ガンパレードマーチ  

原が遅い夕食を摂っている。居間のテレビは消してあるので、壁時計と食器が触れ合う音しか聞こえない。  
規則正しい静かな音は、これまでの日々とあの日を思い出させる。  

夜遅くチャイムが鳴った。警戒しつつドアを開けると速水が居た。  
原は問うた。「あら、どうしたの?」  
速水はやや固い表情で答える。「あの、相談したい事があるんです」  
なんだろう、ちょっと考えて原は答えた。「ま、とりあえず中にはいって」  
「お邪魔します」と短く言い速水は靴を脱いだ。  

 

二人は居間で小さいテーブルを挟んで向かいあう。  
「さて何かしら?」  
「・・・舞と上手くいかなくて、困っているんです」  
「ん〜もうちょっと具体的に言ってくれる?」  
「その、もう4回も実戦に出ててるに未だに舞は僕を対等な扱いをしてくれないって言うか、  
僕にはひたすら命令口調で、ああしろこうしろって。パートナーとして認めて欲しくて真面目に  
やっているんですけど、距離が縮まらなくて、それを意識しすぎて呼吸が合わないって言うか、  
その・・・」  
「ふぅむ、なるほど。舞ちゃんが貴方を信頼してくれないのをどうにかしたいってこと?」  
「まぁ、そうです」  
「そうねぇ・・・結局は貴方が自信を持って彼女に接するしか無いと思うけど?」  
「自信なんて、僕はまだ、そこまでやれません」  
「舞ちゃんは確かに有能だけど、貴方も結構いけてるんだから、そんなに卑屈になる必要はないと思うけど?」  
「でも・・・」  
「自信、か。男の子が自信を持てる方法って知ってる?」  
「え?」  
ぐい、と原が速水に整った顔を近づけ、キス。  
「!はっ原さん!」  
「そういうこと。どう?」  
顔を真っ赤にして速水は言う。  
「・・・その、えっと」  
原は戸惑う速水を押し倒して、優しく微笑みながら問う。  
「嫌?どうなの?」  
原の香りがする。速水は思い切って言う。頬が熱い。  
「嫌、じゃないです」  
「よろしい。じゃ、寝室に案内するわ」  

 

女らしい部屋とは言えないのだろう。左手にベッド。右手には窓と机と大きな棚、そしてタンスと小さな化粧台。  
机の上には小さめのコンポがある。それ以外は特筆すべき物はない。女性らしい小物は数える程しかないし、  
棚には士魂号の整備に使うであろう予備の工具が並んでいる。  
「置く所がなくて。仕方なくね」  
正面の壁には数枚の写真が貼ってある。どれも風景を写したものだ。  
「趣味らしい趣味はそれだけね」  
コンポの前のデジタル時計を見ながら速水は言う。  
「あの、本当に、するんですか?」  
「そうよ。こっちに座って」  
原はベッドに座り左手でポンポンとシーツを叩く。速水はゴクリと唾を飲み無言で座る。  
「そんなに緊張しないで、ね」  
原は速水の背中に手を伸ばし、唇を重ねる。速水は必死に目を閉じている。  
かわいいわね。じゃこれはどうかしら。  
原の舌が速水の唇から侵入した。速水もぎこちなく答える。  
くちゅくちゅと音を立てて二人の舌が絡み合い、唾液の交換が行われる。  
「ん、・・・っは、ふうっ、ん」  
顔にかかる吐息が熱い。原の右手が速水の肩に伸び、引き寄せる。  
二人の距離は近づき、その行為はより深く、激しくなる。速水の動きから硬さが序々に消えていく。  
ふぅっ、と息を吐きながら二人はようやく離れる。  
その未知の刺激に速水は陶酔し、ぼうっとした表情である。原も頬を赤くして言う。  
「どう?」  
「あの、もう一回、良いですか?」  
原はなにも言わずに両腕を速水の背中に回し、胸を密着させ、改めて速水の要求に答える。  
お互いの鼓動が早くなっていくのが伝わる。  
速水も原の腰に両手を添え、その行為に没頭する。想像以上の快感。速水の体から力が抜けていく。  
「んはぁっ、そんなに良い?」  
速水は原の問いに答えられない。その余韻からまだ抜け出していないようだ。  
「まだ始まったばっかりよ。さぁ、服を脱いで」  

良い、と言う言葉では足りないと思う。原のスタイルはそれ程までに素晴らしい。  
雑誌で見るモデルはどこか作り物の様な雰囲気があるが、原にその違和感は無い。  
「さあ、いらっしゃい」  
原は全裸でベッドに乗り、トランクス姿の速水を誘う。  
「は、はいっ」  
「それなりに知識はあるんでしょ?好きにして良いのよ」  
速水は豊かな原の胸に手を恐る恐る伸ばす。  
「ん・・・あ、はぁん」  
柔らかい。吸い付くように滑らかな手触り。手を動かす度に原が反応する。  
「はぁ、良いわよ、んっ、もっとして」  
乳首を指で挟み、少しだけ力をいれる。  
「ひあっ、ああ、くうっ」  
その突起は序々に硬さを増していく。コリコリと捻ってみる。  
「ふあ、あっ、ああ、んあ」  
やわやわと揉み上げ、時折乳首を刺激する。  
「あぁ、はぁ、んあっ、はあぁ」  
原の悩ましい表情に見とれてしまい、手が止まってしまう。  

「んっ、じゃあ下の準備もお願い出来る?」  
原は言いながらその美しい足をゆっくり開く。速水の目は秘所に釘付けになる。  
僅かだが濡れているように見える。それを確認すべく速水は指先で触れる。  
「んあっ、あ、ああ」  
その入り口をなぞるだけなのだが、その快感は段違いのようだ。原の足がひくひくと動く。  
くい、と指先を入れてみる。  
「くふぅ!」  
「・・・ごめんなさい」  
「ふふ、焦りすぎよ。もっとゆっくりで良いのよ」  
速水は言われた通りにゆっくり少しずつ指を入れ、同じようにゆっくりと動かす。  
「あ、はああ、あぁ」  
秘所からとろりとした熱い液体がこぼれ、速水の指を濡らす。次第にその量は増し、独特な香りが周囲に広がる。  
恍惚の表情で原が言う。  
「速水くん、んぁ、キスして」  
速水は小さく頷いて無言で答える。二人の舌の動きは先ほどよりも更に激しい。  
速水は思考と体中の力が奪われ、原に容易に押し倒されてしまう。  

無抵抗になった速水を確認した原は彼のトランクスを脱がし、その屹立した陰茎を舐め回すように観察する。  
顔に似合わぬサイズである。鼓動と共にピクピクと揺れ、先端からは透明な液体が垂れている。  
衝動を抑えきれず原はそれを口に含み、直に確認する。  
「うぁっ、原、さん、あぁ!」  
シーツを握り締め、女の子のような声を上げてその刺激に耐える速水。  
その顔を上目で見ながら原は丹念に舌を這わせる。  
自慰とは比べ物にならない快感に速水の限界はすぐ訪れた。  
「くっ、だ、駄目っ・・・、で、出るっ!あぁ!」  
口内で陰茎は跳ね回り、精液を吐き出す。原は喉を鳴らし全て受け入れた。  
はぁはぁと速水は息を切らせ、目を閉じている。陰茎を開放し原は言った。  
「んふぅ、いっぱい出たわね。さすがに一回じゃ終わらないようね」  
速水のそれはまだ力を漲らせている。原は速水の腰の上に立ち、陰茎に手を添え、腰を降ろした。  
ずぶずぶと陰茎と秘所が繋がる。  
「ふあっ、あ、ぁあ!」  
新たな刺激に反応してしまう速水。はぁ、と原は一つ息を吐き、ゆっくりと腰を上下させた。  
「あ、ひあぁ、原さんっ、やめ、てえっ」  
その懇願を無視し腰を動かしながら原は言った。  
「ねぇ、知ってる?あぁ。この体位はね、昔ヨーロッパで禁止されてたんだって。んあぁ。魔女、のする事だからだって。  
っく。私、この体位が好きなの。私って、魔女なのかしら」  
魔女と言う言葉に速水はすこし目を開け、原が淫靡な笑顔を浮かべ腰を躍動させているのを見た。  
たしかにそうかもしれない、この人なら。  
速水の射精感がじわじわと高まる。このままでは、中に出てしまう。  
「原さん、ま、また出る、止めて、っあぁ」  
「良いのよ、今日は安全日だから、はぁん、思いっきり、出して、んふぅ」  
「は、はいっ」  
性的興奮が高まり、速水は原を弱々しく突き上げる。動く度に秘所の締め付けが強くなる。  
速水の突き上げは序々に強くなる。  
「あぁ、もっと、あ、っあ、はぁあ!」  
「く、原さん、原っさぁん!・・・っ!」  
二度目の射精。原は背を仰け反らせ快感を表す。ひくりと肉壁が痙攣する。絶頂には至らなかったが、  
原はその量に満足した。  

放出が終了し、原は体を屈め速水に言った。  
「君だけイくなんてずるいぞぅ、こらぁ」  
「は、い。ごめんなさい」  
原は立ち上がり、結合を解いた。速水の陰茎はやや垂れ下がっていたが、原の白い手が刺激するとすぐに回復した。  
原はベッドに座り、足を広げた。秘所はひくひくと動き、速水の精液が零れている。  
「さ、来なさい」  
その光景は速水の性欲を誘うのに十分なものだった。速水は体を起こし、突き入れる体勢を整えた。  
狙いを定め、原に侵入する。  
「ん、はぁ・・・」  
遠慮がちに速水は腰を振る。  
「あ、ん、はぁん、ぁぁ」  
原の豊かな胸がゆさゆさと揺れている。その乳首を甘く噛む。  
「んあぁ!ひぁっ、あぁ!」  
その行為がもたらす快感が原の秘所に力を入れさせる。  
もっと刺激して良いのだろうかと速水は思いながら、口に含んでいる突起を吸い上げ、舌で転がす。  
「ふあぁ、あぁ、はあぁ」  
速水は胸で悦ばせる事に集中してしまい、つい腰が止まってしまう。  
「くはぁ、腰、止まってるわよ、はぁ、それと、もっと思い切りしても、大丈夫だから」  

原は両腕を速水の背中に回す。  
「は、はい」  
速水は胸から口を離し、腰の動きを再開させた。より力強く、奥まで突く。  
それに応えるべく原の秘所もぎりぎりと速水の陰茎を締め上げる。  
「ぁあっ、あ、あ、あ、はぁ、あぁあっ」  
「原さん、すごい、し、締まるっ!」  
3度目の射精が訪れようとしている。速水は夢中で原の中を掻き回す。  
「出る、出るよ原さん、く、あ、ああ!」  
「来て、っく、ぁあ!はあ!ひあぁ!」  
速水は原の秘所の最深部に陰茎を到達させ、力の全てを振り絞り熱い液体を撃ち出した。  
原の秘所も全てを搾り取ろうと蠢く。  
「っく!あぁ!うあぁっ!」  
「んあぁぁぁ!あ、ひあぁ!ぁ、ああん!」  
速水は原の上にがっくりと崩れ落ち、息を切らせている。原は優しく微笑み速水の髪を撫でながら言った。  
「はい、よく出来ました」  
速水もどうにか返事をする。  
「は、はい。お疲れ様でした」  
速水は陰茎を気力だけで引き抜き、横になるとすぐに眠ってしまった。  

 

目が覚めると原の顔がすぐ横にあった。  
自分は原と交わったのだと実感し、恥ずかしさで頬が熱くなってしまう。  
「そっその、ありがとうございました」  
原は微笑みながら言う。  
「良いのよ、お互い同意の上でしたんだし」  
原は天井に顔を向けた。  
「速水くんは真面目に仕事をしてる。それは間違いない。けどね、それだけじゃ自信はつかないものなの。  
自信って本気になれた分だけつくって私は思うの。真面目と本気は違うの。真面目は本気じゃなくても出来る。  
真面目って本気の前の段階なの。舞ちゃんはこの事に何となく気が付いてて、でもはっきりと言葉に出来なくて、速水くんに厳しい言い方をしてしまうってところじゃないかしら。未央ちゃんは完全に真面目と本気は同じものって考えみたいね」  
速水は舞の言葉や自分の行動を思い出しながら言う。  
「確かに、原さんの言う通りだと思います。・・・周りの目を気にしないような本気になった事はないですね。真面目だけじゃ駄目ですよね」  
「そう。速水くんはやれば出来る。私が保証する」  
「・・・本当に、ありがとうございました」  
速水はベッドから降り、制服を着た。原も私服を着る。  
玄関で原は言った。  
「何かあったら、また来なさい。相談に乗ってあげるから」  
「はい。じゃぁ、さようなら」  
「あっちの相談も受け付けるわよ?」  
「〜お、お休みのところ、失礼しました」  
恥ずかしさを必死に隠しながら足早に去って行く速水。原にはその背中がすこしだけ逞しく、強く見えた。  

 

戦争は人を変える。その俗説を原は身を持って知った。  
速水は時折相談に来た。士魂号の弱い部分はどのような挙動で損傷するのか、酷使せざるを得ない部分は  
どうカバーしたら良いか・・・次第に原でなければ答えられない高度な相談が増えるようになった。  
その後は必ず交わった。行為の最中は女王と従者という関係だったが、速水が撃破数を増やすごとに  
その関係は逆転の方向に向かった。  
撃破数が100を超える頃には原は速水に完全に惚れていたが、告白は出来なかった。この想いを断られたら、自分はどのように変化し、何をするのか、全く想像出来ない。それが恐い。皆は自分を冷静で理性的と言うが、内奥に潜む感情の激しさを知っているからこそ、そのように振舞っているのだ。  
撃破数が200を超えた。行為中の関係は王とその愛人という最初とは全く逆のものになっていたが、原に  
不満はなかった。行為中に失神させられ、目が覚めると速水は既に居ない。ベッドの温もりが自分達が深く  
激しく交わった事を証明し、僅かに開いたドアから聞こえる静かな時計の音が、間違いなく現実であると告げていた。  
速水が来ない日はこっそりと録音した行為中の音声を聞きながら自慰に耽ってしまう。  
速水に絢爛舞踏勲章の授与は間違いないと言われるようになったが、原との関係に進展は無かった。  
何とかしなければと思うのだが、何も出来ない。  

時計の音はあの日々の思い出を際限なく流出させる。  
ついにその日の記憶が呼び起こされる。  

室内にくちゅくちゅと音が響く。  
原はベッドに仰向けになり、だらしなく足を広げている。速水は丸見えになっている秘所を右手で掻き混ぜている。  
弱点を何度も刺激され、原は高く艶のある声を上げる。  
「はあぁ、あ、ぁあ!くぁあ!」  
そうかと思うとその弱点の周囲を撫で回し、十分焦らしてからまた弱点を捻り挙げる。  
「あ、はあぁ、んぁ、くひぃ!ああ!」  
肉壁が速水の指を締め付ける。原は腰を浮かせ、最初の絶頂が近い事を速水に教える。  
「あっ、あ!うぁ、くうぅ!ぁあっ!」  
頃合を見て、速水は指を抜く。原はその絶頂寸前の快感を少しでも持続させようと、もじもじと足を擦り合わせる。  
「んぁ、ふ、はぁ、ぁあ」  
速水は指先の液体を舐めながら、ふと思いつきその指を原の顔のすぐ近くに持っていく。  
原は何も言わずにその唾液と精液が絡みついた二本の指を口に含む。  
「ん、はぁ、うぅん、・・・ふはぁ」  
原はまるで陰茎のように熱心に人差し指と中指をしゃぶる。その指先の感触はなかなかに心地よい。  
ふふ、と小さく笑い、速水は言った。  
「僕のも準備してくれる?」  
「は、い」  
原は言われるがままに速水の両足の間に収まり、股間に顔を埋め、陰茎を口に含む。両手で精巣を刺激し、  
口内全体を陰茎と擦り上げる。舌は常に先端を舐めている。時折奥まで入れすぎ、咽てしまう。  
原はこの行為が好きだ。速水に快感を与える事が素直に嬉しいが、それ以上に自分に快感をもたらすからだ。  
夢中で口と手を動かしながら、一方で足を止めずに擦り続ける。  
早く入れて欲しい、と目で訴える。  
「ん。じゃ、おいで」  
速水は座ったままの姿勢で言う。その天を指す陰茎に、原はのろのろと秘所を降ろす。  
「ふうぅ!」  
内壁がびくびくと痙攣する。軽く絶頂に達してしまったようだ。  
「っあ、・・・ぁぁ、はぁ」  
「早いよ原さん。これからなんだから」  

速水は自分の上半身をベッドに寝かせ、ゆっくりと一定の間隔で原を突き上げる。  
「っあ!・・・んはぁ!・・・ああ!」  
原は肢体をくねらせ、恍惚の表情で妖艶なダンスを披露する。突き上げる部分やリズムを変えると、それに  
応じてそのダンスは無限に変化を見せる。飛び散る汗が煌き、原をさらに美しく飾り付ける。  
何度見ても飽きない、究極の舞踊。  
原の色声は急に大きくなり、背を反らせ、秘所が陰茎を締め上げた。  
「ひあぁ!んあ!・・・っああああ!」  
絶頂を迎えたようだ。速水はその光景と締め付けと楽しんだ後、上半身を起こし、原に濃厚な口付けを与えた。  
「んふ、は、ふぅ、はぁ」  
そのまま原を寝かせ、両方の結合を解く。はぁはぁと息を整えている原をうつ伏せにし、膝を立たせ、腰が突き出た体勢にする。秘所からは透明な液体がとろとろと溢れ、太ももを染める。速水は何も言わず、再び陰茎をゆっくりと深く挿入する。  
「っあ!」  
速水は両手を原の腰に添え、狙いをつけて打ち付ける。最深部を強烈にノックし、周囲を優しく愛撫し、また突く。  
「ああ!・・・ふあぁ、っはぁ!ぁぁ、あぁあ!」  
ほっそりとしたうなじ。すらりとした腰。絶妙のラインを描く丸い尻。女性を最も良く表す形だと速水は思う。  
その絶景は残酷な迄の性欲を速水に宿し、それがもたらす衝動が速水を駆り立てる。  
もっと、もっとだ。足りない、満足できない。もっと!  
速水は腰を叩きつけながら原の肛門を優しく撫で回す。  
「や、やあっ、だめぇ、ああ!」  
羞恥心が原を更に興奮させ、その声は速水を更に追い立てる。  

肉が弾ける音は一層大きくなり、休むことなく鳴り続ける。  
「くあぁ!はぁっ、ま、また、イ、イっちゃ、んあぁあぁ!」  
原は再度絶頂に達する。速水の陰茎はまだ爆発しない。速水は数秒だけそのままの体勢で息を整え、陰茎を抜く。  
原を仰向けにし、両足を開かせ一気に貫く。  
「ひっ!」  
泣きそうな表情の原に軽くキスをして、速水は言う。  
「いくよ」  
速水は秘所を貫いたまま両足をぴったりと閉じ二つの膝を抱えて、突く。  
内壁は両足により陰茎に押し付けられ、内壁の変形と陰茎の動きがはっきりと解るようになる。  
原の脳内に大きな白い花火が爆発する。  
「あぁ!ん、んあ!はっ、はや、み、ああ!く、んああ!」  
原は何かを言おうと口を動かすが、脳髄に叩きつけられる快感によって完全に実行出来ない。  
速水は憑かれたように激しく原を攻める。秘所どころか原の全てをねじ伏せようとする動きである。  
その快楽に原の思考は麻痺し、上下左右が解らなくなる。  
「っあ!ああ!・・・っく!ひぁああ!い、・・・っあ!っあ!っあ!・・・っ!」  
体中がびくびくと痙攣し、意識が遠くなっていく。灼熱の液体が撃ち込まれたのを感じながら、原は失神した。  

 
 

いつもの音が聞こえない。原は最初に意識したのはそれだった。  
軽く動揺しながら目を開けると、速水が居た。体を起こし、ドアの方向に顔を向けている。  
視線をそのままに速水は言った。  
「明日から舞の家で暮らす事になった」  
その声は戦闘中の、不可能を可能と言い切り、言った事を必ず実行する、最強の兵士の声だった。  
「だから、もう此処には来ない」  
その意味を原は瞬時に理解し、結果はすでに解っていても言ってしまう。  
「私じゃ、駄目なのね」  
「うん、ごめんよ」  
なんの躊躇も感情もない返事。動揺が激しくなっていくが、必死に声に表れないように理性を総動員し、  
明るい声で原は言った。  
「冗談だって。気にすることないわよ。体だけの関係でしょ?」  
時計の音が聞こえない。だから夢だ。  
「そう言ってくれると、助かる」  
悪い夢だ。なんでこんな、最低な夢を見せられるんだろうか。  
「じゃ、もう一回してね?」  
「ん、解った」  
「その前に水飲んでくるね」  
あのドアを開ければ、この地獄の様な悪夢は終わる。そしていつもの音が聞こえ、いつもの目覚めが訪れるに違いない。  
原はすたすたとドアに近づき、ノブを回した。  
廊下に出るとその音が耳に届いた。居間に近づく程、その時を刻む音は大きく、はっきりと聞こえる。  
その音量と原の感情の渦が同調する。  

 

台所に立つ頃には必死に歯を食いしばり、叫びだすのを堪えていた。  
何故!なんで私じゃ、憎、だれも悪くない悪くないんだ速水くんは、舞ちゃん!どうして、駄目嫌だ、夢じゃない、嘘っ嘘だ絶対に、悔しい羨まし苦るしい、私はこんなにああ速水くん、舞ちゃん!  
ふぅふぅと息は荒い。目から熱い涙が流れるが、無表情のままだ。  
時計が紛れもない現実であると宣告する。何度も何度も、冷徹に繰り返す。  
胸の混乱が極限に達しようとしている。辛うじて残っている理性を振り絞り、コップに水を注ぐ。  
その無形の嵐を沈めるべく、一気にその水を飲み干す。認めるんだ、仕方ないんだと嵐を形成する感情一つ一つに語りかけながら。  
踊り狂う諸々の感情に雨が降り注ぐ。その雨を受けた感情は我に返り、いつもの場所に収まろうと移動を始めた。  
その雨が有効に作用した事に原は安堵した。  
数え切れぬ無数の感情の隙間を縫い、小さく僅かな水滴が光すら届かぬほど深い所にある赤黒い底に当たった。  
冷たい刺激に、それが目を覚ました。原が幼少から感じていた、激情の根底に身を潜めている狂気。  
大きく、静かで、強い、原が最も恐れていた深紅の狂気。  
その目覚めた狂気は太く赤い腕を振るい、雑多な感情を簡単に一掃した。巨大な手で原の自由を完全に奪い、原に顔を突きつけ、力強く静かな声でそれを語った。  
原はそれが正しいと思った。その為の道具を右手に持ち、頬を濡らす涙を拭き、速水が待つ寝室に向かった。  
一歩ごとに時計の音が小さくなっていく。現実感も薄れていく。  
ノブを回す時、原は心から幸せそうな笑みを浮かべていた。だって、速水くんの全てが私のものになるんだから。  
原にとって至福の時が訪れようとしていた。  

 
 

壁時計の規則正しい静かな音が、これまでの日々とあの日の記憶が現実であると言い続ける。  
原は食事を終え、食器を洗っている。  
目には光がなく、計り知れない深い闇だけが存在していた。そして能面のような無表情だ。  
その姿は、皆から頼りにされる整備主任ではなく、禁忌をものともしない狂人でもなかった。  
ただひたすら寂しさを押し殺す一人の女でしかなかった。  

終  

 
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