体から溢れ出る落ち着きの無さというか、頭の悪さというか、
そういうものばかりが目立つ子供な女ではあるが、こんな風にベッドの上だけでは大人になれるのだ。
どういう事情で、この子供と大人の使い分けを得たのかは知らない。いや、事情などないのかもしれない。
愛した男を思う気持ちがここまでやらせるというのならば、彼女の性格的にも有り得るものだった。
頭の片隅でぼんやりそんなことを考えていたハックマンだが、そろそろ思考回路も飛びそうである。
自身を口で弄ばれようものなら、たいていの男はそうなるであろう。
まるで本物の器のように、じゅぷじゅぷ音を鳴らして激しく出し入れされては尚更だ。
「っく……舞踏子、僕ァもう駄目だ…」
そう喘いで、舞踏子の頭をくしゃりと撫でると、舞踏子は期待に満ちた眼差しでハックマンを見つめていた。
「ほ、何だ、そんな目をして………汚れるぞ」
警告したが、むしろ舞踏子はそれを望んでいるのだ。これ以上何を言っても聞きやしないだろうという、
あきらめと喜びを抱きながら、ハックマンは舞踏子の口の中で達した。
白濁色の液体が、女の口を犯してゆく。舞踏子は懸命に飲みつつ、
それでも溢れ出たものは指ですくって眺めていた。
「フフ、上手くなったもんだ」
「えへへ…リンが喜んでくれるから」
指ですくった最後の白も、ぺろりと舐めて恋人の目を見る。紅く染め上がった顔と表情が、また格別に扇情的だ。
ハックマンは舞踏子を抱き寄せて、唇を合わせた。
舌を絡ませ合って、歯をなぞり合う。噛み付くようでいて食われたがっているようなキスに、舞踏子は体の芯が熱くなるのを感じた。
「本当に上手くなったねぇ。こんなに積極的じゃないか。体の方もか?」
「う…う、ん…」
「ほ…それで今日はどうして欲しいって?」
舞踏子をからかうように耳元で囁いて、ハックマンは愉しそうに微笑んだ。
少し意地が悪い質問だが、舞踏子はそんな彼が好きで好きでたまらないのだ。
「リンの好きなようにして欲しいの…」
そう言いながら、ハックマンの服のファスナーをゆっくり降ろす。僅かに出来上がった隙間から手を入れて、
ねっとりとした手つきで彼の胸を撫でると、舞踏子は恍惚とした表情で瞳を伏せた。
ハックマンはそっとその手を払い、取ってから舞踏子を組み敷く。
「こういう時、僕ァ本当に男で良かったなと思うよ」
優しい青い目で女に語りかけながら、ハックマンは舞踏子の上着を慣れた手つきで脱がせた。下着に包まれた豊満な乳房が、彼を誘う。
下着ごと胸を揉んでやるだけで、舞踏子は嬉しそうに声を漏らした。緩急をつけて揉むと、舞踏子はあっという間に乳首を固くするのだった。
わざとらしく吐息を鎖骨に吹き掛けると、その熱でびくんと震える。
感度の良さに愛しさも加わって、たまらない快感を舞踏子は体中に刻み付けるのだ。
「こんなに可愛い恋人を、男のやり方で喜ばせることが出来るんだからね」
「んっ!」
指の腹で尖った先端を撫で回すと、たわわな乳房を揺らして舞踏子は声を我慢する。
返って卑猥に聞こえるその声が、ハックマンの気持ちを高ぶらせたようだった。
片手で胸を揉みしだきながら、もう一方の手でブラの金具を外してやる。こうすると、
揉んでいるうちに自然と胸が露わになるのだ。舞踏子はハックマンのこのやり方が好きだった。
「リン……ぁっ」
「ほ、声を我慢する必要なんかないさ。ありのままの君を、綺麗な君を僕に見せてくれよ…」
よくもまあ、こんなに甘ったるい台詞を思い付くものだ、とも思うが、
不思議なことに彼との性交渉の中で“言葉”というものは媚薬になることが出来た。
経験の差か、愛の深さゆえか。舞踏子は正直わからなかった。ハックマンの声も言葉も、
自分を操るただそれだけの為にあるような錯覚に陥ることは、こうしている時でなくともしばしばあったからだ。
「あ、っ……あんっ!」
「綺麗だよ、舞踏子」
張り詰めんばかりに大きくなった乳首にキスをして、
ハックマンはそのまま口の中へ封じ込めた。蹂躙するが如く舌の動きに、舞踏子の下腹部が疼く。
「リン…っ。もう全部脱がせてっ、お願い…」
切ない声色でそう頼むと、ハックマンはちゅっと音を立てて舞踏子の胸を解放した。
「んあっ」と名残惜しそうな声をあげた桃色の唇を、無言のままに自分の唇で塞ぎながら、ゆっくりストッキングを脱がせてやる。
このまま下着も…、と甘い願望に身を焦がす舞踏子だったが、ハックマンは濡れた下着越しに割れ目をなぞるだけに留まった。
「やだぁっ、焦らさないでよう」
「ほ、そんなに嫌なら自分でやるか?…やってみせてくれよ、お前さんがどれだけ僕が欲しいか」
「リ、リン…」
そうとだけ言うと、ハックマンは這わせていた指を離して、完全に舞踏子を傍観する姿勢になった。
「リン!」
舞踏子がひっくり返った声をあげても、ハックマンは動く気配すらない。
ただ目だけはしっかりとこちらを見据えて、舐めるように観察しているのだ。
「い、意地悪…」
嘆くように吐き捨てたが、舞踏子は構わずに目を閉じて、下着の中に両の手の指を突っ込んだ。
「あっ、あっ、は、ぁん……」
右手で陰核をまさぐり、左手で膣口を弄る。ゆっくり静かに、細い指で抜き差しをする。
目を閉じることで快楽を一点に集中させようとしたが、気が気ではない。
目を開ければすぐそこに、ハックマンの姿があるのだ。
自慰をしたことがないわけではない。むしろ彼を思って、何度もしてきた。
ただやはり本人を目の前にするのは――。
「ほ…その程度か、舞踏子。もっと上手くやれるだろ?」
躊躇いの中で指を動かしていると、厳しい言葉が浴びせられた。心中を見抜かれているかのようだ。
「だ、だって……でも……」
「でも?」
目を開けると、あの青い目がじっと舞踏子を見ている。それだけで舞踏子は顔を紅潮させた。
反論することなく、舞踏子は指を増やす。陰核を這う指を二本に、
愛液溢れる穴に突っ込む指を三本に変えると、淫らな声と共に掻き回した。
「あっ、あっ、あっ…リン……ハァ…ハァ……欲しいよぉ…あ、あぁぁっ」
腰を揺らして、今は指で塞がれたこの穴へと男を誘う。下着はもはや着用する意味をなさない程、ぐちゃぐちゃに濡れていた。
瞬間、舞踏子の表情が変わり、一際高く声が上がった。
ハックマンはすぐに女の細い手を引ったくって、自慰をやめさせる。イキそうだったからだ。
「お前さんの気持ちはよくわかった。僕も少し意地悪が過ぎたよ」
「イ、イッちゃう…イキたいよぉ…」
「一緒にイこうか」
ハックマンは舞踏子の唇を貪りながら、彼女の体を一糸纏わぬものにしていった。
火照った女の体が、男を欲しがっているのがわかる。
唇から首筋、首筋から鎖骨へと唇を移してゆき、
最後に舞踏子の指に絡んだ液体を舐めとった。うっとりとした表情で、舞踏子はそれを見ている。
「リンは脱がないの…?」
「僕ァね。君の香りを服に染み付けときたいんだよ」
大きく勃ち上がった陰茎だけを取り出して、ハックマンは微笑んだ。
「汚れちゃうわ」
「平気さ。上手くやる」
ぬぷっ、と液体の溢れるような音がして、舞踏子の中に固い“それ”は進入した。
「ん、あっ!やっ、おっきい!」
絶頂寸前の胎内はよく締まり、一層激しく収縮を繰り返している。
こりゃあたまらないな――と愉悦に浸っていると、それを見透かされたのか舞踏子に頬を撫でられた。
「リン、……ハァ…いいっ、すごい…!…ハァ…あぁっ、も…」
「食われてるみたいだよ…本当に」
男が突っ込んでいるのか、女が飲み込んでゆくのか、わからないほどの蕩け具合で結合部が深まってゆく。
最奥まで達しない内に、ハックマンはピストン運動で舞踏子を喘がせた。
肉のぶつかる音と一緒に女の嬌声が響くのは、情事の最高に楽しいところだ。
「リン、イッちゃ……イッちゃうっ!」
「先にイくかい?」
「う、あ、はぁ……ぁっ!あぁぁぁあっ!」
ハックマンの問い掛けに答える間もなく、舞踏子は声をあげて彼を強く締め付けた。
やや遅れて、ハックマンもその中に熱い濁った白を注ぎ込む。
入りきらなかった精が、舞踏子から溢れ出した。
「…………ん…」
絶頂の余韻に浸る女の唇を吸って、ハックマンは微笑んだ。
汗ばんできた額にかかる前髪を気にしつつ、舞踏子の髪を撫でて愛おしむ。
「良かった……?」
「ああ、良かったよ。最高だった」
舞踏子は自分の手で、割れ目から溢れる精液を中へ押し戻した。汚れたその可愛らしい指を、男はまた舐め取る。
「僕ァね…本当に男になって良かったなあと思っているところだ」
「うん?」
「可愛い女の子を、こうして男として捕まえたわけだからね」
嬉しそうにハックマンへ寄り添って、舞踏子は「…もっかいしない?」
と上目遣いで彼を覗き込んだ。
「ほ、本当に積極的になったもんだ。構わないよ、君の気が済むまでやろうか」
そう返事をしたハックマンの唇は、ちゅっと塞がれた。
この都市船を出航するまで、後五時間もある――
にや、と笑ったのは舞踏子もハックマンも同じだった。
おわり