※グロー界に千両の実があるかは不明だが、旧世界の月の総本山から零れ落ちた縁起物ということで‥
「見つけたーっ。ラッキー。さすがカレンさんの情報は確かね!」
今アタシとコイツは、ローザリアからオリビエ湖に続く街道沿いにある、センリョウの群生地に足を踏み入れている。
「えへっ。コレの赤い実がついている枝を玄関に飾るといい事あるんだって。うふふっ、た・の・し・み」
はしゃぐアタシとは対照的にうんざりしているアイツ。
明け方までくだらないゲームしていたようだから、寝入りばなを叩き起こしてあげたのそんなに気に入らないのかしら。
新年からだらしない生活送るよりは、何倍もマシだと思うけどね。
だけどコイツ下手で、せっかくの赤い実をばらばら落としてばかり。
「もう乱暴ね。アタシが直接取るから見てなさいよ〜」
アタシはいい枝を捜してふらふら飛び回る。
あの辺りはまだ青い実だらけだし、こちらはなり過ぎてもう駄目。
「あっ! これこれ、この枝の実がいいわ」
アタシは急降下して、そのたわわに色づいたセンリョウの枝の根元に飛びついた。
「ええと、アタシ専用の枝切りバサミ、マスターに作ってもらったんだ」
ぱちんと気前いい音がして、アタシの腕一杯に見事な実をつけたセンリョウの枝。うふふふ。
と、持ち上げようとしたらひっかかっているのに気がついた。
背中に一本の枝が入り込んで、アタシ惨めに宙ぶらりん状態。
必死にもがいて抜け出そうとしても、今度は周りの密集していた葉や枝までアタシに絡んでくる。
おかげで上着も乱れておへそが顔を出しはじめる。
「う、うっ‥ウソっ。ア、アンタぼけっとしてないで、さっさとアタシを助けなさいよ〜っ」
仕方なさそうに欠伸しながら、アイツががさがさとセンリョウを掻き分けながら近づいてきた。
アイツが上から枝を揺らすたびに、アタシの上着はさらに持ちあがって乳も丸見え。
「やっ、脱げちゃう! やめてよぉっ!!!」
どうも上からは見えないみたいで、適当に動かしていたらしい。
アイツは今度は下から潜り込んできた。
でも届かないみたい。アイツ手間取っている。
ちょうどその時赤く色づいたセンリョウの実が一粒、アタシの脱ぎかかった短パンに勢い良く飛び込んできた。
「あ‥あんっ」
その重さで短パンがどんどん下がってく。
お尻を引き締めてももう駄目。
さらにショーツまでも一緒に引きづられて、ずりずりと落ちはじめる。
そのうちふいに一枚のセンリョウのぎざぎざの葉が、最後の良心を容赦なく剥ぎ取った。
「やんっ」
パサリと軽い音を立てて、アイツの鼻先に落ちてったアタシの白いショーツ。
「もうっ、最低ぇ! アンタね。いったい何手間取っ‥て‥て」
そう言いかけて、アイツが一点を凝視しているのに気がついた。
アタシがその視線の先を辿ると、なんとアタシのむき出しになったお尻!
「ちょっとアンタ! どこ見てんのよっ!!」
アイツは何言ってんだ?とばかりに、不思議そうな表情でアタシの顔を見た後、また手を動かしだす。
でもわざとらしく、さっきよりも時間をかけて助ける振りをしてる。
許せない!
やっと抜け出せた瞬間、アタシは思いっきりティピちゃん三段踵落としをアイツにお見舞いした。
アイツは無様に星を撒き散らしながら、センリョウの群生に突っ込んでいった。
「絶対見てた」
戻ってきたアイツがぼけたように否定する。でもウソだってミエミエの反応。
こうなったら意地でも認めさせてやるんだから。
「へへん! そんなポーカーフェイス、このアタシは誤魔化されないわよ!」
そう言いながら、アタシは先程のように、短パンをショーツごと脱ぎ捨ててアイツに向けた。
「こんな風にアタシのこのきれーなお尻に見とれてたでしょ!」
ほらね。背後からアイツの息を呑む音が聞こえてきた。
「どう? 文句ある?」
「‥‥‥」
「何か言い返せる?」
「‥‥‥」
「ほら、謝りなさいよ。アタシに」
「‥‥‥」
往生際が悪いわね。シラを切るつもりなのかしら。
ムカついて振り返ると、鼻の下を伸ばしたアイツの顔。
だらけた口元。ニヤけたその目。鼻の大きさは普段の三倍ぐらい広がってて‥
そこからつつと赤い雫が滴り落ちて地面を染めている。
してやられた!
「あっ‥あっぁああああ――アンタ何させんのよ、このスケベ。変態。馬鹿馬鹿馬鹿ァ―――ッ」
ああ、もう恥ずかしっ。
唯一の救いはアイツの口が固いことかしらね。
でも念には念を入れて、もう一発鉄下駄キックをお見舞いしておこっと。