学校からの帰り道、二人が一つ屋根の下で住んでいる以上同じなのは当然のことである。  
「ところで姉さん、滝川となんか合ったみたいだけどなんかあったのか?」  
「んっとね、実は・・・」  
歩きながら森は戦闘時に起こった事と帰り道にあった事の両方を話した。  
それを一通り聞いた茜は眉をひそめた。  
「戦闘時のことは良いとして・・・、それじゃ何か?滝川は補給車の座席に置きっぱなしか?  
戦闘で汗かいたはずだからほっとくと風引くぞ」  
「でも原さんが帰るときに面倒を見ておくって・・・」  
「原さんが?それはそれで・・・」  
心配になる――茜は言おうとしたその言葉は飲み込んだ。もう遅い。  
 
 
 
「火薬の匂いがする。それに泥の匂いも」  
「そんなこと言ったって弾いっぱい撃ったし・・・。泥まみれで転げ回るし・・・」  
「言い訳しないの。ほら、髪の毛洗ってあげるからおとなしくなさい」  
言い訳しようとする滝川を黙らせるように原は手に力を加えて髪の毛を泡だらけにする。  
「イタイ、イタイ!!もういいです!!自分でやりますから!!」  
滝川は必死に抵抗しようとした。だがその抵抗も空しく軽くいなされる。  
抵抗は軽くいなされたがそれでも抵抗を続けようとする滝川だった。  
だが・・・。  
「あら・・・、滝川君たら・・・」  
抵抗した拍子に滝川は前にこけた。何とか体勢を整えようしたがその拍子で原と正面から向き合う形になる。  
「あんな疲れてたのにもう回復したの?あ、それともあれは嘘?」  
滝川は原と正面から向き合わないようにしていた。その理由は簡単だった。原に手を引かれスペースに引き込まれる際、湯気越しに少しだけ見えた原の裸体である。  
滝川も一応は思春期の少年である。そんな年頃の少年が女性の裸体――しかも憧れの女性の裸体である。体が反応しない方がおかしいと言える。  
「ぐす、見ないで下さい・・・。ひ・・・!!」  
滝川は顔を真っ赤にしながら手で必死に自身の肥大化したモノを隠そうとする。  
だがその行動よりも早く原が滝川の顔に近づいていた。  
「そんなに怖がらないの。憧れのお姉さんが相手なんだから」  
そんな滝川の羞恥心に訴えるような言葉を発すると自身の唇と滝川の唇を合わせた・・・。  
 
「むうぅ、ふぅ・・」  
滝川の口から僅かな息が漏れる。口の中では歯がカチカチと小刻みになっている。  
「ぷはぁ、そんなに怖がらないの」  
原はそういうが滝川は真っ赤になった顔をうつむかして何も言おうとしない。  
「あら、もしかしてはじめのキスだったの?」  
くすくすと笑いながら原の手が滝川のあごに回され顔をあげさせた。だが滝川はぷいっと横を向  
いたまま喋ろうとしない。そんな滝川の反応を楽しむようにもう一度キスをした。今度は深く、口  
の中を蹂躙するように舌を入れる。  
滝川はそれに抵抗しようとした。舌は原の舌と絡み合い嬲られている。必死に口から出そうともがき  
勢いをつけて口を閉じようとした。だが勢い余って原の下唇を歯で切った。傷口から血が流れて滝川  
の口に流れ込んだ。それほど多くは無い量、それでも味は感じられた。原の血の。  
はぁはぁと息をつきながら滝川は口を離した。とはいえ大した距離は取れていない。匂いも感じれる  
ぐらいの至近距離、二人の口は血を含んだ唾液でつながっていた。だがそれもすぐにシャワーの蛇  
口から流れる水で断ち切られる。  
唇を切られた原は傷口に指を当てると流れた血をそっとすくった。  
「そんなに怖がることは無いでしょう?でも・・・」  
血をすくった指を滝川の目の前に動かす。滝川はその血を付けた指を凝視した。  
だがその後ろに見えた原の顔を見て顔が青ざめた。いつもの意地悪をする顔ではなかった。それだけは分かった  
「何すればいいか分かるでしょう?」  
そう言われ滝川は目をつぶりながら両手で手を握り血に汚れた指を舐め始めた。  
「きれいにしなさい。勿論傷口のところもね・・・。もし今度こんなことしたら・・・」  
滝川の乳首に爪を立てる。押し込んだ爪を少し横に動かした。  
 
「痛い!!」  
「そんな痛がってる余裕は無いわよ。早くしなさい」  
怯えたような目で自分の方を見る滝川を睨みつけるように言い放つと観念したのか顔を近づけた。  
自身のつけた下唇の小さな傷口を確認するとその部分に舌を伸ばしまだ少量流れ出ている血を舐めはじめた。  
何度か舐めさせておく。暫らく経つと大した傷ではなかったのか血はとまった。だが滝川は目を硬くつぶっている為かそれには気付かず舐め続けていた。  
「もういいわ」  
滝川の顔を離させて突き放すように言う。滝川は怯えた表情で伏せ目がちに原のほうを見ている。  
「こんなことさせられても元気なものね、あなたの体は・・・?」  
そういわれて又隠そうとするが原に肩を掴まれ壁に押し付けられた。そのまま力を加えると滝川はへなへなと座り込んだ。足を閉じようとしたが力が入らない。  
「まったく、いやらしい子ね。憧れのお姉さんにこんなことされてこんなになってるんだから」  
原は足の指を器用に使い滝川の張り詰めた肉棒を軽くしごいてやった。本当に少し・・・。  
「うぅぅ、やめて下さい・・・!!出ちゃいま・・・」  
「あらもう?ところで何が出ちゃうのかな?はっきり言いなさい」  
そう言うが早いか指の動きを強くさらに早くする。  
「うわぁぁぁ!!」  
滝川の肉棒が規則正しく脈動し体がのけぞった。それにあわせて大量の白濁液が先端から飛び出る。  
一部は原の足にかかった。それをシャワーの水で流れ落ちる前に掬い取ると味見するように舐め取る。  
「あらあら、こんなに濃いのを一杯出したくせにあんまり衰えてないわね。まだ行けるでしょ?いやらしいスカウトさん?」  
「うぐ・・・、ぐす・・・。もういやですよ・・・。やめて・・・ください・・・」  
 
「だめよ。まだまだ。ほら今度はこっちよ。しっかり舐めなさい」  
滝川の哀願を退けると自身のクレパスを滝川の面前に持っていく。その滝川が鼻でその部分を嗅いでるのが分かる。  
じっと目線を向けられさすがの原も顔を赤くした。さらに滝川が恥ずかしそうの顔を赤らめて自身のあらゆる匂いを嗅いでると思うとさらに嗜虐心がくすぐられる。  
「ほら、女性の香りがして綺麗でしょう?ね・・・、あん、もうがっつかないの」  
いままで命令に従わされ、さらに原の女の匂いに鼻腔を刺激されたのも影響したのか滝川は簡単に命令に従った。  
むしゃぶりつくように原のクレパスに顔を埋めた。二人しかいないシャワー室に滝川が原の秘所を舐めるいやらしい音が響く。  
「いいわよ・・・。もっと舌を入れて強く吸い上げて・・・、ん、そんな感じよ・・・」  
鼻で息をしながら必死に顔をうずめて言われるがままにさらに奥へと行こうとする。それを補助するように原の両手は滝川の頭を強く押し付ける。  
「うん・・・、イッちゃいそうよ・・・。特別に飲ませてあげるからしっかりと味わいなさい・・・。」  
滝川の舌が秘所の内壁を舐め始めた途端だった。滝川にはそのような前兆を感じるすべは無かった。  
「うえわっぷ!!」  
「口を閉じちゃだめよ。しかっりと飲みなさい」  
突然のことに驚いて顔を離した。だがそれが間違えだったことにすぐに気が付いた。まともに原のクレパスから流れ出る液体をまともに顔に浴びた形になったからだ。開いていた口にはそれが容赦なく流れ込んでくる。思わず口を閉じようとするが原の一言で口を開け広げたまま流れ込んでくるのに任せた。  
「いい子ね。しっかりと飲み込みなさい。そう初めての女性の味は?おいしいでしょう?」  
目をつぶりごくごくと飲みこんでいく滝川を見ながら次は何をしようかと考えてみる。これぐらいで許してあげるか・・・。  
そう考えてみるがもう少し楽しんでみようとする心理のほうが勝った。  
「よく出来ました。今度は私がしてあげる・・・。もう、そんなに警戒しないの」  
原が屈み込んで滝川と同じ目線の位置まで腰を落とした。滝川は次に何をされるのか、本能的に体を硬くしたがまったく考えが回らなかった。  
ただ涎をたらしながら靄のかかった頭でもっと味わいたいという欲望のみが心の大半を占めていたから。  
 
原が滝川の肉棒へと手を伸ばす。一度大量に精を放出したにもかかわらずそれは最  
初に見たときと殆ど大きさは変わっていない。  
だが原にはそれがさらに大きくなっているようにも見えた。  
『まだまだ楽しめそうね・・・』  
そう思いながらゆっくりと手でしごいてやる。それに反応したのか滝川の肉棒はさらに熱  
を帯び大きくなった。  
「正直な子ね・・・。こうしたらどうなるのかな?」  
「うわぁ・・・。ちょっと原さん・・・まって」  
原は肉棒の周囲を舐め上げる。あわせて口に含んで舌でもてあそんでやる。  
滝川は口ではそういうが抵抗のそぶりは見せない。最初の抵抗が嘘のようだと原は思った。  
むしろ少し刺激を与えてやるだけで滝川はそのつど体を痙攣させる。よほどこの感触が気  
持ちいいのかそれとも慣れ始めたのか腰を動かし始めた。  
「もう、焦らないの。そんなにがっついちゃ駄目と言ってるでしょう?」  
「でもオレ・・・オレもう・・・」  
滝川が腰の動きを早めた。もどうしようもなくなった。の肉棒が規則正しく脈動した。それにあ  
わせ又大量の精を吐き出す。  
今度は立場が逆になった。滝川の液は原が亀頭の部分を舐め上げている途中だった。原の  
顔はまともに滝川の精を受ける。だが原は顔についたそれを掬い取ると怪しい笑みを浮かべ  
ながらそれを舐め取る。  
「うふふ、さあ、逞しいんだからもう一回できるでしょう?さあ、メインディッシュよ・・・」  
 
「え、原さんちょっと・・・」  
「ほら、分かるでしょ・・・。入っていくのが・・・」  
原が腰を落とし自分の膣中へとうまく誘う。滝川は原の中へと簡単に入っていく自分のものをじっ  
と見つめていた。  
「わかるでしょう?奥まで入ってるのが。どう?私の中は?」  
「あったかくてぬるぬるして・・・なんか変な感じ・・・うわ!!」  
滝川が言い終わる前に原が動き始めた。始めはゆっくりと、だがしっかりと咥えこんではなさい。  
初めての感触。滝川は下半身に痺れるような感覚に襲われた。  
「まだ始まったばっかりよ。でもこれが仰け反るほど気持ちいいのかしら?」  
「だってだって・・・」  
「もうそんなに気持ちいいの?じゃあこれはどう?」  
原がさらに激しく動く。だが初めての滝川には刺激が強すぎた。簡単に絶頂に迎えようとする。  
「もうダメです!!・・・ひっ!!」  
下半身に力をこめてきつく締め上げた。原はもう少し粘らせようとしたのだが逆効果だった。  
また大量の精を吐き出す。まるで無尽蔵のタンクでも持っているのだろうか?こんな小さな体をし  
てるくせに・・・。原はそんなことを考えてしまった。一度繋がりあっている部分を離す。膣内から  
入りきらなかった滝川の白い精が滴り落ちる。  
「気持ちよかった?こんなに一杯出して・・・そんな顔しないの。妊娠なんてしないんだから」  
「うっく・・、ごめんなさい・・・」  
涙目になって謝る滝川を無視して原は滝川の前に四つん這いになった。  
 
誘われるように滝川は自分の肉棒を原の膣内へと差し込む。  
もう滝川は止まらなかった。原が背を向けたのが本当の合図だったのか  
手で背中をなでていた両手で原の豊かな乳房を揉みはじめた。  
それだけでは足りなかったのか原に覆い被さり舌で首筋や背中を舐め始める。  
「さあ、もっとして頂戴な・・・。ああん!!いいわ・・・、また奥まで届いて・・・」  
「ふうぅfぅ・・・」  
滝川が覆い被さるように体を倒した。背中と腹が密着し汗と水が混ざり合い押し出  
されていく。そして顔は丁度原の顔の横に来るようにしていた・・・。  
「滝川君たらキスしてほしいのかな?いいわよ口でも私をたっぷり味わいなさい・・・」  
腹の舌と滝川に舌が絡み合う。最初は遠かったがそれはすぐに解消された。  
滝川はもっと深いキスを望んだ。だが腰の動きは停まらない。むしろ早くなっていく一方だった  
「あら、まだまだいけそうね・・・。満足できそう?」  
少し焚きつけてみる。案の定滝川は予想どうりの反応を示した。  
「オレ・・・何度でも・・・、何度でも・・・!!」  
「いいわよ。もっとして頂戴・・・あああん!!」  
さらに滝川は動きを早めた。まるで獣だ・・。原はそう思った。しかし原もそれに合わせて動くのは  
荒々しいその動きが気に入ったからなのか。  
シャワー室の二人の行為はさらに続いていく・・・。  
 
 
「久しぶりで気持ちよかったわ。あらやだもう、そんな顔しない。男の子なんだから」  
「・・・・・・」  
十回近い行為が終わった後、滝川は最初のように体中泡だらけにされて洗われていた。  
だがその表情は恥ずかしかったのかそれともレイプ同然に犯されたのに怒っているの  
か良く分からない混ぜこぜの表情である  
「もうしょうがないな。あ。そうだ。もし・・・」  
滝川の耳に耳打ちした。それを聞いた滝川の顔に見る見る生気が戻る。  
「ホントですか?ホントに手配してくれるんですか!?」  
「大丈夫。約束してあげるから、嘘はつかないわよ」  
「じゃあ・・・!!」  
滝川が右手の小指を差し出す。  
「うん、いいわよ指きりげんまん。さあ約束したらしっかり体を綺麗にしなさい。分かった?」  
「ハイ!!!!」  
そんな大声出さなくても、聞こえるわよ・・・。そう言おうとしたが原はやめた。  
『さっきまであんなにこんがらがってたくせに・・・、立ち直りが早いんだから』  
正直な感想である。  
 
 
その後、滝川は技能をとったりランク上げを行ったり、壬生屋の一番機の火器管制装置  
を借りて火器管制装置の設定の練習をし始めた――無許可で。  
最初は三番機のを借りようとしたのだが芝村に断られただけである。  
『いじくられて又設定を元に戻すのは手間がかかる。断る』  
『参考にしようとしたんだけどな・・・。』  
そういわれてすごすごと引き下がった。がそれでも設定の練習はしたかった。そんな時閃いた。  
『・・・あ、一番機があるじゃん!!壬生屋の奴はどうせ火器使わないから黙ってればわかん  
ねーし・・・』  
だが次の日にはばれていた。知らないのは無論滝川だけ。黙認なのかそれとも許可なのか・・・。  
一応はスカウトとして出撃はこなした。そこでも色々技術を吸収した。  
機関銃の標準器をしっかり調整すること、残弾は常に意識すること、そして狙いをとにかくキッチリ  
つければ必ず当てれる事・・・。兵士としては普通のことである。気付くのが遅いぐらいである・・・。  
だが滝川は何とかその遅れを取り戻そうとしていた。  
・・・  
出撃命令。聞きなれたアナウンスが響き学校は途端に殺気立つ。  
そんな中、滝川はいつもの装備をチェックして取り付けていく。少し前は人に手伝ってもらった  
のだがこれも成長であろうか。  
「よっしゃ!!今日もガンバルか!!」  
そう自分に言い聞かせるとトラックに便乗しようとハンガーに向かった。  
そこで待っていたのは原であった。滝川の姿を確認すると手招きした。  
 
「なんです?」  
「これなーんだ?」  
原がヒラヒラと滝川の目の前で書類を泳がした。何かなと思って滝川がそれに食いついてみる。  
補給関係の書類だった内容はというと・・・。  
「これってホントですか?まさか悪戯じゃあ・・・」  
一応疑い深くなっているようだ。  
「正規の書類よ。そうね、早ければ明日には着くわ。着いたら懲罰スカウトは終わりにしてあ  
げる。どう?うれしい?」  
「ハイ!!よっしゃーーー!!!」  
「感謝なさい。色んなところに手を回してあげたんだから・・・」  
「ハイ!!ありがとうございました!!」  
そういいながら体は小刻みに震えている。よほど嬉しかったのだろうか、かろうじて自制が聞いて  
る状態だ。  
「さあ、喜ぶのは後よ。車に乗った乗った」  
「はーい・・・」  
滝川は現実に引き戻されたのが不満なのかふてくされ顔で答えた。  
 
簡単な作戦だった。金床役を引き受けた5121や戦車小隊の戦隊戦線で幻獣を受け止めて  
る間にハンマー役の左右の戦隊が包囲し殲滅する。  
結果は最高だった。5121や他の部隊は追撃し十分な損害を与えれた。  
・・・  
5121は戦線の塹壕陣地に戻ろうとしていた。ここを通って整備班の仮設陣地に帰到、必  
要な整備弾薬補給を行い暫らく警戒待機する。その予定だった。  
滝川は先頭の指揮車の右後方大体三メートルのところを歩いていた。心はウキウキだった。  
明日になれば危険なスカウトは終わり。士魂号乗りに復帰できる・・・  
「でも楽しかったよなー、スカウトも」  
誰も聞いていないことをいいことに独り言を喋る.。他のスカウトや士魂号は指揮車から結構  
離れている。聞かれる心配は無い。  
一歩歩くたびに士魂号が近づいている。そんな感覚だった。勿論後ろの二機ではない。  
「ふふんふーん」  
終いには鼻歌まで歌い始めた。  
その時だった。何か音がした。虫が飛んでるような音・・・。  
なんだろうと思って耳を澄ました。その瞬間、何かが突き刺さるような感覚が一瞬・・・。  
その次の瞬間、ほんの一秒にも満たない時間で滝川の意識が飛んだ・・・。  
 
 
最初に異常に気がついたのは一番機の壬生屋だった。後続の先頭であったので滝川  
が突然飛んだ思うと転がり対戦車壕に落ちていった。  
「滝川さん?どうしたんです?滝川さん!?」  
応答無し?どうしたんのかと思いもう一度交信しようとした時瀬戸口が割り込んだ。  
・・・  
「どうした壬生屋?滝川がどうかしたか?あいつなら後ろにいるぞ」  
『いえ、・・・滝川さんが・・・』  
『若宮だ。味方から射撃されてるぞ!!早くやめさせろ!!』  
味方から撃たれてる?そういわれてもピンとこなかった。しかし次に聞いた音で分かった。  
銃弾が指揮車の装甲板にあたる音・・・。  
「石津さん、信号弾を!!」  
善行が指示を出した。無線機から若宮から罵声が飛んで来ている。石津はそんな  
怒鳴り声を気にせず雑具箱から信号弾拳銃を出すと砲塔ハッチから手を出し打ち出した。  
赤と青、それに緑を二つ。  
これで大丈夫・・・。瀬戸口はそう思ったが装甲板をたたく音は一向にやまなかった。  
・・・  
「壬生屋、滝川のいる地点に前進して一番機を盾にしろ。12.7o程度なら装甲を貫通されまい」  
『でも・・・そんなことしたら・・・』  
「良いから行け!!大丈夫だ!!若宮、来須、そなたらは一番機の陰に隠れて進め。滝川を  
対戦車壕から助けてやれ。それと厚志、機体を右の陣地に向けて前進させろ」  
「了解。でもどうする・・・」  
「こうするんだ」  
速水が機体を動かし始めたときには20o機関砲の標準がつけられていた。次の瞬間には引き  
金が引かれた。塹壕線の兵士の目の前に着弾していく。  
兵士に当りませんように・・。速水は機体を動かしながらそう思わずにいられなかった  
 
 
銃撃が終わったのかカン、カンという音がやんだ。瀬戸口は止んだのを確認するのもも  
どかしくすぐに壬生屋に滝川の位置を聞く。  
「壬生屋、滝川の位置は何処だ?」  
『指揮車の後方、大体7メートルです!!』  
「加藤さん、バックして下さい。石津さんは担架の準備を、滝川君を収容します」  
善行の指示が又飛んだ。加藤と石津が返事をするのと同時に指揮車がバックし始めた。  
・・・  
指揮車が到着した。ほんの数メートルであるので早いのも当然である。  
到着したと同時に後部ハッチから石津が猫のように飛び出てくる。右手に折りたたみ担  
架、左手には医療用のバックを持っている。  
「こっちだ石津!!担架を頼む!!」  
すでに滝川の体は壕内から引き上げられていた。  
「来須、そっちを持て、担架に乗せるぞ」  
担架を持ちながら石津は考えた。  
『ひどい傷・・・』  
来須が担架を持つ。慌てて石津が担架の片側を持つと指揮車へと走った。  
 
「ようちゃん・・・」  
東原が悲しそうに呟く。瀬戸口と善行は顔を見合わせた。あっちはたぶん同じことを考えている。  
絶対に助からない。滝川の傷はレベルや助かるとかの問題ではなかった。  
おそらく12.7oが直撃したのだろうか?左腕は肩から根こそぎ無い。胸に傷はないように見える。  
だが左の腰部分に命中している。腹の内臓は衝撃でばらばらになっていた。右足にはすねの部  
分に命中していた。無論吹き飛ばされている。  
だがさすがは第六世代というべきなのかまだ意識があった。だが完全に混濁している。右手が  
空をさまよいはじめた。東原がその手を握ってやる。力なく握り返しているのが分かる。  
「・・・しれー・・・」  
か細い声。口元に耳を近づけなければ後の台詞は聞き取れそうに無かった。  
「なんです?」  
「おれ・・・また・・・のれま・・・か?」  
「ようちゃんしんじゃやだよ・・・」  
それを見ていた東原が泣き出した。泣く東原を瀬戸口は滝川から引きはした。  
善行は最後の言葉を選んだ。どういってやるべきか?  
だが言葉を選んでいるうちに意識は混濁の海に沈んでいった・・・。  
・・・  
滝川は最後に沢山の声を聞いた気がした。最後に右手を握られたような感覚がした。殆ど意識の  
無いときにかけられた最後の声と、とうに感覚を失っていたはずの右手を握った手の感触・・・。  
どこかで感じたような気がした。だが思い出す前には意識と世界を結ぶ糸は断ち切られた。  
 
 
 
次の日の戦死広報に滝川陽平の名前が載った。長くなる一方の戦死者リストにはたった  
2行の記録しか残されなかった。だがなぜかそこには戦車搭乗中に戦死したと記載されている。  
補充された二番機は他の隊員が乗り、戦後射爆場の標的として使われ後に廃棄処分となった。  
戦後、熊本城内に立てられた熊本攻防戦の慰霊碑にも同様に戦車搭乗中に戦死と掘り込まれた。  
そしてそこには必ず花が添えられていた。  
 

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