「っあ…! あぁああ…っ!」
静かな月光と、甘い声が部屋に満ちていた。
「は……あぁ…あっ…いいですっ……いいの…気持ち、いいのっ…!」
淡い青に染まった空間で、それよりも鮮やかな青が揺れる。
恋しい男の腕の中で、ぴくん、ぴくんと身体を跳ねさせながら、田辺は何度も
そう訴えた。
「真紀…」
応えて、遠坂は熱に浮かされた声で彼女の名を囁く。融けた蜜花に、より深く己を
埋めながら。
シーツの上に腰を下ろし、彼はほっそりとした田辺の背中を包んでいた。あたかも
愛し子に抱っこをせがまれた父親の如く、その頬を彼女のそれに寄せながら。
しかしそれは男女の睦み合い。温かな優しさの上で、狂おしい情欲が波を打つ。
「ひくっ…いっ…ぃぃ…ぁああっ…」
すすり泣きが、田辺の唇からひっきりなしに零れる。
そのたっぷりとしたふくらみの先端も、剛直を呑み込んだ花弁の合わせ目も、
彼の指先に愛でられていた。
子を成すことのない身体の、ただ快楽のためだけの甘い蕾を、愛しい男につつかれ、
転がされ、つままれる。
そのリズムに合わせて、そこに入っているものの硬さを確かめるように、花芯が
きゅ、と縮こまった。
そうやって狭まった路の中を、逞しいものが出入りする。幾重もの潤んだ襞を、
張りつめた先端がかき分けていく。
「っあ…いいの……あぁ…好きっ…!」
その責めがどれほど自分を悦ばせているか――どれほど自分を幸せにしているのか、
出来ることなら身体をそっくり入れ替えて伝えたかった。
「っく…」
耳に降りかかる、快楽に尖った吐息が愛しい。
「あ…あぁ……ね…気持ちいい、ですか…? わたしの、からだ…いい?」
舌っ足らずな、言葉足らずな問いかけ。
思考は絶え間なく与えられる刺激に融け、本当に訊きたいことさえ、
もう形にすることが出来ない。
「ええ…とても。とても――幸せ、ですよ」
けれど囁きが成す形は、欲しかった答えそのもので――全身に甘いパルスを走らせる。
「あぁ……ぁああああっ…」
その刺激に震えながら、田辺はうっとりとした嬌声を上げた。