夜遅くにパソコンのキーを叩く音とHDの書き込みの音が響く。山のように積み  
あがったプログラムディスクを見てその人は微笑む。  
 
「コレだけ有ればミンナハッピー…幸せになれるデス」  
 
茜は放課後、何をするわけでもなく校舎前の木に寄りかかっていた。正確には呼び  
出されたのだが呼び出した本人がまだこない。  
 
「ったく何なんだ…嫌がらせか?まぁソレに乗ってやる僕もお人好しなもんだ…  
 速水のぽややんがうつったかな?」  
 
その時左手首に不意に何かが巻きついた。  
 
「うわッ何だ!?」  
「大声出さなくてもイイデスよ?」  
「な・なんだ小杉か 脅かすなよ!呼び出したのもアンタだろ?何のよ…」  
 
左手に巻きついたリストバンドをよく見るとコードが付いている。それをたどって  
いくと小杉が持ってるポーブルCDプレイヤーの様な物につながっている…  
 
「オイ…一体何の真似だ?」  
 
茜はすぐにそれが簡易プログラムリーダーだという事がわかった。  
 
「イイモノですヨ?」  
 
微笑んだとたん小杉はスイッチを入れる。  
 
「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」  
 
ガクンとヒザを付きブルブルと震え出す。しかも…射精している…性的興奮も無く  
勃起のしていないのに、だ。茜はなおもその場でうめきながら射精を続ける。  
 
「ンフゥー イイ気持ちデスね?」  
「おっおま…うぁがぁっ!!」  
 
まるで失禁した後のように茜の下半身は体液まみれになっていった。  
 
 
「あら?大介どうしたの…」  
「えへへぇ〜 ねぇさぁん こっちきてくれない?」  
「ちょっと待ってね 今行くから」  
 
士魂号の整備中、不意に聞き覚えのある声に森は異変を感じ取ることが  
出来なかった。普通に考えれば茜がこんな所まで来て笑顔で話しかけて  
くるはずが無いのだから。  
 
「何、どうかしたの?」  
「あのね ねぇさん 左手出して」  
「え?何?何なの?」  
 
答えを聞く間も無く、茜の左手は森の左手をつかみ強引に互いの多目的結晶を  
擦り合わせる。  
 
「あっだ大介何する…あぁあああぁぁああああ!?」  
「えへ…えへへへへへへ…」  
「あがぁっっつぅっいっ…がぁっぁぁあぁ!!??」  
 
情報が流れ込んでくる…大量の「快感」の情報…手首からじわじわと流れ  
込んでくるソレは、以前に原とふざけて使ってみたブレイン・ハレルヤの  
比ではなかった。倍以上の快楽が半分以下の速度でジワジワと身を焦がす…  
 
「ねぇ ねぇさん きもちいいでしょ? ね?」  
「あっぐ…はぁぁあ…あんっ!! あうっ!!」  
 
ガクンガクント何度も痙攣し下半身を湿らせながら森は何時終わるとも知れぬ  
絶頂の嵐に放り出された。下の方も緩みきってしまい、排泄物を垂れ流している。  
 
しこうがとまる いつもどおりにかんがえられない きもちいい すごく…  
 
ぷつんと何かが切れるのを感じたと同時に森は失禁していた。その目は宙を  
見つめ焦点は無い。頭の中には「このきもちいいものをだれかにわける」コト  
しか無くなっていた。  
 
 
「厚志 何か解ったか?」  
「ん・んー 解ったって言えば解ったけど…」  
「どうした?」  
「舞には言えないよぉ…」  
 
司令室のPCを前に速水と芝村はもめている。校内に蔓延した異常プログラムの  
解析をしていたのだ。説明を求める芝村に口ごもる速水。  
 
「いいから言え!言わねば解らぬ!!」  
「えーとつまりぃ…ブレイン・ハレルヤって知ってるでしょ?」  
「む?あの麻薬まがいのプログラムか?」  
「うん コレってどうやらソレの発展型みたいなんだよ」  
 
速水はココで芝村が納得してくれないかなぁと祈ったが、その祈りは神に  
届かなかった…  
 
「で・どのような効果があるのだ?」  
 
速水の脳裏に某掲示板の名台詞「キターーーーーー!」が響く。  
 
「聞くの?」  
「異なコトを言う はやく説明せよ」  
「つ・つまり 元々のB・Hって気持ち良くなるプログラムなのは解るでしょ?  
 この間試したアレ…」  
「!!!!!! バ・バカモノ! アレは後学にとお前が持ちかけて…」  
「でー どうだった?気持ち良かったでしょ?」  
「……う・うむ」  
 
顔を真っ赤にしながら芝村は答える。気まずくもHな雰囲気のまま話は続く。  
 
「で コレは多目的結晶を介して他人に伝染するんだ」  
「う・うむ 厄介なシロモノだな」  
 
「…………」  
 
きまづい。  
 
 
知らず知らずのうちにプログラムは公舎内に蔓延していった。森から原へ、原から  
善行・田代(!?)へ善行から石津へ、田代から田辺へと徐々に、だが確実に感染  
していった。感染した者はただひたすら性欲を満たそうと相手を探す…  
 
「とおさかさぁん…とぉおさかさぁぁん!!」  
「な!?」  
 
遠坂は既に手遅れだった。プログラムの噂自体は聞いてたが、まさか意中の相手が  
関わっているとは…  
 
「ミンナ気持ち良くなれバ ハッピーで幸せデース」  
 
屋上からその現場を覗いていた小杉は本当に幸せな顔で微笑んだ。  
 
遠坂の焦点は既に失われ、目の前の肉壷に肉杭を打ち込む機械に成り果てていた。  
田辺も突き上げられるリズムに合わせてうめくだけの肉塊と化していた。  
 
「はぁっはぁっはぁっ…」  
「あふっあはぁぁぁ!!!」  
 
見境無く交わる2人に忍び寄る影…遠坂の鼻と口を異臭を放つ布が覆う!  
 
「ふがっ!?んがああああ!!!!」  
「いいかげん目ぇ覚まさんかいっ!!!」  
「そうですよ タイガー!あなたはこの程度で終わる男じゃないでショおお!?」  
「うがああああああああああ!!!!!」  
 
ドサリと倒れた遠坂の後ろには…中村・岩田・そして…あられもない田辺の姿に  
前かがみになってる滝川だった!  
 
 
=ソ ッ ク ス ハ ン タ ー 再 び=       (開始)  
 
 
「ありがとうございます お陰で助かりましたよ」  
 
靴下の臭いを嗅がせて気絶させた田辺を保健室のベッドに寝かしつけ、遠坂は振り  
返り3人に例を言う。  
 
「気にするコトなか 仲間ばい」  
「ま 昼間っからあーいうのは困りますがね」  
「おめー…いや何でも無い…」  
 
それぞれが受け答えしてる間に滝川が鼻血を吹いた。若い。困り果てた顔の遠坂も  
苦笑いをこぼす。しかしすぐに岩田は真顔になり、話を切りかえた。  
 
「どうやら一連の騒ぎの元は…強い外部刺激で解除されるみたいですね?」  
「どう言うことたい?」  
「タイガーを御覧なさい 強烈な靴下の臭いで正気に返ったでしょう?」  
「おい岩田! じゃあ田辺さんも戻るんだな!?」  
「恐らく…」  
 
恐る恐る田辺の顔を覗きこむ…  
 
「とお…坂…さん…ごめ……なさ…」  
 
うなされながら詫びる田辺の手を、遠坂は強く握り言った。  
 
「大丈夫 全部元通りにして見せます」  
 
「今回の件 私達にも協力させてくださいな」  
「で・我らにどうしろと? どうせ裏があるのだろう?」  
 
岩田と芝村が真正面から向き合う。ある意味レアな風景だ。  
 
「今回の犠牲者を助けるすべが我らにはあります そこで…」  
「お前達(ソックスハンター)の存在を認めろ…と?」  
「さすが芝村…話が早い いかがです 悪い話じゃないと思いますよ? このまま  
 だと小隊はおろか女子高にまで被害が及びます…」  
「…わかった こちらも出来る限りの事をしよう このままでは幻獣と戦うことす  
 らままならん」  
 
交渉成立、すぐさま岩田は仲間に報告・原因究明にかかる。  
 
「つまりこの校舎内でプログラムが作れる場所があやしーってことか!」  
「そうです なかなか物分り良くなってきましたね」  
「へへへー」  
 
得意げな滝川をよそに中村が眉をひそめる。  
 
「じゃあ先にプログラム作ったヤツはどこにおるばい?」  
「我々も良く知ってる人物ですよ…」  
 
岩田の一言に一同…  
 
「な・なんだってー!!?」  
 
 
 
一同は自分達がいつも訓練で使うPCの前にいた。  
 
「ココで…作られたって言うわけ?」  
 
速水が怪訝そうに尋ねる。その言葉に岩田が答える。  
 
「そうです 人目に付かずに作製するにはココが一番!! そしてココを使う  
 人間はおのずと限定されてきます…」  
「…! 小隊の中にいるというわけか!?」  
 
芝村が思わず食いつく。  
 
「そういう事です 最近PCを使ったと思われる人物をしらべましょう 指紋  
 でも取ればすぐに…」  
「あ き・昨日電子妖精作るのに使っちまった…」  
 
滝川の一言で雰囲気が変わる。  
 
 
 
気まずい雰囲気…  
 
 
 
小杉は夢見ごこちで屋上にいた。例のプログラムで理性を失った来栖が貪るように  
自分の肉体を欲しているのだ。思っていても叶わぬ願いが形だけでも実現したのだ。  
 
「アァ ギンガ…もっとキてくだサイ 何度も…何度でもイイですヨ…」  
「うぅ…あぁぁ…おおぉぅっ…!!」  
 
「…私のカンはドンピシャでしたね」  
 
階段そばで岩田が自身たっぷりに言う。どこかの誰かがヘマをしたので最初は確信  
出来なかったが「彼女だけ意識がハッキリしている」のを見てうなづく。  
 
「…で 2人とも何をしている?」  
「い…いやその…ねぇ?」  
「女にゃわっかんねぇよ!」  
 
滝川・速水は前のめりにうずくまっていた…  
 
 
小杉と来栖の情事を一同は食い入るように見ていた。何のカンの  
言っても彼らは多感な年頃なのだ。  
 
「うっへぇ…来栖センパイすげぇな…」  
「…」  
「なんだよ 速水まさか出ちまったとか…」  
「ち・ちがうよ!ただ…」  
「どどどどうした厚志!なな何かわかったのか?」  
「……ヨーコさん…泣いてるみたい…」  
 
ちゃかす滝川とあまりの出来事にパニック寸前の芝村をよそに、速水は  
小杉を見つめていた。  
 
「ギンガ…ギンガァ…ずっとこのままでイて…私を放さないで…」  
「うっく…おお…あ…」  
 
その大きな体とたどたどしい日本語のタメにつらい思いをした日々も  
今だけは忘れることが出来た。「あのプログラム」のお陰でも、小杉は  
かまわないと思っていた。  
 
「みなさん!今です!!善行の靴下を!!」  
「え!?OH!NO!!」  
「う?ぐあぁぁぁぁ!!」  
 
「ぐっは!指令の靴下苦げぇぇぇぇ!」  
「ぬぅっ!目にしみるッ!厚志早く2人を押さえろ!」  
「うはぁぁぁぁぁぁぁ!国宝級とはいえすさまじかー!!」  
 
さすがのソックスハンター達ももんどりうつ始末。が、数分後無事2人を  
押さえることに成功した。  
 
「さて…後は聞くだけですね 張本人から」  
 
岩田の眼光が鋭く光った。  
 
 
 
「ふっふっふっ…今頃高校とプレハブはパニくっているはず (あの)プロ  
 グラムで男共は骨抜き 女は自ら寄って来る…女子高生の靴下取り放  
 題っ!!」  
「そこまでだ!!」  
「誰だ!?」  
「私だ…」  
「ま・舞!?」  
 
芝村準竜師のプライベートルームに5121小隊の面々が舞を先頭に押  
しかけた。  
 
「なぜ お前達がココに…」  
「私が通しました」  
「更紗!一体どういう…」  
「それはこちらのセリフですっ!!!」  
 
「己の欲のタメに小隊のPCにプログラムを設置し使用した者から感染  
 する様に仕向けたそうですね 5121小隊の小杉さんの証言とプログ  
 ラムの出所からこの事実が発覚したわけですが…」  
「ぐ…」  
「そもそも靴下の件は前回で反省なさったんではなかったのですか?」  
「靴下の魅力にはかてんのだよ…」  
「なぁにを開き直ってるんですか!! 今回は高校敷地内ですんだから  
 よかったものの外に出たらどーするんです外に!!」  
「ははは 心配性だなぁ そんなことになる前に手は打つさ」  
「…勝ちゃん…………………ミサイル部前へ!!!!!」  
 
一同の顔が青ざめた瞬間閃光と爆音が走り、どこかで見たことの有る  
ドクロ型の煙がもうもうと立ちこめていた。  
 
 
エピローグ  
 
数日後、小隊はいつもの通りに機能し始めた。多少の気恥ずかしさが  
残るもそれぞれ思い人同士(?)だったこともあり弊害は出なかった。  
 
「ま・めでたしめでたしばい」  
「まさか身内が原因なんてなぁ〜」  
「まったく…あきれると言うか大胆と言うか…」  
「色んなコトもうやむやになってしまいましたしねぇ…あの副官意外とヤリ  
 手ですね」  
 
ハンターの面々もいつも通り味のれんで食事をしながら活動内容などを  
話し合っていた。  
 
「ちょっとイイかな あのさ 次ぎ狙う靴下さ ヨーコさんにしない?」  
 
滝川の提案に一同顔を合わせうなづく。味のれんを出た彼らは新たな  
ターゲットに向けて駆け出していった。  
 
                       ==ソックスハンター再び 了==  

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