ガンパレードマーチ  

 ぼうっとした顔で、田辺はそれを手にしたまま布団の上に転がっていた。  
 華奢な指が掴んでいるのは、ずっしりとした金の延べ棒。  

 ――あの…火事見舞いです。どうか、お役立てください。  

 と、遠坂が心底痛ましそうな顔をして差し出した、時価百万円のプレゼントである。  
 換金すればすぐにでも新しい住まいに移れるだけの額になるそれを、彼女はずっと  
手元に置いたまま眠ろうとしていた。  

(分かってるけど…遠坂さんがくれたものなんだもん…)  

 つい頬を寄せてすりすりしてしまう。ついでに隅っこに軽くキス。  
 子供のような真似をしてしまうほど、嬉しかった。  

 

 彼女の家が焼け落ちてしまったのは、一週間前のこと。  
 最初は空き地に仮住まいを設営していたのだが、流石にそれも三日以上続くと  
限界になっていた。南国熊本とは言え、三月の夜はまだ寒いし、屋外での煮炊きに  
周辺住民から苦情が出始めたのだ。  
 そこでとりあえず、家族は一旦バラバラになって新しい住まいを探すことに  
したのである。  
 その結果、両親と弟は隣町の親戚の家に、軍属である姉は女子寮の空き部屋へ  
行くことになった。  

 
 

 そんな訳で田辺真紀は、深夜の一人きりの部屋の中、恋しい男からのプレゼントを  
弄んでは顔を緩めていた。  

(温かい手だったなぁ…)  

 昼間の出来事を思い出しては、ぽうっと頬を染める。  

 ――困ったときは、お互い様ですよ。  

 学兵が差し出すには文字どおり桁が違う代物に、田辺が慌てて遠慮していると、  
彼は囁くような優しい声でそう言いながら、それを握らせた。彼女の小さな両手を、  
自分の掌で、プレゼントごとそっと包み込むように。  

「遠坂さん…」  

 小さな声で呟くだけで、胸がいっぱいになる。  

(好き…です)  

 まるでそれが遠坂本人であるかのように、延べ棒を抱きしめながら、田辺は心の中で  
囁いた。  
 パジャマの下の胸が、温もりを帯びた金属を柔らかく受け止める。  

「…あっ…」  

 硬い、片手より少し大きな――棒。  
 その感触が、とある想像を脳裏に走らせた。  
 心臓が、大きく跳ねる。  

(もし、これが…遠坂さんの…だったら…)  

 どくん、ともう一度。  

 ――握り締めて、頬ずりをして、唇をつけたものが。  
 今、乳房に押し当てているものが、恋しい男の男根だとしたら。  

「…ぁ…ぁあ…」  

 熱っぽくなる身体が、シーツに擦れた。その感覚に、甘い声が漏れてしまう。  
 いやらしいと思いつつも、高ぶってゆくのを抑えることが出来ない。青い瞳が、  
見る間にとろけていく。  

「ふっ…あ…あぁっ…」  

 普段は慎ましやかな田辺とて、性欲旺盛な年頃の少女である。恋しさの余りに、  
身体が欲しがることも珍しくはない。家族の目を盗み、嬌声を押し殺しながら、  
欲情した肢体を自分で慰めることもしばしばあった。  
 しかし、一人きりの寝室にいる今は――  

「んん…とぉ…さか…さんっ…」  

 甘い声を抑える必要なんて、どこにもない。  
 肉欲に耐えきれず、既に彼女は上着の前をはだけていた。  

「あんっ…あっ…」  

 ふる、と揺れる乳房を手で押さえ、金塊に擦りつける。  
 華奢に見える彼女のそこは、実は原や田代にも負けぬほどの大きさを  
持ち合わせている。柔肉のボリュームは、彼女の指ではつかみ切れないほどだ。  

(男の人って…こういうの好きだって聞きました…気持ちいい、ですか…?)  

 妄想の中で愛しい男に語りかけながら、延べ棒の先を口に含んだ。ピンクの舌が、  
ちろちろとそこを嬲る。  

「ふっ…ぁは…」  

 そうしながら、己の指で軽く乳首を撫で、硬くしこらせた。  

(私も…気持ちよく、して、下さいっ…)  

 感じやすい蕾をくりくりといじっては摘み、快感に背を反らす。その弾みで  
ぷるん、と乳肉が揺れた。  
 かすれた声で鳴きながら、腰を小さく跳ねさせる。  

(もう…ねぇ、触って…触って欲しいんですっ…)  

 右手で金塊を掴んで、下着ごしに焦れた部分に押しあてる。震えるその奥からは、  
くち、くち、と濡れたリズム。それに合わせて、屹立した乳首をしごきたてる指。  
乱れた青い髪が、真っ赤に染まった顔にまといつく。  
 見るものがいれば、その理性を粉々にするほどに淫靡な光景だった。  

(あぁっ…意地悪、しないで、下さいっ…)  

 ここにいない男に哀願しながら、じれったそうに下半身の衣服を脱ぎ捨てた。  
 そして、そのトロリと溶けた部分を男の前に晒すように、足を大きく広げる。  

(濡れちゃうんです…私…遠坂さんのこと、考えるだけで…  
ここが、熱くなっちゃうんですよ…?)  

 卑猥な睦言を囁きながら、そろそろと延べ棒の先端を近付けていく。  
 愛蜜に濡れた花弁は、待ち侘びるようにひくついていた。  

「あ…はあっ…!」  

 膨れたクリトリスが、最初にそれに当たった。鋭い快感に高い声を出し、  
田辺はそのまま、そこを転がす。  

「ひぁんっ…あ、あ、あはあっ…」  

 びくびくと身体を震わせながら、可憐な喘ぎを上げる。  

「ねぇっ…濡らしてっ…もっと、もっと、良くして、くださいっ…」  

 たまらなくなって、彼女は棒の側面に秘所全体をなすりつけた。裂け目から溢れる  
愛液が花弁と花芽をぬめらせ、絶え間ない快感を彼女に送る。  

「あああっ…あんっ…ああ…気持ち、いいですっ…これ、いいの、ねぇっ…いいのっ…」  

 くちゅくちゅと音を立てながら、より深い快楽を貪る。まるで彼女の理性が  
全部溶けたような、夥しい量の蜜が秘所から垂れ流されていた。  

「あんっ…いっ…いい…はんっ…ああ…私のここ…気持ちいい、ですか…?」  

 高く甘い、可愛らしい喘ぎが、どんどん熱を帯びていく。それにあわせて、  
快楽のポイントをいじり回す動きも激しくなっていった。  

「んふ、あ…あぁ…もうっ…がまん、できないっ…」  

 そしてとうとう、"恋しい人の肉茎"の先を、花芯の入り口へ持っていく。  

「…ねぇ、ください…遠坂さんの、熱いのっ…!」  

 そして少し躊躇うように花弁をなぞった後、そっとそれを沈めた。  

「んんっ…ひあっ…あはぁあああっ、はっ、あああぁああーっ!!」  

 まだ男のものを受け入れたことのないそこは、とろとろに溶けていながらも、  
奥まではそれを受け入れられない。それでも、田辺を狂わすには充分な快楽を  
生み出していた。  

「ふぅあ、ああっ…ここ、ここっ…ぁああああっ、気持ちいいよぉ…っ」  

 ゆっくりと入り口を掻き回しながら、別の指でぷっくりと膨れたクリトリスを転がす。  
ガクガクと肢体を震わせ、快感に溺れる。  

「んっ…ああっ…とぉ…さかっ…さん…あ、あ、あふぁっ…あつい、あついのっ…  
大きいの…気持ち、いいのっ…あ、ああああっ、ぐちゃぐちゃになっちゃう…  
溶けちゃう、溶けちゃいますぅっ!」  

 すっかりとろけた蜜花に、熱をこもらせた棒を差し入れて、愛しい男の名を呼ぶ。  
じゅくじゅくと愛液が溢れて尻まで伝っていった。  
 頂上近くまで昇り詰め、惚けた顔で腰を振り立てる。理性も何もかもかなぐり捨てた、  
ただいやらしい生き物になるための動き。  

「好き…あんっ…好きっ…とお、さかさん…けい…ご、さん…あぁあああっ…  
 圭吾さん…好きっ…!すきっ!あい…してますっ…ぁあ…あ、あっ…」  

 欲しくて欲しくてたまらない人の名を呼んで、ぞくぞくと這い寄ってくる快感に  
身を任せる。  
 嬌声が、一段と高くなった。  

「もうっ…ねぇ、もうっ…!あぁああっ…いく、圭吾さんのでイっちゃう、イっちゃう、  
イっちゃう、イっ…んぁああ、あぁああああああっ!!」  

 切り込むような、鋭い恍惚が結合部から脳天へ突き抜ける。  
 ぐっ、と全身を反らせ、田辺は絶頂に達した。  

「ん…はぁ…」  

 甘い呼吸を繰り返しながら、濡れたシーツに腰を落とした。  
 鼓動に合わせて膣が収縮する。その度に感じる異物感が、まだ気持ちいい。  

「はあ…あんっ…硬い…あぁ…まだ、足りないんですか…?」  

 再び、熱くなる声。  
 潤み、惚けた眼差しは、少し困ったように微笑む幻を見ているようだった。  

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