速水は「そろそろ、生き方を変えようかな」と思った。
これまで、自分自身はもちろん、舞で幻獣完全撃滅プレイや、来須で絢爛舞踏や、
田辺で玉の輿プレイや、中村でソックスハントも経験した。
再び速水に戻った以上、ファーストのようなぬるい学園生活に別れを告げて、
勢力を増す幻獣どもと戦いながら、ドキドキの学園生活を満喫したっていいじゃないか。
その過程で、気に入った娘と、この部隊と、この国を守ってやればいいのだろう。
今までとは少し違った学園生活を、楽しもうじゃないか。
後に、史上最悪の小隊司令と呼ばれる、青ではない、黒の厚志誕生の瞬間だった。
「僕も、頑張らないとね」
【ルールまたは注意書き】
・5121小隊の結束を固めるため、隊員(主に女性)との友好関係を深める
・司令と隊員の間はもちろん、隊員間の友好関係の維持促進にも努力する
・幻獣には負けないように、それなりに力を入れる
・仕事をがんばってくれた隊員には、積極的にご褒美をあげる
田代が突き出した腕から、ウサギのキーホルダーを受け取ったのがきっかけだった。
素直に受け取り、例を言う。
「ありがと」
田代はあさっての方向を向いたまま、無言。
「……昇進祝い?」
田代が、小さくうなずく。
「……ウサギ」
田代は、きっとにらむと、光る右ストレートで速水を殴って、肩を怒らせて去っていく。
はずだった。
速水が、見事に避けなければ。
「な!?」
避けられると思っていなかった田代の目が、驚愕で見開く。
避けた速水に追い討ちをかける田代。だが、速水は田代のパンチを次々にかわす。
「よ、避けるな!」
「そんなこと言ったって!」
いくらなんでも、喜んで殴られる奴はいない。
しかも、殴られる理由が、昇進祝いにウサギのキーホルダーを受け取った。という
ものなら、なおさらだ。
「ま、待ってってば!」
速水の声も聞かず。田代の拳は、だんだん剣呑なものになっていく。
「クソッ!ちょこまかと!」
突き出された田代の拳を、身体を開くことでかろうじて回避する。速水もそろそろ、
余裕がなくなってきた。
「逃げるな!男ならちゃんと勝負しろ!」
プレゼントを受け取っただけのはずなのに。いつの間に勝負になったんだ?
避けきれなくなった速水が、繰り出されたパンチを受け流しながら。
「だって、女の子を殴るなんて、できないよ!」
「ば、馬鹿野郎!恥ずかしいこと言うな!」
一体、僕にどうしろと?
このまま互いの体力がつきるまで、延々とほぼ一方的な殴り合いを続けるわけにも
いかないので。
速水は、田代の拳を懐に入ってかわしつつ、田代の勢いをうまく生かして、脚払いを
かける。勢いよく地面に倒れることがないように、手首をそっとつかみながら。
ふわっと地面に倒された田代の上に、速水が跨って。
何が起きたのかわからずに、あっけに取られている田代のおでこに。速水の拳が、
こつんと当たる。
勝負あり、一本!
審判がいたなら、そう宣言したであろう。
だが、実際は。
田代は、身体を起こしてから。じっとこちらを見た後、その目に涙を浮かべた。
「ふぇぇん……」
泣き出す田代。
戸惑う速水。
というか、僕が悪いんですか?この状況は?
しかし、田代が泣いている。という状況は動かしようがなく。
「た、田代さん!?」
「ふぇぇん……」
普段の威勢のよさはどこへ行ったのか。まるで親に酷く叱られた娘のように、か弱い
声で田代は泣き続ける。
女の子がよくやる、正座の下側の足を外側に出してお尻を地面につける座り方のまま。
これは、善行を蹴落として司令に就任し、万翼長に昇進した僕への罰ゲームか?
でも、こんなときに男が取れる行動はひとつしかない。
あやまる。
「ご、ごめんね。田代さん」
田代は泣き止む気配が無く。
周囲を通る尚敬高校の女子生徒たちの視線が痛い。
速水は田代の手をそっとつかみ、立たせようとする。
一応、立った。
田代の片手は頬に添えられて。もう片方の手は、速水が引く。
このまま、ここで衆人の晒し者になるのだけは避けたい。
引けばついて歩いてくれるようなので、とりあえず田代を司令室へと連れていく
ことにした。
まあ、間違いなく、明日の教室の噂はこの件になるだろうな。
司令室は、事務官の加藤も不在で無人だった。
こんな姿の田代を衆目に晒すわけにもいかないので、とりあえず扉に鍵をかける。
それにしても、驚いた。
あの田代が、こんな姿を見せるなんて。
椅子に座らせて。少し落ち着いてきた田代に、速水は精一杯優しい声で話しかける。
「ごめんね、田代さん。その、痛かった?」
田代は首を横に振る。
「……そ、その……」
やたらとか細い声で。
「……あ、あやまります。あやまりますから……」
普段とまったく異なる口調。
「その……おしおきは……やめてください……」
はじめ、その言葉の意味がわからなかった。
だが。
あまりにも弱々しい田代の姿を見て、速水の心の中で何かがささやく。
「意外と可愛いところがあるじゃないか。せっかくだから、美味しくいただいちゃおうかな?」
どうやら、悪魔。
だが、そんな悪魔のささやきを押しのけるかのように、別の声が聞こえてくる。
「何を言ってるんだ!こんな田代の姿を見て、他に思うことは無いのか?むしろ、ここは、
もっといじめるべきだろうが!」
結論。どちらも、悪魔。
速水は田代の視線と同じ高さになるようにかがむと、田代の前に顔を突き出した。
瞳を涙で潤ませた田代が、こちらを見ている。
まるで、何も知らない初心な生娘のような表情。
すべてを、奪ってしまいたい。
速水は、口の端に笑いを浮かべる。
「ダメだよ。いけない子には、おしおきが必要だね」
脅えた田代の表情を楽しみながら。そのまま、田代の唇を奪う。
抵抗はなかった。できなかったが正解かもしれないが。
田代の身体は硬直している。あまりのことに、思考が追いつかないらしい。
田代の下唇を吸うようにして味わうと、少し開いた口の中に、舌を差し込む。
田代の口腔内へと侵入した速水の舌が、田代の舌にあいさつをする。
はじめは反応がなかったが、やがて、ややぎこちなく、速水の舌に田代の舌が答える。
田代の舌を貪るように蠢く速水の舌に、田代の舌はされるがままになっていた。
田代の呼吸が徐々に荒くなるのを感じた速水は、絡めていた舌と唇をさっと引き離す。
唾液が速水と田代を結び、名残惜しそうに最後に離れていく。
離れた瞬間、田代が切なそうな声を発したのを、速水は聞き逃さなかった。
「ねえ、田代さん?」
「はい……」
「おしおきされてるのに、なんでそんな声を出すの?」
「あ、あの……」
田代の顔がどんどん赤く染まっていく。
その姿に、速水の中の嗜虐的な性質が膨れ上がる。
「もっと、キツいおしおきが必要かな?」
「……え?」
田代が速水の言葉の意味を理解する前に、田代の唇を塞ぐ速水。
そして、今度は両手で田代の胸に触れる。
びくん!と身体を硬直させた田代。
これまでの言動からすると、暴力的なおしおきをされたことはあるようだが、こういった
性的なおしおきは未体験だろう。
そう値踏みした速水は、あくまでもソフトに田代の胸を愛撫する。
予感は的中したようで。田代の目は恐怖から戸惑いに変わり、今では呆けている。
口が塞がれているので、呼吸は鼻でするしかないのだが、田代の呼吸が乱れてきて。
制服の隙間から、手を侵入させると同時に、するすると脱がせていく。
肌に直接触れられていることに驚く田代だったが、自分がすっかり下着姿になっている
ことに気づくのは、もう少し後のこと。
速水の手が、ブラ越しに田代の胸に触れる。
微かに、先端の感触が感じられるので、そこをじっくりと愛撫する。
そこは徐々に隆起して、硬くなる。
ピンク色の可愛らしい田代のブラを、背中のホックを外してゆるめる。
できた隙間から、硬くなった先端に直接触れる。手のひらは乳房全体を愛し、指先の
腹で乳首を軽くつまみながら、揉みほぐす。
ようやく、自分が脱がされていて、きちんと身に付けた服がアンダーショーツしかない
ことに気づいた田代。声をあげようとするが、口は速水が塞いでいるので「んー!」と
篭った悲鳴しかあげられない。
不意に、速水の唇が田代の口を塞ぐのをやめて。
「何をするの?」と聞こうとした田代の視界に、自分の胸へと顔を近づける速水の姿が映る。
「あ、は、速水、く……んッ!」
問いかけようとする間もなく。速水の唇は、田代の右の乳房の先端を、そっと包み込む。
先端の、さらに先端に触れる舌先。
「ふ、あ……あン!」
指とは違う新たな刺激に、それまで塞がれていて出なかった口から、自分でもびっくり
するくらい艶のある声が漏れて。
ちらっと見上げた速水の目が、少し喜んでいる。
左の胸は速水の右手。右の胸は速水の口と舌。そして、下腹部に速水の左手が伸びてくる。
ショーツの生地越しに、速水の指が田代の秘所を探るように動く。
「だ、ダメ。は、速水く、ん……や、やめて、ください」
すっかり乙女と化した田代が、精一杯の勇気を出して、速水に呼びかける。
「田代さん……」
にっこりと笑う速水。
「そこでそのセリフは、逆効果だと思うよ」
「う……」
田代の目に涙がたまる。
泣き出す前に。
「昇進祝い。僕、嬉しかったんだよ」
速水の思わぬ言葉に、田代の涙が一瞬とまる。
「なのに、なんでああなっちゃうかなぁ……」
「ご、ごめんなさい……」
あやまる田代。
まあ、照れ隠しに殴りかかる。というのは、普段の田代からすると、らしいのだが。
速水は、田代の眦にキスをして、涙をぬぐう。
「おしおきのつもりだったけど。やっぱり、お礼がしたいな」
田代の唇が、再び塞がれる。
速水の手が、田代の最後の砦を脇へとずらし、秘所に直接ふれる。
声を出したくても、出せない。
割れ目をかきわけ、肉襞とその奥の入り口にたどり着くと、そこは男を受け入れる
ための準備が整っていた。
速水の指が、しっとりと濡れる。
唇を離すと、その指を田代の前に持ってきて、指と指の間にできた愛液の糸を見せ
つける。
「田代さんも、喜んでくれているみたいだし」
田代の顔が一層朱に染まる。
まあ、やってることは、おしおきと何も変わらない。
「じゃあ、おねだりしてね」
「おね、だり?」
田代が聞き返す。
「ご主人様。私を愛してくださいませ」
「あ……」
普段の田代なら、絶対に言えないようなセリフ。
速水は、それを言わせようとしている。
当然、田代はそれを言えない。
はずだった。
田代の唇が、何度か開閉してから。
「ご、ご主人、様」
途切れ途切れに。
「わ、私を……あ、愛して、ください。ませ」
耳まで真っ赤に染めながら、速水の要求したセリフを田代は言い切った。
「よくできました」
速水は微笑むと、田代の最後の砦に手をかけて、するりと脱がせた。
田代の恥ずかしい所が晒されている。
空気にふれたから、ひんやりとした冷たい感覚が襲っているのだと、田代は思った。
だが、視界を自分の下腹部にうつすと。
自分の足の付け根に、顔を埋めている速水がいて。
ぺろり。
「あ!」
田代の身体が硬直する。
状況を把握するまで、かなりの時間がかかって。
その間、速水はずっと、田代の秘所を指と舌で丹念に愛撫していた。
そして、気づく。
「や、やめて。ください。あ、あたし……」
整備の仕事を終えた直後だったから、汗もかいたし、油だって身体についてる。
キレイじゃない。
速水は視線だけ田代に向けて、行為自体はまだ続けている。
「あ、汗、かいてるし、その、汚い――」
続けようとした田代の、陰核を速水が舌でつついた。
言葉が、途切れる。
普段ですらあまり触れたことのない部分を、速水の舌が愛していて。田代の身体は、
これまでに感じたことのない甘美な感覚が駆け巡っている。
思考が溶けて、自分の身体が自分の身体ではないような感覚になる。
気がつくと、速水の顔が田代の目の前にあった。
「ご主人、様……」
そんな言葉が、自然と出る。
「キス、して、ください……」
速水は微笑んで。
「それ、おねだり?」
田代は頷く。
「可愛いね。香織」
初対面のときに、絶対に呼ぶな。と言ったはずの下の名前で呼ばれて。
田代の胸を、電撃のような衝撃が襲った。
嬉しい。
喜ぶ田代の唇を、速水の唇が塞ぐ。
「そろそろ、もらっちゃっていいかな?」
そう言いながら、速水はズボンのベルトに手をかけている。
何が行われるか、一目瞭然。
田代は、小さく頷いた。
「あ、あたし、初めてで……」
言うのも恥ずかしかったが、あまり乱暴にされては、速水を拒否してしまいそうだったから。
そんな田代の言葉に、速水は田代のボサボサな髪をなでながら。
「大丈夫。わかってるよ」
と、優しく頬にキスをした。
体格から言えば、田代の方がやや大柄で。線が細いはずの速水が。
軽々と田代をお姫様だっこ。
あっけに取られている田代を、司令の椅子に座らせる。
こちらの方が、事務官の椅子よりは座りやすくて。
肘をかける部分に脚をのせられて、大きく脚が開かされていることに田代が気づく前に。
速水は、田代の中へと入ってきた。
しかも、一気に。
「痛!」
強い痛みが田代を襲い、つながった場所からズキズキと痛みが襲ってくる。
でも。
一気に貫かれたのが幸いして、激しい痛みが一瞬襲った後は、耐えられる痛みが心臓の
鼓動にあわせるかのように襲ってくるくらいで。
さらに、速水は田代の他の部分を丹念に愛していた。
胸を。
唇を。
つながった秘所の周囲や、興奮して露出してきた陰核を。
その効果もあり、痛みと一緒に喜びも感じられることができていた。
「大丈夫?」
心配そうな速水の顔。
田代は、頷いた。
「ちょっと、動くよ」
もう一度、田代は頷く。
速水の動きはゆっくりと探るようなもので。
田代があまりに痛みを感じるようであれば、すぐにでも動きを止めようとするような
様子だった。
痛みはまだ続いているが。
抱きしめてくれている速水の体温が、田代の心を満たしていた。
「速水くん」
呼びかけた田代を、微笑んだ速水がたしなめる。
「だーめ。ご主人様」
それで、田代は悟る。
二人の間にあるのは、愛ではないかもしれないけれども。
それでも、いい。
この人と、一緒にいたい。
この人に、求められたい。
田代は、受け入れた。
「ご主人様……」
速水の耳元でささやく。
「私を、愛して、くださいませ」
言わされたのではなく。自分から。
「僕も、がんばらないとね」
速水の動きが、少しずつ速くなる。
田代は、結合部の痛みと、それを上回りつつある全身からの喜びに、自然と声を
あげていた。
「いくよ、香織」
速水が田代の耳元で。
「お、お願い、します。ご主人、様……」
田代も答える。
今では激しく動いている速水の腰が、田代と密着した状態で止まる。
田代の奥を、速水から吐き出される白濁液が汚していく。
速水の欲望の波が途切れ、田代の中で暴れるのをやめてから。
田代は、もう一度だけ、速水にキスをねだった。
脱がされた服をひとつひとつ着なおしながら。
田代は、契約内容を聞かされていた。
「とにかく、与えられた仕事には全力で臨むこと。手を抜いちゃダメだよ」
「はい……」
速水の顔が、田代に近づいて。
「あと、二人きりのときと、特に僕が命じたときは、僕をご主人様と呼ぶこと。
それ以外は、今までどおりの付き合い方でいいから」
「はい……」
田代は思う。
この人は。
こんなに純粋そうな目をしているのに。
「以上のことを守ってくれれば、ご褒美をあげるからね」
「はい……」
その中にいるのは、悪魔。
「契約成立。で、いいかな?」
ステキな笑顔。
でも、田代は知っている。
この人は悪魔かもしれないけど。
少なくとも、悪い悪魔ではない。
ならば。
「はい。ご主人様」
迷いはなかった。
「よくできました」
満足そうに頷く速水。そして。
「これからもよろしくね。香織」
と言いながら、田代の唇を奪った。
一人目、陥落。