横島忠夫という人間はスケベである。  
これは間違いない。  
そして、自分の容姿に問題が無い事も既に確認してある。  
スタイルは少々自信が無いが、それでも不愉快に思われたり性欲をかき消すような物でもない。  
では、何故だ。  
何故、横島は飛び掛ってこない。  
ルシオラは妹の制止を(力づくで)振り切ってまで来た恋人の部屋で戸惑っていた。  
 
「あ、あの、ヨコシマ?どうしたの?」  
「……る…かよ……」  
「え?」  
「死ぬって、抱いたら死ぬって分かっててヤれるかよ!」  
「き、聞いてたの!?」  
 
そう叫んだ横島の目から涙が流れていた。  
色こそついていないが、血の涙といって差し支えない。  
それほどに横島の慟哭は激しかった。  
 
「せっかく、せっかくOKしてくれた女の子が現れたと思ったのにっ!思ったのにーっ!!」  
「ま、まあまあ」  
 
魂からの叫びに思わずルシオラがなだめる。  
 
「いいじゃないの。我慢する事ないわよ」  
「良いわけあるかーっ!一回やったぐらいで満足できる程、俺の煩悩は薄くねーんだよ!」  
「そ、そうなの」  
 
横島の迫力にルシオラがベットにへたり込む。  
一夜のアバンチュールで命を散らす覚悟を持って来たのに、横島の迫力はその覚悟すら圧すほどだった。  
どうしたものか、枕を抱えたまま叫び散らす横島を見上げていると不意に視線が向けられた。  
 
「……どこからだ?」  
「ひっ!」  
「どこからなんだーっ!」  
「なっ、なにがっ!?」  
 
急に詰め寄ってきた横島にルシオラが悲鳴を上げる。  
だが、横島はまるで構う事なく怯えるルシオラの肩を掴みゆっくりと顔を近づけてきた。  
                                       
「どこからヤッた事になるんだ」  
「どっ、どこからって…」  
「キスはありなのか?おっぱいは?尻は?どこまで触ったらアウトなんだ?  
 出来なくても!セックスは出来なくても!触るぐらいなら許されないのか!?」  
 
血走った目の横島にルシオラは口の中で悲鳴をあげた。  
正直言って怖すぎた。  
 
「どうなんだ!え、何も出来ないのか!」  
「ちょっ、落ち着い……」  
「どうなんだよ!触るぐらいは…  
「えーい!落ち着きなさいって言ってるでしょ!」  
「ぐふぇっ!」  
 
ルシオラの平手を頭に食らい、横島が床に倒れ伏した。  
ルシオラのイメージとしてはペチンだったのだが、生き物としてパワー差が十倍以上もあるのだからこうもなる。  
しかし、血を出したおかげか起き上がってきた横島は少しだけ落ち着いていた。  
 
「うう、手加減が足りんぞ」  
「もう、話をさせてくれないからでしょ。  
 ヤッたらアウトなのは本当だけど、どっからヤッたって判定されるのか私にも分からないわ。  
 多分、子作りの事だろうからそれ以外は平気だと思うけど」  
「本当か?本当だな。実はキスすらアウトで、キスした後お前が消えたりしたら泣くからな!」  
 
妙な脅迫をしてくる男に苦笑してルシオラは大丈夫だと頷いた。  
言動こそ変だが横島は「絶対にお前を殺したくない」と言っているのだ。  
しかも、それでいながら抑えきれない程の性欲を自分に抱いている事も告げている。  
性欲は愛の一側面でしか無いかもしれないが、確かに愛の一部ではあるのだ。  
だからルシオラは嬉しかった。  
横島の歪な愛の告白はルシオラの胸に響いた。  
                                             
「コードに引っかかるとしても、いきなりじゃなくて警告が来るはずよ。  
 やばそうだった止めるから」  
「ま、マジか?」  
「マジ。だから……好きにしていいよ」  
 
そう言ってスケスケのネグリジェを着た美少女は上を向いて目を閉じた。  
横島は音を立てて唾を飲み込むと、タコのように唇を突き出しゆっくりと顔を近づけていった。  
 
「ン……」  
 
キスをした。キスをさせてもらった。嫌がられてじゃなく、受け入れられてキスをした。  
横島はまずその事に喜びを爆発させ、夢ではないのかと疑った。  
夢ではないと分かるとその唇の柔さに驚いた。  
女の子の唇というのはこんなに柔いのかと驚き、鼻が触れ合う感触にまた驚いた。  
 
「…………」  
 
唇を離して見詰め合うと、二人はすぐにまたキスをした。  
また触れ合うだけのキス。  
そして、キスがコマンドに触れないと分かると横島は徐々に大胆になっていった。  
横島の手が細い肩から首筋に伸び、背中と頭を抱き締めるとキスもまた情熱的になった。  
唇を食むように擦り合わせ、唾液を吸いあい、舌を絡ませた。  
どこからどこまでを一度と数えるのかも分からないまま、横島とルシオラは何度もキスをした。  
横島の手はルシオラの髪を撫で、ルシオラは横島の背中を掻いた。  
 
「横島……」  
 
とろんとした目つきでルシオラが名前を呼んだ。  
横島は返事の代わりにキスをした。  
肺活量の限界に挑戦するようなキスだった。  
 
「ルシオラ、俺は今日という日を絶対に忘れない。  
 死ぬまで、いや、幽霊になっても、魂だけになっても忘れない。  
 はっきりいって高校やGS試験に受かった時より嬉しい」  
 
フル勃起しているくせに何故か男前な横島にそう告げられ、ルシオラはぽっと顔を赤らめた。  
女の魅力に自信が無かった訳ではないが、人生経験自体が少ないルシオラはやはりどこか不安だったのだ。  
だが、その弱気な心は横島に溶かされた。  
その事を自覚した時、ルシオラのネグリジェは床に横たわった。  
 
「いいよ、触って……」  
                                        
ゴクリ、と横島の喉が鳴った。  
露になった乳房は何度も覗いた美神のものより随分と控えめだ。  
重力の影響を受けていないだろうそのサイズは胸にぶら下がっているというより、  
胸に張り付いている、もしくは胸が腫れているといった方が正しいだろう。  
だが、触っていいという許可が出ている事でその素敵さは比類なきレベルにまで高まっていた。  
 
ぷるぷると震える指先がルシオラの乳房に触れる。  
 
ぷにゅ。  
 
横島はその固めのプリンのような感触に思わず手を引き、天に掲げた。  
その指先は先ほど以上にぶるぶると震えている。  
そして、横島は天に感謝し終えるともう一度ルシオラの胸に手を伸ばした。  
 
「ぁ……」  
 
ルシオラの口から可憐な音が漏れた。  
手の中に収まった膨らみの感触と、指の動きに合わせて奏でられる極上の音楽に横島は感激し、涙を流した。  
滲む視界にルシオラを捉え、その可愛さに心を震わせた。  
こんなに柔くていい匂いのする可愛い生き物がいていいのだろうかと思った。  
横島は性欲に追従する形で恋に落ちていた。  
 
「ん……ごめんね、小さくて……」  
 
胸を弄ばれながらルシオラは上目遣いに謝った。  
横島が自分の体で興奮してくれているのは分かったが、だからこそコンプレックスを口にせずにはいられなかった。  
否定してもらう為に。  
だが、ルシオラは横島の自分に対する燃え上がり方を見くびっていた。  
                                         
「うおっーーーー!!可愛すぎるぞ、ルシオラーーー!!」  
 
横島は咆哮するとルシオラをベッドに押し倒した。  
そして、その薄い胸の膨らみに猛烈な勢いで顔を擦りつけ始めた。  
 
「きゃあぁぁぁっ!」  
「ルシオラぁぁぁぁぁっ!!」  
「おっ、落ち着いてっ!」  
「うおおおおっ!!」  
「落ち着きなさい!!」  
 
ルシオラの拳に吹っ飛ばされて横島の暴走ははようやく止まった。  
 
「す、すまん。あんまりルシオラが可愛かったから……」  
「もう。  
 ……わたしは逃げないんだから焦らないで。ね?」  
 
そう言ってルシオラは壁にめり込んだ横島に妖艶に微笑んだ。  
光に群がる虫のように横島はその微笑に誘われてベッドの上に戻ってきた。  
そのままにじり寄ってルシオラを押し倒す。  
そして、ゆっくりと深呼吸をして控えめな乳房に手を伸ばした。  
 
「ん……」  
 
ルシオラが桜色に頬を染め伏目がちにそっぽをむく。  
胸を掴まれてすっかり静かになってしまった口の代わりに  
横島の手の平の中でぷにぷにと柔らかい胸の先がツンと尖ってルシオラの気持ちを伝えてくる。  
 
「う…うぅ……」  
「よ、ヨコシマ!?」  
 
ルシオラの白い肌にぽたぽたと水滴が落ちた。  
それは横島の目からこぼれた涙だった。  
 
「な、なんで泣いてるの?」  
「こんな、こんなに気持ちいいのにっ!  
 こんなに可愛いのにっ!  
 ヤッた死んでしまうとか!酷い!酷すぎるっ!!!」  
 
駄々っ子のように首を振りながら泣く姿はみっともないが横島は本気で哀しみ、憤っていた。  
滑らかで、柔らかで、麗しく、いい匂いがして、とても可愛い。  
そんな存在が課せられる運命はこんなものであるべきではない、と横島は心の底からアシュタロスを憎んだ。  
                                    
「そ、そんなにヤりたいんならヤってもいいのよ?」  
 
ルシオラの引きつり気味の微笑みに、横島はまた首を横に振った。  
 
「でも、そんな血の涙を流してまで我慢しなくても……」  
「俺が一回だけで満足できるわけねーだろぉっ!  
 お前が消えた後、一回ヤッただけでフルに勃起した状態のもの抱えて俺どうすりゃいいんだよっ!」  
「そ、そうね、ごめん……」  
 
素直に謝るルシオラにすがりつくように横島は力いっぱい抱きついた。  
 
「それにっ!俺はヤれないから悲しいんじゃないッ!  
 どうしたってお前が消えてしまうのが嫌なんだよッ!」  
 
そう叫ぶと横島はルシオラの乳首を口に含んだ。  
えぐえぐと泣きながらちゅうちゅうと乳首を吸う横島を見て、ルシオラは目を細めた。  
慰めるようにルシオラの手が横島の頭を撫でる。  
そして横島はルシオラの乳房に赤く跡をつけるまで吸うと、ようやく顔を上げ目を合わせた。  
 
「パンツは脱がしてもいいか」  
 
言葉すくなに横島が訊ねると、ルシオラは首を小さく縦に振った。  
 
「……入れない限り大丈夫だと思う」  
 
するするとルシオラのパンツを下げしまうと、横島は喉をゴクリと鳴らした。  
身体を引いて、顔を下げる。  
抵抗しないルシオラの脚を持って広げた横島は、美しい物を見た。  
 
「ん……」  
 
恥ずかしそうにルシオラが身を捩る。  
だが、横島はがっしりとルシオラの太ももを捕まえて隠させなかった。  
そして、呆然と呟いた。  
 
「綺麗だ……」  
 
生まれてまだ半年も経っていない成人の身体。  
人間では有り得ない美しさがそこにはあった。  
色素がまるで無いような白い体は勿論下腹部も雪のように白かった。  
そこに引かれた一本の筋からほんの僅かにピンク色の肉が顔を覗かせている。  
凝視する横島の前でそこはとろりとした液体を吐き出した。  
                                  
「ヨコシマぁ……は、恥ずかしいよぉ」  
 
身動ぎもせずに凝視する横島の耳にか細い声が訴える。  
横島はそれを華麗に無視して、ゆっくりと唇を近づけた。  
 
「んんっ!」  
 
突然の湿った感触にルシオラは思わず太ももで横島の頭を挟んだ。  
 
「い゛っっ!?」  
「あ、ご、ごめんなさい!?」  
 
横島の悲鳴にルシオラは慌てて力を抜いた。  
種族としての力が違いすぎる為、ルシオラが本気でやれば横島の頭など簡単につぶれてしまうだろう。  
それを分かってしまったルシオラは、自分の脚を両腕で抱え込んだ  
 
「あっ…やぁっ……あぁぁぁ」  
 
ルシオラは膝の裏を掴んで必死に耐えた。  
恥ずかしさから、むず痒さから、心地よさから隠したくて脚を閉じそうになる。  
でも、それをやってしまうと横島を殺してしまうかもしれない。  
その為にルシオラは遠慮なしに舐める横島に向けて、脚を抱え上げた姿勢を取り続けなければならなかった。  
 
「うぅっ……………!」  
 
勝手に出て行きそうな声をかみ殺し、ルシオラは身体に力を込めた。  
それが更に卑猥なポーズを取る事になってしまう。  
お尻を浮かせ自分から尻の穴まで見せるような姿勢のルシオラに横島はますます燃え上がった。  
とろとろと甘い蜜を吐き出す秘裂に舌を這わせ、掬い舐め取る。  
震える柔肉に軽いキスを何度も繰り返し、腫れ上がった突起を舌で撫でる。  
その間も手の平はルシオラのお尻を撫で擦る。  
 
「ルシオラ……っ!」  
 
ルシオラの秘部にしゃぶりついていた横島が不意に顔を上げた。  
 
「俺っ……俺っ…もうっ……」  
 
横島の声は既に涙が浮かんでいた。  
そして、息を切らせているルシオラに向かって土下座をした。  
 
「頼むっ!挿れないから!挿れないから、擦らせてくれ!お願いします!」  
「えっ、あ、その、……なんか分かんないけど……ヨコシマの好きにしていいよ?」  
 
横島の脳内で栄光を称える鐘がなった。  
今、ルシオラが発した「好きにしていいよ」という言葉は、横島の人生で一度は言われたい言葉ランキングで  
三年連続一位を取り、殿堂入りを果たしているものだったのだ。  
                                      
「じゃ…じゃあ、す、す、すまたって奴をさせて貰います」  
 
何故か敬語でズボンを脱ぐ横島。  
地震でも起きたら出てしまう程にはちきれさせた肉棒を取り出すと、ルシオラの膝裏を掴みゆっくりと覆いかぶさった。  
興味津々な様子で見つめるルシオラに横島は一瞬だけ顔を向けると、  
ぱんぱんに膨らんだ肉棒をピンク色の割れ目にそっとあてがった。  
それは横島にとってとても不思議な光景だった。  
自分のそれが女の子の、それも可愛い女の子のあそこの上に乗っている。  
場違いな感じすら覚えてしまう。  
 
「う、動くからね」  
「動くの?」  
 
顔を上げて自分のあそこを見ているルシオラに頷くと、横島はゆっくりと腰を動かした。  
 
「うっ!」  
「きゃっ……」  
 
びゅびゅっとルシオラのお腹に熱い白濁液が吐き出された。  
僅か二秒ほどの出来事である。  
只でさえ我慢に我慢を重ね限界を迎えていたのに、ルシオラはどこまでも受け入れる姿勢を見せるし、  
初めての素股でルシオラの恥丘はふにふにでぬるぬると状況が整いすぎていたのだから仕方が無かった。  
 
「……もう一回していい?」  
「う、うん」  
 
横島のモノは一度吐き出してもまるで萎む事無くいきり立っていた。  
自分の中にある知識と違う事に戸惑うルシオラに横島はまたも擦りつけ始めた。  
にゅるにゅるとルシオラに擦り付ける度、控えめな乳房が揺れ真っ白なお腹に吐き出された液体も震えた。  
 
「んっ……」  
「はぁ、すげえ……すげえ気持ちいいよ、ルシオラ……」  
「これ……わたしも……気持ちいいかも…」  
 
そして、ルシオラのお腹に横島が二度目の射精をした。  
今度はまともにその瞬間を見たルシオラが興味深そうにお腹の上のものをつつく。  
 
「これが、人間の精子なのね」  
 
べっとりとかけられた白濁液をぬりぬりと擦って、指先で弄ぶ。  
特に不快そうでもなく、汚されたお腹を見るルシオラを見て横島は決意した。  
華奢な肩を掴み、美しい瞳を覗き込む。  
                                     
「ルシオラ」  
「ん?」  
 
いきなり真剣な顔で見つめてくる横島を見つめ返し、ルシオラは目を閉じた。  
だが、期待していたぬくもりは唇にこなかった。  
代わりに来たのは静かな声。  
 
「俺、アシュタロスを倒すから」  
「え? ちょっ、えと……え?」  
 
思わず間抜けになってルシオラが聞き返す。  
横島はルシオラに圧し掛かったまま真剣な眼差しを見せた。  
横島は勇敢になったわけではない。  
ただやりたいという気持ちが肥大して、ルシオラとやりたいという気持ちになり、  
そして出来ればずっと隣にいて欲しいと思っただけだ。  
 
「お前とやる為にはそれしかないと思うから。  
 やる為にはやるいかないんだからやる。  
 アシュタロスを倒す」  
 
横島がアシュタロスを倒す。  
アシュタロスの強さを知るルシオラとしては余りの馬鹿馬鹿しさに呆れる他無い話だった。  
いくら横島が人間にしてはやる方だとはいえ、ルシオラよりも圧倒的に弱い。  
それどころかルシオラが魔力を注いだ亀や虫よりも弱い。  
それがルシオラでも足元にも及ばない存在を倒すと真剣に言っているのだ。  
 
「何、無茶苦茶言ってるのよ。  
 そんな事出来るわけ―――  
「やる!!お前を自由にして、寿命を延ばす為には他に無いんだ。  
 だから、信じろ!」  
 
いくら横島が叫ぼうが力の差は変わらない。  
無理なものは無理だ。  
それでもルシオラは無駄だという言葉を飲み込んだ。  
覗き込んだ横島の目は惚れた女としては信じるしかないような光が灯っていた。  
 
「……信じる」  
「信じてくれ。絶対に何とかしてみせる」  
「うん」  
「アシュタロスを倒したらお前は俺の女だ」  
 
そう言いながら横島の手がルシオラの胸を弄り始める。  
ルシオラはくすっと微笑むと横島の顔を引き寄せて、唇を重ねた。  
 
「ちゃんとあなたの女にしてね?  
 待ってるわ」  
「ルシオラ……」  
                                      
もう一度キスをして、ルシオラは横島にほほえみかけた。  
 
「今日が最後じゃないって分かったら、お風呂はいりたくなっちゃった」  
 
そう言うと甘えた声で横島の胸板を指でつつく。  
 
「連れて行ってくれる?  
 少し疲れちゃった」  
「お、おう、任せとけ」  
 
ルシオラがお茶目にそう言うと横島は嬉しそうにルシオラの首の下から肩を掴み、膝裏に腕を通して抱きかかえる。  
 
「あら、これで連れて行ってくれるんだ。  
 ヨコシマったら意外にロマンチストね?」  
 
皮肉めいた言い方をしながらルシオラが横島の首に腕を回す。  
今、隠れ家にしているペンションは風呂が各部屋にある訳ではない。  
これで一階の風呂場まで行くのはいかにも大変そうで、効率が悪い。  
 
「うっ、い、いいだろ、別に。  
 かっ、彼女が出来たらやってみたかったんだよっ!」  
 
横島が恥ずかしそうにそっぽを向くとルシオラはくすくすと笑い、赤くなった頬にキスをした。   
 
「ふふ、本当言うと私も憧れてたんだ」  
「ルシオラ……」  
「ヨコシマ……」  
「ごめん、勃った」  
「は?」  
 
蕩けた目で見つめ返したルシオラに横島が情けない声をかけた。  
 
「も、もう一回……駄目か?」  
「ええー!?」  
「だって、ルシオラがあんまし可愛いから……」  
 
ルシオラは横島の胸に頬を寄せて、緩む顔を隠すと首に回した腕にぎゅっと力を入れた。  
 
「だーめ!」  
「ううっ」  
「…………続きはお風呂の中で、ね?」  
 
ルシオラの言葉で横島の目に炎が点る。  
横島はこの日、お姫様抱っこをしながら静かに高速移動するという特技を身に着けた。  
 
 
                                            
空が明るくなり始めた頃、横島はルシオラからそっと身体を離した。  
 
「またな、ルシオラ」  
 
ベッドに横たわるルシオラにそう告げると、歩き出し、また引き返してきた。  
 
「ううっ、やっぱもう一触りだけ……」  
「んっ…もう」  
 
一晩中嬲られ続けてぐったりしているルシオラの胸や太ももを未練たっぷりに触りまくる。  
 
「引き返してくるの何回めよ」  
「うう……だって、しばらく触れなくなると思うとさぁ」  
 
実は横島が別れの言葉を口にしたのはさっきので七回目だ。  
そして、その度に帰ってきてはルシオラの身体を触るというのを繰り返しているのである。  
初めはキスで見送ったりしていたルシオラだったが、そのうちにベッドから起き上がりもしなくなっていた。  
 
「あ…ん……」  
 
ちゅくちゅくとルシオラの口の中で唾液をこねくって、乳房をふにふにと揉む。  
それから、未練がましく太ももの間に手を差し入れると、横島は決意を新たにルシオラの秘裂を指の腹でなぞった。  
 
「はぅっ……」  
 
眉をしかめたルシオラを見つめ、自分の指を眺めた横島はなぞった感触の残るその指を口に咥えた。  
 
「ルシオラ」  
「ヨコシマ……」  
「俺、行くわ」  
 
何度も繰り返した別れと違い、あっさりとした別れ方で横島は部屋から出て行った。  
どうせ、また引き返してくると思ったルシオラは横島が本当に部屋から出て行くと  
驚き、ちゃんと見送れば良かったと少しだけ後悔した。  
だが、それもほんの一瞬。  
 
「また、会えるよね、ヨコシマ」  
 
人間がアシュタロスを倒せるなどとルシオラも思ってはいない。  
しかし、それでも。もしかしたら。  
眠りについたルシオラは夢を見た。  
アシュタロスを倒した横島に強姦される夢だった。  
夢の中でルシオラは「もう、許して」とか「休ませて」と訴えていたが、  
横島に聞いてはもらえず嬲られ続ける。  
そんな幸せな夢だった。  
 
 
                                   
アシュタロスを倒す。  
そう宣言した横島だったが、別に明確に策があった訳ではない。  
ただ倒さずにはおれないと思っただけだった。  
だが、そんな考え無しだった横島に突風が吹いた。  
それは美神美智恵が娘の為に作ったトレーニングルームでの事。  
プログラムを数十鬼倒した横島の前に、美神令子が現れた。  
この美神令子もプログラムであると隊長に言われた事と、  
それ以上に煩悩をルシオラを犯す妄想に囚われていた横島は美神に飛び掛ったりしなかった。  
ただ純粋にこの人にどうやったら勝てるのかと頭脳をフル回転させた。  
そして、横島は一つの閃きを得る。  
これなら美神に勝てる。  
そう思った次の瞬間、その閃きの更なる先が横島の脳を電撃となって走り抜けた。  
 
「……勝てる」  
 
横島は我知らずそう呟いていた。思い描いた対象は既に美神ではない。  
その言葉に激昂した美神に叩きのめされながら、横島は笑った。  
 
「誰が勝てるってのよ!  
 一瞬、ヒヤっとしちゃったじゃないの!このバカ!」  
「うはははは、勝てるぞぉーっ!」  
 
ボコボコにされながら横島は高笑いをした。  
 
                             
それから横島の死に物狂いの特訓があったり、  
アシュタロスが首だけで乗り込んできたり、  
隊長こと美神美智恵が毒で倒れたり、  
世界各国の核ミサイルがジャックされたり、  
ルシオラが蛍になって横島の元へと来たりと色々あったが割愛する。  
まあ、なんだかんだあったあげく横島と美神はアシュタロスの前に立っていた。  
 
『よくやってきてくれた、娘よ』  
「あ……アシュ…様……」  
 
ふらふらと美神がアシュタロスに近づいていく。  
その手を引っ張り押し留めたのはやはり横島だった。  
 
「あ、よ、横島くん…?」  
『何故、邪魔をする少年?  
 あまり下らない真似をすると潰すぞ』  
 
アシュタロスの声は口調こそ乱暴ではないが、目に見えるほど苛立っていた。  
だが、チンピラに凄まれただけで怯える横島はその声を聞いてもまるで怯まない。  
 
「くだらねー真似してるのはどっちだよ!  
 ルシオラみたいな可愛い女の子の寿命を一年にしとくなんぞ、神が許しても俺が許さねえ!」  
 
怒りに満ちた表情でそう告げると横島はアシュタロスに向かって唇を吊り上げた。  
 
『ほう、なかなか立派な虚勢の張り方だ。  
 だが、そこまでの事を言った以上、死は覚悟しているのであろうな』  
「誰が死ぬかって!  
 俺は生きる!生きてルシオラとやりまくる!  
 その為の秘策も用意してあらぁ!」  
 
肩に止まった蛍を赤面させて、横島は文珠を取り出した。  
 
『君が珍しい力を使えるのは知っているよ。  
 だが、その程度の物で私をどうにか出来るつもりか』  
 
アシュタロスは実際、横島など何とも思っていないのだろう。  
座したまま余裕の態度に僅かな揺れもない。  
 
「それが出来るんだよ、アシュタロス!」  
 
【未】【来】【横】【島】【召】【喚】  
 
六文字に連結された文珠が輝く。  
そして、その光が収まった時、横島の隣にスーツを着た一人の男が立っていた。  
 
「誰!? まさか、それが横島君の言う秘策!?」  
「誰って酷いなぁ。俺ッスよ。まあ未来のですけどね」  
「分からないのも無理は無いさ。  
 それだけ成長したって事だからな」  
 
スーツ姿の未来横島が苦笑しながら美神に答える。  
 
『ふっ……ふあっはっはっはっは!  
 面白い事をする男だ。  
 だが、お前がもう一人増えた所でどうなる?  
 それで勝てるとでもいうのかね?』  
 
嘲笑よりも更に馬鹿にした、本当に愉快そうに笑うアシュタロスに二人の横島が笑い返す。  
 
「これで終わる訳ねーだろ?」  
「そうか!同期合体!横島君同士なら波長は完全に一致する!  
 今の横島君が数十倍の強さになればアシュタロスにだって……」  
『いいや、通じんね。  
 痛みを覚える攻撃をようやく出せると言った所だろう。  
 それに同一人物でそれをやればどっちかが融合され消滅する。  
 完全な自殺技だ。それでもやるというのなら止めはせんがね』  
「そんな……」  
 
正気を取り戻した美神が青ざめる。  
だが、反対に横島は余裕ともいえる笑みを浮かべていた。  
 
「慌てるなよ、アシュタロス。  
 未来の俺はルシオラを精液漬けにするような幸福な生活を送ってるはずなんだから、んな事するわけねーじゃん」  
「そうそう、今もルシオラは裸エプロンで俺の帰りを待ってんだから」  
「何っ、裸エプロン!?  
 お前そんな事させてんのかっ!」  
「怒るならよ、お前もさせればいいだろ。  
 結構ノリノリでやってくれるぜ?」  
「くう〜、俺とは思えないリア充ぶり!  
 早く俺も…あたっ!いてっ!」  
 
未来の自分と漫才を始めた横島に蛍がぶんぶんと体当たりをし始めた。  
 
「ごめんごめん、ルシオラ。  
 ……ようし、やるぞ!やってくれ!」  
「ああ!」  
 
白けた目で見ている美神とアシュタロスの前で、未来から来たという横島が文珠を取り出す。  
 
【未】【来】【最】【強】【横】【島】【召】【喚】  
 
そして、現れたのは威厳漂わせる壮年の男。  
                                  
「…まったく、懐かしい感じるとは俺も年を取った」  
『ま、まさか!』  
「今頃気付いてももう遅い!」  
 
慌ててアシュタロスが立ち上がるが、その時には既に壮年の横島は文珠を掲げていた。  
 
【史】【上】【最】【強】【絶】【対】【無】【敵】【究】【極】【最】【高】【現】【人】【神】【横】【島】【忠】【夫】【召】【喚】  
 
空間が裂け、光が溢れる。  
清浄なオーラが魔の気を退け、アシュタロスの眼前でありながらまるで神界のような空間を作り出す。  
防ぐ必要すらなくアシュタロスの霊波砲は霧散してしまった。  
 
『バカなっ!時間移動に使うトンネルは封鎖している!  
 いくら未来の自分といえど呼び出せる訳が無い!』  
「普通なら、そうだろうな。  
 だが、俺が呼び出したのは未来の俺だ。  
 俺が覚えている限り、過去に戻れる力を付けた時点で戻ろうとする事は出来る。  
 俺は時間の座標を示すだけでいい。  
 戻れるだけの力を持った俺を呼び出したんだから、戻ってこれるのは当たり前の事だ」  
 
これが横島の秘策、未来の自分に力を借りるという究極のその場しのぎ。  
青いネコ型ロボットが宿題を片付けるために行った事に着想を得た反則技。  
これから先、横島は現人神となるまで強くならねばならず、修行を怠る事は出来ない。  
そして、これから三度はこの時間に戻ってこなければならない。  
だが、そんな面倒くささなど魔神を退けられる事に比べれば安いものだ。  
 
「俺が死ねばこの未来はありえない。ルシオラが死んだとしてもな。  
 つまり、最初にルシオラといちゃいちゃしている俺を呼び出せた時点で俺の勝ちは決まってたんだ」  
『まさか……たかが人間に私が敗れるというのか……』  
 
呆然と呟くアシュタロス。  
清浄な空気に中てられて、もはや空気すら淀ませていた魔力は欠片もない。  
 
「安心するがいい。ワシはもう人の域は超えとる。  
 お主の望み通り解放してやるわい」  
『っ!?』  
 
光溢れる存在となった横島が手をかざすと、アシュタロスの体がみるみる内に溶けていく。  
同時に本来の横島の肩に止まっていた蛍がルシオラの姿に変わる。  
                                     
「あ…わ、わたし……」  
「ルシオラっ!」  
 
ひしっと抱き合う二人。  
その光景に消えていくアシュタロスは穏やかな笑みを浮かべた。  
 
『娘をよろしくな……』  
「アシュ様……」  
『ルシオラ……私は望みを叶えたようだ……  
 お前も幸せになるがいい』  
「はいっ」  
「……ルシオラを作ってくれてありがとな。  
 それだけは最高に感謝してる」  
 
ルシオラが涙ぐんで答えると、その肩を掴んだ横島が頷いた。  
 
「俺の時代でもあんたの娘は全員元気に暮らしてる」  
 
壮年の横島が言葉をつなぐ。  
その言葉を聞いたアシュタロスはどことなく満足げに微笑み、完全に姿を消した。  
 
「少し年相応に落ち着いてくれたらいいのだがのう」  
 
そう呟いたのは現人神となった横島。  
その視線の先は何故か美神令子だった。  
 
「へ? それどういう意味?」  
「いやいや、何でもないんじゃ。  
 では、そろそろ帰るとするかの」  
 
そう言うと現人神・横島は美神に近づき、手を差し出した。  
 
「ほれ、妖毒の血清じゃ。  
 母親にうってあげるといい」  
「あ、ありがと」  
 
差し出された瓶を受け取り、美神は戸惑った様子で礼を言った。  
相手が凄まじい神格を見せ付けていても、横島と思えば微妙なのだろう。  
だが、現人神横島はその無礼な態度をまるで気にした様子もなく、  
美神が大事そうに血清を受け取るとおもむろに胸を鷲掴みにした。  
美神が呆気に取られている事を幸いに、むにむにと揉みしだく。  
 
「あふぅ……大きさの割りに固い処女のおっぱいはやっぱりええのう。  
 こればっかりは文珠で若返らせても味わえんからの」  
「こっ、このっ!」  
「うっひゃっひゃっ、じゃあの令子ちゃん」  
 
美神が我を取り戻すが絶対に無くせない血清を持っていた為、反応が遅れてしまう。  
その隙に現人神横島はその場から消えてしまった。  
                                         
「じゃあ、私も帰るとするか」  
「ひゃっ!」  
「じゃあ俺も」  
「うひっ!」  
「やはり尻も」  
「あんっ!」  
「じゃあ、俺はここ」  
「ひぁっ!?」  
 
壮年横島、青年横島がそれぞれ美神の胸と尻を撫でさすって帰還していく。  
お仕置きをしようにも触るだけ触って横島達は姿を消している。  
ぶるぶると怒りに燃える美神の目に映ったのはルシオラに押し倒されている今の横島だった。  
 
「いやー、ここじゃ駄目ーっ!  
 みんな見てるっ!」  
「えへへへへ、我慢してたのは私だって同じなんだからね!  
 おと…な…しく……んっ…し…なさいっ……」  
「んんーっ!」  
 
パワーで押さえ込まれ唇を塞がれたまま、服を破かれている横島の傍に一人の鬼がゆらりと現れた。  
 
「よ〜こ〜し〜ま〜っ!!」  
 
美神の身体が立ち上っているのは瘴気に近いほど濃密な霊気。  
かつてないほどの殺意の波動に横島はルシオラの拘束を解き、起き上がった。  
 
「何です、美神さ……ってマジで何ですか!?」  
「うるさいっ!逃げんじゃないわよ!」  
「ちょっとヨコシマになにすんのよ!」  
「ええい!いいから殴らせなさい!」  
「させないわ!ヨコシマは私が守る!」  
「ルシオラ!いいから逃げるぞ!」  
「分かったわ、ヨコシマ」  
「逃がすかーっ!」  
 
瘴気を噴出す美神からルシオラと横島は手を繋いで逃げ出した。  
こうして世界どころか、三界を危機に陥れたアシュタロスとの戦いの最後は何故か痴話げんかで幕を閉じたのだった。  
 
 

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