ガンパレードマーチ  

 速水厚志にとって、芝村舞は複座のパートナーという認識以上のものは、その時なかった。  
 彼女は目立ち過ぎる。彼女の行動と言動、存在そのものが周囲の人間の感情を逆巻かせた。嫌悪や侮蔑、畏怖や  
好奇、ありとあらゆる視線の集まる中心にいながら、彼女は自分が既に完成された美術品であるかのようにそれら  
を受け流し、孤高とでも言うように佇んでいた。  
 恐らく――速水は思った、――彼女は僕らのような凡人とは違う世界にいるのだろう。速水の最初の見解だった。  
 神話や寓話の中で語られるような。見たかのように語られ誰も見たことのないような。  
 神や仏、妖精、精霊、天使、悪魔、怪物、或いはまだどの語彙にも相当しない形而上の存在。  
 芝村舞の持つ現実味の薄れた存在感、それでも圧倒的な存在感の正体はそんなところに繋がるんじゃないか……  
速水は何となくそう思っていた。  

 係わらない方がいい。早々に速水は結論づけた。  
 彼女は目立ち過ぎる。周囲の批判を受けている。そして自分はこの小隊で穏便にやっていきたい。得体の知れない  
彼女の機嫌をわざわざ取る必要などないし、彼女に近づくことで自分まで周囲から孤立することは避けたかった。  
パートナーとして当たり障りなく接していくだけでいい。  
 戦場で自分の生存率を高めるためにも彼女との関係はあまり険悪なものにならないように気をつけなければならなかった。  
 事実、舞と一番話す男子は速水だったろう。その速水も、舞の個人的な事柄については一切触れたりはせず、ただ  
仕事上の事務的なやり取りだけを続けていただけだった。  

 舞に関する情報は大抵間接的に入ってくる。殆どは芝村一族に関する悪名だった。はっきりとした悪意を持たない自分よりも、悪意を持った周囲の方が芝村に通じ、一方的に話してくる様は滑稽だと速水は見ていた。  
 一人、舞に対して好意的であったのが東原ののみだった。ののみは舞に懐いているようで、舞の話を勝手にしてきた。  
速水はののみから舞が一人では電池が交換できないこと、部屋がすぐに散らかること、亡き父親を尊敬していることなどを聞いた。  
 ののみは頻繁に「舞と仲良くして欲しい」と頼んできた。そういう時はお得意の笑顔を浮かべ、「頑張ってみるよ」とだけ返事を返す。ののみのいる前ではなるべく舞へ自分から話しかけるようにして見せた。子供はそれを見て満足気な顔をする。誤魔化しはこの程度で充分だった。後は極力舞を避けた。  

 結局、速水厚志は芝村舞と複座のパートナーを組んでいながら自分から歩み寄るような真似はせず、また芝村舞もそのことを気にする様子もなく、日々は過ぎていった。  

++  

 未だにあの日の出来事が、夢であったか現であったか、速水は自信がない。  
 とにかく、あの日を境に速水の中の芝村舞のイメージは崩壊した。触れたら祟りがありそうな彼女の聖性は悉く消失した。  

 あの日。  
 他の隊員はとっくに引き上げていた深夜、教室の片隅で甘い喘ぎ声を必死に抑えようとしているのは、確かに芝村舞だった。  
 ……机の中にお弁当箱を忘れて、僕はそれを取りに戻ってきただけだ……。  
 速水は教室のドアの前に立ち尽くし誰にともなく言い訳をしていた。  
 見てはいけないものを見た、という意識と、この年頃なら自慰ぐらいするだろう、という冷めた気持ちがない交ぜになり、引くことも押し入ることも躊躇わせていた。  
 舞は下半身の衣類を全て脱ぎ、椅子の背凭れに仰け反らせた背中を押し付けながら、きつく目を閉じ這い上がる快感に集中しているようだった。外にいる速水の存在に気づく気配はない。内股に揃えられた脚が時折跳ね上がって机を揺らした。太股の隙間に挟まれた右手だけが激しく動き、その動きから舞の絶頂が近いことがわかる。  

 ここまでだったら。  
 速水は思い返す。  
 ここまでだったら、まだ自分は芝村舞に無関心でいられただろう。彼女の知られざる性癖に驚きながらも……  
女なんてみんな救いがたい存在だと、過去の自分の経験からその一言で済ませ、明日からまたいつも通りの関係が続けられただろう。  
 あの日だってそうだった。速水はこれ以上ここにいても仕方ないと思い、空の弁当箱を諦め引き返すところだった。  
 教室で、絶頂を迎える舞が口走った言葉が、速水の足を止めた。  

「お父さん……ッ」  

 ――未だに夢だったのではないかと、速水は思う。  

++  

 速水厚志は回想から舞い戻った。  
 夕暮れの放課後。職員室からプレハブへ向かう尚敬校の廊下の途中。  
 上気した頬で芝村舞が速水厚志を睨んでいた。  
「……なあに?」  
「……貴様は状況の判断もつかない痴れ者か」  
 低い声で睨みをきかす舞に対し、速水は笑顔で続きを促した。  
「あんな、教師の目の前で……ッ」  
「ああ、良かった。あんまり反応してくれないから入れてくれてないのかと思ったよ」  
 納得がいった、と頷く代わりに、速水はポケットに仕込んであるリモートコントローラーの目盛りを動かして  
みせた。途端、舞の顔が羞恥に赤く染まる。  
 つまり彼女は職員室で本田の話を2人で聞いている最中、速水が舞の中にあるローターの目盛りを動かし、教師の眼前で快感を堪えなければならない彼女を見て楽しんでいたことに怒りを感じているらしい。  
 芝村一族にも一応貞操観念はあるんだと速水は学習した。  
「芝村は本当にポーカーフェイスが上手だね。でも……本当に良かった。もし言いつけ破ってたら、ねぇ、  
また新しいお仕置きを考えなきゃいけないところだったし。そんなの僕もめんど臭いしねぇ。それにしても  
よく耐えてられるね、さすが芝村のお姫様だ」  
 コントローラーの目盛りは6段階ほどある。その内舞が受けている刺激は5段階目のものだ。長さ10cmはある物体がかなりの振動で膣壁を刺激している筈なのに、舞の口からは吐息すら漏れない。  
 固く口を閉じ、上目遣いに速水を睨みつけている。  
 こんな状況でまだそんな顔が出来るところが彼女らしい、速水は思う。でもそこが気に食わない。  
「これでも駄目?」  
「んっ……!」  
 目盛りを最大まで上げると、舞はとうとう自分の体を自分で抱え、その場に座り込んだ。  
 キュロットの股間の辺りも一緒になって微かに震えているのがわかる。それでもだらしなく嬌声を発したりはしない。  

「貴様、まさか、こんなところで」  
「別に僕は構わないけど。後回しにされて我慢できなくなって、困っちゃうのは芝村の方でしょう?」  
「……学校だぞ!」  
「教室でオナニーに耽ってた君に意見されたくないよ」  
 速水は冷たく一瞥し、極まりが悪そうに視線を逸らす舞を見下した。  
「ああ、もっと人に見つかりそうなところに移動して欲しいの?」  
「そんな訳じゃない!」  
「なんだったら僕の部屋に来るかい? 君が悦びそうなものもたくさんあるよ。……ただし、当分帰れなくなると思うけどね。どう?」  
「誰が……貴様の部屋などに、上がるものか」  
「そう。じゃあ決まりだね」  
 視線だけで立ち上がることを促すと、速水は舞が着いてくるかも確かめないまま、廊下の一番端にある倉庫の扉を開けた。  

++  

 歩き辛そうな舞を先に倉庫へ押し込み、後ろ手に扉を閉めて鍵をかける。  
 舞は奥のソファーに手をつくと、速水の方へ尻を突き出した格好でキュロットを下げ始めた。  
「へぇ、自分から脱ぐなんて、する気満々ってこと?」  
「うるさい! さっさとこの下品な道具を取り除きたいだけだ……!」  
「ふうん。本当に取って欲しいのかなぁ?」  
 キュロットが床に落ち、ストッキングに包まれた肉の薄い尻たぶが現れると、速水はそれを両手で荒々しく掴んだ。  
「こんなに大きい染みが出来るぐらい濡れてるじゃないか。ローターが中で暴れるのを感じて濡らしたんで  
しょう?」  
 速水はストッキングが湿り、色が濃くなっている部分の縁を指でゆっくりとなぞりながら、舞の羞恥心を煽るように囁いてみせた。  
 ソファーの背に手を置いて俯いたままの舞の表情は汲み取れないが、耳まで赤く染まっているのはわかる。  
 速水の視線から逃れたそうに尻が揺らされるが、速水の手で両側から固定されているため逃げることは  
出来ない。  
「は、はやくっ……」  
「『早く』、何? 早く弄って欲しい? 早く取って欲しい? どっち?」  

 焦らしたまま速水がストッキングを裂くと、失禁した後のように濡れそぼり性器に張りつく下着のクロッチが現れた。白の下着は色素の濃い秘裂をくっきりと浮かび上がらせていて、その中心では激しく振動する  
ローターが少し突き出している。  
 薄布越しに指で押してやるとぬめる襞を割ってローターは簡単に中に入り込み、とうとう速水の指先は  
下着ごと膣襞に飲み込まれてしまった。  
 奥まで侵入してきたローターの感触に舞の背が戦慄き、甲高い喘ぎが断続的に口から漏れ出すように  
なっても、舞は決して自分から行為をせがむような態度は取らなかった。そんな彼女の頑なさが更に  
速水の嗜虐性をそそらせる。  
「感じてるんでしょう、下品な道具で。本当は奥までグリグリ動かして欲しくてお尻を突き出してきたんだ、そうでしょう?」  
「ち……ちがう、違うっ……!」  
「違わないね」  
 クロッチをどかし、露わになった秘裂に指を突き立てて奥に埋まったローターを引きずり出す。完全に  
出てしまう手前で止め、再び奥まで押し込んだ。ローターの振動で激しく震える陰唇が愛液を撒き散らし速水の顔に飛沫を飛ばすが、速水は気にせずローターのピストンを手伝った。  
 ローターが奥に入り込む度に膣が窄められ、切ない声と共に舞の背中が仰け反る。  
「ねぇ、イきそうになってるじゃないか。少し動かす度に腰ガクガクさせてさ。本当に取って欲しい? 今頼めば本当に取ってあげるよ?」  
「あ、あ、いやぁッ」  
「嫌なんだ。やっぱり下品な道具でイきたいんだね。ペニス貰う前に一度イっておきたいでしょう。僕の言いつけをちゃんと守ってるとしたら、朝からこんな状態なんだからね」  
「そ、そうだ……朝から、こんなっ……こんなものに、弄ばれて、私……!」  
「いいよイっても。その代わりちゃんと後で僕にお礼をするように。はい、芝村の弱いところほじってあげる」  
「あ! あ、あ! あァッ!」  

 速水は本格的に舞の膣壁に刺激を与えるべくローターを持ち変えると、円弧を描くように突き立てる。  
 初めは腹側を重点的に責めると、次は背中側の壁を激しく擦り上げた。  
「ああああッ!」  
「あははっ、見つけた……そうか、芝村は背中の方がクるんだねぇ」  
 舞の反応の変化は顕著だった。背中側にポイントを移した途端に白い喉を仰け反らせて嬌声を上げると、  
啜り泣きにも似た声で言葉にならないことを言い続けた。目の前の女性器は羞恥と快感の狭間で悶える  
舞とは別の生き物のようにローターを飲み込み、襞の一つ一つを擦る感触を存分に味わっているように見えた。  
「ほら、さっさとイきなよ。後がつかえてるんだから」  
 ズボンの前を膨らませる自分の屹立したものを舞の尻たぶに擦りつけながら、速水は後ろから舞の顔を  
無理矢理こちらに向けさせた。涙目になった舞の瞳の中に速水の青い光が妖しく映り込む。  
「いやらしい顔……ね、そのまま、イく顔見せて……?」  
「うあ、あああああッ……!」  
 半身を捩れませたまま体全体を痙攣させ、速水に見つめられながら舞は絶頂に達した。  

++  

 舞が落ち着くのを待ってから、速水は名残惜しそうに締め付けてくる襞の中からローターを  
取り出した。愛液に滑るローターの表面は窓からの西日に反射し、淫靡に輝いている。  
「こんなにぬるぬるにしてたら擦られてもわからなそうだけどね」  
「……余計な世話だ」  
 反抗心も露わに起き上がろうとする舞のポニーテールを掴むと、速水は至近距離で囁きかけた。  
「芝村は少し自分の立場を忘れてない? 芝村が忘れるっていうのなら、僕も芝村との『約束』を  
忘れるよ?」  
「く……」  
「『約束』をしたよね? 信じて欲しいんだけど、僕は決して君が父親をオカズにオナニーしてた  
なんて吹聴するつもりはないよ。僕の最高のガンナーが変態だなんて口が裂けても言えやしない。  
……でも、何かの弾みで口が滑るってことはあるかも知れない。時々『話しちゃいけない』ってことを  
忘れてしまうかも知れないんだ……そうならないように」  
 言いながらズボンのジッパーを下ろし、半透明の液体が滲む性器の先端を舞の頬に押しつける。  
「芝村がいつも僕の側にいて、僕に『話しちゃけいない』ってこと思い出させて欲しいんだ……  
君はそうするって『約束』したね? そうでしょう? なのに君がそんな態度を取るんだったら  
……楽しい『約束』も滅茶苦茶になっちゃうじゃないか」  
「何が楽しいもんか!」  
 舞は吠えた。  
「……芝村ってのは厄介だね……まだ理性が飛ばないんだ」  

 速水の性器はそのまま舞の顔を滑り、閉じられた舞の唇に重ねられた。ナメクジが通った  
道のように頬から口にかけて速水のカウパー液が光っている。  
 なかなか口を開こうとしない舞の頬を親指で押し、無理矢理こじ開けると、そこに性器を  
差し込んだ。  
「まあ、表向きだけでも抵抗しているように見せないと、自尊心ってものが満たされないんだろう  
ね。それはそうと、さっきイかせてあげる時に『お礼をする』って約束したよね?」  
 実際のところ舞の返事を確認した訳ではない。返事を確認する前に舞が勝手に達してしまった  
のもあるが、あんな口約束が後になって有効になるか無効になるかは、結局この速水だけが  
決められることだった。  
 舞も観念したかのように性器の表面に舌を這わせ始める。  
 それを確認すると立ったままだった速水はソファーに腰を下ろし、舞のポニーテールを馬の  
手綱のように操って、彼女の動きに緩急をつけさせた。  

 舞は先端に舌を這わせ唾液にまみれさせると、根元に向かうすじに沿って舌が下りる。再び  
舌が先端へ戻ると鈴口はいやらしく開き透明な液体を零していた。それを舌先で掬いながら  
再度先端を口に含むと、唇で扱くようにして顔を上下させ、脈打つ性器全体に刺激を与える。  
 口中から溢れる唾液が陰茎を伝って滴るが、舞はそれを両手で受け止め、口を離した時には  
柔らかな手の平でそれを塗りつけるように先端から陰嚢まで撫でてみせる。  
 そしてまた先端を口に含み、氷菓を溶かすように舐め上げる、という行為を繰り返した。  
「そう……上手だね芝村……、ひょっとしてお父さんから教わったの?」  

 

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