「はっ!! ・・・ここは!?」  
 
 救護室のベッドで、横島は目を覚ました。  
 GS資格試験四回戦をダブルノックアウトという形で終わらせた横島は、ここに運び込まれていたのだ。  
 
『頑張りましたね、横島さん』  
 
 傍らには、慈愛の表情を浮かべたおキヌが浮かんでいた。もちろん、いつもの巫女装束である。  
 
「あっ、おキヌちゃん。 ・・・え?」  
 
 横島がとまどうのも無理はない。  
 おキヌが、ゆっくりと横島の胸に飛び込んできたのだ。  
 ケガに触らぬよう、やさしく横島を抱きしめるおキヌ。その目には、涙の跡があった。  
 
「・・・えっと、他のみんなは?」  
 
 その部屋には、横島とおキヌしかいなかった。  
 ダメージが大きすぎたため、横島は、かなり長い間、寝かされていた。試合はすでに決勝戦まで進み、そのため、仲間は美神の応援に行ってしまっていたのだ。  
 しかし、おキヌは、そうした事情を説明することもしない。  
 ただ黙って両手を横島の背中に回していた。  
 しばらく静寂が続く。  
 それを破るようにして、横島がおずおずと口を開いた。  
 
「あの・・・、おキヌちゃん・・・」  
 
 おキヌは幽霊ではあるが、普通の幽霊とは違う。他人が見ることも触ることもできる。  
 つまり、おキヌのやわらかな体の感触も、横島に伝わって来てしまうのだ。  
 特に、今の横島は、治療のために服が脱がされた状態だ。トランクス一枚である。巫女服越しではあるが、おキヌの感触が、横島の肌へストレートに伝わっていた。  
 
「そろそろ離れてくれないかな? そうじゃないと、俺・・・」  
 
 これも自然現象である。横島は、自分のモノがだんだん硬くなっていることに気づいた。  
 
『・・・え?』  
 
 それが体にあたったのだろう。ここで、おキヌが、ようやく声を出した。  
 そこに目を向けると、横島のトランクスが盛り上がっていた。  
 
『横島さん・・・。 もう、こんなときに・・・』  
 
 横島の部屋の掃除もしているおキヌである。部屋に散在しているティッシュやエロ本の意味も、おぼろげながら理解していた。  
 
「・・・ごめん」  
 
 ムードを壊してしまったことを謝る横島だったが、  
 
『いいですよ。今日は特別です。頑張ったんですから!!』  
   
 そう言って、おキヌは、横島の頬にキスをした。  
 幽霊なりに、女の本能があったのだろう。それに、以前に事務所で見た小竜姫の姿、横島の額にキスする姿が刺激になっていたのかもしれない。  
 
「あっ!!」  
 
 しかし、おキヌのこの行動は、横島を大きく慌てさせた。  
 おキヌが優しく横島の頬にキス。  
 それは、まさに・・・。  
 
『・・・そんなに慌てないでください。  
 こっちのほうが恥ずかしくなっちゃいます。  
 それとも・・・、私じゃ嫌でしたか?』  
 
 すねたような表情を見せるおキヌに対して、横島が急いで否定する。  
 
「そんなことはないよ、おキヌちゃん!! 嬉しいよ!!  
 だって、今のって、俺が試合中に妄想してたことそのものだから!!」  
 
 横島は、煩悩エネルギーのことを説明する。  
 『妄想』こそが横島のパワーの源だ。もちろん、おキヌの妄想は、複数の妄想の一つにしか過ぎないのだが、そこまで言ってしまうほどデリカシーのない横島ではなかった。  
 
『横島さん・・・!!』  
 
 おキヌの顔が赤くなる。  
 それを隠すように、再び、横島の胸に飛び込んでしまう。  
 
 
「おキヌちゃん・・・」  
 
 再び、甘い時間が流れる。しかし、  
 
「嬉しいんだけど・・・。  
 ずっとこうしていたいけどさ、ほら、俺、若いから・・・」  
 
 下半身のテントを指さして、横島が苦笑した。  
 
『ふふふ・・・。  
 でも、ここには「えろほん」なんてありませんよ?  
 こういう場合、どうしたらいいんですか?』  
 
 いたずらっぽく笑うおキヌを見て、横島が動揺する。  
 
「おキヌちゃん・・・。  
 言ってる意味、わかってる?  
 それって、もしかして・・・」  
 
 おキヌの笑顔は、どこか妖艶にすら見えた。  
 
『横島さんは、いつも「えろほん」使うんだろうけど、でも・・・。  
 これって、本当は、赤ちゃん作るためですよね?』  
「いっ!?」  
『私は幽霊だから、赤ちゃんは作れないけど、せめて真似事だけでも・・・』  
 
 そう言って、おキヌは、その場で巫女装束を脱ぎ始めた。  
 
 横島だって、以前おキヌに幽霊用の洋服をプレゼントしたくらいだ。おキヌが服を脱いだり着たりできることは知っている。  
 だが、彼女の裸体を見るのは初めてだった。  
 全体に美しい白さを見せる裸身。胸は、スレンダーなボディラインに相応しく、ほどよく膨らんでいる。その頂はピンクに色づいていた。ほっそりとして、それでいて肉付きのある太ももにも色気があった。その根元では、うっすらとした毛が女性の大事な部分を覆っていた。  
   
『もう、そんなにジーッと見ないでください。  
 私だって恥ずかしいんですから』  
 
 生きているときの記憶はほとんどないおキヌである。しかし、おキヌは、生前の自分には、こうした男女の経験はなかっただろうと分かっていた。  
 時代背景を考えれば、それも当然だ。だから、横島も同じように思っていた。  
 
「おキヌちゃん・・・。本当にいいの?」  
 
 横島が、確認するように問いかける。  
 
『はい。横島さんとだったら、私・・・』  
 
 特に、今日の横島は輝いていた。  
 おキヌがこんな気持ちになったのも、今日の横島だからこそであろう。  
 
『頑張った御褒美・・・。  
 私なんかじゃ、足りないかもしれませんが・・・。  
 もらってください。お願いします』  
 
 もう限界だった。  
 
「おキヌちゃん!!」  
 
 横島は、おキヌの体をギュッと抱きしめた。  
   
『あっ!!』  
 
 トランクス越しに、横島のモノがおキヌの秘所を叩く。  
 おキヌは、自分のその部分から何かがにじみ出るのを感じた。  
 
『私、幽霊なのに・・・』  
 
 そんなおキヌの体の変化には気づかず、横島は、少し前のおキヌの言葉に答えていた。  
 
「・・・足りなくなんかない。  
 むしろ、俺にはもったいないくらいさ」  
『横島さん・・・』  
 
 つぶやいたおキヌの口を、横島の唇が塞いだ。  
 本能に導かれるまま・・・。  
 二人の舌が絡み合った。  
 
(うれしい・・・)  
 
 おキヌは、感激の涙を流していた。  
 横島の手は、おキヌの背中を、尻をまさぐっている。それも、おキヌには心地よかった。  
 
(横島さん・・・)  
 
 おキヌも、同じように横島の肌に触れる。  
 はしたないと思いながらも、おキヌは、横島のトランクスの中に手を進めた。引き締まった臀部から、だんだん前へと・・・。  
 
「え? ・・・あ」  
 
 おキヌの手が横島自身に触れたとき、横島は、思わず声を出してしまった。  
 
(横島さん、かわいい・・・)  
 
 そして、しゃがみながら、おキヌは、両手で横島のトランクスを脱がせた。  
 目の前に、横島の勃起が露出する。  
 
(これが、横島さんの・・・)  
 
 愛おしい。  
 おキヌは、そう思った。  
   
(ふふふ。  
 横島さんも濡れてるんだ)  
 
 先端からは、先走りの汁がにじみ出ている。  
 おキヌは、そこにペロッと舌をのばした。  
 
「・・・うわっ!!」  
 
 横島には、強すぎる刺激だ。腰が引けてしまう。  
 だが、逃げる獲物を捕まえるかのように、おキヌが、横島自身をしっかり握りしめた。  
 
(確か、これを・・・)  
 
 おキヌの頭の中に、横島の部屋のエロ本でみた構図が浮かんだ。  
 その知識に従い、横島のソレをカプッとくわえた。  
 
(おいしい・・・)  
 
 幽霊のおキヌに、味覚はない。  
 だが、愛しい人の大事な部分をくわえた時。  
 おキヌは、これが『おいしい』という感覚だったのだろうと思っていた。  
 
「ああっ!?  
 おキヌちゃん、ダメだ・・・!!」  
 
 横島が叫んでしまう。  
 おキヌがエロ本でみたのは、写真である。だから、動きに関しての知識はない。だが、横島のモノをもっと味わいたいという気持ちで、おキヌは、深々とくわえこんでいった。  
 おキヌの唇が、自然に、勃起のサイドを締め付ける。おキヌの舌は、さきほどのキスのときの同じように本能のままに動き、横島の先端を蹂躙していた。  
 
「もう・・・!!  
 ごめん、出る!!」  
 
 口では謝りながらも、思わず横島は、おキヌの頭を抱え込んでしまう。  
 しかし、おキヌとしても嫌ではなかった。横島のモノを口から離すつもりなんてないのだ。  
 
 ドピュッ!! ピュッ、ピュッ・・・。  
 
 白濁液が、横島の先端から飛び出した。おキヌの喉奥に打ち付けられる。  
 おキヌは、一瞬何が起こったか分からなかったが、  
 
(これが・・・。  
 横島さんの、赤ちゃんのもと・・・)  
 
 すぐに理解した。理解してしまえば、これも、  
 
(おいしい・・・)  
 
 と感じてしまうおキヌであった。  
 
「ごめん、おキヌちゃん。  
 にが・・・かった・・・?」  
 
 横島が、少し心配そうに、おキヌに声をかける。  
 おキヌは、いまだ横島のモノをくわえたままだ。  
 
『大丈夫です。  
 私、幽霊ですから』  
 
 ゆっくりと口を離しながら、おキヌは横島を見上げた。  
 
「おキヌちゃん・・・」  
 
 おキヌの顔には、満面の笑顔が浮かんでいた。  
 そして、口元からは、白い液が筋を引いてこぼれていた。  
 
『横島さん、これでスッキリしました?』  
「うん・・・。  
 ありがとう」  
 
 横島が答えると、おキヌの表情が少し曇った。  
 
「え? どうしたの?」  
 
 横島は不安になる。  
 それを打ち消すように、おキヌは、  
 
『いいえ、なんでもないです』  
 
 と言うのだが、どこか寂しそうだ。  
 一瞬目を伏せた後、おキヌは、再び横島と目を合わせた。  
 そして、正直に答えた。  
 
『ただ、ちょっと残念なんです、  
 これで終わりになっちゃうのが。  
 もう少し、こうしていたかった。  
 できれば、最後まで・・・』  
 
 いじらしい態度のおキヌを見て、横島のモノが硬度を取り戻す。  
 
「おキヌちゃん・・・!!」  
『あっ!!』  
 
 横島がおキヌに飛びつく。ベッドに押し倒してしまったくらいの勢いだ。  
 太ももにあたった横島の勃起。それを感じて、  
 
『よかった。まだ終わりじゃないんですね』  
 
 おキヌが呟いた。  
 
「もちろん!!  
 おキヌちゃんが満足するまで、いくらでも・・・!!」  
 
 そう言いながら、横島の右手が、おキヌの胸を優しく包む。  
 もう一方の手は、体中をなで回していた。  
 
(ああ・・・!!  
 何、この感じ・・・!!)  
 
 初めての感触に戸惑うおキヌだったが、その体は、悦びにふるえていた。  
 
『ああ、横島さん!!』  
 
 おキヌは、左の乳房を横島に揉まれ、右の乳首は横島の口にくわえられていた。  
 左脚を横島の両脚で挟み込まれ、太ももには、横島のモノを擦り付けられている。  
 それを離すまいと、おキヌも、自らの右足で横島の脚を押さえつけていた。  
 
「あれ? ・・・おキヌちゃん!?」  
   
 おキヌの全身をまさぐっていた横島の左手が、ついに秘所へと到達したとき。  
 横島は、そこがグッショリと湿っているのに気がついた。  
 
『はい・・・。  
 幽霊だって、濡れるんです・・・』  
 
 顔を真っ赤にして、おキヌはつぶやいた。  
 そして、横島の首に手をまわして、自分の顔の方へと引き寄せると、その唇にキスをした。  
 再び、二人の舌がからみあう。  
 その間に、横島は、両手でおキヌの下半身を愛撫していた。  
 同時に、少しずつ自分の体をずらしていく。太ももに触れていた勃起が、だんだん、おキヌのその場所へと近づいて行く。  
 
(あっ!!)  
 
 ついに、横島の先端が、おキヌの扉をノックした。  
 
『横島さん!!』  
「おキヌちゃん!!」  
 
 グイッと腰を突き出す横島だったが、ツルッとすべってしまう。  
 
「あれっ!?」  
『横島さん・・・』  
 
 何度かトライし、焦る横島に、  
 
『慌てないでいいですから』  
 
 おキヌが、優しい声を投げかける。  
 
『ここに・・・』  
 
 おキヌは、右手を自分の入り口へとのばし、少し指で開いてみせた。同時に、左手を横島のモノに添える。  
 
「これを・・・」  
 
 横島も、自分の両手をおキヌの両手に重ねた。  
 
「いくよ・・・」  
『はい・・・』  
 
 そして、ついに、横島の先端がおキヌの中へと侵入する。  
 
(あっ、痛っ!!)  
 
 横島のモノがおキヌの肉のカーテンを突き破ったとき、おキヌは体をこわばらせた。  
 横島も、それに気づき、  
 
「え? おキヌちゃん、今のって・・・」  
『はい。  
 やっぱり私、生娘だったんですね。  
 横島さんに捧げられて、嬉しい・・・』  
「大丈夫・・・?」  
 
 おキヌを心配するのだが、おキヌの笑顔が答えだった。  
 
『幸せです・・・。続けてください』  
 
 おキヌにそう言われてしまえば、横島としても、遠慮することはない。  
 グッと腰を押し進める。  
 深く深く・・・。  
 今、二人は、完全に一つに繋がった。  
 
(ああ、気持ちいい・・・)  
 
 おキヌの苦痛は消え去ったわけではない。しかし、横島と一つになったという幸せが、その痛みを凌駕していた。  
 
(おお・・・!!)  
 
 横島は横島で、初めての感触に感激していた。  
 女の肉に包まれる喜び。  
 童貞だった横島には、くらべる相手はいないのだが、それでも、  
 
(おキヌちゃん、サイコーだ・・・!!)  
 
 と、心の中で叫んでいた。  
 しばらく、動くこともせず、お互いの感触を楽しむ二人。  
 やがて、ゆっくりと、横島の腰が自然に動き出す。おキヌの肉壁も、それに絡み付くような動きを見せ始めた。  
 しかし、二人の動きは、長くは続かなかった。  
 
『横島さん、大好き・・・!!』  
「俺も・・・!! おキヌちゃん!!」  
 
 横島が、その精を解き放つ。  
 その瞬間、熱いしぶきを体内に浴びたおキヌは、横島のモノを強くしめつけた。  
   
「あ、ああ・・・、おキヌちゃん・・・」  
 
 まるでおキヌに搾り取られるかのように、横島の射精は、長々と続いたのだった。  
 
 
 
 
 しばらくの間、幸福の余韻に浸っていた二人。  
 まだ体が繋がったまま、おキヌがいたずらっぽく言う。  
 
『幽霊を押し倒した男、ですね』  
 
 初めて会った日に言った言葉が頭に浮かんだのだ。懐かしい思い出だ。  
 横島も笑って、  
 
「それどころか、  
 『幽霊に中出しした男』だな、俺」  
『ふふふ・・・。  
 幽霊だから大丈夫ですよ。  
 いくらでも横島さんが望むだけ・・・』  
「おキヌちゃん・・・」  
 
 そして、二人はまた唇をあわせた。  
   
 
 
 ・・・数ヶ月後に『幽霊を孕ませた男』と言われるようになるとは、思ってもみない横島であった。  
   
 
 
(『幽霊を押し倒した男』改め『幽霊を孕ませた男』完)  
 
 
 
 
 

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