タマモとの散歩から自宅に帰った横島は、いきなり修羅場を迎えていた。  
「横島さん‥‥どうして、わたしだけを見てくれないんですか?こんなにも想っているのに‥‥」  
「ま、待て。話せば分かるっ!」  
横島はこう言っているが、じつは横島自身も話し合いができるような状態ではない。  
何故なら、包丁を両手で持ったおキヌが、今にも人を刺しそうな形相で迫っているからだ。横島は青い顔で腰を抜かしている。  
一緒に散歩に出かけたタマモはと言うと、アレな行為で汚れてしまったので事務所に帰っていた。  
「横島さんはわたしだけのもの‥‥もう、誰にも触れさせない――」  
おキヌは持った包丁を逆手に持ち替え、両手で高く振り上げる。  
危機的状況に追い込まれた横島は、ただ叫ぶことしかできない。  
「早まっちゃ嫌ぁああああ――っっ!!」  
「――あなただけを愛してますっ!!」  
おキヌの激情と共に、凶器は一思いに振り下ろされる。  
そして、凶器の鋭い先端が横島の柔肌を突き破った。  
「クゥッ……」  
左脇腹に熱いような冷たいような感覚が走る。そのて、すぐに生温かい血の感触が腹部全体に広がる。  
「――ああっ…わ、わたし……」  
正気を取り戻したおキヌが、横島に突き立てられた包丁の柄から、慌てて手を離す。  
 
横島の着衣に広がる赤黒い染みを見て、おキヌは自分がした事を否応無しに理解させられる。  
「わたし…が…横島さんを……」  
おキヌは真っ青な顔で自分の両手を見ながら、ガタガタと震え始める。  
想い余ったおキヌは、震える手で包丁を引き抜き、自分の首筋に当てる。  
「……わたしも…後を追いますね‥‥」  
静かに目を閉じると、一筋の涙が流れ落ちる。  
包丁を持つ手をギュッと握った時、横島のまさに必死な声がそれを止める。  
「ちょ…ちょっと待てやぁっ!ワイはまだ死んどらん。それはええから…さっさとヒーリングしてや。文珠はあらへんのやぁ。ホンマに死んでまうぅっ」  
「は、はいっ」  
おキヌは包丁を投げ捨て、急いで横島の腹部に両手を当てる。  
ヒーリングで応急処置をされた横島は、すぐに救急車で運ばれた。  
 
 
白井総合病院に運ばれた横島は、緊急手術を受け、一命を取り留めた。今は病室のベッドで安静にしている。  
おキヌの方は、付き添いで病院に一緒に来た後、看護婦が手に負えないほど取り乱し、別室で安静にしている。これが幸いしてか、まだ警察が来ることはなかった。  
そして、騒ぎを聞いた美神が血相を変えて飛んできた。  
「横島クンっ、何があったの!?」  
来たのは美神だけだった。シロとタマモはこれ以上の騒ぎにならないように置いてきたようだ。  
病室に飛び込んできた美神を確認した横島は、何事もなかったかのように出迎える。刺された腹部が痛むので、上体は起こさずに寝たままだ。  
「あ、美神さん。たいした事じゃないっスよ。ちょっと刃物を振り回して遊んでいたら、ドジっちゃいまして……」  
自分にも責任があるので、横島は事実を教えるのをためらった。  
おキヌの状態を聞いている美神は、これが八割方は嘘だと感じていた。だが、あえて追求しようとは思わなかった。  
美神が次の言葉を考えている時、何か違和感を感じる。  
「横島クン、傷口を見せて」  
「どうしてっスか?」  
「いいから、見せて!」  
美神は病院着を肌蹴させ、刺し傷を見る。そして、その違和感の原因を知った。  
「やっぱり……この傷、普通の傷じゃないわ」  
「何がっスか?」  
「刺し傷に加えて霊傷の痕が見えるのよ。ただの刃物じゃ、こうはならないわ」  
さすがはオカルトのエキスパート。美神はわずかな違いも見逃さなかった。  
 
「その刃物、どうやって手に入れたの?」  
「どうって…おキヌちゃんが随分と前に持って来た物ですけど……」  
そこで横島はある事を思い出した。  
「そう言えば、あの包丁は元は「何たら丸」とか言う刀だったような……」  
思い当たった美神の両目が大きく見開く。  
「――妖刀シメサバ丸!!」  
美神が叫んだ名の刀は、以前、美神によって真っ二つにされて祓われた人斬り刀だった。残った刃先は、おキヌに料理包丁として再利用されていた。  
その包丁は前の事務所がメドーサによって爆破された時、てっきり美神は紛失したかと思っていた。だが、その時は横島の部屋に持ち出され、難を逃れていたのだった。  
「あの刀、今になって力を取り戻しつつあるんだわ!それで、シメサバ丸はどこにあるの?」  
「それなら、俺の部屋に転がってますけど」  
見舞いに来てすぐ、美神は慌しく病室を後にした。  
「そっか…あの包丁のせいやったんか‥‥」  
幾らか責任をシメサバ丸に転嫁でき、安堵した横島は、天井を見て小さく息を吐いた。  
 
 
少しは落ち着いたおキヌが横島の容態を確かめようと、恐る恐ると横島の病室に入ろうとしていた。  
それを見つけた横島が元気いっぱいという感じで声を掛ける。  
「おキヌちゃん、見舞いに来てくれたんか?忠夫、とっても感激っ」  
おキヌはビクッと肩を引き攣らせてから、横島を俯き加減に見る。  
「あの…おケガの方は……」  
「大丈夫、大丈夫。おキヌちゃんのヒーリングのおかげで、すぐに退院できるんだってさ。院長も驚いていたよ」  
横島は勤めて明るく話すのだが、それが返っておキヌに辛い思いをさせる。  
横島を直視できないおキヌは下を向いたまま、絞り出すような声で謝罪する。  
「……ごめ…んなさい。謝っても許してもらえないのは承知してます。でも、謝らせてください――」  
「あれ?おキヌちゃん、聞いてない?」  
謝罪の途中で横島が疑問の声を上げる。それに疑問を抱いたおキヌが、子犬のような目で横島を見る。  
「覚えてる?あの包丁が妖刀シメサバ丸だったってこと」  
「はい…」  
「さっき、美神さんが来てさ。俺の傷に霊傷も混じっていることに気付いたんだ。だから、誰も悪くないよ」  
「でも――」  
おキヌが納得しないので、横島は傷口を見せるように病院着を肌蹴させた。  
「ほら、おキヌちゃんも見えるだろ?」  
横島は自分にも責任があるから、おキヌを責めないだけなのだが、おキヌには横島が優しくしてくれているようにしか思えない。  
横島の優しさに堪えられなくなったおキヌが、ついに涙腺を決壊させ、涙声で声を荒げる。  
「でもっ!あの時、わたしが言ったことは事実なんですっ。わたしがああ想ったことは確かなんですっ!」  
おキヌの大粒の涙が次々と白い床に落ちて跳ねる。  
 
パニック寸前のおキヌを前に、横島は必死で言葉を探す。  
「お…俺は嬉しいけどな。そんな風に想ってくれるのなら、男冥利に尽きるってもんじゃないか!あっはっはっ」  
最後はやけ気味にバカ笑いしながら、バカな事をのたまう横島だったが、おキヌはその言葉にかなり心を打たれた。  
「ごめんなさい……ごめんなさいっ。横島さーんっ」  
おキヌはベッドの横島に縋りついて泣きじゃくる。  
横島は悪いと思いながらも、そんなおキヌが可愛く見えてしかたがなかった。  
 
しばらくして、ベッドに突っ伏して泣いていたおキヌが静かになる。  
そして、そのまま寝てしまったのかと思い始めた時、おキヌがゆっくりと顔を上げる。  
上体を伸ばして横島の頬に息が掛かるくらい近づき、小さく囁く。  
「……横島さん、キスしてもいいですか?」  
横島に嫌われていないか、おキヌはいち早く確かめたかった。その瞳は不安で揺れている。  
耳元で口付けをお願いされ、早くも横島の煩悩メーターが振り切れそうになる。  
「してくださいっ。是非、させてくださいっ!」  
興奮する横島はムードも何もあったものではないが、おキヌには普段と変わらないそれが堪らなく嬉しかった。  
「はい」  
微笑んで返事をしたおキヌが、横島の頬にそっと唇を当てる。そして、舌先でチロリと頬を舐めてから、横島の唇を目指して舌を這わせる。  
唇の割れ目に到達した舌先は、奥を目指して割れ目をこじ開ける。待っていた横島の舌が飛び出し、二人の舌が再開を果たす。  
舌を絡ませたおキヌが、両手で横島の頭を挟んで深く舌を伸ばす。  
一旦、おキヌが唇を離し、昂ぶりで瞳を潤ませてお願いする。  
「あふっ……横島さんも…舌を伸ばして‥‥」  
「れー」  
横島が舌べらを天井に向けて大きく出す。  
「そのままにしててくださいね」  
お願いしてから、それを真上から見下ろすおキヌも舌を大きく突き出す。  
そのままの格好でおキヌの頭が落ち始め、二人は舌を舐め合うように、舌が互いの口内に挿入される。  
「あむ…んんぅ……うむっ…ううんっ…」  
おキヌの頭が上下に動き、お互いの舌をこすり合せる。それから、横島の舌を唇や歯で挟んで感触を楽しむ。  
舌の味を堪能したおキヌは、最後に舌を吸い上げて蹂躙し尽くす。  
 
「チチュッ――んはぁ‥‥」  
朱色の差した顔を上げたおキヌが、横島の腹部を見る。  
「これ以上は無理ですよね‥‥」  
先程、手術跡を見たばかりのおキヌは、横島にこれ以上を求めるのを諦めた。  
だが、それを聞いた横島は、すぐさま気迫の篭った声で渇を入れる。  
「何を言うとんのや!おキヌちゃんとやるためやったら、文珠の十個や百個は問題あらへんっ!!こんなんはすぐに治したるっ」  
言うなり、横島の手の内に霊力が凝縮され、あっという間に文珠が作り出される。今の煩悩まっしぐらな横島なら、造作も無い事だ。  
その文珠を使い、横島の傷は治癒される。  
「見てみぃ。完璧に治ったやろ?」  
身を起こした横島は病院着を脱ぎ捨て、おキヌに傷があった脇腹を見せる。そこは手術跡もきれいさっぱり消え、刃物で刺されたのが嘘のように元通りだった。  
「それじゃあ、続きといきますかっ」  
「きゃっ」  
復活した横島に腕を掴まれ、おキヌはベッドに引きずり込まれた。  
 
「横島さん…人が来ちゃいますよ‥‥」  
ベッド上で横島に強く抱き締められたおキヌが、形だけの抵抗を見せる。  
「もう止まらんっ!今のワイに怖いモンは無いんやあっ」  
横島はおキヌを逃がさないよう、ベッドに押さえ付けるように体重を掛けて抱く。  
期待通りの横島の行動に、おキヌが息苦しいながらも微笑んでお願いする。  
「わかりました…から、その前に服を脱がさせてください…」  
荒い息の横島は渋々という感じで、ゆっくりとおキヌから身を離し、ベッドの隅に退く。  
おキヌは上体を起こし、ベッドに腰を下ろしたままで脱衣を始める。  
 
「そんなに見ないでください‥‥」  
上着を脱ぎ、シャツのボタンを手で摘んだおキヌが、恥ずかしがって背中を向ける。  
それでも、裸で臨戦態勢を維持したままの横島は、ギラギラとした眼でおキヌが脱ぐところを凝視する。  
ボタンを上から外してシャツを脱ぐ。次にスカートのボタンを外し、腰を浮かせて足を潜らせる。  
長い後ろ髪に手を差し入れてブラを外し、最後はパンツに手を掛けてずり下げる。  
パンツを脱ぐ瞬間に白いお尻をチラリと覗かせる。  
全裸になったおキヌが、背中を向けたままで合図を送る。  
「……横島さん、いいですよ」  
「――おっキヌちゃあああんっ!!」  
合図と共に、飢えた猛獣がおキヌを背後から襲う。  
「きゃうっ」  
力づくでベッドに押し倒して仰向けにさせる。そして、強引に唇を奪う。  
「うんぅ…むむう……んうぅっ……」  
本能のままに唇をむさぼり合う横島とおキヌ。  
キスをしたまま、横島の両手がおキヌの張りのある胸を捉える。  
両乳房を鷲掴みにした手が、乱暴に胸を揉み上げる。  
胸の形が次々と変わり、おキヌは塞がれた唇から苦痛と快楽の悲鳴を漏らす。  
「――んぐぐっ…ぶぬぅっ…ううぅっんっ!」  
そして、止めと言わんばかりに、おキヌの尖った二つの乳首を強く摘んで引っ張る。  
「んいぃっ!?ぶぬぬぬんんぅぅ――っ!!」  
おキヌの見開いた瞳から涙が溢れる。  
おキヌの腹の底から搾り出すような叫び声を、横島は全て唇で受け止めた。  
 
二人の唇が離れ、おキヌがぐったりとベッドに身を沈める。そして、横島を見上げて両腕を伸ばす。  
「横島さん……来て‥‥」  
おキヌが微笑んで誘う。横島は誘われるままに、さっきから大きくなりっぱなしの男根で貫く。  
「――はああっ!」  
先っぽを先走り汁で濡らした剛直を、おキヌのまだ狭い膣にズブズブと強引に沈ませていく。  
正面から貫かれ、おキヌは両手足で横島の首と腰に絡みつかせて苦痛に耐える。  
横島はおキヌの胸に自分の胸をすり合わせるように、全身を使って腰を前後させる。  
「ああん…あぅっ…はあんっ、あん、くふぅっ」  
しだいに、おキヌの秘所から蜜が流れ出し、横島の動きも早く大きくなる。  
そして、おキヌに抜き差しされる横島のモノがビクビクと脈打って限界を伝える。  
おキヌが大きく揺さぶられながら涎をたらした口を開く。  
「――はんぅっ、よこ…しまさん…中に…あふっ…わたしの中にいっ‥‥」  
おキヌは股間に力を入れ、太股で横島を両脇腹から挟み込む。  
横島は絶頂前の声を漏らす。  
「で…出るっ――」  
最奥に誘われた剛直が一段と大きく膨らみ、勢いよく精子が解き放たれる。  
「んはあああぁっ‥‥」  
おキヌの子宮が熱いもので満たされ、歓喜と絶頂で全身の筋肉が収縮する。手足は横島の体を捕らえ、膣は男根を締め上げる。  
絶頂を迎えた剛直は、何度もおキヌに締め上げられ、長い射精を続ける。  
「…くふぅ……まだ出てる‥‥」  
お腹をいっぱいに満たされたおキヌは、恍惚とした表情で笑みを浮かべる。  
全てを搾り取られた男根がズルリと引き抜かれ、その出口からは入り切らなかった白濁液が垂れ流れた。  
 
 
しばらく、ベッドで全裸のおキヌが心地よい脱力感に溺れていると、病室のドアが静かに開いた。  
「――っ!!」  
おキヌは慌てて衣服を掻き集め、シーツで体を隠す。そして、横島とおキヌが客人を見る。病室に入ってきたのは美神だった。  
美神の様子は目に見えて不機嫌だった。黙ったままで俯き気味に近づいてくる。  
あまり見られたくないところを見られたのもあり、美神の機嫌を取るように、横島はかなり下手に出迎える。  
「み…美神さんじゃないですかっ。美神さんが二度も見舞いに来てくれたおかげで、すっかり治っちゃいましたよ。なはは…」  
「……横島クン」  
「なんでしょうかっ」  
美神の重苦しい呼びかけに、横島は直立して返事をする。そして、次の美神の言葉に肝を冷やす。  
「――あんた、私の下僕のくせに生意気なのよ‥‥どうして、私の言いなりにならないの?」  
どこかで見たような光景に、横島はとてつもなく嫌な予感がする。  
その時、ベッドのおキヌが人差し指で慌てて指し示す。  
「横島さんっ。手っ…美神さんの手っ!」  
横島は言われた方に視線を向ける。  
「ん?――はうっ!!」  
おキヌが指す所を見た横島は青ざめた。美神の手にはキラリと光る包丁が握られていたのだ。横島の予感は的中しそうだ。  
美神が包丁を自分の顔の前で構える。  
「私の好きにならないのなら、消えてくれた方がマシよ!」  
「あんたもかぁぁあああああっっ――」  
 
この後、横島を一刺しした美神は正気を取り戻し、シメサバ丸は再び除霊された。  
そして、シメサバ丸はその切れ味を買われ、この白井総合病院に引き取られたとか。  
 
 
おわり  
 

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