ズキズキと痛む頭を押さえ、美神は搾り出すようにため息を吐いた。  
頭痛の原因は色々ある。  
色々あるが、一つ大元の原因を言うならば目の前に存在する一人の幼児である。  
 
「どーして子供って同じ絵本を百万回も読ませたりじっとしてなかったり  
 やかましかったり自己中心的だったりするの!?  
 いっそ子供なんかいなくなっちゃえばいいのに!」  
 
美神の色んな意味で痛ましい悲鳴に横島もメドーサもおキヌちゃんですら  
呆れたような視線を送る。  
 
「初めて会った時は「さすが私!可愛い!」とか言ってたのになぁ・・」  
「というよりさっき言った事、全部美神にあてはまるじゃないか」  
「あの、美神さんれーこちゃんが起きちゃいますから・・」  
 
三人の反撃にさすがの美神も言葉に詰まった。  
特におキヌちゃんから穏やかに窘められたのがきつい。  
 
「でも、本当に美神さんなのか?  
 ちょっとお転婆なぐらいで素直ないい子なんだが」  
「本当だねぇ、この子が脱税するようになるなんて人間の神秘だよ」  
「・・・・・えっと、その・・えへへ」  
 
どうやらおキヌちゃんもフォローが思いつかなかったらしい。  
美神は三人の様子を見てふんっとにらみつけた。  
 
「そうよね、確かに私にしては危機管理がなってなさすぎるわ。  
 おキヌちゃんはともかく横島くんやメドーサになつくなんて・・信じられない!  
 もしかするとここに来たせいで悪い子になっちゃったのかもしれないわね」  
 
美神の言葉通り、小さい令子は甲斐甲斐しく世話してくれるおキヌや  
積極的に遊んでくれる横島だけでなくメドーサにもなついてしまっているのだ。  
やはり大きな胸は母性の象徴だからだろうか、  
今もメドーサの胸を枕にしてすやすやと眠っている。  
 
「・・・そうだね・・今はこんな風に出来てるけど  
 大きくなったら顔を見る度に文句ばっかり言うようになるんだよねぇ・・」  
「うっ」  
 
小さい令子の背中をぽんぽんするメドーサの顔に寂しげな微笑が浮かぶ。  
その様子は理不尽に傷つけられた儚い美女そのものであり  
さすがの美神も反撃を封じられてしまう。  
というより聡いがゆえに今反撃すると悪者にされるという考えが働いたとも言える。  
 
「・・でも、メドーサさんて意外に子供あやすの上手いですよねー」  
「そ、そうかい?  
 初めてなんだよ?」  
「でも、れーこちゃん寝る時いっつもメドーサさんのとこ来るじゃないですか」  
「メドーサのおっぱい枕は最高やからなー。  
 暖かくてやーらかくてええ匂いがして・・・」  
「も、もうっ、何言ってるんだい!」  
 
あはは、なんて笑い声が唱和する。  
自分の事務所なのになんだか除け者にされてるようで美神は面白くない。  
だから、何度目かも分からない訴えを小声で叫ぶ。  
 
「ママー、もう迎えに来てよぅ・・・」  
 
小さい令子が預けられてもう二週間が過ぎようとしていた。  
 
 
 
「でも、本当になんで迎えに来ないんスかね?  
 時間移動能力があるんなら預けてから五分後とかにでも来れるんじゃないっスか?」  
「・・・詳しくは分からないけど一つは天候のせいでしょうね。  
 ママは雷を使って時間移動をしているみたいだから」  
 
美神の顔色は優れない。  
子供の煩さに疲れているだけでなく、母親の能力を今更ながらに知った事も大きい。  
 
「ま、心配する事はないさ。  
 美神の記憶じゃ中学三年までは一緒に暮らしてたそうだから死んじゃいないよ」  
「そうなんですか?」  
「世界の修正力は矛盾を許さないからね。  
 もし、美神のママが死んだら  
大きな美神からママと暮らしてた記憶がスパーンと消えるはずさ。  
 それがまだ残ってるってのは無事ってことなんだよ」  
 
メドーサの意見があってるのかなんて美神も分からない。  
時間移動能力についてすら知ったばかりでどんな事が出来て  
どんな制約があるのかなんて分かるはずも無い。  
だが、それはメドーサも変わらないのではないだろうか。  
小さな令子が来た日、メドーサは時間移動能力者なんて初めて見たと言っていた。  
 
(もしかして私を慰めてくれたの?)  
 
不意に思いついた事に美神は戸惑い、頭を振った。  
まさかそんな事は無いだろう、と。  
 
 
珍客万来。  
美神除霊事務所を四字で表すならきっとこれが一番近いだろう。  
今日の珍客さんは竜神族のお嬢さんと鬼二匹である。  
 
「それで今日は何のご用件でしょう」  
 
おほほ、なんて擬音が見えるような美神の営業スマイルに冷や汗を流しながら  
小竜姫は実に言い辛そうに口を開いた。  
 
「今日は横島さんとメドーサの二人に話があって来たんです」  
「ちぇっ、なんだ、仕事じゃないの?  
 で、うちのバイトに何の用なの?」  
 
神速ともいうべき変わり身を繰り出し美神は興味無さそうに聞き出した。  
 
「二人に香港まで行って貰いたいのです」  
「香港?」  
 
メドーサの眉がぴくりと上がる。  
その様子に目覚めた令子ちゃんと遊んでいた横島とおキヌちゃんまでも顔を向けた。  
 
「ええ、その様子だと心当たりがあるみたいですね」  
「馬鹿にすんじゃないよ。  
 誰がどんな理由で出したのかも分からない命令を遂行する立場でもね、  
 察する事ぐらいは出来るんだよ。  
 あんたが態々頼みに来て、舞台が香港と来ちゃ嫌でも思い当たるさ」  
 
メドーサが少し険しい顔で小竜姫を睨む。  
最近じゃ滅多に見れなくなったメドーサの張り詰めた顔に事務所の中が緊張する。  
 
「あたしが簡単に頷くと思ってるのかい?」  
「人界であなた達より強力な方をわたしは他に知りません。  
 引き受けてくれなければ困ります。  
それに報酬は保護観察処分の終了。  
 つまり自由です。  
 魔族が主体となって行われている計画を潰せば  
 上層部もあなたへの疑いを消してくれると思います。  
 悪くない話だと思うのですが」  
 
それを聞いてメドーサは目を閉じてため息を吐いた。  
実は今のメドーサと横島は行けない場所が非常に多い。  
時間さえあればアパートの中で乳繰り合っているから実感は無いが  
ほんの多少でも神気や魔力の強い場所には寄れないのだ。  
下手をすると横島は修学旅行すら行かせてもらえない。  
 
「あんた・・・」  
「俺はメドーサの行く所ならどこでも付いて行く」  
「相手は多分、魔族だよ。  
 あたしより上の奴が来る可能性だって」  
「違うだろ、メドーサ?  
 そんな時は「チャイナ服でたっぷりサービスするから」とか言うべきだと思うぜ」  
 
妙に男前に横島は言っているが中身は実に下らない。  
だが何故かメドーサはうっとりとした表情で瞳を潤ませている。  
ちなみに最近メドーサは横島を時々「あんた」と呼ぶ事がある。  
テレビで長年連れ添った夫婦がそう呼んでいるのを見て影響を受けたらしい。  
 
「ね、ねえ、なんか話聞いてると随分やばそうな話みたいだけど・・  
 横島くんなんか連れて行っていいの?  
 二・三週間ぐらい修行してからにしたらどう?」  
「そ、そうですよ!  
 いくらメドーサさんが強くたって二人だけじゃ無理ですよ!」  
 
二人の間に流れる空気が面白くないおキヌと  
このまま二人を行かせては子供の面倒を見る破目になる、と美神が反発する。  
 
「横島さん霊能の方は相変わらずですけど  
霊力だけは既に相当凄い事になってますから大丈夫ですよ。  
 ですよね?」  
「そうだね。  
霊力量だけならもうあたしより上かもしれないからね」  
「うそっ!」  
「そんな・・」  
「お、俺ってそんな凄かったのか!?」  
 
にわかに騒がしくなる面々。  
彼等は重要な人物の事を忘れていた。  
 
「よこちまとおねえちゃんろっかいくの?  
 れーこもいくっ!」  
 
しゅぱっと元気よく手を挙げて令子が駆け寄ってくる。  
 
「れ、れーこちゃん?  
 おにいちゃん達は遊びに行くんじゃないんだよ?」  
「いーやー!れーこもいくのーっ!  
 あたちをおいていくきかーっ!」  
 
しゃがみこんだ横島は前後にぶんぶんと揺さぶられながら  
令子が預けられた初日の事を思い出した。  
「ママどこ?」と泣き叫ぶ令子をなだめるのに半日近くかかった。  
しかも、あの時と違って美神とおキヌちゃんは味方してくれないのだ。  
 
(ううっ、なんて言えばいいんだ・・・  
 仕事だからなんて子供にはわかんねーだろーしなぁ・・)  
 
説得の言葉も思いつかないまま横島が振り回されていると  
不意に令子の身体がふわりと持ち上げられた。  
 
「ふぇ?」  
 
柔らかい香りとひんやりと暖かいふくらみに包まれ令子は顔を上げた。  
メドーサの微笑に女の子ながらに見惚れてしまう。  
 
「令子、あたし達を引き止めてくれるんだね。  
 あたしと一緒にいたいって言ってくれるのかい?」  
「・・いっちゃやだ・・」  
 
抱きかかえられた令子がぎゅっとメドーサを抱きしめる。  
一緒に行く、と言っていたはずだが何となく流されている辺りがまだ子供である。  
 
「引き止めてくれてありがとね。  
 それでも行かなくちゃいけないけど、嬉しかったよ」  
「うれしい?」  
「ああ、そうだよ。  
 あたしも令子といたいからね。  
 同じ気持ちでいてくれたんだ、と思って嬉しいんだよ」  
 
穏やかに優しく語りかけられる言葉に令子はにっこりと笑って更に強く抱きついた。  
何度も「れーこうれしい?れーこといたいの?」と聞き返し  
メドーサはその小さな背中をぽんぽんと撫でている。  
小竜姫が目を丸くするほど、ほのぼのとした光景に誰も言葉を挟めなかった。  
 
(なによ、私の子供時代のくせにだらしないわね。  
 簡単に丸め込まれちゃって。  
 引き止めてくれて嬉しいなんて嘘に決まってるじゃないの。  
 メドーサは魔族だったんだから口が上手いのよ。  
 嘘に決まってるわ、そうよ嘘だわ、信じられるもんですか!)  
 
美神は言い聞かせるように心の中で呟くと  
令子を抱っこしているメドーサに視線を叩きつけた。  
睨む、睨みつける・・・・・睨んでるつもり。  
眉を吊り上げても目の光には険が無い。  
むしろ口元の方は緩んでいるように見えたのだが  
美神が自分でそれに気付く事は無かった。  
 
 
「「到着〜!!」」  
 
星空の下、ドカンと派手な音がして鬼門がビルの屋上へと着地した。  
籠がコンクリートの地面にぶつかってしまったのはご愛嬌である。  
 
「ちっ、しっかりしなよ」  
 
そうなるだろうと予測して横島と一緒に飛び降りていたメドーサが  
鬼門に対して吐き捨てた。  
 
「おお、すまん」  
『もう、気をつけてくださいね。  
 あまり目立つわけにはいかないんですから』  
「す、すいません、小竜姫さま・・」  
 
小竜姫の叱責に鬼門の肩ががっくりと落ちる。  
飛行機が面倒くさいと鬼門に送らせたのは自分達なので  
横島は文句を言う気にはなれなかったのだが女性二人は全く容赦が無かった。  
 
「で、ここはどこなんだい?」  
「いや、人気の無い所を選んで降りたから  
 我らにもよく分からんのだ」  
 
香港に鬼門が降り立っても目立たないような人気の無い場所などそうはない。  
せいぜいがビルの屋上ぐらいのもので、そこを選んで降りただけなのだから  
地名など分かるはずも無い。  
 
「降りて聞くしかないんじゃないか?」  
「そうだね。  
 じゃあ、ダーリンはあたしに掴まって」  
 
すかさずメドーサに抱きつく横島。  
抜かりなくお尻に手をあてがい首筋に顔を埋めるあたりさすがといえよう。  
 
「ぁん・・もう・・それは二人っきりになってからだよぉ」  
 
そう言いつつメドーサは嫌がるそぶりも無く甘えた声を出す。  
鬼門の視線などまるで無視だ。  
 
『あの、わたしその・・この状態でも聞こえてるんで・・その・・』  
 
横島のポケットに入っている角姿の小竜姫も困って声を出す。  
それでようやく二人は口を離した。  
 
「あら、ごめんねぇ・・?  
 独り身にはきつかったかしら」  
『くっ・・・』  
 
別段、小竜姫は処女である事を恥だなんて思ってない。  
むしろ、多淫で知られる竜族で純潔を守っている事を誇りにすら思っていた。  
だが、勝ち誇ったような表情で言われると興味がある分だけ腹立たしい。  
 
「じゃあ、早速ホテルに行こうか?  
 でかい音立てたから誰か来るかもしれないし  
 情報を集めるにしたってあんたらみたいないかつい黒服連れてちゃ無理だからね」  
 
言葉に詰まる鬼門を鼻で笑い、飛び降りようかという時、  
メドーサの瞳が宙を見つめたまま止まった。  
 
「メドーサ?」  
 
心配そうな表情を浮かべ横島はメドーサの言葉を待つ。  
その視線は小竜姫をもってして「なんだかとてもちくしょー!」  
と思わせる程に労わりに満ちている。  
 
「・・・ここって何語話すんだい?」  
 
彼等の中に英語や広東語を喋れる者はいなかった。  
 
 
『全くもう、全然話せないならそう言ってください!  
 そしたら他に話せる人を雇ってきたんですから!』  
「何いってんだい!  
 あんただって喋れないんじゃないか!」  
『わたしは思念波で会話するからいいんですぅ!』  
「思念波だったらあたしだってできんだよ!  
 一般人に思念波で話しかけるわけにはいかないから困ってんだろうが!  
 ダーリンが頑張ってくれなきゃホテルにも入れなかったんだからね!」  
 
竜と蛇が睨みあう。  
ホテルの部屋は横島のボディランゲージに頼りまくったカタコト英語で  
なんとか取る事が出来た。  
しかし、問題は何も解決していない。  
風水師連続失踪事件(小竜姫とメドーサの間では既に原始風水盤事件だが)  
に関して情報を集めなくてはならないのに、これではどうしようもないのだ。  
 
『はぁ・・これでは先が思いやられます』  
「それはこっちの台詞だよ!」  
「まあまあ、二人とも。  
あした日本語と広東語が話せる人を探せばいいだけなんですから喧嘩しないで、ね?」  
 
角をなだめるというのも変だが横島はメドーサと  
テーブルに置かれた角の間に入って睨みあいを遮った。  
 
「ダーリンがそういうなら・・」  
『でも、横島さん、そんな簡単に言いますけど何かあてはあるんですか?』  
「ああ、ありますよ」  
「えっ!?」  
『なんです!?』  
   
本当に驚いてる様子の二人に苦笑しつつ横島は自分の考えを話した。  
 
「香港のGS協会に行くんですよ。  
 あそこなら思念波で話してもそう驚かないでしょうし  
 状況が状況だから協力してくれると思いますよ。  
 もしかすると小竜姫さまに話をつけて貰う事になるかもしれませんけど」  
『・・・たしかに。  
 考えてみれば何故最初にそれを思いつかなかったんでしょう・・』  
「さすがだねぇ・・惚れ直しちゃうよ」  
 
単純な事でもテンパっていると気付きにくいものである。  
ましてや、海外という非日常な環境で煽りあう相手がいればなおさら。  
足手まといになるだろうと思っていたが  
どうやら意外に役に立てそうで横島は少しほっとしていた。  
 
 
でかい図体の二人が身を寄せ合って何事か話しているというのは  
割と見苦しい光景である。  
ましてやそれがはげ頭の大男ときたらえらい事になる。  
 
「むぅ、左の、ここはどうだ?」  
「右の、山に住む我らが今ぞろタワーなんぞに昇ってなんとする」  
「高い所から街並みを見てみたいではないか」  
「お主は女学生か」  
 
『何をやっているのです』  
 
とても見たくないモノを見せられて呆然と立ち尽くす横島の手の上から  
呆れたような声が放たれる。  
 
「あ、これは小竜姫さま」  
「いや、我らはどうせ聞き込みにも戦闘にも参加できませんので観光をと・・」  
「それが右の奴が何たらタワーに行きたいなどと申しまして」  
「お主なぞ市場に行きたいなどと申したではないか!」  
 
初めての海外滞在に浮かれたおしてる鬼門に小竜姫はため息を吐いた。  
馬鹿馬鹿しくて怒る気にもなれない。  
 
「なあ、なんでお前ら普通に動けんだ?  
 小竜姫様でさえ活動できなくてこんな姿なのに」  
「ああ、わし等はもう妙神山に括られるのをやめたのだ」  
「考えてみれば鬼のわし等が括られても何の利点も無かったからのう」  
 
わはは、と声を揃える鬼門を見て横島は頭を抑えた。  
 
「最初から気付いとけよ・・」  
『もう、行っていいですよ横島さん・・・』  
 
二人のため息が重なり、横島は小竜姫を置いて部屋を出た。  
下らない話を聞いて脱力してしまったが、部屋ではメドーサが待ってるのだ。  
時間はまだそんなに遅くない。  
明日の為に早めに寝るとしてもたっぷりと愉しめるだろう。  
さぁ今日は何したろうか、と考えるだけで心の奥底からエネルギーが湧いてくる。  
 
「めっどっ〜お〜さちゃ〜ん、待ったぁ〜」  
 
ウキウキとハイテンションに扉を開けた横島が見たものは  
うずくまり苦悶の声をあげるメドーサの姿だった。  
 
 
声が出せなかった。  
何かを考える事すら出来なかった。  
横島忠夫の知る限りメドーサが苦しんでいる姿は一度とて無い。  
小竜姫に斬られた時ですらメドーサは苦しみはしなかった。  
 
「メっ・・!」  
 
現実だと認めた横島は己の声よりも早くメドーサの元め駆けつけた。  
うずくまるメドーサは歯を食いしばりながらお腹を押さえている。  
 
(腹・・・!)  
 
それを見てとった横島の動きは素早かった。  
メドーサの尻と背中を掴むとゆっくりと持ち上げ腕の中に収めた。  
そして、そっと、布団に乗せる音すら立てないようにそぅっと  
メドーサをベッドの上に横たえた。  
 
「うっくぅ・・!」  
「メドーサ・・!」  
 
お尻から離した手を横島はメドーサのお腹の上へ重ねた。  
腹を押さえる手の上に温もりを感じメドーサはうっすらと目を開いた。  
その真っ青な顔色に横島の顔もまた感染したように青ざめる。  
 
「どうしたんだ!?  
しっかりしろ!元気だせ!」  
 
そう叫んだ瞬間、横島自身ですら気付かぬうちに横島の手が淡い光を放った。  
 
「あっ・・」  
 
メドーサの口から気の抜けた声がこぼれる。  
大きな胸が上下しているがメドーサの表情は  
さっきまでの様子が嘘のように穏やかだ。  
 
「え、えっと・・?」  
 
さっぱり状況が飲み込めない横島にメドーサは微笑むと勢いよく身体を起こした。  
そのまま中腰の姿勢になりスカートのホックを外す。  
 
「め、メドーサ?」  
 
スカートを千切るように放り投げるとメドーサはずるっとショーツを下ろした。  
すかさず目をやった横島の前に丸く白い小さな珠がぽとぽととベッドの上に落ちる。  
 
「・・・卵?」  
 
拾い上げてみると粘液が付着していて卵のようにも見える。  
 
「お、俺達の子かーーっ!?」  
「馬鹿っ!違うよ!」  
 
スパーンと横島の頭にメドーサの突っ込みが入った。  
 
「いてて・・じゃあ一体・・」  
「これは・・・・文珠だろうね。  
あたしも初めて見たけどそれしか考えられない」  
「文珠?」  
「キーワードを込めて使えばその通りの効果が発現する万能の霊能アイテムさ」  
 
ほえーっと感心しながら珠を見て横島はすぐにメドーサに視線を戻した。  
 
「それがなんでメドーサから出てくるんだ?」  
「それは・・つまり、あんたに文珠使いの才能があったからだろうねぇ」  
 
白く輝く珠を見つめながらメドーサはしみじみと言った。  
 
「あんたの霊力をその・・・ここで食べてただろう?  
 その残った奴というか、毎日満腹って以上に食べてたもんだから  
 残っちゃったというか・・そういうのがあたしの胎内で固まったんだろうさ」  
「じゃ、つまり、これはメドーサのうん・・」  
 
言い終えぬうちに横島はメドーサの拳で宙を舞っていた。  
 
「下らない事いってんじゃないよ!」  
「ううっ、すまん・・」  
 
よろよろとふらつきながら横島はメドーサの傍へと戻ってくる。  
 
「なあ、これ霊能アイテムだって言ったよな?」  
「ああ、そうだよ。  
 伝説にしかその存在を確認されてないってほどの奴だよ!」  
 
テンションが上がった様子のメドーサとは逆に  
横島は文珠を冷めた目で見つめていた。  
 
「どうしたんだい、嬉しくない?  
 あんたに文珠使いの才能があるって分かったんだよ?  
 一種の神器、使いこなせばほとんど何だって出来るんだよ?」  
 
ちらっとメドーサを見やると横島はゆっくりと口を開いた。  
 
「・・これがメドーサの胎内で出来るって事は・・  
 子供は?俺達には出来ないのか?」  
 
横島の真剣な表情にメドーサはぽかんと口を開けた。  
この男は何を言ってるんだろう?  
あたしですら実物は初めて見る伝説級の霊能力を発現させておいて  
俺達の子供?  
子供?あたしの?  
 
「な、何を言ってるんだい?  
 もしかして忘れてるのかもしんないけどあたしゃ人間じゃないんだよ?」  
「そりゃそうだけど・・でも!令子ちゃんを見るメドーサは優しかった。  
 我侭言われてちょっと困ったような顔したりしながら  
 抱っこする時も寝かしつける時も楽しそうだった。  
 だから・・・」  
「ふぅん・・・あたしが子供を欲しがってるって思った?」  
 
こくりと横島は頷いた。  
メドーサの態度に(ち、違ったのか?)なんて思ってるのが顔に出ているが。  
 
(全く、この男は・・)  
 
メドーサは優しく微笑むと横島の頭を胸に掻き抱いた。  
 
「馬鹿だねぇ・・ちょっと珍しかっただけさ。  
 構ってやった事なんて一度も無かったからね。  
 こんな風に遊ぶんだ、とかこんな風な事を考えるんだって・・」  
 
囁くように言葉を重ねる。  
ああ、そうか、この男は馬鹿なんだ。  
分かりきっていた事を再確認する。  
だから、こんなに自分を見てくれているんだろう。  
使い魔に気を使ってどうする。  
括られたのはあたしの方なのに、これじゃあんたが括られてるみたいじゃないか。  
色々と言ってやりたい言葉が湧いてくる。  
だけど、全部言う事なんて出来ない。  
だから、メドーサは少しだけ甘える事にした。  
 
「でもね、出来ないわけじゃないんだよ。  
 あんたが頑張ってくれるなら・・」  
「ほ、本当か!?」  
 
胸の谷間に埋っていた横島の顔を上がった。  
頬をほんのりと染めメドーサはもじもじとシーツをいじり出した。  
 
「・・蛇がどんな風にやるか知ってる?」  
「い、いや・・」  
「い、一日中ずっと繋がったままなんだよ」  
 
そう言うとちらっとだけ横島を見てまた下を向く。  
 
「えっと・・つまり、一日中繋がってやり続けると出来るってこと?」  
 
横島の問いにメドーサはこくっと頷いた。  
 
「その・・い、一杯するわけじゃないんだよ?  
 時間が大事って言うか、ゆっくり染み込ませる必要があるっていうか  
 もう!何言わせんだい!」  
 
顔を真っ赤にしてメドーサはバシっと横島の背を叩いた。  
何を今更とも思うがやはり自分の種族本来のやり方は恥ずかしいのだろう。  
だから、横島はビンビンに膨れ上がっている劣情を驚異的な精神力で抑え  
メドーサの両手を握り締めた。  
 
「今日は無理だけど、今度・・が、頑張ってもいいかな?」  
「・・うん」  
 
メドーサは困ってるような笑っているような表情を浮かべ小さく頷いた。  
そして、うつむいたままチラリと上目で横島を見てはにかんだ笑みを浮かべる。  
そのまるであどけない少女のような仕草に横島の脆い理性はあっけなく崩壊した。  
 
「駄目だー!もう辛抱たまらーん!」  
「んっ、やぁ・・ん」  
 
香港まで来てもこの二人が夜やる事に変わりは無いようだ。  
 

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