四肢に鋭い痛みが走る。背中が床に着く前に両手足が全く動かせぬ状態を確認。
一方で大きな疑問が渦を巻く。
何故だ?何故壬生屋の業が使える?
原に関する記憶の殆どが連結し、膨大な数の推測が形成されるが説得力があるものは
一つもない。・・・解らない。
原はゆっくりと速見の腰に座る。パシャリ。混乱の極みにある速水の表情を左手のカメラで撮る。
そして口を開く。
私は士魂号の開発者。筋肉の動きを知るために体中にコードを付けて一日中動いてた事もあったの。
色々な動作を何回も何回も繰り返したわ。気が付いたら想像通りに体を動かせるって特技が身に付いてた。
今のは戦闘中の一号機の動きを真似しただけ。たいしたことないわ。
速水は激痛に耐えながら原の右手にあるナイフを見る。
「どうする・・・つもり?」
どうなるかは想像出来ていたが言ってしまう。
微笑みながら原は答える。
一緒になる準備だよ。
鳩尾にナイフの先端がピタリと乗る。速水の顔は恐怖で染まっている。
パシャリ。この顔は私だけのもの。
カメラを床に置き、ナイフを両手で持ち直す。
刺す。内臓を傷つけぬように。臍まで一気に裂く。躊躇せず。
速水の口からは意味のある言葉は出ない。出ているのは激痛を音にしたものだけだ。
新しい赤い線に両手の指を刺し、こじ開ける。激痛音は更に大きくなる。この寝室は防音処理されてるから問題はない。
内臓を右手で愛撫する。熱い柔らかいビクビク動く。官能的な刺激に原は恍惚の表情をする。
激痛に加え激しい吐き気に速見は悶える。
やめてくれやめてくれやめてくれやめてくれやめてくれ
やめてくれまだ治療は出来るからやめてくれやめてくれ
やめてくれやめてくれ貴方とは離れないからやめてくれ
やめてくれやめてくれやめてくれ幸せな家庭を約束する
まだ死にたくないんだやめてくれやめてくれやめてくれ
命を削る愛撫は続く。適切な言語がない表情。パシャリ。誰も見たことがない顔。
速水の反応が鈍くなる。思考も消えかけている。
だめだ。舞、ごめん。
速水の絶命と原が腸を引きずり出すのは同時だった。
ずるずるずるずるずるずる。予想以上に長く感じる。適当なところで切る。
宝石のように輝く内臓を一つ取り出し、じっくりと鑑賞する。
十分に堪能して横に置き、次の宝石を取り出す。原の笑みは崩れない。
辺りは血の色と臭気で充満している。幻想の中に居るようだ。
最後だ。原は鋸を白い肋骨に当て、力を込める。腕に伝わる振動だけが妙に現実的だ。
外れた。心臓だ。繋がっている血管を丁寧に切断し、そっと持ち上げる。
赤。生命の赤。根源の赤。
ナイフで小さく切り刻み、数個を口に入れ、咀嚼する。おいしい。
不意に泣き出しそうになるが堪える。
心臓を喰い尽くした。他の内臓は食べ切れないから冷凍庫に入れよう。
胴体から四肢と頭部を切り離し、同じように冷凍庫へ。さすが業務用、全て入った。
時間はいくらでもある。一緒になろうね