「いくぞ……。王様だーれだっ!!」
いつになく気合の入った石田の掛け声。だがあえなく、次の王様も俺だ。
……いやだって、こっそり目印つけてるし。そりゃ勝てるわけないよな。アハハ。
「じゃ、命令を決めますね。え〜っと……」
「くっそぅ……」
本当に悔しそうに、目じりに涙を浮かべてふるふると震える石田隊長。俺は舌なめずりしながら石田の顔を盗み見た。
「十番と……二番は、前に出て」
二番の札を持った石田がビクッ、と反応する。唇を尖らせて不満そうにぶつぶつ言ったが、結局渋々と一歩前に出る。女王様をにらみつけてくる目つきが反抗的だ。
十番は菅原だった。満面に笑みを湛えて、ちょっと視線をふわふわさせながら歩いている。ぶっちゃけた話、あきらかにラリっていた。
「この机の上に両手を付いて、お尻を突き出しなさい」
「はーい!!」
幼稚園児なみの元気よさで手を上げる菅原。スレンダーな身体をだるそうにくねらせて、膝を突いて机に抱きつくような格好になる。
「こ、こうか?」
石田は菅原の向かいに手を突いて、ぺたんと床にしゃがみこむ。
「そうじゃなくて、お尻を突き出すのよ。こんなふうに」
俺は石田をひざ立ちにさせ、腰を抱え込むようにして引っ張りあげた。パンツが見えないようにスカートをひっぱりつつ、ついでに尻の割れ目をつっと撫でてやる。
「ひゃう……! へ、へんなとこ触るな……っ!」
ひくん、と反応する石田。くすぐり責めの後で、皮膚の感覚が敏感になっているようだ。下準備としてはいい感じだろう……。
「ほら、隊長。机から手を離しちゃ駄目ですよ」
「うぅ〜……」
むくれる石田の耳元で、俺は甘い声で囁く。
「女王様の命令は……?」
「ぜったい……うううぅ〜」
「よろしい。じゃあこれから、みんなにふたりのお尻を折檻してもらうわ。そうね、……最初は十回ずつで」
「えっ!? し、尻叩きぃ?」
石田が怯えたように呟く。
「そうよ。楽しみでしょう? ウフフ。思いっきり、容赦なく痛くしてあげるから覚悟してね」
ニヤリと見せ付けるように微笑んで、俺はまず菅原の後ろに回った。
「まず、私自らがお手本を見せますね。そのあと、私が指名した人に順々にやってもらいますから。……私がいいというまで」
周りを取り囲んで成り行きを見つめる小隊の面々を見回しながら、俺は菅原の髪をくしゃりと撫でる。菅原はどこか恍惚とした、熱っぽい瞳で視線をさまよわせていた。
手を菅原の背から回し、腰を横抱きにする。そして右手を大きく振り上げて、音高く菅原の尻を打った。
ピシィ、といい音がして、菅原の身体がびくんと跳ねる。
「はぅ……っ!」
もう一度、思いっきり打ち付ける。
――ピシィ……!!
「あぅ……っ!! んぁあっ」
菅原は頬を染めて喘ぎを漏らした。スカートから伸びる真っ白な足ががくがくと震えている。
――ピシィ……!!
「はぁ……っ!! くぅ……ぁ……っ!!」
爪を立てるように机の端っこにしがみつきながらも、菅原は身を預けて抵抗しようとはしない。むしろ続きをねだるかのように尻を震わせている。
――ピシィ……!!
「…………っ、…………ぁ…………!」
今度は、明らかに甘い響きが混じっていた。すすり泣くような呼吸に、興奮の吐息が重なる。
――ピシィ……!! ピシィ……!!
「…………ぃ……、……っ!! 」
抱え込んだ腕の下で菅原が身をよじる。
菅原の身体は病的なまでに痩せていた。制服の上からでも、薄い皮膚の下の肋骨の感触がわかる。肉はこけ、手足も冷たくほっそりして、片手で簡単に持ち上がりそうなほどに軽い。
それでいて、菅原はどこかぞくっとするような妖艶さを醸し出すようになっていた。以前の健康な色気ではなく……不健康で、退廃的なエロティックさをもつ雌に。
「はぁ……はぁ……。あぁ……っ!!」
菅原が赤い唇を半開きにし、涎を垂らして机にしがみつく。向かいに手をついた石田が間近からその顔を覗き込んで、心配げに言った。
「す、菅原……そんなに、痛いのか?」
「……はぁ……、い、いたぁい……のぉ……」
蕩けそうな表情で囁く。
その潤んだ瞳に見つめられて、石田は困惑しながらも、ごくりと唾を飲んだ。
「いたぁ、くて、……はぁん……!! た、たまんなぃ……のぉ……」
「乃絵留……? まだ半分よ?」
俺は冷たい声で割り込んだ。
「は、はいぃ……」
「おねだりしなさい。もっときつくしてほしいんでしょ?」
「う、ぅん……。もっと……もっとしてぇ……」
「す、菅原……っ!?」
石田が焦ったように叫ぶ。そして菅原の期待に満ちた淫蕩な笑みを見て、驚愕する。……ウフフ。隊長は自分で気づいているのかな、自分の顔も紅潮して、興奮に震えてるってこと……。
俺は菅原の髪をつかんで、ことさらに優しく囁いた。
「甘ったれた口を利いてるんじゃない。ちゃんと、おねだりしなさい?」
「はい……。ごほうびを、……私に、卑しい豚めにご褒美をください……」
「はい、よくできました」
俺は菅原の腰をロックしてぐっと持ち上げると、そのまま五発連打で激しく尻に浴びせてやった。
――ピシィ!! ピシィ!! ピシィ!! ピシィ!! ピシィ……!!
「はぁっ、ぁぁぁあぁぅううぅ……ッッ!!」
びくびくと悶えながら机に顔をこすり付ける菅原。
俺はそれを背後から見下ろしながら、無常に言い放った。
「じゃあ、さっき甘えたことを抜かしたから、もう十回追加ね」
「は、ぅ……」
菅原が涙目で見上げてくる。だが、ぺろりと唇を舐めるその舌は、まだ“ご褒美”が足りないとねだっていた。
――ビシィ……!!
肉を打ち付ける音が教室に響き渡る。女のみだらな呻き声が漏れる。そのたびに、少しずつ教室の空気は変質していった。
菅原の痴態を食い入るように見つめる男ども。あるいは、酒のつまみ程度に鑑賞するクラスメイトたち。そして、菅原の間近で目を見開いて口をパクパクさせながら、顔を青くしたり赤くしたりしている石田隊長。
「ひぅ…………っ!!」
「乃絵留。マンコ濡らしてるでしょ」
目を潤ませてぼんやりしながら、こくん、と頷く菅原。
「自分でいじってもいいわよ。みんな見ててくれるわ」
そう促してやると、菅原はおそるおそる自分の手をスカートの中に差し入れた。
「どんな風になってるの? 言ってみなさい」
「……トロトロ…………なの……」
「お尻を叩かれて感じてるなんて、乃絵留はマゾの変態ね。ねえ、隊長、そう思いません?」
「えっ? あ……?」
「ほら、みんな見てよこのエロい下着」
俺は周囲に見えるように、スカートを捲り上げた。菅原の肉の薄い尻に真っ赤な手形の痕がいくつもついている。下着は黒いレース地で、愛液で濡れたその部分が透けていた。
前から股間に回された菅原の指が下着の中にもぐりこみ、クリトリスをこねるように細かく動いている。
「ウフフ。乃絵留、みんなにオナニー見られてるわよ。うれしい?」
「んん……ぅ……。は……恥ずかし……」
「喜んでるくせに」
俺は鼻で笑って、おもむろに折檻を再開した。右手を鞭のようにしならせて素肌を打つ。
――バチン!!
強い衝撃が走り抜け、菅原の背骨を痛みが貫通する。そしてその後の数十秒、びりびりと痺れるような感覚が体に残り……それがどこか甘美な快楽に変わるのだ。
「……ぁあ…………」
菅原が吐息を漏らす。ぐっちゃぐっちゃとマンコをこね回すいやらしい音が高くなる。誰かがごっくんと唾を込んだ音が妙に生々しく教室に響いた。
――バチン!! ――バチン!! ――バチッ!! ――ビチッ!!
――ピシィ……!!
「はぁぁぁぁぁうッッ!!」
俺がひときわ音高く尻たぶを打つと、菅原は「ひぎぃッ」と仰け反りがくがくと震えた。菅原は膝から崩れ、ハァハァと息を乱しながら、机を抱きしめてふるふると痙攣している。
「ハッ……ハッ……ハァッ……!! ひぅ……、ぁ……」
「すがわ、ら……?」
石田が菅原の頬に恐る恐る触れる。菅原はその指を愛しそうに舐った。石田は茫然と菅原の口淫を受け入れる。
「菅原、おい……? なんだよ、これ……?」
「さ、これで私の番は終わりかな。――じゃあ、次はね、岩崎。乃絵留のお尻、十回、可愛がってあげて。それから隊長……」
俺が視線を向けると、それが熱いものででもあるかのように、石田はびくぅっと震え上がった。クックック……可愛いなあ、もう。
「……隊長は、そうね……」
谷口と小島航の間で視線をさまよわせる。
「小島君、やって」
「え、お、俺……?」
戸惑いながら、だが少し嬉しそうに小島航が輪の中心へ出てくる。
「じ、十回でいいんだよね?」
「もっとしたければ、気が済むまでやってもいいわよ」
俺が誘惑するように流し目をすると、航は一瞬、目の奥に欲情のような陰を覗かせた。
石田が怯えたように呟く。
「こ、航……? なんだよ、やめろよー。痛くするなよ? 痛いのやだからな?」
「大丈夫だよ、そんなに痛くしないからさ」
「いいえ? 可能な限り痛くしてあげて?」
俺は二人の肩に手を乗せて、やさしく、甘く囁いた。
「女王様の命令。ね? ……命令だから、仕方ないですよね?」
「う、うん……」
「め、命令か……」
「そう、命令。命令だから、仕方ないんですよ」
そして石田をひざまずかせ、机に手をつけさせる。航にその尻を抱えさせ、そして、俺は打てと命じた。
「じゃ、じゃあ……いくよ?」
「う……うぅ……」
右手を航の顔に暗い笑みが薄く浮かぶのを、俺ははっきりと見た。
――ピシィ……!!
石田の顔がゆがみ、喉から悲鳴が漏れる。それはどこか、混乱と淫靡さに満ちていた。
「ぁッ……!? ……ぃ……ッ!?」
「痛いかい? 痛いよね……」
どこか熱に浮かされたような口調で、航がつぶやく。石田は声を飲み込んで、ぎゅっと身体を堅くする。
――ピシィ……!!
「…………! ……ッ、……ッッ!!」
航がその手を優しく握った。そして再び、石田の尻を激しく打つ。バチン、バチン、と肉と肉のぶつかる音。石田の震える吐息、呻き。
「……や……ぁ……っ!!」
石田の耳から首までが真っ赤に紅潮している。俺は石田の頬にそっと手を触れて、こちらを向かせた。――痛みと羞恥と快楽の入り混じった、えもいわれぬ極上の表情だ。
「ひぃ…………。ッ! ……ッ!!」
尻を強く打たれるたびにひくん、ひくん、と震えて、目に涙がにじむ。痛みをこらえようとぐっと歯を食いしばり、なのに打たれた直後にはこらえきれずに呻きを漏らしてしまう。悔しさと諦めと、儚い希望が立ち替わり表れる濡れた瞳。
その向かいに手を付いた菅原が、赤い舌を伸ばしてぺろりと石田のまなじりを舐めた。
「あはっ……。隊長、可愛い……。ねえ、岩ぷぅー。私、我慢できなくなってきたぁ……」
――アレ、ちょうだい。
空虚な目と、淫蕩な唇で菅原がねだる。岩崎は酔った調子で上半身をゆらゆら揺らしながら、菅原の腕を取って多目的リングにセルをはめた。
「…………ッッッ!! ――はぁぁぁああああッ……、ん…………」
尻を打たれたときの何倍もの反応で全身を痙攣させる菅原。直後についた甘い息は、毒が含まれているかと思うほど濃厚な女の匂いを放っていた。
「……いぃ…………はぁ……。さいこぉ…………。このままおしり、ぶってぇ……おくすりでおかひくなったまま、おしりいたぶりまくってぇぇ…………」
岩崎がふらりと身体を揺らし、合成アルコールカクテルのコップを取る。がぶ飲みする。そして身体を振り回すようにして腕を振り、激しく菅原の尻を打ちつけた。
「あぐ…………ッ! あひッ…………!」
「――ほら、これでいいんだろう?」
「いひィ……ッッ!! ビリビリくるぅ……っ!
岩崎は赤く腫れ上がった尻を愛しげに撫で回した。肉をこねるように愛撫し、つねり、たぷたぷと弄んでは音を立てて打つ。
「雌豚め……」
「あひィ!! あひッ……いひぃぃッ!!」
半ば白目を剥きながら涎を垂らして悶える菅原。
周囲のギャラリーは――俺も含めてだが――じっと見守るばかりだ。尤も、見守る表情はそれぞれ違った。ニヤニヤしながら見ている者、なぜか羨ましそうな奴、眉をひそめる奴……。
一番びっくりしているのは菅原の目の前で覗き込んでいる隊長で、菅原が身体を波打たせるたびに、自分が打たれたかのようにビクンと震えていた。
「うぅ……航……、航、こわいよぉ……」
「だいじょうぶ、ただの遊びだよ」
「怖い、怖いよ……」
「打つよ、隊長……? ――それ!」
「――はぅぐッ!? ひ、ぁぁ……」
打つ航と打たれる石田が、指を絡めてぎゅっと手を握り合う。石田が涙の粒を落として震えた。
「怖い……」
「大丈夫、大丈夫だよ、隊長」
石田がふるふると首を振る。
「違うんだ。わけがわかんない……。でも、わかるんだ」
石田が、濡れた目で菅原を見つめる。
「どうして菅原があんなふうになっちゃうのか、ちょっとわかる……。私、さっきからおかしいんだ。這い蹲らされて、お、おしりを……突き出させられて……。そんな姿をみんなに見られながら……無理やりに、いたぶられて……それで……!」
――ああ、食べちゃいたいぐらい可愛い表情をしてる。
「ぞくぞくする……。わかんない。もう、もうわけがわかんない……! なんか、身体が熱くなって……ぞくぞくするんだ……」
「あは」
石田のすぐ正面、菅原がそっと手を伸ばした。隊長の濡れた頬に触れ、額にキスする。
「怖いの? じゃあ、隊長にも“キャンディ”あげるね。怖くなくなるよ」
菅原が石田のもう一方の手を握り、がんばって、と励ますように両手で包む。石田がすがるようにつぶやく。
「菅原ぁ……」
「――あはッ。だいじょうぶ……たいちょおも、受け入れちゃえばいいんだよぉ……? ぜんぶ、そのうち……どうでもよくなっちゃうよぉ……。あははっ」
「す、菅原……!?」
菅原は包んだ手の人差し指に口づけると、ピンク色の舌でねちっこくなぞった。唾液でべちょべちょになるようにして、口の奥まで入れてれろれろとしゃぶる。
「キャンディ……すごぉく、甘いのぉ……」
カチリ、と石田の腕のリングにセルを接続する。
「な……なんだ!? ……ぅあ……ッ!?」
途端、石田の反応が変わった。
急激に瞳孔が開き、首の位置がふらふらと定まらなくなる。
「あ、あたまが……きいろくなるぅ……?」
「隊長? ……ねえ、大丈夫?」
「心配ないわよ。ほら、小島君。手を休めないで」
俺が強く命じて促すと、小島航が石田の尻を打つ。――その瞬間、劇的に変化が起こった。
「――あふぅぅぅぅぅッ!? ッ、ひグゥッッ……!!!」
石田が身体をねじるようにして全身で身悶える。
だらしなく開いた口からだらりと舌が垂れ、それでいて表情は気落ちよさのあまりに淫らに緩んでいた。
「あ、あた、あらま……きいろいの……きいろ……いっぱいにらる……ぅ……。きいろくてまっひろになるうぅ……」
淫靡な笑みを湛えた菅原が石田の首すじをぺろぺろと舐める。
「こわひぃ……らにこれぇ……こわいよぉぉぉ……ひ、ぐぅぅぅ……」
「がんばって、たいちょお……。最初は怖いけど、すぐに……すぐに、やめらんなくなっちゃうからぁ……あはッ」
――きんもちいぃでしょお……?
小悪魔のようなかわいらしい声で、堕落した言葉をつぶやく菅原。
「き……もひぃぃよぉぉ……。よすぎれ、こわいよぉぉぉ」
ぴしり、と航の手が石田の尻を打った。その途端、声にならない混乱した悲鳴が石田の口から飛び出し、次第に快楽の深い吐息になってゆく。じわじわと後を引く痛みの余韻が、蕩けるような気持ちよさになって脳に伝わっているのだ。
菅原がそんな石田を羨ましそうに見つめて、その肌を撫で回す。ごくり、と
「偉いわね、乃絵留。ちゃんと面倒を見てくれてありがと。――貴女にもご褒美をあげる」
俺は菅原の耳にそう囁いた。
そして準備したアイテムを見せる。
銀色に光る、金属の洗濯バサミのような形のもの。ニプルピンチ、……つまり乳首ばさみだ。
「……ッ!! あはッ。あははッ」
菅原の瞳に炎が点る。浅ましくも狂える欲情の瞳だった。