おキヌちゃんと特訓  
 
 
先日横島さんが新しい技を身に着けました。  
名付けて「栄光の手」  
はぁ、やっぱり横島さんはすごいです。  
「あ、ちょうどよかった、おキヌちゃん」  
えっ? あ、はい、なんでしょう  
丁度横島さんのことを考えてたときだったから、声が上ずっちゃったかもしれません。  
「暇だったら、練習に付き合って欲しいんだ」  
練習 ですか?  
何だかいつもの横島さんらしくないですね。  
「せっかく出せるようになったのはいいんだけど、このところ使う機会がなくて。いざと言うときに失敗しちゃったら困るからね」  
「横島さん…」  
ちょっとびっくりです。  
横島さんって、ごめんなさい、もっといい加減な人だと思ってました。  
あ、だからって頼りないなんて思ってませんよ。  
いざと言うときにはきっと何とかしてくれる人だって、私知ってますから。  
「はいっ 私でよかったら、喜んでお付き合いします」  
「そう? じゃあ…そうだな、ガレージに行こうか」  
 
 
ヴンッ  
私の目にも眩い光が横島さんの右手から迸って、横島さんの真剣な表情に、私も気を引き締めます。  
「あの、練習ってどういうことをするんでしょうか?」  
 
「おキヌちゃんはこの中を逃げ回って欲しい。それを俺が追いかけるから」  
「逃げ回る…鬼ごっこみたいに、ですか?」  
「うん、そんな感じ」  
でも、ちょっと怖いです。  
「あ、心配しないで、おキヌちゃんを怪我させたりなんて絶対にしないから」  
ちょっと手を出して そう言いながら横島さんは、細く伸ばした「栄光の手」で私の手の平を――  
「あっ」  
ぴりっとはしましたけど、確かにこのくらいなら痛くありません。  
「単純に威力を上げる練習なら一人でもできるんだけど、すばやさとか反射の練習は一人だと上手く行かなくってさ」  
色々考えてるんですね。  
私もしっかりしなきゃって思うけれど、でも自分にできることなんてないし。  
せめてここでは役に立ちたい。  
「分かりました 私一生懸命逃げますね」  
ぐ、と気合を入れて  
「じゃあ、これが合図ね」  
ポケットから取り出したのは、ちょっと汚れた五円玉。  
それをピンって指で弾いて  
チャリーン  
床で跳ね返った瞬間、後ろに飛びずさる。  
目の前をひゅんって走り抜ける光。  
横島さんのちょっと驚いたみたいな顔。確かめるまもなく体をひねって、今度は全力でジグザグに逃げる。  
チッ  
二回ほど袴の裾を掠めたけど。  
危なくなったら美神さんのコブラを盾にしちゃう。  
「わ! ちょっとずるい!」  
 
ずるくないです、これだって作戦です! 返事をする余裕なんてぜんぜんなかったけど。  
「なろ! そっちがその気なら――」  
ぎゅんと蛇みたいに曲がって襲い掛かってくるのを必死に交わす。  
ビチッ  
「あうっ!」  
右足に電気が走る。  
でもまだ捕まってません。  
それに…これで終わっちゃったら、横島さんの練習にならないから。  
ビッ  
「きゃぁっ」  
 
 
…どのくらい経ったんだろう。  
バヂッ  
「くぅっ! はぁはぁ…」  
何度も「栄光の手」に鞭打たれて…体中、じんじんと火照ってる。  
ヒュヒュッ  
横島さんは、五本の指から伸ばした五本の鞭であっという間に私を追い詰める。  
ビシッ バチィッ  
「きゃうっ!」  
ふらふらと、ほとんど歩いてるのと変わらないような。  
ビシッ ビチッ バシッ  
「あうっ あっ! あんっ!」  
何だか頭がぼうっとして…倒れかけた私の手足に シュルルッ 細く伸ばされた「栄光の手」が絡みついた。  
…捕まっちゃった  
 
スル シュルル  
「…え?」  
降ろしてくれるのかと思ってたら、やだ、手首から肘の方に絡み付いてくる。  
足も――  
「ひゃうっ 横島さんっくすぐった…きゃっ」  
ふくらはぎをつつとくすぐられて、ぞくりと。  
「おキヌちゃん、もう少し練習に付き合ってよ」  
「れんしゅうって あっ やだ そこはっ!」  
シュルル  
いやぁっ 袖口から入ってきた「栄光の手」が二の腕を何度もなぞり上げて。  
「やっ あっ あっ!」  
バチッ  
「きゃあぁぁっ!!」  
ずるいっ 横島さん、くすぐるのと霊激なんてっ そんなことされたら、私…  
「あっ きゃぁっ! あうっ!」  
いつの間にか、巫女服の中にまでシュルシュルと その…おっぱいを絞り上げるみたいに…  
「横島さ…ひゃうっ! あぁんっ だめぇっ!」  
何十本にも枝分かれした横島さんがっ きゅうと乳首を締め付けられて あああぁぁっ!  
 
 
びりっ びりり  
…ぁ  
お尻がすうすうする 袴が。  
私、うつ伏せの格好で、宙に張り付けにされてた。  
 
 
…よこしまさんは どこ?  
ぼんやりした視界にはいない。  
呼ぼうと口を開けて――  
つぷ  
「ふああぁぁっ!」  
横島さん! 私の後ろにいたっ 私の…大きく広げられた足の間に!  
「いやぁっ! 見ないで 見ちゃいやぁっ!」  
もがいてもびくともしない。それにもう力なんて入らない。  
「そんなに嫌がらなくてもいいよ。だっておキヌちゃんのここ、とってもきれいだからさ」  
だって、そこはちがうっ!  
つぷり  
「あ…ああぁっ」  
恥ずかしさと気持ち悪さと、色んなのがごちゃごちゃになって、頭の中に心臓があるみたいにどくどくいって。  
ずるる ぬぷ  
ひぃっ! 指とは違うのが、怖いくらいどこまでも奥に入ってこようとする。  
「…おキヌちゃんの中、よく分かるよ」  
「な、なにを…あんっ」  
「ほら、こいつは俺の手の延長みたいなもんだからね」  
ぐりっ  
「うああぁっ! もうやめてぇっ!」  
「だけどさ、おキヌちゃん、嫌がってないじゃない」  
…っ!  
「ち、ちがっ! あっ! だめ、横島さ ああぁぁっ!」  
ぬぷっ ずるる ぐちゅっ  
声が 腰が動いちゃうっ もうだめ 止められないっ!  
 
 
「ひぃっ! あうああぁっ! ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  
 
 
「あの…横島さん」  
トイレに立った横島さんを追いかけて。  
「ん? どうしたのおキヌちゃん」  
意地悪です、分かってるくせに。  
「ほ、ほどいてください」  
見えないくらいに細い「栄光の手」が、私の体に絡み付いてるの。  
美神さんの前で平気な顔をするの、もう限界。  
「こんなこと――ひうっ!」  
口を押さえて、何とか叫ぶのだけは堪えた。  
乳首とクリトリスと、それに…縛られてるのは体の外側だけじゃない。  
「…っ!…っ!!」  
たった数秒でめちゃくちゃになっちゃった私を見えない糸で支えながら。  
「美神さーんっ! 俺ちょっとおキヌちゃんと特訓してますからっ!」  
『あっそう、いいわよ でも一時間くらいで戻って来んのよ!』  
「…だってさ。行こうかおキヌちゃん」  
どくん  
お尻が疼いた。  
 
…特訓なら…いいよね…  
 
 
終わり  
 

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