兵員の確保も問題だが。結局のところ、戦争とは金がかかるものだ。  
 芝村準竜師直属の強みで、他の小隊に比べれば潤沢な補給が約束されてはいる  
ものの、熊本が本州から切り離されて、孤立化を高めている現状では、今後も  
補給物資が要求するだけ手に入るとは限らない。  
 となれば。  
 正規の方法では入手が困難なものも、裏では手に入ることもある。  
 盗んで員数あわせ。というのは本末転倒だが、必要になるならば、それも考慮に  
入れねばならないだろう。  
 そう言った意味では、今の小隊事務官である加藤は優秀だった。  
 小隊を飢えさせるような事態や、武器があっても弾薬がなかったり、あるいはその逆。  
といったこともおきていない。それは、物資調達などに非凡なセンスを発揮している、  
加藤のおかげだった。  
 もしも。  
 彼女が、より自分の任務に精励してくれれば。  
 5121小隊は、兵站についての悩みから開放されるかもしれない。  
 これはすこぶる魅力的だった。  
 逃げるように本土に戻る善行が、罪滅ぼしのように送り付けてくる武器弾薬よりは。  
 他の周回では、それなりに役には立ったが、小隊員が減るのはいただけない。  
なので、今回は回避する方向で考えている。  
 まあ、他に手段がないなら、善行に原をくっつけて、本土に送るのもいいが。  
 今はまだ、他の手段があるのだから、その方法を使うまでもないだろう。  
 次のターゲットは決めた。  
 あとは、行動する機会を得るのみだ。  
 
 放課後。  
 授業が終わり、学兵たちは学生から兵士に切り替わって各自の仕事を進めていた。  
 5121小隊の司令室では、小隊司令の速水と事務官の加藤が、それぞれの机に向かって  
山と積まれた書類とにらめっこをしていた。  
「ふう……」  
 加藤。本日、幾度目かのため息。  
 小隊の状態を常にベストに維持管理するためには、これを無視するのもいけないな。  
 ある意味、これはチャンスかもしれないし。と思った速水が、声をかける。  
「加藤さん、大丈夫?」  
 肩をぐるぐる回していた加藤が、我にかえる。  
「え?」  
 速水の視線は書類の上から離れていない。が、書類にサインをすると、まっすぐ  
加藤を見つめてきた。  
「ため息。今日はなんだか多いからさ。僕に話して楽になるなら、何でも言ってよ」  
 思いっきり直球ストレートで投げかけられる視線に戸惑いつつ、せっかくだからと  
ギャグを言う。  
「ほな、100万円貸して!」  
 心配してくれた速水に対して、いくらなんでも酷い言い方だな。と思いながら。  
 そんな加藤に、速水は。  
「いいけど」  
 あまりの即答に、加藤が固まる。  
「じょ、冗談に冗談で返すんか。司令もなかなかやりますなー!」  
 そんな簡単に、100万円などという大金を「貸そう」なんて言えるわけがない。  
 そう、これは、冗談。  
 自分のギャグに、冗談で答えてくれたのだ。  
 大体、そんな簡単に手に入る金額ではないことは、守銭奴呼ばわりされてまで必死に  
金を貯めている加藤には、十分すぎるほどわかっている。  
 だが、速水の視線は真剣そのもの。  
「いや、本気だけど」  
 さらなる追い討ち。  
「な、速水くん。じょ、冗談やて。そんな、ウチ、100万円なんてあっても……な」  
 加藤は言葉に詰まる。  
 私、なんて嫌な女なんだろう。  
 
 その言葉に、速水の視線が少しだけやわらかくなる。  
「お金で解決できることならいいんだけどさ。そうでもないなら、話を聞くよ」  
 その視線と言葉に、ちょっと、グラっとくる。  
 速水くんは優しいな。なっちゃんも、こんな感じでウチに接してくれればな。  
などと、あらぬ妄想を繰り広げた後。  
「ほ、ほな、ちょっとだけ、グチ、聞いてくれる?」  
 速水をぽややんだが頼れる人物と見た加藤が、自分の胸に秘めた思いを語り始めた。  
 自分と狩谷が同じ中学にいたことや、狩谷が前の学校ではスポーツ万能で人気者  
だったことは以前話したから。今は、誰にも言っていない秘密を。  
「なっちゃんの足な、ウチのせいやねん……」  
「え?」  
 速水が聞き返す。  
「ウチのせいでな、なっちゃんの足、動かなくなってしもうてん……」  
 不幸な事故だった。  
 抱きつきながら、元気に挨拶したつもりだったのに。  
 本来、そこにいるはずの狩谷はなく。  
 進入してきた電車と、何かがぶつかる音が。  
 その日以来、狩谷は車椅子生活を送っている。  
 当然、加藤には常に罪の意識がつきまとっていて。狩谷に、医者に診てもらわないのか?  
と聞いてみたこともあった。  
 狩谷の返事は、どこかあいまいだった。  
 そのため、加藤は狩谷の主治医に問い合わせてみたことがある。  
 狩谷の足に、治療の見込みはあるのか。歩けるようになるのか。と。  
 答えは、YES。  
 ただ、成功率は一割程度。しかも、手術に100万円かかると言われた。  
 その日からだ。  
 加藤が、守銭奴と陰口を言われるような行動に出るようになったのは。  
「せやから、ウチ、速水くんに100万円貸して。なんて、思わず言ってしもうたんや。  
 ホンマに、ごめんな……」  
 しょぼくれる加藤。  
 
 速水の視線が、真剣なものに戻る。  
「でも、100万円で狩谷君の足が治る見込みがあるのなら、本当に貸すよ?」  
 手を入れた懐から、ぽとり。と机の上に落とされるものが。  
 札束。  
 帯がついているから、あれでぴったり100万円だろう。  
 驚く加藤。  
「な、なんで、そんな大金持ってるん?」  
 それだけの金額を集める苦労を知っているだけに、驚く以外の感情が出てこない。  
「いろいろと、ね」  
 速水は言葉を濁す。  
 公園のゴミ箱に入っていたり、遠坂の所持品と交換してもらった金ののべ棒を、  
裏マーケットでさくっと換金。などということは、秘密にしておくに限る。  
「で、でも、ウチ、こんな大金、すぐには返せへんし……」  
 すでに半分は貯まっているので、残りの半分を借りる。という選択肢もある。  
「別に、出世払いでもいいし、利子をつける気はないから、気長にゆっくり返して  
 くれればいいよ」  
 速水の言葉の誘惑に、加藤は心が動きかける。  
 けど。  
 できれば、自分で稼いだお金で、なっちゃんの足を治したい。  
「でも、ウチ、やっぱり……」  
 言いよどんだ加藤の側に、いつの間にか速見が立っていて。  
「まあ、今すぐ対価をもらうって方法もあるんだけど」  
 そう言いながら、速水の顔が加藤の首筋に急接近していって。  
 加藤がその行動に反応する間もなく。  
 唇が、触れた。  
 首筋に、キス、されている。  
「は、速水、くンッ!」  
 抗議の声をあげる前に、制服越しに胸をさわられ、語尾が不自然に跳ねる。  
 制服、ブラウス、ブラと重なった分厚い布地を通して、どうやって判別しているのかは  
わからないが、先端の特に敏感な場所を中心に、全体にやさしく甘い刺激を与える。  
「あ、アカンて、ウチ、こんなことする女や、ないッ!」  
 それまでは左の胸だけだったが、右の胸にも手が伸びる。  
 左右同時にではあるが、微妙に変化の付いた異なる刺激が、加藤を襲う。  
「だ、ダメや、て。……い、嫌や」  
 速水は、加藤の必死の抗議を、まるで無視。聞こえないふりで、そのまま続ける。  
 
 抵抗しようと腕に力を入れるが、腕力も体力も歴然たる差があるために、抵抗に  
ならない。  
 加藤の身体は、蹂躙されようとしている。  
「い、や。……嫌や。な、なっちゃん……」  
 自分が想う人の名を呼ぶ。  
「狩谷君がどうしたの?」  
 服越しに遠慮ない愛撫を続ける速水が、首筋から唇を離して問う。  
「たす、けて……なっちゃん……」  
 胸から手を離さずに、速水は加藤を正面から見つめながら。  
「どうせなら、初めては狩谷君がいい。ってことかな?」  
 そんな恥ずかしい質問に、答えられるわけがない。  
 だから、もう一度、その人の名前を呼んだ。  
「なっちゃん……」  
 不意に、加藤を押さえつけながら胸への執拗な攻撃を続けていた速水が、離れる。  
 司令室の扉へと歩いて行って、無造作に扉をあけると。  
 そこには、加藤が名前を呼び続けていた人がいた。  
 顔を怒りに染めながら。  
「聞いてた?」  
 平然と問いかける速水。  
「ふ、ふさけるな!呼ばれたから来てみれば、お前、加藤に何をしてた!」  
 当然、狩谷はご立腹モード。  
 速水が頬を指で掻く。  
「今のところ、問題になりそうなことはしてないけど」  
「十分問題だろう!」  
 狩谷の怒りはおさまらない。  
「……そうかもね」  
 とぼける速水。  
「というわけで、加藤さんは君に預けるから。悪いけど、フォローしてくれる?」  
 いきなりの話の展開に、付いていけない狩谷。  
 そんな狩谷を車椅子ごと小隊司令室に押し込んで。  
 速水は外から、扉に鍵をかけた。  
「ごゆっくり」  
 扉越しにそういい残して、立ち去っていく。  
 
 室内に取り残された二人。  
 気まずい雰囲気。  
 狩谷が加藤に何か言おうと口を開きかけたとき、加藤が狩谷の胸に飛び込んだ。  
「な、なっちゃーん!」  
 大粒の涙を、ぽろぽろこぼして。  
 心底、怖かったのだろう。  
 狩谷は、そんな加藤の頭をそっと抱きかかえる。  
「大丈夫か?」  
「うん。でも、ウチ……」  
 何かを言いかけた加藤をさらに抱きしめて、体で何も言うなと伝える。  
「あまり、心配かけるなよ」  
 なるべく優しくなるように、口調に気をつけながら。  
「ご、ごめんな」  
 あやまる加藤。  
 そして、沈黙。  
 何か言わないと。この空気は重い。そう考える狩谷。  
 視線を動かすと、そこには思いつめた表情の加藤が。  
「なっちゃん……」  
「何だ?」  
 少しぶっきらぼうな言い方になってしまったことを後悔する狩谷。  
 そんな後悔を吹き飛ばすような爆弾発言が、加藤の口から飛び出した。  
「ウチの、初めての人になって、くれる?」  
 加藤は、驚く狩谷の返事を待たずに、狩谷の唇を自分で奪った。  
「んッ!」  
 重ねて驚く狩谷。  
 速水から受けた刺激が、加藤を暴走させていた。  
 長い間、唇を重ねる。  
 狩谷の唇を解放すると同時に、照れ笑いで。  
「ウチの、ファースト・キス。や」  
「ば、バカなことをするな。もっと自分を大切に――」  
 最後まで言い終わらぬうちに。  
「ウチの大切なものやから、大好きななっちゃんにあげたいんやけど……」  
 狩谷は思う。それを上目遣いで言うのは、卑怯だと。  
 そうつぶやかれたら、何も言えなくなるじゃないか。  
「だからな、なっちゃん」  
 加藤は自分の上着に手をかける。  
「抱いて、くれる?」  
 
 するすると服を脱ぎ、下着姿になった加藤は、狩谷のズボンに手を伸ばす。  
 狩谷に本格的な介護は必要ないので、自分でできることは狩谷自身がやる。だから、  
加藤はそこを見るのは初めてで。  
 ズボンのボタンをチャックを外し、ずるずる引っ張って脱がせる。  
 露出したボクサーパンツも引っ張ると。  
 狩谷のモノが登場する。  
 まだ、硬くなっていない。  
 加藤がそれに触れると、その部分に血が流れ込み、徐々に硬さを増して。  
 少しずつ、立ち上がりはじめる。  
「当然やけど、こんなことするのも、初めてやから」  
 加藤は、狩谷の少し硬くなってきたモノに、恐る恐る唇で触れる。  
 下半身からあがってくる初めての感覚に、狩谷は呻いた。  
「ウチで、感じてくれてるん?」  
 狩谷は頬を赤く染めながら、そっぽを向いた。  
「嬉しいなあ……」  
 立派なものになりつつあるそれを、加藤は口に含む。  
 舌先で敏感な先端部分を愛して。  
 一所懸命にそれを愛そうとする加藤を、狩谷は頭を押さえて一時的にとめる。  
「歯が、あたって痛い」  
「ほへん」  
 咥えたままなので、何を言ったかわからないが、多分、「ごめん」だろう。  
 加藤の右手は、キュロットと下着の内側に入れられて、自分の蕾や襞や入り口を弄び。  
左手は狩谷のモノをしごいて。口は、先端を丹念に味わっている。  
 一体、どこで仕入れた情報かはわからないが、ひどく気持ちがいい。  
 気を抜くと、果ててしまいそうになる。  
 とはいえ、我慢し続けるわけにもいかない。  
 狩谷の背筋を、発射の合図が駆け巡った。  
「祭、離れろ!」  
 狩谷に言われて、離れるどころか吸い付くようにモノを咥えた加藤。  
 吐き出された白い欲望の液が、加藤の口腔内を満たしていく。  
 狩谷から吐き出されるそれを、最後まで吸いあげた後、口を離した加藤は、それを飲み込む。  
 ごくり。と喉が動いて。  
「あんま、美味しくないな」  
 そう、笑顔で言う。  
 
 ふと、何か思い出すような表情を見せる加藤。  
「そういえば、なっちゃん。ウチの名前、呼んでくれた?」  
「し、知らん」  
 赤くなって照れる狩谷を、加藤は嬉しそうに眺める。  
「なっちゃん。好き……」  
 アンダーショーツに手をかけて、あっさりと脱ぎ捨てる。  
 そして、ブラはつけたままの状態で、狩谷に抱きつく。  
「ウチの初めて、なっちゃんにあげるな」  
 加藤の問いに、狩谷は腕を伸ばすと、加藤の頭を引き寄せて唇を重ねた。  
「ほな、いくで」  
 車椅子の上で体をずらし、何とかスペースと角度をつけた狩谷の上に、加藤が跨って。  
先端を、自分の入り口にあてがう。そして、ゆっくりと、腰を落とした。  
「い、痛ッ!」  
 加藤の顔が苦痛にゆがむ。  
「バカ、無理はするな!」  
 狩谷の制止も聞かずに、加藤は自分の中に狩谷を埋めていく。  
 少しずつ。  
 だが、確実に。  
 腰を完全に落とし、狩谷のモノをほぼ根元まで飲み込む。  
「入ってる。ウチの中に、なっちゃんが入ってる……」  
 目に涙をためた状態で、無理に微笑む。  
「嬉しい……」  
 痛みに涙を流し、愛する人と一つになれた嬉しさで微笑む。  
 狩谷は何も言わずに、加藤のブラをたくし上げると、露出した胸に触れた。  
「あ……なっちゃん?」  
 そっと、やさしく刺激する。手のひら全体で包みながら、中指の腹で先端の突起を弄ぶ。  
 徐々に隆起して硬さを増したそこを、ボタンに見立てて押してみる。  
「う、んッ!」  
 加藤の体が、ぴくんと反応して。  
「なっちゃん。それ、気持ちいい……」  
 加藤のその言葉に触発されて、狩谷は貪るように胸に喰らいつく。  
「あ、ダ、ダメ。なっちゃん……。ヘンに、なる」  
 結合部の痛みが、胸からの快楽で、和らぐ。  
 
 狩谷の愛情が、胸を通して伝わってくる。  
 加藤が、少しでも気持ちよくなるように。  
 痛みが、和らぐように。と。  
 その思いが、加藤の胸を、別の意味であたたかくしてくれた。  
 だから。  
「なっちゃん。動くで」  
 加藤は、覚悟を決めた。  
「祭、無理するな」  
 心配そうな狩谷の顔。  
「まだ、痛いけど、なっちゃんが、ウチを愛してくれてるから、大丈夫」  
 そう言って、少しずつ腰を上下に動かし始める。  
 加藤が動くたび、車椅子に二人分の体重がかかり、ギシッギシッと音をたてる。  
 結合部から、大量の水分を含んだ音が響く。  
 狩谷はその間、ずっと加藤の胸を愛しつづけていた。  
 そのおかげで、傷みよりも喜びが勝ってきたのか、加藤の動くピッチが少し早くなって。  
「ああッ!な、なっちゃん……。なっちゃーん!」  
 結合部の上下動も、大きくなってきた。  
 二人の呼吸が徐々に荒くなり。  
 呼吸に合わせるような上下動が、二人をさらに快感に導いていく。  
「好き。好きや、なっちゃん!」  
「祭……。僕もだ」  
 言われたら、どれだけ嬉しいだろう。  
 そう、想像していた言葉を言われて。  
「う、嬉しい……。嬉しい!」  
 加藤の動きは狩谷を限界に導いていく。  
「ま、祭!」  
「そ、そのまま!」  
 腕で加藤の腰を動かし、引き抜こうとする狩谷に対し、加藤はより深く腰を沈めた。  
「ううッ!」  
「あ、ああ、んッ!」  
 加藤の中を、狩谷の精液が満たしていく。  
 
 視線が交わる。  
「なっちゃん……」  
「祭……」  
 キス。  
 唇が触れるだけのソフトなものから、舌をからませて口腔内を探りあう深いものに。  
 事後の余韻にひたりながら、互いの愛を確認していると。  
 かちり。と鍵が開く音の後、扉から速水が顔を出す。  
「速水!」  
「速水くん!?」  
 突然の帰還に驚く二人に対し、速水は満面の笑顔で。  
「どうかな、楽しめた?」  
「「え?」」  
 加藤と狩谷が同時に声をあげる。  
「どんな苦労も、君たち二人なら乗り越えられると思うから。がんばってね」  
 平然と、そんな言葉を言う。  
 頬を染める二人。  
「狩谷君の足に治療の見込みがあるのなら、僕も協力するから。遠慮なく言ってね」  
「余計なことを……」  
 狩谷のつぶやきを、意図的に無視して。  
「恋人同士、何をやっても文句は言わないけど」  
 ここまでは笑顔だったのに。急に、真面目な表情で。  
「小隊のみんなが死なない程度に、仕事に励んでくれると嬉しい」  
 そこだけ、小隊を案じる司令の表情になっていた。  
 そして、いつものぽややんな表情に戻って。  
「わかった?」  
 笑顔で問う。  
「うん」  
 加藤は笑顔で。  
「……ああ」  
 狩谷は憮然とした表情で。  
 それぞれ、肯定の返事をした。  
 
 後日。  
 悩みが解消されたわけではないが、前途がそれほど困難なものではないらしいと悟った事務官は、仕事中にため息をつくようなことも無くなり、短時間で今まで以上の能率で仕事をこなすようになった。  
 車椅子の整備士も、以前のような厭世的な雰囲気が消えて、少し丸くなったようだ。  
 それと、あの夜の事件がきっかけとなり、狩谷と加藤は恋人関係となった。  
 狩谷も。加藤も。それなりに幸せにやっているようだ。  
 職務に奨励すれば、狩谷の脚の手術の面倒を見てもらえるように、準竜師に掛け合ってみよう。という言葉も、加藤にとってはプラスに働いた。  
 現在、我が5121小隊は、物資、食料、武器、弾薬の配備状況は、非常に満足すべき状態を維持している。  
 当初の目的は十分に達したと判断できよう。  
 
 
 二人目(+相方)、陥落。  
 
 
ん?  
これだと竜が出てこないかな。  
……まあ、そうなったら、そのときだ。  
 
 

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