もくれず缶を覗き込む葉月、綺麗に食べつくしたことを確認するとにっこりと微笑んだ  
「はい、良く出来ました、でもまだまだあなたは躾がなっていませんね」  
「でも大丈夫、私が今日からしっかりと躾けてあげますから・・・うふふふふ・・・」  
そう妖艶な笑みを浮かべる葉月の瞳は、虎雄が今まで見てきたどの人間・・・いや、幻獣よりも冷たく輝いていた・・・  
 

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