最初に断っておけば、彼…シャーロックホームズは幼い少女相手に性欲をぶつけ、悦びを覚える様な歪んだ性癖を持っているわけでは無い。  
ただ、彼は騎士道精神を尊ぶ英国紳士で…目の前で涙を流す小さな淑女をそのまま放っておく様な真似をするのは、紳士としてどころか人としても最低だと信じている。  
だから彼は間違った事はしていない…筈だ。だって他に方法は無かったのだから…多分。  
そう、コレはその小さなレディを慰める為の、仕方の無い行為なのだと…彼はそう自分に言い聞かせた。  
 
「ぁ…ぅ…あぅ…ん…はぁ…ふぁ…イイ…イイよ…ホームズ…」  
 
際立った凹凸の存在しない滑らかな曲線を描く少女の裸身…その素肌は、陶器の如く白く美しい。  
冷たく、だが今は熱を帯びつつあるその肌に、舌を這わせ指を滑らせ…唯一つの珠玉を取扱うかの如く優しく丁寧に繊細に…彼は少女を愛撫する。  
…齎される刺激に、踊る様にその裸体をくねらせ、跳ねあげさせ…エリスは彼の愛撫に敏感に反応する。  
西洋人形を思わせる、表情の乏しい顔を快楽に歪め、悩ましげな嬌声をあげる彼女は実に官能的で…ホームズは不覚にもそんな彼女にオンナを感じ身体を熱く滾らせる。  
死の淵から蘇ったホームズ…彼は今、恩人である吸血鬼の少女エリスと共に、恐らくは隠れ家と思われる地下室で、狭い棺の中寄り添い、絡み合い、情事に耽っていた。  
 
「はぁ…」  
「……ホームズ?」  
「…いや、なんでもないよエリス…」  
「…そう…?ホントに?…やっぱり…」  
「エリス…君は奇麗だ…本当に…本当に美しい。そんな君と寝所を共に出来るなんてこれ以上の事は無いよ…」  
「…嬉しい…」  
 
白い顔をほんのりと朱に染め、エリスは歳相応の少女らしく可愛らしい笑みを浮かべた。  
 
 
 
逃げたかったのかも知れない、忘れたかったのかも知れない。今感じている辛さから。  
 
お互い、心身ともにまともな状態ではなかった。ボロボロに傷つき大事な何かが欠けていた。  
攫われ、囚われ、手術と実験の果て脳を壊され、記憶と過去と絆を失い・・・何もかもを失くしてしまった吸血鬼の少女エリス。  
滝壷に落ち、命を落とし…しかし人類の天敵として黄泉返ってしまったホームズ。  
互いの疵を舐めあう様に、欠けた何かを埋め合う様に…ふたりは身体を重ねあい、求め合い、貪りあう。  
刹那の快楽に興じ、逃避する。  
その逞しい腕で抱きしめて、慰めてくれるホームズに、エリスは確かに満たされる。  
腕の中の小さなエリスの、その確かな存在感は、ホームズの心を潤し癒す。  
 
「んぁ…ふぁ…ぁ…そ、そこ…は…ふぁ…ッ」  
 
ちゅく…ホームズの無骨な指先が、腿を割り股座へ…産毛すら生え揃っていない、硬く閉ざされた少女の蕾は、彼の愛撫に綻び潤う。直後…  
 
「く…ふぁ…ぁ…あぁッ…ぁ…」  
 
びくんッ…少女の幼い身体に走る、甘く心地の良い衝撃。  
しっとりと蜜を滴らせるその源泉を優しく嬲られ、エリスは幾度めかの絶頂を迎える。  
 
「…ぁ…はぁ…は…ぁ…」  
「大丈夫かい?エリス…」  
「あ…うん…大丈夫…ただキモチ良すぎて…ちょっとトんじゃっただけだから。  
…次は…私の番だね…」  
「あぁ…頼む」  
 
達した余韻覚めやらぬまま、今度はエリスがホームズを攻める。  
鮮血の如く赤い唇…最初はそっと、唇と唇を触合わせるだけのバードキス。そしてそのまま下へと降りる…  
首筋から胸板…腹…ホームズの身体中に残る、いまだ塞がりきれていない疵痕…その疵に沿うように…唇をあて、舌を蠢かせ、時には甘く噛み痕をつけ…  
エリスの唇が、舌が、歯が触れた…口奉仕されたその箇所から、ぞくぞくと微弱な電流にも似た快楽の信号が発せられ、ホームズの身体を甘く痺れさせる。  
 
奉仕するエリスもまた同様…先程までの愛撫で火照らせた身体を、今また更に奉仕する悦びで昂らせる。  
ずんッ…重く熱くなる腰の奥底から、全身にさわさわと染み渡る様に、むずむずとした痛痒が広まりゆく。全身を苛む、だが心地の良い痛痒に、エリスの薄い胸の先端を硬く尖らせ、しこらせる。  
 
「ん…ちゅ…む…ぁ…はぁ、ぁむ…」  
 
口元から、下へ下へとゆるゆる下降して行ったエリスの口奉仕は、遂に彼の男性自身へと辿りついた…奉仕による快楽ゆえか、既にいきり勃っている。  
熱く、硬く、大きく…赤黒く充血し強張ったそれにそっと手を添え…  
 
「…ん…む…」  
 
ちゅ…愛しげに軽く、その先端に口付けをする。  
 
「じゃ…いくね?」  
「あぁ…」  
 
それが、始まりの合図。ちゅるる…ちゅる…ぶちゅ・・・根元から、裏側を上に向い…小さなピンク色の舌を蠢かし、丁寧に丁寧に舐め上げる。  
性知識の無さ故か、その拙い舌使いは、小さな子供が大好きな飴をしゃぶる様にも似て…だが、その艶を含み快楽に濡れた貌は、明らかにコドモの…少女ではないオンナのそれで…そのアンバランスさが放つ背徳的な雰囲気が、彼の昏い欲望を刺激し、奉仕の快楽を増幅させる…  
 
「ん…んむ…んも…ふ…ぁふ…んぁ」  
 
ちゅる…ぷちゅ…内に淫らさを秘めた湿った水音が、薄暗闇の中に木霊する。  
唇を、顎を、限界にまで開いても彼女の口は小さすぎて…今している様に、その先端を咥え込むのが精々だ。  
口内をいっぱいに埋められ、その先端が喉奥を突き、満足に呼吸するのもままなら無い…その辛さと息苦しさとで顔を紅くし目に涙をため、だがそれでもエリスは奉仕を続ける…  
懸命に舌を動かし舐りあげ、更に深くと吸い上げて…そして、その際は鋭いキバが彼を傷つけない様にと、気を配るのも忘れていない。  
空いた両手は、口内におさまり切らない箇所に添え愛しげに撫で、擦り上げる。  
何と健気な姿だろうか。全てはホームズを悦ばせる為…今の彼女の姿はあるのだ。  
肉体で感じている、甘く熱い快楽とはまた別に…彼は胸奥に暖かく、だが何か切ないモノが湧き上がってくるのを感じる。  
 
「う…ぐ…エリス…もう…出る」  
「……んちゅ……」  
 
しかし、エリスは離れない。  
口に含んだそのままで、視線で彼に返事を返す…『このまま口に出してもいいよ』と。  
瞬間…  
 
「う…」  
「……ッ!?」  
 
ぢゅ…どぷッ…ぼぷッ…エリスの口内でそれは弾け、白濁液を撒き散らす。  
それは、血よりも濃くて生臭く、死肉よりも尚苦く、粘り喉奥に絡みつき…  
 
「ぶはッ…ぁッ…ぅぁ…かはッ…がはッ…うぁッ…はッ…」  
「だ、大丈夫か!?」  
 
エリスは思わず口を離し蹲る…飲み干す事等不可能だった。  
かはかはと噎せ返り、身を震わす彼女に慌てるホームズ…だが…  
 
「うん…大丈夫。…ごめんなさい…吐き出しちゃった…」  
「いや…謝るべきは僕の方だ…無理にでも止めさせるべきだった。すまん…」  
 
言い合い、ふたり見つめあう。  
その間に流れるのは、情事を中断されたがゆえの何となく白けた…しかし、互い思いやっているコトが伺えた事からくる優しげな…そんな不思議で柔らかな雰囲気。  
 
「…んと…じゃあ…あの…そろそろ…」  
「あぁ…解ったよ」  
 
ともに、準備は出来ていた。  
 
疵癒えきらず、いまだ動くのも辛い彼に代わり、少女が全ての事を進める。  
一度爆ぜたにも拘らず、硬度を損なう事無く上向きにそそり立つ剛直の上に跨って…エリスはゆっくりと腰を下ろす。だが…  
 
「んくッ…は…」  
 
苦痛の喘ぎ。  
充分に潤み綻んだとはいえ、幼く小さな少女の花弁に、彼のそれは大きすぎる。  
みちっ…ぶちっ…耳障りな音を立て、割り入る剛直に幼い身体が悲鳴を上げる。蜜と共に流れ出る紅いものは、破瓜によるものだけではない。文字通り、自身を引裂かれる程の激痛と衝撃を受け…しかし、それでも尚…  
 
「…嬉しい…嬉しいよぅ…」  
「…え…エリス…」  
 
それでも尚エリスは微笑む。  
その紅い瞳から、ぽろぽろと零れ落ちる滴は、苦痛ではなく歓喜によるもの…痛みよりも、衝撃よりも、尚上回る充実感。  
今少女は繋がったのだ、目の前の男と。身体が、心が、絆が。  
何も無い彼女は…確かな繋がりを手に入れた。それは何て幸福感…がらんどうだった自分がいっぱいに満たされていく様な感覚…エリスは今幸せだった。  
 
そんな歓喜に涙するエリスの姿は、ホームズの心をも満たしていく。  
彼女を抱いて尚、心の内より消える事無く残留し、燻り続け其の心身をじくじくと苛んでいた、荒みささくれ立った感情(モノ)…それが奇麗に霧散してゆく。  
後に湧上り心満たすは、腕の中の少女への想い…どうしようもない程の愛おしさ。  
 
…もしかしたら…それは、普通じゃない状況が生み出した、マトモじゃない感情(モノ)かもしれない。でもいい、関係ない。彼も彼女もその想い、素直に受け止め身を任せる  
 
「…じゃ…いくよ…」  
「……うん……」  
 
ホームズはエリスを優しく抱きしめ、静かに微かに腰を揺する。  
だがそれは激しさ等とは遠く無縁、ひどく緩やかで単調な行為。なぜならば…  
 
「く…ぅ…ぁ…ぎッ…ひ…」  
 
先端がその奥底に届くほどに、奥深くまで突き入れられたそれは、小さな少女の下腹部には明らかに大きすぎる異物。  
ぎちぎち…と、僅かに身体動かすだけでもエリスにとっては大変な負担。  
 
しかし少女は必死に耐える。身体を苛む激痛でさえ、今の彼女にとっては嬉しい。  
蕩ける様な快楽も、その身に刻み込まれる痛みも、エリスにとっては大切なもの。  
確かな絆、確かな繋がり。もう自分はからっぽじゃない…其れを感じる確かな証。  
 
「あ…ぁ…ぅ…ぅあ…」  
 
必死に耐える彼女の貌が男の視界をいっぱいに埋める。ホームズの胸に再度溢れるエリスを愛しく感じる想いが、その心身を昂らせる。  
ぎちちッ…未成熟…故に狭い、少女の蜜壺の締め付けは、迎え入れた男の其れを千切らんばかりに強力で…ホームズは堪らず限界に。  
 
「…ぅ…くぁ…で、でる…!」  
「ぁ…ぁ……ッ…ぁ…」  
 
どぷっ…ごぷっ…  
 
「「…………ッ!!!」」  
 
ホームズは再度高みに達し、その肉竿を弾けさせ、熱く粘つく白濁液をエリスのなかに注ぎ込む。  
彼女が『焼ける』と錯覚する程熱を持ったその液体は、収まりきらずなかより溢れ接合部から流れ出ている。  
 
「あ…ぁ……ぁ…ふぁ…」  
「はぁ…はぁ…かぁ…」  
 
虚ろな視線が宙を漂う…ホームズの精の迸りを受けエリスもまた達していた。  
肉体的には快楽よりも苦痛が勝っていたであろう交わり。しかし其れをも上回る、心を満たす溢れんばかりの絶対的な幸福感に、少女は達し果てたのだ。  
 
そして心地良い余韻に浸りふたりは寄りそい眠りに入る…  
 
 
 
目覚めた時にエリスが感じた、それは相反するふたつの想い。  
寄り添う男に感じる安堵、そして交わりの熱醒めた後の例えようも無い不安。  
 
…コレは所詮は刹那の触合い、疵だらけのふたりが出会い、其れを慰めあっただけ。この後ふたりがどうなるのか…先の事なんか解らない。  
エリスは其れをよく理解していて、故に不安に顔を曇らす…哀しみの涙で瞳が潤む。  
 
「なぁ…エリス」  
「…!…」  
 
何時の間に目が醒めていたのか、男が少女に囁きかける。エリスのそんな泣き顔なんて、彼は見たくは無かったから。  
 
「君の君の依頼は…引き受ける…最後まで付き合うよ。  
だから、その…“その後“の事は解らないし、まだ決めていないけど…」  
「……」  
 
先の事なんて解らない。だからホームズは少女に告げる。  
今の自分に出来る事を、少女(きみ)の為にしてあげる…と。  
 
「…その時まで…僕は居るよ。エリスの隣に居させて欲しい。…君を決してひとりにはしないよ。…それじゃ駄目かな?」  
「…ううん…いいよ…それでもいい…嬉しいよ…」  
 
再びエリスの瞳が潤む…が、それは嬉しさ故の物だ。  
その泣き顔を隠すように、彼女はホームズの胸に顔を埋めた。  
 
 
 
終  
 

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