「観念しなさい、メドーサ!」  
「あたしに勝てる気でいるのかい?小竜姫!」  
 
上を見れば知り合いの美少女神様と魔族だとかいう色っぺえ姉ちゃんが  
それぞれの得物をかざして睨みあい  
 
「こいつ既に理性を失っている!?」  
「なんて気分がいいの、力が湧いてくる」  
「こいつ完全に魔物化してる!」  
 
目線を下げると上司とその仲間が変貌したオカマと対峙している。  
 
(俺は一体どうしたらいいんだ?)  
 
先日までなら発生しなかった悩み。  
何しろ昨日までなら逃げ回っていても何の問題も無かった。  
みんな、彼の事をただの丁稚だと思っていたし事実そうであったのだから  
みっともなく狼狽たえて逃げ出しても良かったのだ。  
だが、今はそうではない。  
まがりなりにも力を手にしている。  
ならば、出来る限り戦わねばならないのではないだろうか。  
それが横島忠夫の出した結論であった。  
 
「つーわけで俺の霊力の為に、ひいてはみんなの為に!  
揉ませてくださ―――ぶっ!」  
 
別に何も間違ってはいない。  
みんなで生き残る為に彼の参戦は必要であり戦う為には煩悩が必要なのだ。  
彼の不幸は直属の上司にサービス心が無かった事であり  
飛び掛ろうとして宙を舞っていた事であり  
上司が迎撃に繰り出した一撃が第七感に目覚めてそうなアッパーだった事だ。  
いや、それが本当に不幸だったのかはわからない。  
何しろ着地地点では気持ちよかったのだから。  
 
「うっわぁっ!?」  
 
意外にも可愛い悲鳴とドスっという鈍い音と共に彼が着地したのは  
小竜姫と対峙していた(自称)上級魔族の身体。  
つまり、メドーサの上だった。  
 
(あーええ気持ちや、ふにょふにょや。  
 そんでもってふわふわで・・・ああっ!)  
 
突然飛来した煩悩物体に反応が遅れたかつての竜神は  
その罰を身体で償わされていた。  
青年一人の落下エネルギーをもろに食らい倒れたメドーサは  
煩悩をエネルギーとする男よりも立ち直るのが遅かった。  
全く気付いていなかった女とぶっとばされながらもその豊かな乳に  
ロックオンしていた男の差である。  
そうして奇襲に成功した横島といえば男の夢空間とも言える  
深い谷間で幸せそうに匂いを嗅いでいた。  
 
「このっ!」  
「そこまでです、メドーサ!」  
 
怒りに任せて横島に鉄拳をお見舞いしようとしたメドーサだったが  
小竜姫に剣を突きつけられ動きを止めた。  
視線を移して睨みあうがどう考えても不利なのはメドーサの方だ。  
 
(これは・・もしかして大チャンス!?)  
 
メドーサの警戒の対象が変わった事に気付いた横島はすぐさま行動にうつした。  
煩悩魔人の名は伊達じゃない。  
自らの頭を包み込んでくれている二つの素敵な果実に頬擦りをしながら  
両手を参戦させる。  
元より露出度の高い服ではあったがそれをペロンと剥いて  
メドーサの胸を完全に露出させてしまう。  
そしてそのままメドーサの抗議よりも早く双丘を揉みしだき始めた。  
 
「ひゃうっ!?」  
 
(なんてやーらかいんや!  
 なんちゅうええ匂いや!  
 こりゃあ、たまらん!)  
 
「よ、横島さん・・・」  
「何やってんのっ!あんのっクソ馬鹿ぁっ!」  
「で、でも、あの魔族の動きを封じ込めてますよ?」  
「それはそうなんだけど、全く褒める気にはならないワケ」  
(う、うらやましいとか言ったら殺されるかもしれんノー・・)  
 
呆気にとられて動きを止めた元人間と上司の仲間達に見られているとも知らず  
横島は抵抗できないメドーサの胸を弄んでいた。  
 
「はうっ・・」  
 
わしわしと胸をまさぐる手の動きにメドーサが眉をしかめる。  
本能に従ってるだけの横島の動きは  
生来の気質だろうか、意外にも力任せとは言えないものであった。  
 
「くぅんっ・・・!」  
 
乳首をしごきながら手のひらで胸全体を愛撫する。  
片方には舌も這わせ吸い付いてくる。  
がむしゃらに蠢く指が乳房の形を歪めさせる。  
強烈に自分を求められるという事に不覚にも心が悦んでしまう。  
ただ身体をまさぐられているだけでない、  
快感を与えられるという屈辱をメドーサは味わっていた。  
 
(や、やばい・・このままじゃマジで感じてしまいそうだ・・・  
 こんな・・こんな・・ボンクラに・・・!)  
 
「い・・いい加減にしろーっ!!」  
 
遂にキレたメドーサが谷間に顔を埋めていた横島の頭を剥がし突き飛ばした。  
そして素早く立ち上がる。  
そのまま矛を手に――  
 
「メドーサ、覚悟!」  
 
一閃。  
小竜姫の剣が閃き、メドーサの手は宙に止まった。  
メドーサの豊満な体から紫色の血が噴き出した。  
 
(・・・死ぬ・・・このままじゃあたしは・・間違いなく・・)  
 
死を目前にしてメドーサは掻き回されていた頭の中が静まった。  
 
(死ぬわけにはいかない。  
 ならば取るべき手段は・・・!)  
 
冷徹なプロ根性が出した答えに従う。  
そこに感情が入る余地はない。  
意を決するとメドーサは突き飛ばされて呆然をしている横島の上に覆いかぶさった。  
先ほどまでとは逆の体勢である。  
 
「むぐっ・・」  
「んっ・・」  
 
離れたと思ったら今度はメドーサの方から横島へディープキス。  
先程は神速ともいえる動きを見せた小竜姫も止まってしまう。  
誰も彼もが戸惑っていた。  
誰よりも行動を起こした本人のメドーサが。  
 
(ど、どういう事だい?  
 あたしを受け入れないなんて・・・!)  
 
口同士の接触からメドーサ自身とも言える核を、  
魔力に包んで魂を送りこみ横島の身体の中で再生する。  
メドーサの正しく最後の手段。  
それがさっき試験に合格したばかりのボンクラそうな男に抵抗されているのだ。  
メドーサの混乱も仕方の無い事だろう。  
 
(い、いや、これはむしろ押し返されて・・)  
 
絡めあった舌の主導権が横島に奪われる。  
メドーサの焦りは長い魔族人生において最大のものであった。  
何故、横島がこんな事が出来るのか?  
それは彼が特異な霊力を持っている事に起因している。  
煩悩を霊力に変換する。  
ついさっきまで豊満なメドーサの体をまさぐっていた横島は霊力十分である。  
その上、彼女の方からのディープキス。  
煩悩、つまり霊力はメドーサとの攻防の間ですら増え続けていた。  
 
(な、なんなんだこいつ!?  
 こんな、圧倒的な霊力を人間が放出し続けるなんて・・)  
 
繋ぎあわせた口から絶える事無く注がれる霊力。  
暴力的なまでに強引に体内に入り込み  
本人の気質のままに優しく広がっていく。  
先程送り込もうとした為にむき出しになっていた魂が  
横島の霊気に包まれ囚われていく。  
メドーサは既に傷が治り始めている事にも気付かず  
傷のせいで力が出ないという理由を作り  
抵抗もせずに横島の下に身体を敷かれていた。  
 
戦いは激しさを増していく。  
完全に魔族と化した勘九朗はボスの指示が消えた事により  
破壊衝動のままに暴れ出しGS達は数で対抗する。  
その裏で繰り広げられている一騎打ちもまた新たな局面を迎え始めていた。  
 
にゅる。  
横島の指がたてた音はそんな音だった。  
剥かれしまったメドーサの下半身が発した音でもある。  
 
「けっ、毛が無い!」  
 
メドーサは魔族でもあるが蛇の化身でもあるのだ。  
毛が無いのも仕方が無い。  
しかし、横島にはそんな事関係が無い。  
匂い立つ程の色気を放つメドーサの成熟したあそこが無毛であるという意外性は  
横島の暴走した劣情を加速させるに十分な事柄であった。  
 
ごくり。  
 
つばを飲み込んだのは暴走している事を自覚する横島だったか  
何故かさしたる抵抗もせずに弄られているメドーサか。  
もしかすると指の間から事態を見守っている小竜姫だったかもしれない。  
音の発生源は不明だが、これが引き金であった。  
 
「堪忍やでー!  
 もー辛抱たまらんっ!!」  
 
小竜姫の剣裁きにも似た速さで横島は下半身を露出させると  
メドーサの両膝を掴んで開かせ、いきり立つ息子をメドーサの娘さんへと突撃させた。  
感情が平静で無い為、使えないがもしメドーサが超加速を使っていても  
張れたのではないかと思わせる動きである。  
 
「うぅっ」  
「・・っ!」  
 
いきなりの衝撃にメドーサは聞こえない悲鳴を上げた。  
かつては龍神であった女の柔肉は押し返そうと試みるが  
熱く固い肉剣の前に無残にも切り裂かれる。  
 
「くぅっ・・・」  
 
熱く柔く濡れて締め付けながら包み込む。  
夢見続けていた感覚が想像以上に心地よく  
横島はしばし動く事すら出来なかった。  
その快感を与えている方といえば、  
こちらは混乱の極みにあった。  
 
(なんでだい?  
 確かにこの身体では初めてだけどなんでこんなに痛い?  
 なんでこんなに・・・感じる?なんで・・)  
 
胸を張って豊富だといえる経験があるわけでもないが  
純真な少女だった頃は種族すら違った頃だ。  
身体の中に入り込まれた感触に思考を奪われるなど考えられない。  
傍から見ればメドーサが大人しく横島に犯されている事や  
事ここに至っても横島に殺意を抱いてすらいない事の方が  
よほど考えられないのだが。  
 
「・・・可愛い」  
 
突然、横島がつぶやいた。  
挿入した事によりほんの多少ではあるが理性が戻りメドーサを見たのだ。  
犯され混乱し戸惑いながら自分を見つめる瞳を。  
普通は自分がどんな事をしでかしているのかを思い出し、  
過ちに気付くのだろう。  
だが、そこは横島である。  
目の前に横たわる美女の思いがけない表情に見惚れてしまった。  
 
「へっ?」  
 
メドーサが変な声を出すのと横島が抱き締めたのはほぼ同時だった。  
そして、その身体の柔らかさに横島が再暴走するのも。  
 
「あっあっぁっ・・」  
 
メドーサの口から苦しそうな声がこぼれ出す。  
荒々しく打ち下ろされる横島を何度と無く受け止め頭の中が白く染まる。  
横島の胸板に挟まれた乳房が激しく揺れて擦れる。  
無防備に開かれた口の中を舐め回される。  
一方的に舌をしゃぶられるなどいつ以来だろう。  
もしかすると初めてかもしれない。  
(可愛いなんて言われたのは間違いなく初めてだね)  
身体の中心を貫かれながら  
メドーサは頭の片隅で横島の言葉を反芻していた。  
 
「あっ、何っ!?あっ・・っいっ!?」  
 
胎の中へ横島の欲望が注がれた瞬間、メドーサの目が見開いた。  
熱い。  
まるで溶岩を飲み込んだようにおなかの中が熱く燃えている。  
その炎は熱く、メドーサの中を燃やし始める。  
全身に広がっていくその熱さに、メドーサは遂に手を伸ばした。  
射精しながらもまだ腰を動かし、  
メドーサの肉壁に精液をこすり付ける横島に抱きついたのだ。  
声にならない悲鳴をあげ、救いを求めるように横島にしがみつくメドーサ。  
それは一つの契約が為った瞬間であった。  
 
両手を地面に付けペタリと頭を付ける。  
それはもう見事な土下座であった。  
 
「いつかはやると思ってたけど・・本当にやっちゃうとはねぇ・・」  
 
ため息と共に心から軽蔑した響きの声が美神からこぼれた。  
確かにメドーサは魔族だが、女だ。  
ぼろぼろの服の上に横島のジャケットを羽織り  
どこか気の抜けているメドーサに同情の視線を送る。  
横島はメドーサをレイプしたのだ。  
なんの言い訳も出来ない。  
相手が魔族だから許される訳でもない。  
無論、メドーサを確実に捕らえられるというこの状況あっての怒りではあるが  
今この瞬間メドーサが被害者なのは変わりない。  
さあ、どういう風に殺そうか。  
そんな事を美神やエミをはじめとする女性陣が考え出した時、  
メドーサが口を開いた。  
 
「頭を上げなよ、気にしちゃいないからさ」  
「ゆ、許してくれるのか!?」  
 
驚き顔を上げる横島。  
その頭に美神のハイヒールが突き刺さる。  
 
「ちょっと、許しちゃ駄目よ!  
 ここで許したりしたら、あんたまた犯られるわよ!」  
 
美神の怒声に空気が震える。  
だが、メドーサは聞いた風でもなく微笑んだ。  
 
「でもねえ、あたしとしちゃご主人様になる人に頭を下げたりして欲しくないんだよ」  
「ふぇ!?」  
 
驚きの余り横島は踏みつける美神をもろともせずに立ち上がる。  
 
「「「「「ご、ご主人様!?」」」」」  
 
その場にいた人間全員がはもる。  
人間でないメドーサは小竜姫を見、小竜姫もまた戸惑いがちにうなずいた。  
 
「ええ、どういう訳かわかりませんが  
 メドーサはどうやら横島さんに括られてしまっているみたいなんです。  
 在り方が変わってしまったというか・・・  
本当にどういうわけなんだかわかりませんが」  
「そういう事。  
 本当になんでなんだか分かんないけど、  
横島はこれからあたしのご主人様ってわけなんだよ」  
 
ため息交じりにそういうメドーサ。  
しかし、その表情は晴れやかで幸せそうですらある。  
レイプした横島、瀕死の重傷を負わせた小竜姫、  
かつてのメドーサなら間違いなく殺そうとしたであろう。  
メドーサの人となりなど知らない美神達ですら  
メドーサが微笑んでいるという事実は  
小竜姫の言葉の裏づけに十分な説得力を持っていた。  
 
「ってわけで、これからよろしく頼むよ」  
「・・・小竜姫様・・」  
「一応、妙神山まで来て貰って調べる事になるとは思いますが  
 在り方が変わってしまってるようなので大丈夫でしょう」  
 
メドーサを最も目の敵にしていた小竜姫がいいというならそうなのだろう。  
そんな風に空気が弛緩していくのを感じ取るとメドーサは  
未だに呆気にとられている横島に抱きついた。  
 
「め、メドーサ?」  
「ってわけだから・・ね?」  
 
ちょっぴり性格が変わったメドーサがちゅうっと音を立てて唇に吸い付く。  
これが後に世界で最も有名なGSとなる横島忠夫の数ある逸話の一つ、  
GS試験に受かった日に上級魔族を押し倒して使い魔にした伝説である。  
 

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