ガンパレードマーチ  

4月某日。  
空は一日中突き抜けるような晴天。出撃ナシ。  
仕事を終えて家路につく、ありがたいほどに平和な一日。  
皆が空を見上げて微笑んだやさしい春の宵に。  

若宮の下宿の六畳間には異様に緊張した空気が漂っていた。  

「……副委員長の下着がどうしたって?」  
ドスの利いた声で問詰められ、家の主はうっかり口を滑らせたことを後悔した。  
「い、いや…『すっごいの』着てるっていうから…どんなのかなーと思って…」  
「誰が言ったのよ」  
「…ヨーコさん…が言ってたって滝川と茜が」  
ちゃぶ台の向こうで新井木が語気を荒げた。  
「ヨーコさんがそんなこと言うかー!!」  
怒鳴られて若宮の体が小さくなる。さらに小さな声でハイ、と言う。  
ああ。せっかくのお泊りデートだったのに。  
学校から一緒に帰ってきてかわりばんこにシャワーを浴びて、  
パジャマ代わりにシャツを貸したらぶかぶかで、裾を引っ張りながら  
うれしそうに「やっぱ大きいねー」なんて笑ったりして。  
差し向いでラブリー晩飯だったのに。ついさっきまで。  

「だいいち副委員長が黒レースのブラしてようがサラシ巻いてようが  
関係ないじゃない。直接見るんじゃないんだからさー」  
ばりばりとたくあんを噛み砕きながら説教する新井木。  
ついでに残ったごはんをかきこむ。  
「いや、それは違うぞ。素子さんのような美人がてきぱき仕事してて、  
汚れた作業服なんか着てて、でもその下には『すっごい下着』とあのナイスバデェが…  
と思うだけでこう」  
「バカじゃないの。じゃなきゃ変態」  
きっぱりと言い切って新井木は大袈裟に溜め息をついた。  
怒りをとおり越してあきれている。いや、バカなのは知ってたけど。  
流石にムッとしたのか若宮が言い返す。  
もういじめてやる。  
「何をいう。こんなこと思うのはあの素子さんだからだ。  
『素子さんのブラジャーはどんなのだろう』と思うだけで俺は士気が上がるぞ。  
大人の女性の色気っていうのか?それに比べると他は乳臭いというか、  
特にお前なんか『新井木はひょっとしてちちばんどしてるのか?』って感じだけどな」  
「ち…」  
屈辱のあまり新井木の顔が沸騰した。新井木は普段ワイヤーの入っていない  
スポーツブラをしている。というか普通のブラはできない。AAカップでも余ってしまうのだ。  
しかも細いのでアンダーの合うものも少ない。。  
ゴムで締めるあたりがブラジャーというより「ちちばんど」と形容するに相応しいかもしれない。  
「悪かったね!どうせボクは副委員長やヨーコさんみたいな  
ボインじゃないわよ!!そーゆー見た目重視の男ってサイッテー!」  
男は外見と公言して憚らない彼女だが、それは自分が女としての魅力に  
欠けまくっていることは充分承知してのことである。しかし一応・仮にも・  
恋人である若宮が他の女(の乳)を誉めるのは我慢ならない。  
いや、我慢の必要性を感じない。  

「だいたいねぇ…」  
「その通りだな」  
若宮は静かに同意して味噌汁を一口すすった。  
「はぁ?」  
新井木は勢いよく拳を振り上げたまま気勢を削がれてぽかんと口を開けた。  
「大事なのは…」  
コトリ、とお椀を卓袱台に戻して顔を上げる。  
怪訝そうな新井木の目を真っ直ぐに見つめて精一杯真剣な声を出した。  
「感度だ」  
「………………」  
一瞬間をおいて新井木の顔が紅潮した。もちろん怒りのためではない。  
「いっやーこんないいチチなかなかないと思うぞ。服脱がしてるだけで  
乳首コリコリだし。手でさわっても反応イイし。舌だともう」  
「わーわーわーわーーー!!」  
「誉めてるのに」  
「いらない!」  
新井木は両手で耳をふさいでぶんぶんと首を振った。ますます顔が赤くなる。  
若宮を見るとホント反応いいよなぁ、とニヤニヤしている。  
(からかわれた…!)  
「く…悔しい……」  
両手で肩をかかえ、くるりと背を向けた。  
「もう!絶対!一生!触らせてあげない!」  
「え〜」  
背中から腕を回して抱き寄せようとするのを身をよじってかわす。が、  
両手が使えないために畳に前のめりに転がってしまった。  
「くっつくなバカ!」  
「嫌だ」  
上からのしかかり、背中にべったりとくっつく。  

耳元に顔を寄せると石鹸の香りがした。  
「いい匂い…」  
フガフガと嗅ぎまわりながら逃げる体を押さえ込もうと腕を回した。  
「乳臭いとか言ってたくせにッ…」  
「忘れた」  
両腕で胸を隠したまま転がり出ようとする体はあっというまに組み敷かれてしまった。  
ほっそりとした腰は同じくらいの太さの太腿にがっちりと固定されている。  
仰向けになり、両腕を胸の前で交差させた格好で少しも動けない。  
新井木はブーとふくれて横を向いた。  
「さわんないで」  
「新井木ぃ〜」  
宥めるように胸の前で組まれた腕をなでたものの、解く気はないらしい。  
「あ、あの…勇美サン?」  
「さわんないでって言ってんのよ」  
顔をそらしたままそれだけを言って黙った。どうやら本気で怒って(照れて)いるらしい。  
「……」  
若宮はゆっくりと体をずらした。  
「わかった。さわらない」  
その言葉に驚いて振り向いた新井木の目に映ったのは、胸の下まで捲り上げられたシャツと  
露出した腹の上を這い回る黄金のハリネズミ(一部茶色)だった。  

「なッ…なななにするのよ!」  
「ん〜?『胸に』さわらなきゃいいんだろ?」  
「だから、ッて、ちょっ…やめっ…」  
ごつい指で脇腹をなでさすられて新井木は悶絶した。  
懸命に頭を押しのけようとするがかなうわけもなく、  
逆に臍を舐め上げられてのけぞってしまう。  
「ひあッ…」  
だめだ。くすぐったくて力が入らない。  
すぐに膝の間に割り込まれて、下は全部脱がされて。ぶかぶかのシャツ一枚にされる。  
膝を肩に担ぎ上げた格好で下腹を愛撫される。  
一方の太腿を撫で上げて、もう一方の脇腹にキス。  
ちょっとずつ場所をずらして、びくりと体が跳ねたところを丹念に舐めまわす。  
くすぐったさの中の痺れるような気持ちよさに思わず声が漏れそうになる。  
こらえた声を吐息に逃がしても、それが余計に男を煽ることには気付かない。  
閉じようとする脚は太い首に阻まれて、快感を伝えることしかできない。  
ゆっくりと鼠径部まで唇を移動させた。白い肌に、道標のように赤い跡が散っている。  
ココが感じるしるし。  
抵抗を止めてくったりとなった体をいっぱいに開く。中心のほころび始めた場所へ指をあてがう。  
「んぅ…」  
少し圧力をかけるとまだ早かったのか小さくうめいて腰が緊張した。  
引き抜いて代わりに顔を埋めた。全体を舌で舐め上げる。  
舌を尖らせて尿道口から上をさぐると、襞の間にまだ小さな肉芽があった。  
「ふっ……く」  
新井木は声を押さえようと胸元でシャツの布地を握りしめた。  
袖を噛んでも、びくびくと痙攣する下肢は抑えようもないけれど。  

丁寧に舌先で転がされて、すぐにぷっくりと立ち上がってしまうのが自分でもわかる。  
しかし親指で包皮を剥き上げられて直接刺激されるようになると、  
そんな余裕などどこにもなくなってしまう。  
「や…!…あぁっ……そこ…だめぇッ!」  
ほんの小さな粘膜に全身の神経が集中する。  
強く舌で圧し、くるくると弄る。悲鳴のような嬌声がひっきりなしに上がる。  
とろとろに溶けた秘口に指を埋めると待っていたようにすんなり入った。  
く、と指を曲げて肉芽を後ろから刺激する。  
自然と持ち上がった充血したそこに息を吹きかけながら  
かすれた声で若宮がつぶやいた。  
「ココも乳首みたいだな。すぐ大きくなるし。舐めるとすごく濡れる」  
指で裏側をこすりあげられ、新井木の声が切羽詰ったあえぎに変わる。  
指の動きに合わせて無意識に腰が揺れ、腟内が痙攣する。  
唇をすぼめて強く吸う。唇の隙間から覗くわずかな面積を舌で強く摩擦する。  
「あ………はッ…も・イっ…………あぁっ!」  
新井木の背がしなって畳から浮いた。細い首をのけぞらせて浅い呼吸を繰り返す。  
がくがくと二三度震えて弛緩した体の奥から、どろりと濃い体液が流れ出した。  
指を引き抜き、まだ余韻にふるえる体を裏返して若宮が笑った。  
「…それに吸うとミルクが出る」  
それが指す意味を新井木が理解する前に若宮は新井木の体を一気に貫いた。  
「はぁう!」  
じゅぶ、と音がして残ったミルクが溢れ出す。それが見たくて激しく動いてしまう。  
もっと奥まで届きたくて尻肉を強くつかんで左右に開いた。  
若宮を受け入れるためにいっぱいに広がったそこが見えた。  
小さな体に、不釣合いに太いものを咥え込んでいるように思えた。少し胸が痛んだ。  
いつも無理をさせていると思う。  
でもお前は。いつも走っていってしまうから。  
きっと遠くない未来、ひょっとして明日には次の場所に立っている気がする。  
指に力を入れて動きやすいように抱えなおす。  
肌のぶつかる音がいっそう激しくなる。濡れた音も。  

「…勇……美…っ」  
身長差のせいで新井木の膝は床に届かない。  
つまさきにももう力が入らないので床にすがって途切れ途切れの声を上げるしかない。  
「は…っく……あ…イイ…」  
気持ちよくて視界がぼやける。理性などほとんど残っていない。  
後ろが動くたびに胸が布地にこすられても痺れるような快感が走る。  
触れられてもいないのに先が屹立している。  
後ろからのときはいつも若宮にいじられてるからだ。条件反射。  
そういうカラダになっちゃったの。  
じれったくなって自らの指でシャツの上からこねまわす。  
若宮の指を思い出しながら強く摘み上げた。  
とたんに体中が敏感になる。  
「もっと…つ…よく…して…もっ…!」  
指先が白くなるほどに力を入れた。  
リクエストどおりに若宮の動きが自棄的なものに変わる。  
犯されているトコロは気持ちよくて熱くてもうよくわからない。  
きっともう真っ白いのがいっぱいでどっちのだかわからなくなるんだ。  
「ああっ…あっ…康・・み…ッ…ボク…ああ…っ……イクよ…」  
言いおわらないうちに内部が強く若宮に絡みつき、絞るような動きをみせた。  
「……ッ…」  
反応したかのように体積を増した若宮が最奥を強く突き上げる。  
新井木の頭の中で何かが弾けて全身が痙攣する。  
その直後、強い収縮を繰り返す最奥で若宮がはじけた。  

結局もう一度シャワーを浴びる羽目になり、二人で狭い風呂場に入った。  
若宮に背を向けて新井木はごしごしと泡だらけの体をこすっている。  
「なあ。いいかげん機嫌なおせよ」  
後ろから抱きつかれて新井木が赤くなる。慌てて胸を隠したが遅かった。  
「あ?」  
「……」  
赤く腫れ上がった乳首を見咎めて、流石に若宮も事情を察した。  
「あーあ。こんなにして」  
「うるさい!」  
ひょいと抱き上げて片腕で支える。石鹸でぬめる肌を撫でまわしながら胸に顔を近づけた。  
「言えばさわってやったのに」  
暴れる体を抱きしめてぺろりとなめるとかわいい声を上げてしがみつかれた。  
顔をみると潤んだ目で睨まれた。かわいくて苦笑する若宮。  
「俺が悪かった。お前の胸がサイコーだ。わはは」  
「何がおかしい!」  
殴ろうとして力が入らなかった。  
舌を這わせながら若宮が笑った。  
新井木の覚えてなさい、が湯気と吐息にまぎれて消えた。  

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