ここは、中国山地の小さな分校…その中の小さな厩舎の中で、
山岳騎兵の石田咲良は自分の99式雷電の「デン」にいつものように餌を与えたり、ボールで遊んだり、調教や訓練を施したりしていた。
咲良が初めて「デン」と出会った時はまだ幼生だったが、咲良が懸命に育て上げた結果、今では立派な「狼」タイプに成長していた。
「よしっ!今日はもうおしまい、じゃあデン、また明日ね!」
咲良はデンにそう言うと、厩舎から出ようとした…。
だかそのときデンはいきなり前脚で咲良の両肩を押し、仰向けに倒した。
そしてその鼻先に顔を近づけて、「がるるるるる…」と唸り声を上げた。
「ひぃぃぃぃ…やだやだやだやだ〜!!」咲良は泣き声をあげて、デンから逃れようとした。
しかしデンは咲良に吠えかかった。
「ばうっばううっ…」
咲良は根本的な恐怖にとらわれた。
「まさか、私を噛み殺す…嘘…そんなの有り得無い…。99式雷電は人に危害を与えないはず…まさか狂った…?」
ふとそのとき、唸り声をあげているデンの下腹にぶら下がっている赤黒いものが目に入った。
それは、デンの雄の証しであった。
咲良は、思わず赤黒いソレを手に取った…。